オーバーロード ~死告天使と不死の王~   作:海のオッキーナ
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プロローグ

「ふわあー・・・。」

 

辺り一面暗い部屋で1人の女性が目を覚ます。

カーテンを閉め切っていると言うのもあるが、

時刻は既に夜。

決して空は見えないが・・・それでも光と言う光は存在していなかった。

 

「って、しまった!!

超貴重な休みなのに惰眠を貪っているだけで終わりそう・・・。」

 

現在の時刻を確認した女性がやってしまったとばかりに口にした。

女性の仕事・・・それは。

様々なキャラクター等に声を吹き込む・・・声優である。

本来は収録作業があったが権利者都合により別の日になった為、

女性は数週間ぶりくらいの休暇を取っていた。

 

「まあ、やっちゃったものは仕方が無いか。 ・・・さて。」

 

一度溜息を吐きながらも思考を変えた女性は、

己に届いているメールの確認作業を始める。

 

「(相変わらず凄い量のメールだなぁ、・・・って。)」

 

次々と受信しているメールを確認している中、

女性はある一つのメールを見て手が止まった。

 

「(モモンガさんからだ、うっわ懐かしいなぁ!!)」

 

メールの差出人を見た女性は・・・懐かしさのあまり少しだけ気分が高揚した。

女性が見たメールの内容はこういったものだ。

 

 

差出人

モモンガ

 

内容

突然の連絡すいません。

ご存知かもしれないですが、

今日はユグドラシルのサービス終了日なんですよ。

お忙しいのは分かってはいるんですけど・・・、

どうせでしたら最終日くらい皆さんで集まりませんか?

何時もの場所で待っています。

 

 

 

「・・・そっか、ユグドラシル・・・今日で終わりなんだ。」

 

メールの内容に目を通し終えた女性は目を閉じつつそう呟いた。

ユグドラシル。

嘗て女性が自由になる時間を全てつぎ込んでまで遊んだゲーム。

そんなゲームが今日で終了するらしい。

 

「・・・うん、このまま何もしないで終わってもアレですし。

最終日くらいは会いに行こうかな!」

 

しばしどうするか女性は悩んだ後・・・、

もう随分と使用していない機械を手に取った。

この機械を頭から被り、

暫く待つと女性の体は全く別の物になり、ゲームの世界へとダイブする。

意識は仮想空間にありながらも・・・現実空間に居るかのように遊ぶことが出来る。

それがDMMORPGと呼ばれるゲームの特徴だった。

 

「って、なっが!?」

 

軽く埃を被っていた機械を頭に被り、

随分と長い間起動していなかったユグドラシルを起動した瞬間、

その長すぎるアップデートの時間に思わず1人でツッコミを入れてしまった。

 

「(うーん・・・これ間に合うかなぁ。)」

 

時刻は既に22時を超えている。

日付が変わると共にサービスが終わるのであれば残りは2時間。

多少の話をするのであればあまり時間の猶予は無い。

 

「早く、早く!」

 

逸る気持ちを抑えつつ女性は大人しくただ待つ。

ここで焦った所でアップデートの時間が早くならないと分かっているからだ。

 

「・・・よし、終わった!!」

 

一時間程だろうか?

漸くアップデートが終わり・・・女性の前の前にユグドラシルの文字が見えた。

 

「じゃあ・・・ダイブ!」

 

ゲームスタートのキーとなる言葉を女性は発した瞬間・・・、

女性の五感はゲームへと入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アレ?」

 

やっとログイン出来た私は、

ログアウトした場所である円卓の間で目覚めたけど・・・周りには誰も居なかった。

 

「おかしいなぁ、ここに居るかと思ったんだけど。」

 

そう。

私の所にきたメールの内容だと・・・何時もの場所に居るって書いてあった。

何時もの場所という事であればここの事だと思ったんだけど・・・。

 

「・・・あ、そうか。」

 

少し考えたら直ぐに分かった。

ここは確かに何時もギルドの皆と話をしたりしていた場所。

だけど・・・該当する場所はもう一個あるじゃないか。

モモンガさんの性格を考えたら・・・きっとそこに居ると思う。

 

「そうと決まれば善は急げ! 早速向かいましょ!!」

 

周りに誰も居ない事に若干気が抜けたのか、

この姿で居る時の声ではなく・・・素の声に戻ってしまった。

 

「っと、いけないいけない。」

 

軽く咳払いをしてから調声して・・・と。

 

「・・・我が名はハサン・サッバーハ、幽谷の淵より暗き死を馳走しに参った。」

 

良し、完璧!

今の私はどこか甘ったるい声ではなくて、

それはもうナイスで抜群にダンディーな声になった!

いやぁー声優の仕事やってて良かった!!

 

「・・・しまった、もう時間が無いではないか。」

 

視界の端に映る時間を確認した瞬間・・・あまり残されていない事実を目にした。

急いでいけば少しだったら話が出来る余裕がある筈!

そう思い・・・恐らく玉座の間に居るであろうモモンガさんの元まで慌てて走り出した・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在時刻・・・23:59

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

もう時間がないよおおおおおお!!

私は身に纏う鎧からガチャガチャと音を立てつつ慌てて走っている。

っていうか広すぎ!!

誰だ! こんな広さにしたの!! ・・・私達だ!!

 

「って、ノリツッコミしている場合か!!」

 

調声したままではあるが、

それはもう見事なノリツッコミを披露した私は、

本当にギリギリのタイミングで玉座の間の扉へと到着した。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・!!」

 

仮想空間だけど何故か息を整えつつ目の前の扉を開けようとしたが・・・。

その扉を開けなかった。

無論システムのバグとかではなく、

勝手に居なくなってしまった私を・・・モモンガさんは許してくれるかどうか。

そう思ってしまったため、扉を開ける事が出来なかった。

もう少し早く起きてれば・・・もう少し早くメールを見ていれば・・・、

もしかしたらまたプレイするかもしれないと思いこまめにアップデートしていれば・・・、

そんな思いばかりが私の胸に去来する。

 

現在時刻・・・23:59:55

 

しかしそう思ったとしても・・・時間は帰ってこない。

そして同時に・・・時間とは無常に過ぎていくもの。

もう私に・・・時間は残されていなかった。

そして・・・現在時刻 24:00

ユグドラシルのサービス終了時間が・・・来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉座の間の前でサービス終了時刻を迎えてしまった。

それなのに・・・未だ私の体はユグドラシルにおける私自身である初代ハサン・サッバーハの者だった。

と、いうよりも・・・未だに玉座の間の前に居る?

どう言う事?

サービス終了時刻が延期になった?

いや・・・それならそれで絶対に告知が来るはず。

 

「実は告知していたり・・・?」

 

私はそう思ってコンソールを開いてお知らせ一覧を確認しようとしたが・・・、

コンソールの呼び出しを行ってもまったく反応が無かった。

 

「コンソールが出ない・・・どう言う事?」

 

・・・コンソールの呼び出しがダメならGMコール!!

あの運営にこの事態の説明を要求しないと・・・!!

 

「・・・ダメ、なのか?」

 

そう判断した私はGMコールをしてみるけど・・・結果は同上。

GMコールすら反応が無かった。

 

「(これは・・・一体何がどうなって・・・!?)」

 

何が何だか分からない・・・!!

この事態に対して考えが纏まらない私は・・・その場でずっと立ち尽くしていた。

・・・少しして、玉座の間の扉が開いた。

 

「・・・なっ!!!!!」

 

完全に開いた扉の向こうから驚愕の声が聞こえてきた。

そこには、たっちさんが作ったNPCである・・・セバス・チャンが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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