#■■■■■ 最後の狩人と迷い人【一時休載】   作:7th HeaVen
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うつが再発しかけてお薬増やされたので初投稿です。
筆が……筆が進まぬ……。今までが調子良かったのか最近になって調子悪くなってきたのか、どっちだ……?


4 流れ出る遺志

教会の大男が斧を振りかざしたと思えば、視認できないレベルのスピードで振るわれる爆発金槌が上半身をぶっ飛ばしていく。振りかぶった瞬間すら見せない、圧倒的な技術と膂力が為せる規格外の一撃。うーん、まじぇすてぃっく。老紳士の強さが意味不明な領域に達しているのを見ると、乾いた笑いが出てくる。啓蒙もちょっと上がった。

そんなジェノサイドパーティーを見ながら、オドン教会で交わした会話を思い出していた。

 

 

 

「さっきの戦いを見て思ったんだけど、君は少々生命力に難があるようだね」

「ええ。まぁ自覚はあります」

 

そう、自分にはあまりにもタフネスがない。老紳士の生命力を八〇とすると、自分は一くらいだ。老紳士は片腕がちぎれかけていても平然と戦闘を続けていたくらいの変態でもある。老紳士なら首が取れてもしばらく動きそうだ。

 

「そこで、だ。カインハーストの血を受け入れる気はないかい? 不死身とはいかないまでも、君の生命力も多少は良くなるかも」

「カインハースト?」

「ヤーナムの近くに城を構えてる雪国だよ。ビルゲンワースから禁断の血を持ち出した呪われた血族だね」

 

ビルゲンワースとはつまり医療教会の源流だ。カインハーストはそこの宿敵のようなもの。色々とまずそうな気配がする。

 

「え、それ大丈夫なんですか? ビルゲンワースってことは医療教会の目の敵にされるんじゃ……」

「あー、そうだね。実際されたね。金色のアサガオみたいな兜を被った処刑隊っていうのがカインハーストに攻め入ったことがあるよ」

「え、それカインハーストに生き残ってる人いるんですか?」

「いるよ? なんでも大鎌を携えた狩人がカインハースト側について処刑隊相手に大暴れして、処刑隊の大将の首を討ち取っちゃったんだってね」

 

なんだそのバーサーカー。そんなリアルチートな化け物がいていいのだろうか。いや、身近に老紳士という名の化け物はいるが。

 

「それで処刑隊は一旦壊滅して何回か再編もされたらしいんだけど、攻め入る度に大鎌の狩人がことごとく蹴散らしちゃって、教会側が折れたんだ。で、カインハーストはそのまま残ってるよ」

「えぇ……」

「そんな訳で、血族に加わっても咎める人は誰もいないし、血族になれば普通の人間を超えた生命力を得られる。これはもう血族になるしかないよね」

 

老紳士は一人で結論を出してうんうん頷いていた。いや、まだ何も言っていないのだが。

とはいえ並外れた生命力というのは魅力的だ。自分にはガスコイン神父のような筋力も、老紳士のような技術もない。せめて死ににくくなれば、悪夢から抜け出すのに大きく役立つだろう。

 

「で、どうする? 穢れた血を受け入れるかい?」

「はい。死ににくくなるなら、そっちのほうがいいです」

「よし、話は決まった。そうと決まれば早速行こう! や、カインハーストに顔を出すのは久しぶりだなぁ……」

 

 

 

そんな訳で聖堂街に来た訳だが、大聖堂へ向かうための道は完全に閉鎖されていた。

 

「閉まってる……」

「あ、それは別に大丈夫」

 

そう言って老紳士は懐から白い布切れを取り出した。門が誰の手も借りず、ひとりでに開いていく。

 

「なんですか? それ」

「医療教会の狩長の証だよ。獣狩りは終了しましたって意味」

「勝手に使ったら駄目なやつじゃないですか……」

「いいよ別に。医療教会なんてクソ喰らえだ」

 

あ、丸メガネの向こうの目が一瞬で腐った。ただならぬ確執があるようだ。老紳士が紳士で無くなりかけている。

 

「……行きましょうか!」

 

微妙な空気を無理やり仕切り直して先へ進ませる。

 

「おっと、あれは僕が。君は使いの方を頼むよ」

 

二人の教会の大男を見つけるなり、木っ端微塵に爆砕すべくパイルハンマーで門の錠前をぶっ壊しにかかった老紳士を脇目に捉えながら、火炎放射器を構えた教会の使いと対峙する。

