ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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ニチアサ直後に投稿。
ジオウは次回エグゼイド登場ですね。
タイムジャンプは世界ごと時間移動しているってことでいいんでしょうかね……?


第17話 スクラッシュの力

「——————ハザードレベル、目標値までの到達を確認」

 

「…………あぁ……?」

 

これ以上はもう限界だと思い始めた時、残存していたスマッシュ達が電源を落とされたPC画面のようにブツリと姿を消す。

 

天井から降り注ぐわずかな照明を頼りに、リュウヤは仰向けの状態のまま声のした方向へ顔だけを向けた。

 

そこに立っていたのは、タブレットを抱えた1人の女性。後ろの方でひとつに束ねられた髪は解けばそれなりに長そうだった。

 

「誰だ……あんた……?」

 

「スタークからあなたの管理を任されました、鷲尾風華と申します」

 

「スターク……あいつの仲間だってのか……!?」

 

無理やりにでも奴の居場所を聞き出そうと全身に力を込めるリュウヤだったが、度重なるスマッシュとの戦闘で力が残っているはずもなく、

 

「ぐ……っ……」

 

立ち上がろうとして膝をついたリュウヤのもとに風華が歩み寄る。

 

「…………怪我自体は大したことありませんね。その消耗は疲労によるところが大きいでしょう」

 

「なに冷静に分析してんだ……」

 

「……いえ、その……大事にならなくてよかった。スタークがあなたを選んだのには、やはり何かしらの理由がありそうですね」

 

「……?」

 

ほんの一瞬、氷結した表情が安心するように緩んだように見えた。

 

「では、これを」

 

「…………なんだよこれ」

 

風華は何気なく懐から取り出した“ドライバー”と“ゼリー”を彼に手渡した。

 

「……んだよ、気が利くじゃねえか」

 

「あ、いえ、飲料ではありません。ダメです飲まないでください」

 

「え?」

 

はあ、と軽いため息をついた後、リュウヤが口元へ持っていこうとしたゼリーを取り上げ、ドライバーを握っていた腕を腹部へ当てるようジェスチャーで伝える。

 

「うおっ!?」

 

瞬時にベルトが伸び、リュウヤの腰に巻きついた。

 

すかさずレールに“スクラッシュゼリー”を装填してやる。

 

 

 

《ドラゴンゼリー!》

 

 

 

「なんだよこれ!?」

 

「あなたの所持していたボトルから成分を抽出し、ゲル状にしたものです」

 

「……?よくわかんねえんだけど」

 

「これがあれば、兵器として凄まじい能力を発揮することが可能になります。いずれ始まる戦争で成果をあげることができたのなら……あなたの冤罪を晴らすことも叶うでしょう」

 

「……!やっぱり俺は誰かに嵌められて————!?」

 

「あとはレバーを押し込めば完了です」

 

風華の手によってドライバーのレンチが下げられる。

 

 

 

 

 

「————————!?」

 

次の瞬間、鋭い刺激が全身を駆け巡った。

 

身体中の神経が研ぎ澄まされ、どこからともなく自信と高揚感が湧いてくる。

 

 

 

《潰れる!流れる!溢れ出る!!》

 

リュウヤの周囲に巨大なビーカーが出現。ゲル状の“ドラゴン”成分が白銀の装甲となって彼の身体を覆う。

 

《ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!!》

 

 

「どうなってんだ……?」

 

文字通り“変身”したリュウヤは、自分の状況を確かめるように手のひらでマスクに触れた。

 

 

 

 

「これであなたも仮面ライダー……。——————その名も、仮面ライダークローズチャージ」

 

 

◉◉◉

 

 

「オラああああああッッ!!!!」

 

「なっ……ちょっ……!」

 

前方から襲いかかってくる黄金の戦士————グリスの繰り出す刺突を避ける。

 

「お前が北都の仮面ライダーか……!?」

 

「そう言うお前は情報になかったな。……それに、そのベルト——————」

 

グリスはリュウヤの身につけているドライバーに視線を落とすと、微かに舌打ちを響かせた。

 

「…………スタークの野郎、いったいどういうつもりだ……?」

 

「……!スタークを知ってんのか!?」

 

 

 

 

《ビームモード!》

 

 

「ぐおっ……!!」

 

会話を交わすつもりはないとでも言わんばかりの射撃がリュウヤを襲う。

 

