仮面ライダーアクセルシャイン   作:雪兎サンサン
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3話

 季節は11月になろうとしていた。

 勇樹はあの日から変身をすることは無くなった。

 

 仮面ライダーの帰還を皮肉的に願っての事だった。

 

 勇樹が街を守らなくなってから風都の治安は急激に悪化していた。

 

 ガイアメモリは高級品とされていたが、新しい組織作ったマスカレイドと言うメモリは

 死なない&低価格が売りらしく

 これにより街の不良等が遊び半分でマスカレイドメモリを手にし暴れているのだ。

 

 そして例により、それに便乗して悪さを働く奴ら

 警察は異形の怪物とそれに便乗し犯罪を犯す街の住人達にてんてこ舞いだった。

 

 テレビをつけると連日のように事件が起こり、連日のように人が死ぬ。

 ニュースキャスターがそれらを沈痛な面持ちで伝えても勇樹には響かなかった。

 

 むしろ、いい気味だと感じていた。

 テレビのニュースで怪物殺されたと言うニュースを見ると自然と笑いがこみあげてくる。

 

 ざまぁみろ。いい気味だ。

 

 その心の高揚は止まらなかった。

 

 一日中引きこもっていたが、食料の限界が来て買い出しに行く

 真昼間だと言うのに路地裏ではカツアゲや強姦行為が行われていた。

 

 その光景を素通りしてスーパーに立ち寄りコーンフレークを大量に購入し事務所に帰る。

 

 コーンフレークを買って事務所に帰ろうとしたら男がドーパントに襲われていた。

 その男は後ずさって目に止まった勇樹に助けを求める

 

「ききき、君っ、助けてくれっっ!!」

 

「なんでお前を助けなきゃいけないんだよ。離せクソリーマン!助けてほしかったらな、仮面ライダーに頼めよ」

 

 足を掴んできた男の手を乱暴に振り払うと事務所の方向へ歩く

 その瞬間、「ぎゃぁああああああああ」と言う断末魔とグシャリと嫌な音がした。

 

 そして、人がまた一人死んだ。

 

 そして彼はニュースを見ながらコーンフレークを口に運んだ。

 

 _____

 

 《おいおい・・人が死んでるニュース見ながら飯食うってどういう神経…》

 

 記憶を眺めていた翔太郎が勇気を睨みながら言う。

 

 《助けを求めてる人まで踏み躙る事ねぇだろ!?》

 

 《彼はもう街の為に戦うのが嫌になったんだよ。年は明けたが、彼は16歳、まだ青少年として心身の成長時期にあり、それに必要なコミュニティーを失っている。

 こうなっても仕方がない》

 

 《仕方がないって…言ってもよ》

 

 《それにこれは"過去"だ。現在(いま)は違うだろう?》

 

 そう話していると事務所のカレンダーがめくれた。

 

 12月になった。

 

 12月になり、場面はコンビニに変わる。

 あんパンやカレーパンやスナック菓子を購入して勇樹はコンビニを出て路地に差し掛かる

 すると路地裏から衣服が破かれたようにボロボロの少女が勇樹にぶつかってきた。

 

(強姦か___。)

 

 勇樹は一目でその女が何をされそうになっていたかが分かった。

 女は泣きながら勇樹に抱きついてきた。

 

 女は自分と同い年のように見えた。

 

「た、たすけ、助けて…怪物が。」

 

(怪物ってドーパント態でヤる気かよ。しかも真昼間の外、すっげぇ悪趣味)

 

「怪物なら仮面ライダーに頼めよ。俺には関係ない。離れてくれ」

 

 力任せにその女を少女をはがすと突き飛ばして立ち上がる。

 

 その少女はその瞬間、絶望にも似たような表情を見せた。

 

「おねがいだから待って!!」

 

 コーヒーにミルクを落としたような色の髪色に肩までのストレートの少女は叫んだ。

 

 その声に勇樹は足を止める。

 

