遠野物語(四季に憑依)   作:チョコラBB

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時計塔にて

どうも遠野四季改め日守四季です。

最近は介護、エコ、PCなど元の世界でこれから発展する分野の株式を買い集めて大儲けしています。でもゾウケンやロアの知識があるからかやりたいことが多すぎて常に素寒貧状態だったりします。

魔術って金食い虫だね、本当に。

さて聖杯戦争から3年が経過して俺も15歳。

一応義務教育期間は学生も兼務していたけど、正式に遠野から出ることになったし本格的に魔術を鍛錬し始めようかと思う。そのためにも時計塔に留学しようかと考えているのだが俺には伝手というものがないことに今更ながら気づいてしまった。

普通は親や師匠なる存在がいてそういった存在から魔術世界への繋がりを引き継ぐのである。

しかし俺にとって師とは脳内wikiことロア先生の魂の記録なので馬鹿正直に説明なんかしたらホルマリン漬け待ったなしである。

そこで俺はかつて恩を売った彼、ウェイバー君に国際電話をかけることにした。

 

「・・・ハロー?ミスター遠野かい?用件は聞かしてもらったがどういうことか説明してくれないか?」

 

「やあウェイバー君。久しぶり。用件と言っても手紙に書いた通り俺の師はもぐりの魔術師でね?時計塔とかのことは聞いていたけどこの業界の伝手とか特別教えてくれないまま死んでしまってね。正直魔術を学ぶために時計塔に入りたいんだけど全然繋がりがないんだよ!あははは!」

 

「・・・なぜそこで笑うのか君は!・・・まあ私も君には恩があるし、今の私の立場なら一人くらい入学させることも難しくない。それ相応の金を払えるのなら君の箔付けに協力しよう。だが最低限の実力は示せるのだろうな?君の腕っぷしが強いことは知っているが魔術師としては君が初代、新興なのだろう?大体・・・・。」

 

それからしばらくウェイバー君の話を聞いていたが、どうにも俺が金持ちのぼっちゃんかつそこそこ魔術の腕が良いことで舐めた気持ちで時計塔に入って箔付けしたいと考えていると思われているようだ。

ついでにウェイバー君本人も時計塔内部に権力闘争でストレスが溜まっているようで、そんな時に俺から能天気と思われる連絡が来てご立腹らしい。

うん、気持ちは分かる。

気持ちは分かるが、それはそれとして俺が八つ当たりされる謂れはない。

 

「分かりやすい功績だオラァ!後今は遠野じゃなくて日守なんでヨロシク!!」

 

数日後、渡英して社畜みたいな顔したウェイバー君の顔を、終わりのクロニクル7巻並みの厚さのレポートで殴ったらグーで殴り返された。

 

 

 

 

渡英1日目

空港に到着した。

生憎の曇り空だが、それが逆に産業革命時の霧の都ロンドンという印象に重なる。

俺はタクシーに乗って住所を運転手に伝えると後ろに流れていく灰色の街並みを眺めながらこれからのことを考えた。

これから俺はフラット、イギリスでのアパートメントのこと、を借りて時計塔へ通うという生活スタイルになる。俺のこれからの住処になる場所は、都市の中心部からはそれなりに離れている場所で、更に近所にドルイドストリートという少し治安の悪い場所がある。

まあそのおかげで物件の規模の割に格安で借りることが出来たし、庶民派の市場なども近所にあるので個人的には満足している。

今日のところはフラットの片づけをして簡易的ではあるが工房を設置するとしよう。

そして明日は時計塔とウェイバー君に挨拶や手続きをして・・・とりあえずは現代魔術論学科に所属するかな。

 

因みに時計塔とは魔術協会における三大部門の一角でロンドンに拠点を置いている。

「時代に適応し、人類史と共に魔術を積み上げる事を是とした魔術師たち(比較的)」が多く所属しており他の部門よりも門戸が広い。

此処は三大部門の中では最も新しい、と言っても設立は西暦元年で現在は魔術協会総本部とされ、魔術世界における最大勢力でもある。

その為21世紀において魔術協会と言えばロンドンの時計塔を示すほどの権威があり、そこに所属することは世界中の魔術師たちの中で一種のステータスとなっているのだ。

また原作では「ロンドン郊外に位置する中世と近代の入り混じった街、四十を超える学生寮(カレッジ)と百を超える学術棟と、そこに住む人々を潤す商業で成り立つ」という巨大な学園都市と「大英博物館の地下に築かれたダンジョン」の二つの施設があるとされており、俺は主に前者で過ごすつもりだ。

前者の学園都市には、時計塔では必修である「全体基礎」──魔術全体の共通常識、類感魔術と感染魔術、地脈、マナ学など──を第一とした十二の学部に分けられ、以下「個体基礎」「降霊」「鉱石」「動物」「伝承」「植物」「天体」「創造」「呪詛」「考古学」「現代魔術論」の十二の学部の関連施設がエリア分けされて存在している。

また十二の学部それぞれが独自の権力、独自の自治区画を持ち、十二人の君主(ロード)に管理されているらしく血統やら格式やらが優先されるドロドロした権力争いを繰り広げているらしいので歴史が浅い処か俺自身が初代の魔術師一族なぞ血統至上主義の魔術師たちには基本相手にもされないだろう。

故にそう言った風潮が少なく、また原作で有名だったエルメロイ教室がある現代魔術論学科に俺は所属したいと考えている

 

 

なお後者は、前情報集めるだけでも実力の高い魔術師の個人的な工房や研究室が多くあるらしい。まあ本来の工房は自分たちの実家などにあるためサブ的な工房ばかりだろう。

(それでも恐らく危険度が天元突破しているだろうけど)

