この腐った世界に救済を!   作:しやぶ

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また遅くなってしまい、申し訳ありません......

この辺りのプロットは複数あって、どれを採用するかで迷っていました......

第一部完結まであと少しなので、もう少しお付き合いください

それでは本編をどうぞ!


第18話 崩壊

 

──────未踏査領域へは、蓮太郎・延珠・ジョセフ、夏世・ティナ・舞の2グループに分かれて、ヘリコプターで行われた

 

「それで蓮太郎君、話ってなんだい?」

 

「............お前、どうしてこんな危険な場所に舞ちゃんを連れてきた?」

 

「そういう依頼だからだよ」

 

「あの子の依頼は『真守を助けること』なんだよな?それならここまで連れてくる必要は無いだろ。いやそもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「君のせいだよ」

 

「......はぁ?どうしてそうなる」

 

詰問口調の質問にジョセフは淡々と答え、蓮太郎は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする

 

「君が真守君を戦場に出すことを止めなかったから、舞ちゃんは情報屋(ボク)なんかを頼らざるを得なくなったんじゃないか。室戸菫(親代わり)はむしろ進んで彼を戦場に送り出す側だし、藍原延珠(親友)千寿夏世(同居人)は止める気なし。天童木更(姉貴分)は入院中だから負担を掛けたくない。学校の先生なんて論外だ。だから、彼女が頼れる相手は君しかいなかった」

 

── 蓮太郎さん!真守を......!兄を止めてください......!今にも死んじゃいそうなくらいボロボロなのに次の戦いにも参加しようとしてて、誰もそれを止めようとしないんです......!

 

「でだ、肝心の君は彼女に何と言った?」

 

「それは──」

 

── 大丈夫だ。アイツは強い

 

「────その通りだ。実際真守君は圧勝し、聖天子付護衛官の乱入がなければ敵も味方も笑って終わるハッピーエンドになっていた。正しい判断をしたのは君達だよ。どうしようもない程()()()────()()()()()()()()()()()

 

── 悪寒

 

このままだと、自分の中にある大切なナニカを粉々に破壊されてしまう────そんな感覚を蓮太郎は味わっていた

 

だがそれでも聞かなければならない。そんな予感もあったから────彼は制止しようとする言葉を必死に飲み込んだ

 

「なぁ蓮太郎君、もし()()()()()()()()()()()()()()()寿()()()()()()()、君は舞ちゃんと一緒に止めようとしたんじゃないかい?」

 

「......当然だ」

 

「へぇ、どうして?」

 

「どうしてって......延珠と夏世(コイツ等)は超人的な力を持っているだけで、中身は10歳の女の子だぞ?」

 

「その通り。どれ程の力を持とうがまだ10歳。守られるべき子供だ。それを踏まえて聞こうか蓮太郎君、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「────ぁ......」

 

── その時、ナニカが崩壊した

 

「やっと自覚したか。まぁ無理もないのかな?だって真守君は君より身長が高くてガタイもいい」

 

『呪われた子供たち』は力を解放しなければ普通の少女にしか見えない。だから辛うじて、蓮太郎は延珠と夏世が"守られるべき子供"なのだという認識を保つことが出来た

 

だが真守の場合はイニシエーター達と違って、どうしても"非力"という印象が付いて回る"女性"、"体が未発達"という二つのファクターが無い。だから10歳だということを覚えていても、延珠と夏世とは認識が違くなってしまった

 

「しかも、誰かさんと違って目上の人にタメ口利いたりしない。本当、良くできた子だよ」

 

民警は、プロモーターもそうだが人に悪意を向けられ続けて育った『呪われた子供たち』も含め、犯罪者紛いのならず者が多く存在する。その中で、誰に対しても丁寧な物腰で接する真守ペアのような存在は珍しかった

 

「その上、変に名前だけ売れてるせいで依頼人(クライアント)に敬遠される何処ぞの英雄様より稼いでるし。今月の給料、やけに多くなかったかい?それねぇ......序列相応の給料を貰えていない君達のために、真守君と千寿さんが毎日徹夜で稼いだお金なんだぜ?」

 

真守と夏世は、司馬重工や三ヶ島ロイヤルガーダー等、繋がりがある大手企業の下請けから菫を始めとした個人の依頼までなんでも引き受け、朝から晩まで一日中休みなく働き続けていた

 

休憩と言えるだろう時間は食事と移動の間くらいなのに、その時間さえ惜しんで二つ同時に行いまた働くという、ブラック企業も裸足で逃げ出すオーバーワークを二週間

 

イルカの因子を持ち、休憩しながら活動出来る夏世と、M.O.(モザイクオーガン)に貯蔵されているガストレアウイルスが尽きない限り、実質無限の体力を持つ真守だからこそ可能な荒業だ

 

子供にそこまでさせてやっと、火の車だった天童民間警備会社はなんとか持ち直し始めたのだ

 

「嘘だろ......?木更さんはそんなの一言も......」

 

「言える訳ないだろう。言ったら君達が受け取る筈がないんだし。あぁ、だからって突っ返そうなんて考えるなよ?未だに君達の給料は相場より低いんだ。そんなことしたら木更ちゃんの胃に穴が空く」

 

「なら妾は......どうやって皆に報いれば良いのだ......?」

 

── 蓮太郎が、自分の通う学校を苦労して探してくれていることを知っていた

 

事務を手伝う内に、木更が今までどれ程身を削っていたのかを理解した

 

天童民間警備会社に入ってから、夏世の目に隈が出来たことに気付いていた

 

真守は涼しい顔をして、自分の知らない場所で自分達のために戦っていた

 

「妾は戦うことしか出来ぬ......蓮太郎のような知識も、木更のような事務処理能力も、夏世のような頭脳も、舞ちゃんのような料理の腕も......何もないのだ......なのに、前線に出ても皆に心配を掛けるだけ......妾は、どうすれば良いのだ......?」

 

「知識も、事務処理も、料理の腕も、今から身に着ければいいんだよ。焦らない焦らない。だって君はまだ子供なんだから────」

 

────神崎真守は『強い』

 

強さの定義は数多くあるが、少なくとも戦闘力・精神力・生活力の3つにおいて彼を『弱い』と判断する者はいないだろう

 

だが────

 

「────そして彼もまだ子供だ。子供と判断出来る要素が見えにくいだけの少年だ......その彼を進んで戦場に送り出すなんて、君が()()を貫くなら、絶対にやってはいけないことだろう」

 

「............」

 

────蓮太郎は『スプラウト(狙撃手)との戦いは、真守自身の意思だった』と言い訳することも出来た

 

だが、駄目だったのだ。彼の心は、自分自身を許せなかった

 

「借り物の拳に脆い理想......だからボクは、君が嫌いなんだよ............最後に聞こうか蓮太郎君。ボクが真守君のことをゾディアックと呼んだことについて、誰も何も言わなかったけど......君、真守君の心がガストレアになっていたら......どうするつもりだった?」

 

「それは────」


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