相手が火炎をばらまくが、その動きは非常に鈍い。数度のステップによって自分からみて右側面に立ち、まずは斧の一撃。えぐるような一撃は容赦なく腕の肉を骨から削ぎ落とし、杖を取り落とさせる。これで近距離攻撃は封じた。

慌ててこちらに噴射口を向けるが、それは悪手。この間合いなら、充分頭に斧が届く。思い切り斧を振り上げ、相手の首筋に刃を叩き込んだ。

ぷちゅりと柔らかい管が切れるような音と共に首から血煙を噴き出し、教会の使いは倒れ込む。だが、まだこいつは死んだわけではない。

確実に殺すために斧を長柄斧に変形させ、傷へもう一度振り下ろす。肝心の使い手の筋力は乏しいが、重い斧は自重で深々と食い込み、首を半ばほど切断した。

 

斧を戻し、荒くなった息を整えながら老紳士のもとへ向かうと、ちょうど二人目の大男をひき肉に変えたところだった。パイルハンマーで門をぶっ壊すのはどうかと思うのだが。老紳士は医療教会をどれだけ嫌っているのだろうか。

 

「早かったね」

「向こうの頭が悪くて助かりました」

 

爆発金槌の血肉を払いながら進む老紳士に追随し、広場を抜ける。この先の大階段を越え、大聖堂の目の前で左に曲がった先がヘムウィックの墓地街。そこにカインハーストから迎えが来ると聞いていた。

だが、再び大きな門が行く手を阻む。老紳士が壊した観音開きのものと違い、垂直に開くタイプだ。これでは壊しようがない。

 

「僕が門を持ち上げるから、くぐって向こう側のレバーを引いてきてくれるかな?」

「え!? あ、はい……」

 

なんというか、もう諦めた。グッバイ正規ルート、ビバ脳筋攻略。

化け物じみたパワーで持ち上げられた門をくぐり、レバーを引く。ずっと教会の使いがこっちを見てくるのが怖くて仕方がなかった。

仕掛けが作動して門が開ききったのと同時に、老紳士が恐ろしい速度で爆発金槌を教会の使いに叩きつける。体をくの字に曲げたそれは階段へ叩きつけられ、二、三度バウンドしたっきり動かなくなった。背骨が砕けたのだろう。

その隙をつこうとしたもう一人はパイルハンマーの一撃によって胴体に大穴を空けられ、石畳とキスをしている。老紳士から目で合図された自分は、その教会の使いの首に長柄斧の一撃を加え、とどめをさす。

奥から走ってきた犬は短銃で吹き飛ばしてから斧で頚椎をへし折って終わりだ。

この状況に適応できていることは素直に喜んでいいものなのだろうか。すっかり生き物を殺すことに対して無抵抗になってしまった。そして、人殺しにも。幾度となく味わってきた血の味が口の中に広がるような気がした。

 

大階段の上の方に教会の大男が見える。その少し手前には大鎌を持った教会の使いと銃を持ったのがそれぞれ一人づつ。老紳士は大男を。自分は使いを。

老紳士が大男に肉薄し、挨拶がわりに未点火の爆発金槌で一撃。たったそれだけで大男は崩れ落ち、仰向けに倒れる。そのまま老紳士は大男の頭を叩き潰した。

 

残るは二人の教会の使い。まずは銃持ちを殺す。階段を一気に駆け上がる。銃を向けてきたが、向こうは照準がまるで追いついていない。発射された弾丸は階段の手すりに穴を空けた。

斧を変形させ、頭へ思い切り振り下ろす。教会の使いはその白装束を自らの鮮血と脳漿でまだらに染めた。

倒れ込んだ教会の使いから斧を引き抜くと、背中が急にざわりとした。そのまま本能に従って前転で回避。真っ赤な焼きごてを押し付けられたような一条の痛みが背中に走った。

振り向くと、そこには血に濡れた大鎌を振り下ろした姿勢の教会の使いが一人。背中の傷は浅いとは言えないが、そこまで深くもない。やれる。

 

大鎌が再び持ち上がる。リーチはかなり長い。下手に引いたらまた当たる。

教会の使いが大鎌を振り下ろした瞬間、そのリーチの内側に入り込むように斜めに踏み込む。ごうっと大鎌が風を切る音を聞きながら、斧の変形を解き、銃弾を眉間に叩き込む。

水銀弾の強力なストッピングパワーで大きくのけぞった教会の使い。その無防備な首に、両手に持った斧を叩きつける。

教会の使いは首から血煙を噴き出し、絶命した。

 