噂では工房のほとんどは地下にあり、下へ行けばいくほど狂気度が増すダンジョンと化しているとか、最深部には封印指定をされた者を閉じ込める『橋の底』と呼ばれる特別区画があり、封印指定された魔術師たちが幽閉されているとか、俺には破滅願望がないので好き好んで近づきたいと思わない。

 

 

渡英■日目

時計塔に所属してそこそこの期間が経過した。

生活や時計塔の授業にも慣れてきたが未だにイギリス料理にはなれない。

世界一不味いという噂に違わぬゲロマズな料理だったが、意外に旨い料理もいくつかあった。ただ全体的に素朴というか雑というか・・・なんというかシンプル過ぎる傾向がある。

まあこれには諸説あるがイギリスは元々作物が育ちにくい土地であるため新鮮な野菜などが手に入りにくくまた種類も少なかった。

その為、超絶素朴なものや保存を主眼に置いた素材の味や栄養素に恨みでもあるかのような物、あと牛肉料理が多い。

また英国の支配層にいた貴族たちの間には他の国と異なり質素な食事こそが尊ばれていた時代があった。このため料理が発展することもなく、上の者たちが質素なのに庶民の間で豪勢な食事がはやるわけでもなくどんどん料理の文化廃れていったのだ。

さて俺がここまで力説しているが、ぶっちゃけると一応良い所のぼっちゃんである俺の口には合わないものが多くストレスなのだ。(※日本有数の財閥の御曹司でした。)

騎士王が腹ペコ王にクラスチェンジするのも納得ですわ。

 

渡英■△日目

ウェイバー君のこと舐めてた。

未だ三級講師ながら彼の教えは非常に理解しやすく実践的で素晴らしい。

今まで俺の中のロアとゾウケンの現役のロードすら凌駕している魔道の深淵ともいえる知識はあった。だがやはり天才仕様というものであるため、俺のような凡人には馴染みにくい部分も多かったのだ。

だがウェイバー君の考え方や魔術構成へのアプローチは分かりやすく、例えるならPCのプリグラムに近いモノで、ピッタリと凡人たる俺の感性と先人の英知の隙間を埋めてくれるのだ。

その結果、渡英して1年も経たないうちに自分でもビビる位異常な勢いで魔術の腕が上達して「開位」を得た。

・・・ウェイバー君、いやウェイバー先生。教え子に位階を抜かされて悔しいのは分かるが人の顔を見るたびに舌打ちするのはやめてほしい。

一応は俺の評判はエルメロイ教室の評判にも繋がるんだぜ?

 

渡英△日目

日本から秋葉や槙久たちから手紙が来た。

変わりなく元気なようだ。

また最近は桜もよく入り浸っておりメイド服を着た服が同封されていた。

・・・ふむ大丈夫だとは思うが天然ジゴロの志貴には一応忠告しておくか。

ちょうど先ほど返り討ちにした何処かの派閥からの刺客たちがいる。

防音結界を敷いたうえで普段魔導書内に取り込んでいる蟲共の餌にしている最中だが、丁度いい。

刺客の血液を少し掬うと志貴へ手紙を書く。

 

『ウチの 桜 手を出す 秋葉の人形に 殺 』

 

志貴への手紙を懐にしまう。

血液なので文字が擦れてしまったが意味は通じるだろう。

わざと逃がした刺客には潜虫仕込んでるし今度お礼参りしにいこう。そうしよう。

 

渡英△△日目

本日は俺と同じくエルメロイ教室に所属しているスヴィン・グラシュエート君の研究に協力した。

以前からも何度か協力していたが、彼は自らの内側から獣性を引き出し、魔力を纏うことによって疑似的に人狼のような能力を得る「獣性魔術」といわれる魔術の使い手で王子様風の甘いイケメンだ。

ただし獣性魔術を使用すると筋肉が膨れ上がり異常な密度の魔力を纏ってまさしく人狼みたくなるので密かに格好いいなあと思っている。

なお俺が協力したのはロアの知識内にあった今は飛散した獣性魔術の知識の提供、魔力を纏うという手法の確立方法、そして制御に失敗した際にスヴィン君の(物理的に)制止することである。

ほら最近忘れかけてるけど俺混血だから肉体言語も得意なんだよ。

獣性を引き出したものの制御ミスって暴走したスヴィン君を殴ったり、暴走したスヴィン君を燃やしたり、暴走したスヴィン君をなんちゃって血闘術で氷漬けにしたりして止めてた。

まあこちらも結構ボロボロになるのだが段々身体の強度が上がっているし、異能も向上していっている。反転の傾向もないし万々歳だ。

・・・実際は封印しても封印しても気づくと枕元にある魔導書のせいで急速に対精神汚染とかナニかそんな感じのスキルがついたせいだとおもう。

 

最近は魔導書を主人に懐いてどこまでも着いてくる大型犬に脳内で置き換えて考えるようにしている。

 

 




鬼蟲
間桐のエロ蟲から進化した。
刻印蟲より二回りほど大きく力も強く鎧のような甲殻で覆われている。
また頭に鬼の角のようなものが1本生えておりとにかく獰猛。
特別な能力などない脳筋であるがその危険性は高い。イメージはピラニア。

潜蟲
生物の脳内に寄生し宿主の意識を本人に気づかれないまま誘導したり、四季に情報を送ったりする能力がある。生物としての性能は脆弱で寄生できないと数分で死ぬ。
なお外見はハリガネムシで意識を誘導すると言っても何となくレベルしか強制力を持たない。なお本当に恐ろしいのは時計塔で暗闘を繰り返す魔術師たちの間ではよくある手法であるらしく、四季さん自分のこと全力で棚に上げてドン引きした。

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