鍛冶師の妖精   作:みかんブリ
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エルスの【ステイタス】を少し変更しました。
正直、スキルの魔力の経験値上昇とか、そんな細かいところを付けてレアスキルにするのもアレだったんで。別に要らなくね?と思いました。


怪物祭3

「行くぜ、【投影、開始】(トレース・オン)

 

 

 そんな呪文をエルスが口にした瞬間、彼の手に二本の剣が現れた。その後も、エルスの周りに次々と剣が出現していき、初めて見る光景にレフィーヤ達は目を剥いた。

 

 

「これがエルスさんの魔法……?」

 

「ああ、武器を複製する能力、それが俺の魔法だ」

 

 

 超短文詠唱と思われる魔法に破格の能力、レフィーヤ達の驚愕が冷めやらぬ中、剣が独りでに浮遊し始める。これが【奇術師】本来の戦い方、無数の剣を投影し、それをスキルによって操作する。

 

 

「ティオナ、ティオネ、武器を渡しておく。壊れたらまた創るから、どんどん攻めていいぞ」

 

「うわー!すごいね、ティオネ!」

 

「ほんとね……遠征の時にこれがあれば……」

 

 

 

 武器を手渡された二人は、黄緑色の食人花に向かっていく。アイズもやや遅れて走り出し、エルスはレフィーヤの前に立った。

 

 

「敵は……8体か。レフィーヤ、詠唱を敵がこっちに来ても気にせず続けろ」

 

「はい!【――ウィーシェの名の元に願う】」

 

 

 エルスからの指示を受けたレフィーヤは、詠唱を始めた。まだ、レベル3でありながら【ロキ・ファミリア】の中核にいる、彼女にだけ許された『魔法』。使用できる魔法は3つまでという常識を打ち破る、前代未聞のレアマジック。こと使用出来る数だけでいえば、リヴェリアをも超える彼女についた二つ名は【千の妖精(サウザンドエルフ)】。未知なるモンスターにエルフの少女が立ち向かう。

 

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ】」

 

 

 魔法を使用すれば食人花に感知されるが、レフィーヤに襲ってこないように、エルスが投影した武器を、モンスター達に向けて放つことで防ぐ。魔力を帯びた彼の剣に反応した奥にいる個体は、浮遊し攻撃してくる剣を触手で迎撃する。手前にいる個体は、近くで魔法を使用しているエルスに向かってくるが。

 

 

「させないよ!」

 

「エルス……私にも武器ちょうだい、壊しちゃった」

 

 

 武器を手に入れたティオナ達がモンスターに襲いかかる。第1級冒険者の力を存分に発揮した、ティオナの大剣の横薙ぎは食人花の触手を斬り捨てていく。

 

 

「【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ】」

 

 

 自分を守ってくれる存在の大きさに圧倒されながらも、レフィーヤは詠唱を続ける。

 

 

「【走れ、妖精の輪】」

 

 

 次は自分が彼女達を救う番だと、いつまでも守られているだけではないと。

 

 

「【どうか――力を貸し与えてほしい】」

 

「【エルフ・リング】」

 

 

 レフィーヤの魔法が終わる。しかし、これには続きがある。

 

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏の前に風を巻け】」

 

 

召喚魔法(サモン・バースト)。それがレフィーヤのとっておき、彼女を【ロキ・ファミリア】の中でも特別足らしめている『魔法』。師であるリヴェリアの、同胞の魔法の詠唱文と効果を把握し、その分の精神力を消費することで発動させる。

 

 

「【閉ざされる光。凍てつく大地】」

 

「【吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】」

 

 

 詠唱が完成する。呼びだすはリヴェリアの魔法、敵を、大気をも凍てつかせ、辺りを銀世界に変える必殺の一撃。

 

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 

 魔法円の中心にいるレフィーヤから、とてつもない魔力が溢れ、魔法が発動される。レフィーヤの知る中でも最高位に位置する攻撃魔法は、彼女の認識と違うことなく新種のモンスターを一瞬で氷漬けにした。時までも止まってしまったのでは、と錯覚するほどの静寂が周りを包む。

 

 

「やったね、レフィーヤ!」

 

「ティオナさん、やりました!」

 

 

 そんな静寂を打ち破ったのは、ティオナだった。その後にティオネとアイズ、エルスも魔法の範囲外からやって来た。

 

 

「やるじゃない、レフィーヤ」

 

「うん、凄かったよ。リヴェリアみたいだった」

 

「流石リヴェリア様の魔法だな……寒っ」

 

「皆さん、ありがとうございます。助けてもらって」

 

「気にすんなよ、今回、一番頑張ったのはレフィーヤだ」

 

 

 自分よりも高レベルの冒険者に褒められて、レフィーヤは気恥ずかしくなり、少し俯いた。戦いが終わり、一気に殺伐とした空気が消え去った彼らは和気あいあいとし始めた。

 

 