……そうだ、今は戦争の最前線に立っている。敵同士なんだ。

 

 

——————存分に、戦ってやるよ。

 

 

「…………ぉぉぉぉおおおおッッ!!」

 

《ツインブレイカー!》

 

リュウヤもまた左腕にツインブレイカーを出現させ、グリスへと肉薄。

 

力任せに振るわれる攻撃をいなし、それに応えるようにグリスが豪快なカウンターを放つ。

 

「ハハッ……!!」

 

「オラァ!!」

 

両者とも時折稲妻を放出しながら本能のままに拳を交える。

 

技術もへったくれもない、不良の喧嘩を本気の殺し合いに変貌させたかのような戦いだった。

 

(……なんだよこの力……!)

 

攻撃を受けても痛くない。……痛覚が鈍っているのだろうか。

 

格闘技の試合でも感じたことのない感覚。

 

(今の俺は……!負ける気がしねぇ!!)

 

 

《シングル!》

 

ドラゴンフルボトルをツインブレイカーに装填。

 

拳を振り上げた状態のグリスへ渾身の一撃を叩き込む。

 

《シングルブレイク!》

 

 

「がっ…………!?」

 

予想外の一発だったのか、グリスは受け身をとることなく派手に吹き飛んでは地面へ真っ逆さまだ。

 

「いける……!」

 

「へっ……へへ……っ!!ははははは!!!!」

 

よろよろと起き上がったグリスは狂気じみた笑いを上げながら天を仰いだ。

 

「これだ……!俺が求めてたのは……こういうバトルなんだよおおおおおおおッッ!!!!」

 

「…………!?」

 

金色の腕が腰へ伸び、一本のフルボトルが取り出される。

 

《ディスチャージボトル!》

 

《潰れな〜い!》

 

《ディスチャージクラッシュ!!》

 

 

グリスの手のひらにある穴からゲル状のエネルギー————ヴァリアブルゼリーを噴射し、プロペラを形成。

 

「喰らいな」

 

そのまま飛翔し、上空からリュウヤを乱れ撃つ。

 

「飛べんのかよ……!?」

 

銃弾の雨に翻弄されながらも、リュウヤは急所に迫ってくるものだけをツインブレイカーで弾いていく。

 

格闘技で培われた勘と、驚異的な反応速度が可能にする荒技だった。

 

「はっ……そこで転がってる奴よりはやるみたいじゃねえか」

 

「……!そうだ、キリオ————」

 

戦いに夢中で忘れていたが、後ろで気絶しているキリオをこのまま放置するわけにはいかない。

 

巻き込んでしまう前に決着をつけなければ。

 

「……っ……!」

 

蒼い稲妻がクローズチャージの装甲を走る。

 

……そうだ、早く目の前にいるこいつを……!

 

 

 

「倒さねえと……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————————」

 

直後、後方からの衝撃が波紋し、殴り合っていた2人はもろともに紙吹雪のごとく飛ばされてしまう。

 

「なんだ……!?」

 

赤い衝撃波の根源に目をやるリュウヤ。

 

そこに立っていたのは——————先ほどまで横たわっていたはずの戦兎キリオだった。

 

「キリオ……?」

 

しかしその瞳は虚ろであり、精気というものがまるで感じられなかった。

 

こちらに目を向けているはずなのに2人を見ているわけではない、果てを見据えているような遠い目。

 

「ぐっ……まだ隠し玉を持っていやがったか……!」

 

火花を散らすグリスは先ほどとは違うボトルを取り出すと、震える手でドライバーに装填。

 

《ディスチャージボトル!》

 

《潰れな〜い!》

 

「一旦撤退だ……!」

 

自分の身体をなぞるようにして腕を動かすグリス。

 

まるで消しゴムで消されるように、瞬く間にその場から去ってしまった。

 

 

 

「————」

 

「キリオっ!?」

 

ふっと膝から崩れ落ちる青年のもとへ駆け寄る。

 

リュウヤが介抱しようと近寄ったその時、ゆっくりと瞼を開けたキリオはぼんやりとした様子で口を開いた。

 

「……?誰だお前……」

 

今度は普段と変わらない、光を宿した瞳で。

 

「俺だよ俺!万丈リュウヤだ!」

 

「なんでお前がライダーに……?————そうだ、グリスは……!?」

 