「まだなんかようか?そんな暇あったら警察に保護してもらえよ」

 

「た、助けてくれたら言う事聞くからッ!貴方の言う事なんでも聞くからッ!お金でも身体でも好きにしていいからたすけてぇ!」

 

(・・相当テンパってるな。この女。)

 

 涙目で自然に上目づかいになり、衣服はボロボロで「なんでもする」と懇願する少女。

 人が人なら言葉巧みに別の路地裏に連れ込んでそのまま別の恐怖を味遭わされるだろう。

 

(まあ、容姿は悪くないし、俺も漫画とか読んでて一回はシテみたいと思ってたけど…)

 

 顎に手を当てて考えていると少女の背後にタコのような容姿のドーパントが居た。

 

「お嬢さ~ん。子作りの時間ですよぉ~~ゲヒヒ」

 

 ピンク色で手に吸盤がついて顔には顎髭のように小さな八本の足がついて

 キス口な人身のドーパントの出現に勇樹は顔を顰める。

 

(アレと同類になりたくねぇ・・。つか、ドーパント態で襲うとかマジありえねぇ)

 

 タコ・ドーパントはゆっくり少女に近づいた。

 

「いやっ、こ、来ないで!あ、あたし…ぜ、絶対にいやよ。」

 

 近づいてくるタコドーパントへそう少女が言う

 

「なんでだ。俺は夫になる男だろう?夫は妻の身体を好きなようにしていいんだ。なあ、ここでヤろうぜ?」

 

(っとーに変なのに巻き込まれたな。)

 

 さっさと逃げればよかった。勇樹は後悔していた。

 今、勇樹はその少女側に居てタコドーパントと顔を突き合わせている形になっている。

 下手に動けば自分にまで被害が及ぶ。

 

「あ、あたし、あたしはこんな…こんな運命いや・・どうしてこんな・・・」

 

 下品な笑い声を浮かべながら一歩一歩じわじわ近寄ってくるタコドーパントに怯え、そう少女は呟いた。

 

(こんな運命…ね。確かにごめんだな。)

 

 そう呟く少女を冷めた感情で眺める。

 とりあえず、タコの挙動が自分にとって安全だと感じられるまで此処に居よう。

 

「ひっ!?いやぁあああ__ッッ!」

 

 じわじわと迫っていたタコドーパントだったが一方は下がり続ける為、堰を切らし少女の足に自らを絡め引っ張ろうとした。

 その引っ張り方も一本釣りのようなものではなく手繰り寄せるような厭らしい手つきである。

 

「いやだ!いやだぁ!助けてっ・・助けてぇ誰かぁ!!」

 

 少女はパニックになって絶叫し勇樹がいるほうに手を突き出す。

 

 勇樹はその光景を眺めていた。

 

「仮面ライダーが居たら、助けてくれたかもなぁ。だが仕方がないよな。今この風都には仮面ライダーと呼ばれる英雄はいないんだから。お嬢さまはさっきからそこの男に助けを求めてるみたいだが、誰も助けにはいろうとするワケないだろう。俺は異形の怪物。そしてお前は「仕方がない犠牲」だ。諦めて一つになろう」

 

 タコ・ドーパントはどうやら自分を見逃してくれるらしい。

 まあ、ドーパント的には二人の世界に入りたいわけだ。当たり前と言えば当たり前だろう。

 

「まあ、そのタコが正しいよ。御嬢さん、助けを呼ぶなら仮面ライダーに頼んでくれ、んじゃあな。そのタコと仲良くやってくれ」

 

 勇樹は女の悲鳴を背に聞きながら歩き出す。

 

「ま、待って!お願い!!」

 

 少女の必死の声から遠のいてはふと足を止める。

 

(まあ、警察は呼んでおくか)

 

 近くに巡回中の警官を発見した勇樹はその現場へ警官を案内しようとする。

 自分が仮面ライダーを辞めてから警察を呼んだのはこの日が初めてだった。

 _______

 