「エルスさん、大丈夫ですか!?」

 

「おお、エイナ、モンスターは全部倒し終わったか?」

 

「シルバーバックがまだ残っています、ダイダロス通りに行ってしまったようで……」

 

「私が行く、場所を詳しく教えてください」

 

「よろしいのですか?ヴァレンシュタイン氏」

 

「はい、あまり疲れてもいないので」

 

「じゃあよろしくな、アイズ。俺も行きたいところあるし」

 

「うん、じゃあね」

 

「じゃあな、俺ももう行くわ」

 

「エ、エルスさん!本当にありがとうございました!」

 

「ああ、次の遠征の時はよろしくな」

 

 

 「次の遠征?」と首を傾げるレフィーヤ達だったが、エルスも去っていったしまったので、固まって絶命しているモンスターを破壊してから帰路についた。

 

 

※※

 

 

「よう、アーニャ。リューはちゃんと帰ってきたか?」

 

「帰ってきてるニャ!リューをほったらかして何してたニャ!」

 

 

 エルスは、一度バベルに帰りヘファイストスに事情を説明した後、『豊穣の女主人』に向かっていた。中に入るとアーニャがぷりぷりと怒っていて、エルスは思わずビクリとした。しかし、自分から誘って勝手にいなくなったのは事実なので言い訳も通用するか怪しい。

 

「悪いな、モンスターを討伐してたんだよ」

 

「エルスも襲われてたのかニャ、シルの白髪頭も襲われたらしくて、今上の部屋にいるニャ」

 

「ベルもか!?無事か?」

 

「大丈夫ニャ、シルバーバックを倒したらしいニャ。流石あのシルが認めた男ニャ!」

 

 

 言い訳が通用したはいいが、モンスターにベルが襲われていたと知って驚愕がを露わにするエルス。しかも、あのシルバーバックを倒したと聞いて口をあんぐりと空けてしまう。

 

 

「無事ならいいや、リューはどこにいるんだ?」

 

「リューなら買い物に行ったから、しばらくしたら帰って来るニャ」

 

 

『豊穣の女主人』の中は、今日は冒険者達も少ないと思っていたが、見渡してみると意外と数が多い。怪物祭で事件が発生したため、予定よりも早く終わってしまったからだろうか、とエルスが考えているとアーニャが、人手が足りないとミア母さんが怒っていたニャ、とボヤいていた。

 

 

「アーニャ、少し手伝おうか?」

 

「丁度良かったニャ、猫の手もほしいところだったニャ!」

 

 

 ミアに許可を取りに行くと言って厨房に入っていく猫人。しばらくして、許可が下りたのか、これで少しは楽になるとばかりに笑みを浮かべてアーニャが帰ってきた。

 

 

「許可が出たニャ!エルス、厨房に入るニャ!」

 

「了解っと。アーニャ、レシピってあるよな?」

 

「厨房に置いてあるニャ!」

 

 

 中に入ると、周りには忙しなく動いている従業員がいて、腕を振るっているミアに軽く頭を下げた後、エルスはエプロンと包丁を投影した。それを見たミアが目を剥いたが「俺の魔法です」と言えば、納得したような顔でエルスに指示を出して料理に戻った。エルスも今の時間は忙しい時だと分かっているので、黙々と料理を続けていると。

 

 

「ただいま帰りました、ミア母さん」

 

「はいよ!リュー、早く料理を運びな!」

 

「わかりました。――なっ!エルスさん!?」

 

「リュー、おかえり。これ運んでくれるか?」

 

「は、はい」

 

 

 帰ってきたリューは、エルスがいることに驚いたものの、彼女も忙しいのが分かっているのか、そのまま料理を運び出した。

 

 

「――ふぅ、やっと落ち着いたか」

 

 

 5時頃にやって来てから、9時過ぎまで料理をしていたエルスは、客も少なくなってきてようやく一息ついていた。投影したエプロンと包丁を消すと、それを見ていたリューも驚きを露わにしていたが、これが彼の『魔法』だろう、と思ったリューはそれについて何も言わず、エルスのもとにやって来た。

 

 

「手伝ってもらってありがとうございます、エルスさん」

 

「いや、大丈夫だよ。今日はごめんな、リュー」

 

「気にしないで下さい。モンスターを討つのは冒険者の義務ですから。……それで、ここに何か用事でもあったのですか?」

 

「リューに改めて謝りに来たっていうのと、少し言いたいことがあって……」

 

「言いたいこと、ですか?」

 

「ああ、よかったらまた二人で遊びに行かないか?今回は途中で終わっちゃったし」

 

「はい……!また、都合がつけば誘って下さい」

 

 

 リューの返事を聞いたエルスは、少し顔を赤らめて下を向いた後、笑みを浮かべて去っていった。リューは店の外に出て、去っていくエルスを見つめた後、空を見上げた。

 空に浮かぶ満月が白く二人をを照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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