辺りを見回すと脇道から教会の使いたちが三人、新たに現れた。この人数は無理だ。老紳士に目で合図を送る。

 

意図を正確に読み取った老紳士はこちらへ駆け寄り、爆発金槌を薙ぎ払う。三人の教会の使いは派手な轟音と共に吹き飛ばされた。老紳士はそのままこちらの体を抱えて階段を駆け上がる。

 

「倒さないんですか?」

「時間がもったいないからね。あのままだといくらでも出てきそうだ」

 

ちょっと引くくらいのスピードで階段を上り、大聖堂の目の前で急制動。左に曲がり、陰気な森へ入っていく。開けた場所に出ると、やっと老紳士が地面に体を降ろしてくれた。

そして降ろすと同時に太ももへ赤い謎の注射をぶすり。

 

「なんですかこれ!?」

「輸血液」

 

聞いたことの無い言葉に思わず眉をひそめたが、それがどんなものなのかすぐに分かった。

強烈な何かが頭に流れ込んでくる。これは……そう、言葉に表すなら生きる意志といったところか。

背中の痛みがみるみる引いていく。狩装束の切り裂かれた場所から背中に手を当てると、つるりとした背中の感触がした。傷が消えている。

 

「この悪夢、正確に言えば君が認識している世界は、君の脳が作り出すものなんだ。精神が現実に影響を及ぼしていると言ってもいいね。僕ら狩人は遺志によって体を動かしている。輸血液は言うなれば、生きる力を得る薬さ」

「ということは……今まで死んでも生き返れたのは、死を受け入れていなかったからってことですか?」

「そう、その通り。死を受け入れた瞬間、本当の終わりがくる。気を強く持つんだよ」

「はい」

 

自らの精神が強く影響する世界。なるほど、悪夢というネーミングはぴったりだ。

 

「この先は少し危ないから、僕がいいと言うまでここで待っていて」

 

老紳士はそう言うと爆発金槌片手に飛び出していった。パイルハンマーも同時に装備しているのによくああまで動けるものだ。

 

しんとした墓場に爆発音と破裂音がこだまする。獣人が撃っているとおぼしき断続的な銃声も聞こえるが、それも爆発音が鳴り響く度に回数が減っていった。

やがて音は完全に止んだ。

 

「もういいよ!」

 

老紳士の声が聞こえる。なんの苦労もなしに突破できてしまった。コレジャナイ感がむくむくと顔を出す。

 

気を取り直して老紳士と共に先へ進む。塀に取り付けられた粗末な木の扉を開けると、先ほどの森と同じ空気を感じる墓地街が広がっていた。

扉を開けてすぐの灯に火を灯し、先へ進もうとすると背中に淡い痛みが走った。

 

「痛っ……」

 

痛みはどんどん強くなっていく。焼きごてを押し付けられたような一条の痛み。この痛みを知っている。教会の使いに大鎌で斬りつけられた時の痛みと全く同じだ。

背中に手をやると、ぬるっとした液体の感触がある。そして浅くえぐれた柔らかい溝。間違いない。治ったはずの傷が、開いている。

 

「大丈夫かい?」

「治ったはずなんですけど……」

 

老紳士が背中の傷を見ると、小瓶に入った血を注射器に移した。

 

「まさかとは思うけど……試しにこの血を入れてみよう」

 

注射器が腕に刺さり、血が体内に入っていく。背中の痛みはひかないが、代わりに奇妙な感覚が体を支配する。

これは……記憶だろうか。別人の記憶が頭に流れてくる。記憶が二つ存在するという奇妙な状態だ。だがそれは一時的なもので、その奇妙な記憶は徐々に薄れていき、やがて完全に消えた。

 

「どうだい? 誰かの経験とか記憶が頭に入ってきたと思うけど。消えたかい?」

「はい……だんだん消えてなくなりました」

「やはり……君はおそらく、遺志を留めておけない体なんだ」

「えっと……つまりどういうことですか?」

「輸血液が効かなければ血の遺志を力に変えることも出来ないってことだよ。こんなケースがありえるんだろうか……」

 

原因はなんとなく分かっていた。

まず、ここに来るまではヤーナムなんて都市も、獣の病なんて奇病も、血の医療なんて物も知らなかった。普通なら少しはテレビなり新聞なりで報道されてもおかしくないのに。

何よりもここは文明レベルが低すぎる。今どき、どんな古都にもコンビニくらいあるし、電気も通っている。そこに住む人々も現代の洋服を身にまとっていた。絶対に現代の文明の姿があったものだ。