 

 警官は無線で応援を呼び、勇樹に引っ張られながら現場に到着する。

 まだ、その少女とドーパントの抗争は続いていた。

 

(無事、か。)

 

 

 その様子を見て勇樹は安堵の息をついた。

 せっかく呼んだのに殺されていた。では何とも後味が悪い。

 

「止まりなさい!そこの怪物!!」

 

 その警官は勇敢だった。銃を構えタコ・ドーパントに発砲する。

 

(これで、安心だな。)

 

 ドーパントは突然の銃声とパチンコ玉の当たったような痛みに怯み少女から手を離した。

 その隙に少女は地面を這いずり離れようとする。

 

 勇樹は勇敢な警官の行為に感謝しながら少女の様子を見て今度こそ「帰ろう」と踵を返す。

 その瞬間、勇樹の横を何かが掠めた。

 勇樹はそれに反射的に振り返る。

 勇樹が振り返ると警官はコンクリートの地面にめり込んでいた。

 

「お楽しみを邪魔するなよ、ったく…」

 

 そう呟くとタコ・ドーパントは地面にめり込んだ警官を持ち上げた。

 ボコリとコンクリートの欠片が落ちる音がしたかと思うと警官は糸の切れた人形のように動かず、垂れ下がっていた。

 

「っ_きゃぁああああああ__ッッ!!」

 

 ゆっくり離れようとしていた少女だが、勇樹と同じくその行動に足を止めていたらしい。その警官の姿を見るなり絶叫した。

 それと同時にその警官が呼んだ応援がやってくる

 

「アイツの行為を無駄にするな!撃てぇええ!!」

 

 パトカー2台に4人ずつ、計8人が応援へ駆けつけた

 

 その8名は勇樹を背にタコ・ドーパントに向かい銃を放つが、次の瞬間に1人がコンクリートに口づけをし絶命していた。

 

「ひゃっひゃっひゃ!女犯すよりこっちの方がイキそうだぜぇ!!」

 

 1人、2人…4人。30秒とかからず、7名が死んだ。

 

「う、うわぁぁっっ!」

 

 7名が死に、若い警察官が残された。

 若い警官はドーパントに怯え銃を乱射したが、首を持ち上げられる

 

「ああ・・ぁああ」

 

 警官は徐々に高くなっていく高度に悲鳴を上げた。

 

「ほーら、高い、高い。お巡りさんは泣き虫でちゅね~?」

 

 タコ・ドーパントは警官をあざ笑うと頭から落とした。

 

「ぐぎゃ」

 

 その警官はそんなカエルが潰れたような声を出して動かなくなった。

 

 さっきまで動いてた人間、9名が1分と経たないうちに死んだ。

 勇樹はその光景に足が竦んで動けなくなっていた。

 

 周りの地面は血だらけで

 まるでSFホラー映画のワンシーンのようなグロテスクな光景が拡がっている

 

(動け、ここから逃げなきゃ、俺も殺される…!)

 

 あのドーパントは欲を殺しで満たすことに目覚めた。

 間違いなく此処に居れば殺される。

 

 勇樹は手に汗を感じた。

(呼吸1つ、鼓動1つが仇になる。呼吸をするな…音を立てるな。)

 

 あの少女が殺されるのは仕方がない。

 

 タコ・ドーパントは今は快楽の余韻に浸っているのか動かない

 

(今だ!)

 

 勇樹は駈け出そうとした

 

 悲鳴が聞こえても振り返るな。逃げろ、逃げろ!