キリオは変身を解いた万丈を一瞥した後、突然起き上がっては焦燥に満ちた顔で周囲を確認した。

 

「あいつなら俺が追っ払ってやったよ。……どうだ!これで子供だなんだとバカにできなくなっただろ!」

 

「お前が……?」

 

不意にリュウヤが装着していたベルトに目が移る。

 

グリスと同じものを身につけているということは…………。

 

「……さて、北都の軍もこれ以上は攻めてくる様子はないみたいだし、この後は政府に報告か?」

 

「……いや、お前にはいろいろと聞きたいことがある。俺と一緒に来い万丈」

 

「お、おいちょっと……?」

 

《ビルドチェンジ!》

 

ポケットから取り出したビルドフォンをマシンビルダーに変形させ、半ば強引にリュウヤを後ろへ乗せる。

 

キリオの知らない新型のライダーシステムを作ったのは誰なのか。その謎はきっと……今回の戦争と大きな繋がりがあるはずだ。

 

 

◉◉◉

 

 

「はあっ……!はあ…………ッ!!」

 

変身を解除した途端、凄まじい疲労感に襲われて思わず道端に倒れこんでしまう。

 

「クソッ……!抑えが効かなかった……!」

 

スクラッシュドライバー…………スタークが自身に与えた現状最強のライダーシステム。

 

最初は何ら問題なく使いこなせていると思っていたが、実際は違った。

 

自分が……猿渡タクミという人間が……消えてしまいそうな感覚。

 

「……まだまだ、強くならないと……」

 

ハザードレベルを上昇させれば、きっとベルトの()()()だって————

 

 

 

 

 

 

 

 

————『もっとレベルを上げたければいつでもオレに言え。この“トリガー”があれば、好きなだけ強くなれるぞ?』

 

 

 

 

「………………スターク」

 

気がつけば携帯を取り出し、とある番号へ電話をかけていた。

 

しかし、

 

 

 

『——ただいま、電話に出ることができません』

 

「チッ……いつもは呼ばなくてもやってくるくせによ……」

 

 

 

重い足取りで“学校”への道のりを歩いていく。

 

守るべき相手が待っている場所へ——————

 

 

 

 

「ただいま」

 

部室に戻って、一番最初に飛び込んでくるのは2人の少女の見開かれた瞳だった。

 

「猿渡くん……!?」

 

「そのケガ————」

 

「ああ……。もうニュースとかで知ってるだろ?ちょっと巻き込まれちゃってさ」

 

鹿角聖良と鹿角理亞……この2人にだけは、自分が兵器として戦争に参加していることは知られてはならない。

 

知られたらきっと……自分達を責めてしまうはずだから。

 

「病院に行かないと……!」

 

「いや、必要ない。かすり傷程度だし」

 

「……とにかく治療だけでも」

 

手早く近くの棚から救急箱を持ってきた聖良。どんな時でも冷静な彼女も、今回ばかりは焦燥を隠しきれていなかった。

 

 

 

 

「いっつ……!」

 

「動かないで、上手くできないじゃない」

 

タクミの傷ついた頬に消毒液をつける理亞の表情が曇る。

 

「……結局、こうなっちゃうのね」

 

北都が戦争を起こすかもしれないという話は国民のなかでじわじわと広がっていたのは確かだが……まさかこんなにも早く現実に起きてしまうとは。

 

「心配いらねえって。北都がスマッシュを操ってたなんて話は東都と西都の言いがかりなんだ、2人が気にする必要なんてこれっぽっちもねえよ」

 

「…………そういう問題じゃないでしょ」

 

 

 

——————悲しそうな表情を見る度に思う。

 

早くこの戦争に勝って、この国をひとつにしなければならないと。

 

「……花丸達、無事にここまで来れるかな」

 

「え?」

 

「そういえば、猿渡くんはまだ知りませんでしたね。Aqoursの3人がこちらに来る予定なんです」

 

「まあルビィは来ないみたいだけど」

 

 

————このタイミングで?

 

いや、北都にやってくること自体は前々から計画されていたものだろう。

 

むしろそれを見計らったように戦争が起きたと考えたほうがいい。

 

 

 

 

 

「いったいどうなってやがる……?」

 

 

 




スタークがまた良からぬことをしようとしてる……。
クローズチャージは割と好きなので今作でも活躍の場を与えたいです。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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