そして何度死んでも生き返るなんてことは絶対にありえない。

 

そこで第一の仮説を考えた。自分の与り知らぬところで事故か事件に巻き込まれ、昏睡状態に。そして今見ている光景は全て夢だという説。

この説は最も信ぴょう性があるように感じられるが、これは一番ありえない。

夢には二種類ある。自分が夢の中で何かするのを、ただ見つめるパターン。そして鮮明な意識を持った状態で、自分の意志で自由に動き回れるパターン。いわゆる明晰夢というやつだ。

今見ている光景が明晰夢だとするなら、そもそもこんな自分が嫌だと思う事態にはなっていない。夢の中で目を閉じてしまえば、そこで夢は終わるはずだ。だが、いくら目を閉じ耳をふさいでも夢から覚める気配はなかった。よってこの説はありえない。

 

そして第二の仮説。まったくもってありえない常識外れな話だが、今の所これしか状況を説明できるものはない。

自分がなんらかの理由によって()()()()()()()()()()()という説だ。

突拍子もないことを言うようだが、この現代の科学文明を全く感じさせない都市が存在する意味はこれで説明できる。血の医療も、獣の病も、全て異世界だからこんな事象がまかり通っていると考えれば説明はつく。

この世界の人と自分の体の構造が違うと考えれば、自分が遺志を保持できないのも頷ける。

 

「……あの」

「なんだい?」

「話しておかないといけないことが、あるんです」

 

全てを老紳士に話す時が来たのかもしれない。きっと信じてもらえないと思うが、これはいずれ話さなければいけないことだ。

 

 

 

 

 

 

「電車ねぇ……黒獣の力をそんなことに使うなんて、ずいぶん進んだ世界なんだね」

「こくじゅう?」

「ああ、黒獣パールといってね。電撃を放つ獣がいるんだよ」

「えっ!」

「ちなみに骨だけなのに動くよ」

「なんなんですかそのデタラメな獣……」

 

結果から言うと、老紳士は話を信じてくれた。彼いわく、遺志を保持する力はどんな生物も(それこそ獣だって)持っており、遺志を保持できない生き物なんて存在はありえないのだという。信じられないが、信じるしかないとのことだ。

そしてカインハースト行きの馬車に乗ってから元いた世界の話をしたところそれが大ウケし、今に至る。

 

「ずいぶん遠いんですね、カインハーストって。もうどれくらい走ったか分からないですけど」

 

馬車の小さい窓から外の景色をのぞき込む。木々が右から左に流れているだけの、なんてことはない光景だ。

 

「まぁ、そうだね。僕も正確な距離は分からないけど、ヤーナムじゃめったに見ない雪が一年中降ってるくらいだし、かなり遠いんだろうね」

 

老紳士がのんびりとパイプをふかしながら答えた。パイプを開けられた窓に向けているあたり、それなりの気遣いはしているのだろう。彼が吸っているのはどうも煙草ではないらしく、嗅いだことの無い不思議な香りがする。言葉にするなら、そう。月の香りとでも言えばいいだろうか。狩人の夢に咲く花もこんな香りだった。

 

どうも馬車に揺られていたら眠くなってきた。一度死んだので体調は万全だが、精神的な疲れが溜まっていたのかもしれない。

大きな欠伸が漏れた。まぶたがだんだん重くなってくる。

 

「寝ているといい。まだまだかかるからね」

 

老紳士の言葉に甘えて今は眠っておくとしよう。ヤーナムに戻れば休めなくなる。

 

「はい」

 

そう返事をしたかしないかのうちに、死の間際に訪れる睡魔とはまた違った、穏やかな優しい眠気に身を任せた。




ブラボ世界と現世は違う世界だからね、しょうがないね。
というわけで回復縛り&レベルアップ縛り&買い物縛り&武器強化縛りです。やったね主人公ちゃん(くん)! 死に放題だよ!
え、この子が転移した理由? この世界を覗いている我々上位者が面白そうだと思ったから転移させただけです。つまりただの娯楽目的。
次回更新予定日は未定です。とはいえ間違ってもエタったりしないのでご安心を。

追伸
うつの病状によってはだいぶ投稿が遅れてしまうかもしれません。本当に申し訳ない(メタルマン並の謝罪)







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