視界がアカク染る。
目の前には片腕を抑えて、呻いているアイツと・・・
アイツに駆け寄って、化物みたかのように、顔に嫌悪と恐怖の色を浮かべる少女達。
この状況はどういうことだ?
そう思いながら自分の手に付着した血液、おそらくアイツの物と思われる、を眺めながら俺の意識
は暗転した。
と、シリアスな出来事から今日で1週間ほど経過した。
現在は見覚えのない部屋に軟禁されているようだ。
部屋はビジネスホテルのような造りで風呂場やトイレ、ベッド、また簡単なシンクもある。
間取りも一般的なアパートなどよりも広く、機能的かつ中々に住みやすい部屋だといえる。
まあ穿った見方をすれば、住人を一切外に出す必要がない、とも言えるのだが。
さて今の俺の状況を一言で表すなら、
「月姫という作品を知っている『俺』が遠野四季(8)に憑依してしまった。」
という二次創作のような状況である。
正直、意味がわからない。
ぶっちゃけ混乱しまくって意味もなく叫んだり、泣いたりしていた三日前と比較すると
大分落ち着いているが、未だに意味がわからない。
俺は一般的な会社員で、休日にPCを立ち上げた次の瞬間あのアカイ世界だった。
もちろん神様的な存在にあった記憶もないし、死ぬような目にもあっていない。
なのに次の瞬間ゲームの世界って・・・
いったいどういうことだってばよ!?
・・・いや現実かどうかは不明だが、現実逃避はよろしくない。
とりあえず自分の現状を把握しよう。
まずあの最初の場面。
あれはおそらく作品「月姫」の中で「遠野四季」が反転し、妹の遠野秋葉を襲い、それを庇った
親友七夜志貴を殺してしまう場面だろう。
確か原作では遠野の「人外の血」を濃く継承していた「遠野四季」今後は「シキ」としよう、は
死徒27祖の番外、無限転生者ことミハイル・ロア・バルダムヨォンという吸血鬼の転生体となる。
そしてロアの覚醒と共に「人間としてのシキ」が消滅し、反転。「鬼としてのシキ」が生まれてしまう。
その結果、秋葉を攻撃、庇った志貴を殺害してしまい掟に従って遠野槙久殺されかけるが、能力を使用して志貴と繋がり生きながらえる。以後8年間は幽閉され、ロアもしくはシキとして敵役となる。
といった感じだった気がする。
だが俺が憑依したせいか、志貴は怪我だけで済み、「シキ」は父親の遠野槙久に殺害されず、監禁されただけである。
殺されないのは嬉しいが、これからどうなるのだろうか?
また俺は元の肉体に戻れるのだろうか?
・・・ダメなんだろうなあ。
次に俺の肉体状況だ。
まず俺の肉体は吸血鬼ではない。
通常、吸血鬼の呪いを受けた時点で魂は汚染され、その影響は肉体にも及び、ゾンビやらグールを経て完全な吸血鬼=死徒となる。
おそらく感覚的に俺が憑依した時点で
【人】「シキ」(人格消滅)<【化物】「人外の血」+「ロア」(ヒャッハーッ!)
から
【人】「シキ」(人格消滅)+「俺」(憑依 )>【化物】「人外の血」+「ロア」(´・ω・`)
↓
【人】「シキ」(人格消滅)+「俺」(定着)>【化物】「人外の血」(休眠)+「ロア」(消滅or休眠?)
ってな感じだろう。
なんで汚染されていないのか、もしくは実は汚染されていて徐々に吸血鬼化しているのだろうか
とか、一瞬とは言え反転してしまった自分の今後の処遇が気になるとか、色々思う所があるが、
おそらく大丈夫だろう。
完全に反転した原作でも殺されなかったんだ。
とりあえず死ぬことはないだろう。
さて時間は有り余っているのだから、もっとこの体でどんなことが出来るのか調べなきゃな。
テレビも本もないから他にやることもないし。
まあ、いざとなったら泣き落としでも使えばロリコン親父とか余裕だろうwwww
・・・おや、誰か来たようだ。
時間も遅いし夕飯かな?