進撃の巨人ー名も無き兵士ー   作:神野伊吹

20 / 20
お待たせしました
なんかシリアスに

誤字、というか凡ミスを修正しました


悔恨

目の前に立つ存在するはずのない女。

それはライナーを恐怖させるには十分であった。

訓練兵時代、圧倒的なセンスで自信をへし折った超人。

卒業時、上位10位を蹴り調査兵団に志願した奇人。

調査兵団時代、正体を明かした二人を憎悪と殺意に従い、容赦なく殺しに来た狂人。

そして今、大量の巨人に一人で立ち向かい生還した化物として立っている。

ライナーの脳裏に過るのは絶望。

正直、フードを被ってる時は巨人化したら勝てるとすら思っていた。

だがどうだ。今は目の前にいる女に勝つ未来が見えない。

むしろ巨人化したら蹂躙されるだろう。

 

「...フフッ...」

 

ふいにジェミニが笑う。

かつてクリスタはジェミニの笑った顔は可愛いと言っていた。

"アレ"がか?

下がる目尻も、上がった口角も、見える八重歯も、何もかもが恐ろしい。

今から人を殺そうとしているのに笑える感性が恐ろしい。

「なんで...生きてやがる...?!」

口から溢れたのは心を、頭を埋め尽くす疑問。

あの戦闘の後に一人で巨人に挑んで無事なわけがない。

「...どうでもいいでしょ...? 私は、今、あなたを殺すチャンスを得た。ただそれだけ」

脱力したのか頭が傾く。

それでも表情は変わらない。

「俺を...恨んでいるのか...?」

「そうだね...」

生き延びるために自分の過ちを振り返る。

分からない。

「何をした...ぐぁっ?!」

脚への痛みが走る。

ジェミニの手元から刃が消えている。

膝をつくライナーを尻目に悠々と刃を装着するジェミニ。

脚に深く刺さった刃は片手では抜けないだろう。

「アンタが何をしたかって...?」

慎重に、獲物を追い詰めるように、決して近付くことはない。

「シガンシナ区を忘れたとは言わせない...」

いたのか、あそこに。

ベルトルトと共に作った地獄にいたのか。

だが、なぜ、エレンほどの怒りを見せていなかったのか。

分からない。

ジェミニが分からない。

「あの日...超大型巨人が出現した日...私はシガンシナ区にいた...」

理解した。

家族がいただろう。

では何故、彼女は一人だった。

それはーー

「お前が破壊した壁の残骸に...私の親は...目の前で潰されたんだ」

因果応報。

自身が行った事により、ジェミニは家族を失った。

復讐の為に動くのは当然である。

彼女が常に大人しかったのは、目立たないため。

狂人を装っていたのは今、ここで俺を追い詰めるため。

 

 

「ライナー!」

 

だがまだ、命運は尽きていない。

ベルトルトが異常に気が付いてくれた。

ベルトルトの巨人化ならば勝機がある。

 

「あぁ、二人揃うとは好都合。ミカサたちの仇も取ろうかな」




続くよ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。