進撃の巨人ー名も無き兵士ー   作:神野伊吹

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これで主視点で書ける!


そんな風に考えた時期が俺にもありました

ごめんて。もうちょい付き合って。
頭の中の映像がこうしろってなってるの。


記録

あの日は私達も召集されていた。

人類の命運を賭けた大規模な防衛作戦。

「ったくさぁ...なんの為に憲兵団に入ったと思ってるんだろうね」

今じゃ最前線。

正直、巨人と向き合って戦える自信はない。

近くにあいつがいないだけでこんなに怖い。

「今、どの辺で戦ってるのかな...」

今まで何度か実戦には出た。

あいつに『ちょっと付き合って』と軽く誘われたのが原因だったけど。

散歩に行くような感じで壁外に連れ出して巨人の群れに突撃。

殺す気かと何度も思った。

でも、あいつの傍にいると勇気が湧いた。

怯えが無くなると気付く。

あぁ、こいつは私に巨人の恐怖に慣れさせようとしていると。

今回もきっと、あいつは助けに来てくれる。

そう考えただけで戦えた。

自身の周りの巨人を処理し終えると主力部隊がいる方に目を向ける。

何があったかは分からないが、鎧の巨人がエレンらしい巨人に投げられる瞬間であった。

「すご...」

素直に驚く。

これなら人類は勝てるかもしれない。

しかし、トラブルが発生する。

鎧の巨人が持ち去ろうとした目標物を発見したという伝令がきたのだ。

私達への指示は撤退。

機密なのだろうし、指示には従う。

だが、遠方から近付く巨人はどうするのか。

私は初めて上司に意見をした。

調査兵団の援護をすべきと。

 

 

巨大な鉱石のようなものを積んで走る馬車を発見する。

すぐ後ろには巨人の群れ。

マズイと思ったときには一つの影が馬車から飛び出していた。

「あの馬鹿...!」

あいつだった。

長い戦いを終えた直後だというのに無謀にも巨人の群れに飛び込む。

私が立体起動を始めた瞬間、あいつは叩き落とされた。

既に疲労困憊なのだろう。

調査兵団は憲兵団よりもキツかったはずだ。

間に合えと願う。

巨人への恐怖はない。

今、恐れているのはあいつが死ぬこと。

友達と呼べる存在が失われること。

起き上がったあいつに巨人の手が迫る。

その巨人の手にアンカーを打ち込み一気に巻き取る。

「お前らなんかにやらせるかっての...!」

そのまま振り子の要領であいつに向かう。

目を閉じている。

許さない。

こんな別れは早すぎる。

「しっかり掴まれ馬鹿!」

あいつに聞こえるように叫ぶ。

驚愕の表情を浮かべているが、さすがだ。

勢いをつけて突入した私に迷うことなく掴まった。

「あんたガスは?!」

 

『少しだけ』

 

私の質問に短く答える。

「あんたなら平気そうね! 少し後方に憲兵団の補給地点がある! そこにならガスが詰まったボンベもあるから!」

まずはそこに行こうと提案する。

するとこいつは遠慮なしに飛び始める。

 

『先に行って補給しておく』

 

正しい判断だろう。

了解の意味を込めて頷く。

あとは生き残るだけ。

僅かな木を使い、立体起動で巨人との距離を離す。

辿り着いた拠点では、補給を終えたあいつが二本のガスボンベを持って待っていた。

 

『すぐ出発しよう』

 

私のボンベ交換を手伝いながら彼女は言う。

同感だ。

おそらくまだ壁外にいるのは私達だけだ。

「あんたが無茶してなきゃこんなに焦ること無かったんだって...」

彼女は私の言葉に苦笑しながらも巨人が来る方角から目を離さない。

これだからこいつは安心できる。

「さぁ、帰ろ?」

巨人が見える前に遺されていた馬に乗る。

走りながら彼女は一つの策を語り始める。

私にはその作戦を行う意味が分からない。

だけど、こいつが言うんだから意味があるのだろう。

私はこいつを匿う場所を考えながら馬を走らせるのだった。




はい、最後まで本人の名前が出なかった。

今回は主が追憶Ⅱで何故生きていたのか、の理由になりました。

分かった人は分かったでしょう。

助けたのはヒッチさん。
主との交流で強制的に壁外に連れていかれたりしたヒッチさんも成長しておりました。

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