お楽しみに!
俺達と同じ故郷の仲間がいた。
同期の誰よりも強く、誰にも優しかった奴だ。
巨人の力にも怯えず、自分がついてる、と励ましてくれた。
あの日も俺が意識を失っている間に行ってしまった。
気が付いたときには巨人達の中に。
自分の復讐も、夢も、全て俺達に託してくれた。
「...」
今日も読みに来ている。
誰も座らない、彼女の為の机に。
読むときも座らない。
ここは彼女だけが座る席となったから。
「はは...こんなことまで書いてたのか...」
訓練兵時代の些細な出来事まで書いてある事に笑みが零れる。
「凄いな、お前...こんな事もやってたのか...」
様々な訓練、様々な人との交流、様々な問題の解決。
そんなやり方があったのかと、参考になりそうなことまである。
「またここにいたの?」
あの日と同じようにミカサが迎えに来る。
「あぁ...毎度悪いな...」
「気にしないで。私も来たかったから...」
ミカサは部屋の中に入り、机を撫でる。
こいつも彼女とは仲良くやってたらしい。
お互いの昔話などをして盛り上がったと手帳に書いてあったのを覚えている。
「なんか用があったんだろ?」
悲しげな瞳で机を見つめるミカサに問い掛ける。
「アルミンが呼んでいる」
ミカサは顔も上げずに答える。
最近はこうした反応をすることも多い。
彼女はミカサにとっても大きな存在だったんだろう。
手帳を置いてミカサを促す。
「行こう、ミカサ」
きっとまた来てしまうだろう。
でも、彼女を忘れたくはないから。
託されたものを忘れたくはないから。
「また来るよ...」
部屋に言い残す。
自分にも言い聞かせるように。
必ず生き残る為の誓いのように。
今日も部屋の掃除に訪れた。
蝋燭の交換や拭き掃除。
別にしなければいけないわけではない。
でも、彼女が戻ってきたとき、綺麗な方が良いじゃないか。
そんな理由だ。
ジャンやコニーは望みは薄いと言っていた。
でも、誰一人、彼女の最期を見ていない。
こんな世界だ。
それだけで十分だ。
「ふぅ...」
いつもの行程を終える。
日も暮れ、紅い夕陽が部屋に差し込んでいる。
あれから何日経っただろう。
最初は待つ事しか出来なかった。
どんなに待っても帰還報告が無くて泣いたこともあった。
そんな時、彼女との日々を思い出した。
『ごめん、部屋は寝るとこだと思ってるから...』
訓練兵時代に訪れた彼女の部屋は、呆れるほど散らかっていた。
正確には彼女の生活スペースだけ。
通常の訓練に加え、遅くまで自主訓練をしていた彼女は部屋の掃除などするつもりも無さそうだった。
そんな彼女の生活スペースを定期的に片付け始めたのは、ばつが悪そうにする彼女に呆れたからではない。
薬草探しやお見舞いに付き合ってもらったからでもない。
友としてしてあげたくなったのだ。
きっと、そうまでして復讐を成し遂げたいのだと。
彼女の生活スペースは無くなってしまった。
でも、ここは残されている。
調査兵団の中では暗黙の了解である。
誰も荒らすことはない。
確認のために部屋を見渡す。
「あれ...?」
一つの異変に気付く。
重大な問題だ。
「手帳はどこ...?!」
机や椅子の下にも無い。
「嘘...ダメ...! あれは... !」
彼女の記録。
104期の皆が共有する手帳。
彼らが持っていくはずはない。
「皆に知らせなきゃ...!」
クリスタは慌てて部屋を飛び出した。
手に持った手帳はボロボロだ。
何度も捲られたのだろう。
つい頬が緩む。
忘れられてはいなかったのだと。
まだ『ただいま』は言わない。
今はこの状態で良い。
友たちの為にもまだ姿は見せられない。
その時がくれば、きっと助ける。
手帳を内ポケットに入れる。
「顔くらい見せてやったら良いのに」
協力者であるヒッチは呆れたように言う。
"彼女"は小さく笑う。
これで良い。
今は死んだままの方が都合が良い、と。
「相変わらずだね...それじゃ、行きますか」
暗くなり始めた町を"彼女"は歩く。
その姿は誰にも見咎められる事は無かった。
はい、出ました。
生きてます! 以上!
こっからどうしようね(´・ω・)
ノープラン過ぎる。