 

「うわぁぁぁん!」

 

 踵を返して駈け出した勇樹の耳、あの少女のものじゃない声が聞こえた。

 

 7歳くらいの女の子の泣き声だ。

 

 そう、その道は通学路になっていた。

 時刻はまだ正午位であるが、新入生は帰るのが早い。

 

「う、そ・・だろ?」

 

 余韻に浸っていたタコは帰宅途中の女の子を引きずりこんだのだ。

 

「うわぁぁぁん!ママぁぁーーー!!」

 

「いいねぇ〜もっと泣いてくだちゃい」

 

 今、ここでもう一度踵を返し走れば完璧に逃げられる。

 

 だが、勇樹の頭にさっきの惨劇が蘇る

 

 あの女の子も…ああなる

 

 自分が戦えばあの子は助かるだろう

 

 自分が護身用に持ってきているロストドライバーとメモリを使えば

 

 簡単に

 

 けれど、自分は街を守りたくないと底から思っている。

 自分が怪我をしてまで誰かのために戦うのは馬鹿げている。

 

 どうせ復活しても

 街は自分にレッテルを貼るのだから

 

また偽物呼ばわりされるのに…

 

 でも、目の前で命を失いそうなのはまだ未来ある子供だ。

 

 自分を犠牲にするか

 子供を犠牲にするか

 

 

「っっ…仮面ライダーのバカやろぉお!」

 

 

 追い詰められた勇樹は空に叫んだ

 

 

「なんで、何で助けに来てくれないんだよ!いっぱい人が殺されてるのに……怪物が暴れてるのに何で来ないんだよッ!俺のせいなのか!?俺がアンタの真似事なんかしたから!」

 

 風都のピンチを救う仮面ライダーはこんな状況でも現れない。

 

「っ…俺の馬鹿野郎!悩んでる場合じゃないだろ!?早く変身しないと…あの子が…あの子が…!あの子を助けなきゃ!」

 

 勇樹は震えながらポケットからロストドライバーを取り出し腰に巻き付け

 最初に手に触れたメモリ、ジョーカーを取り出した。

 

 

(早く…早く…!!)

 

 ジョーカーメモリを始動させる

 

【JOKER】

 

 始動音がなり勇樹はメモリを震える手でスロットに挿し込む

 黒い粒子が勇樹の体を包むがそれは電流となり勇樹の身体を襲った。

 

「がああっ!?」

 

 スタンガンを当てられたような電流の感覚に勇樹は目を白黒させる

 

 

(な、なんだ……!?)

 

 

 ジョーカーメモリは変身回数こそ少ないがちゃんと変身できていたはず…

 

 不調ならばとサイクロンメモリを取り出し同じようにセットするが仮面ライダーの形状を構成することは無かった

 

(な、なんでだ!?は、早くしないと!)

 

 ルナ、ヒート、メタル、 トリガー

 

 すべてを試したが、すべて変身できなかった

 

(…へ、変身できない?そ、そうだアクセル・・)

 

 自分をいつも救ってくれていた

 自分の憧れのヒーロー

 

 形状こそ違うものの勇樹はそれにすべての希望を賭けた。

 

 アクセルメモリはそんな勇樹の希望を振り切り始動音が鳴ると同時に粉々にくだけ散った。

粉々に砕けたメモリは風にさらわれ溶けて消えた

 

 勇樹は戦える力を失った。

 

 運命は仮面ライダーの力で自分の過ち(つみ)を償うを禁じたのだ

 

 

 そしてそれと同時に

 女の子の身体は地面へ叩き落とされた。

 

 

「…ぅ…あ…ぁああ…あぁああッッ!」

 

 

 勇樹は目から涙を流した

 

 自分が最初っから少女を救い出していたら

 

 あの女の子は…助かっていた

 

 

 自分が最初っからあの少女を助けていたら

 

 警官は死ななかった

 

 

 自分が生身で体当たりしていたら

 

 あの子は……

 

 

 そしてタコ・ドーパントはあの少女に牙を忍ばせようとしていた

 

 

「やめろぉおお___ッッ!」

 

 

 勇樹はアトラスフォンでリボルギャリーを呼び出すとタコ・ドーパントに全力でタックルし、リボルギャリーに押し込め、鳴海探偵事務所へと目標を設定し蓋を閉じ、発進させた。

 








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