ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
「おぉ〜!これが…………」
「仮面ライダーの秘密基地……!」
「そんな大層なもんじゃないぞ」
一歩踏み出すのにも気を使うほどに散らかった地面を曜とルビィが進んでいく。
「あんた、今まで自分が仮面ライダーだってこと黙ってたのか?」
キリオの隣に立っていたリュウヤは、瞳を輝かせながら部屋を探索する彼女達を見るなり意外そうな様子で言った。
「これまでは話す必要性がなかったからな」
「じゃあどうして今更?」
「…………もういつまでも隠し通せる状況じゃない。それに————」
反対側に佇んでいた千歌を見やる。
彼女が抱えている不安のなかにはキリオ自身の安否が含まれている。ならばせめて……それを共有できる人物がいた方がいい。
自分はこれからも戦い続ける必要がある。立ち止まれないが故の、気休めにもならない苦し紛れの案だ。
「ん?なぁにキリオくん?」
「べつに」
「えー!?絶対なにかあるでしょー!」
そう言って千歌がキリオへ問い詰めようとしたその時、
——————◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!
「わっ!?」
机の上に積み重ねてあった紙束の隙間から、手のひらに乗るくらいの物体がキリオ達の眼前を舞った。
小さなドラゴンを模した、ガジェットのようだった。
「なにそれ!?」
「かわいいー!」
「ちっちゃいドラゴンだ!」
「ペット型のロボットまで作れるのかよ」
空を飛ぶドラゴンに向かって口々に感想を並べる千歌達。
自慢げに胸を張った後、リュウヤの肩を軽く叩いながらキリオは言った。
「こいつは“クローズドラゴン”、お前の新しい相棒だ。仲良くやれよ」
「は?……まさかキリオお前、このちんちくりんを使って俺に戦えって言うんじゃねえだろうな?」
リュウヤの言葉に苛立ったのか、宙をぐるぐると旋回していたクローズドラゴンは彼の方を向くなり————
「どわっちィ!?」
青い炎を吐き出した。
「んだよいきなり……!?」
「おいおい、仲良くしろって今言ったばかりだぞ」
「こいつが急に攻撃してきたんだよ!!——アチッ!?あつ!!アッツイ!!!!」
クローズドラゴンと激しく戯れているリュウヤを尻目に、千歌達がこちらに顔を近づけつつ耳打ちをしてきた。
「そういえば、万丈くんも仮面ライダーって言ってたよね……?」
「ああ、あいつは西都から増援として派遣されてきたんだ」
「千歌ちゃんは、いつから先生達が仮面ライダーって知ってたの?」
「んーと……Bernageの2人と共演した日からだったかな……。万丈くんに関してはたった今だけど」
「そんなに前から!?」
数分前、曜とルビィに全てを話した時……当然2人はとても驚いていた。
もちろんキリオを疑いもしたが、こうして地下室に招いた途端この通りだ。
ともかくそれなりに適応してくれているみたいでよかった。ひとまずは安心…………とまではいかないが、もしもの時に色々と手が回りやすくなる。
「でもさ、2人が仮面ライダーってことは…………」
「この前戦ってたのも…………」
心配するような上目遣いを送ってくるルビィと曜。
「ああ、当然この先も……俺は戦場に向かうだろう。けどそれは戦争を止めるために、だ。東都政府のいいように使われるつもりはない」
「そうは言ってもね……」
「大丈夫だよ、2人とも!」
顔を俯かせる曜達を見て、声を張った千歌が立ち上がる。
「キリオくんは給料とか、自分のことになると死ぬ気で頑張れる人だから!きっと命が危なくなったら速攻で逃げてくれるよ!」
「……うん、そうだよね!」
「褒めてるのか?貶してるのか?」
意外にもその場を収めてくれたのは千歌だった。
まだ全てを納得したわけじゃない。表面上はこうして平気なふりをしているだけだろう。
だから、今後はさらにキリオ自身が頑張らなければならない。
(……こいつらを、心配させないためにも)
『ごめんね万丈くん……大変なことに巻き込んじゃって』
「最終的に決めたのは俺だ。葛城が気にすることなんかねえよ」
海岸沿いの砂浜を歩きながら、リュウヤは電話越しに聞こえてくる力のない声に答えた。
相手の名は葛城ユイ、リュウヤのクラスメイトでもある難波高校スクールアイドル、その片割れだ。
『そっちにいるAqoursの人達は無事なの?』
「高海とかいう奴らか?顧問も揃ってピンピンしてるよ」
『よかった。こっちにいる梨子ちゃん達も……今のところは心配いらないって、改めて千歌ちゃん達に伝えておいてくれないかな?』
「いいぞそれくらい。……じゃあな————」
『ああっ!ちょっと待って!』
「あ?」
通話を切ろうとスマホを耳から離したところで待ったがかかった。
数秒口ごもるような沈黙が流れた後、ユイは照れくさそうに笑いながら言った。
『兵士になってほしいって頼んだあたしが言うのも変だけど……その……どうか無事でいてね』
「————…………」
『あたし、万丈くんが西都に帰ってくるの待ってるから。……君に“おかえり”って言える日を楽しみにしてるからね』
あまりに突拍子もない励ましの言葉にどう反応していいかわからず、リュウヤは無意識に自分の頭を掻きながら一言「ああ」と返した。
直後、プツリと電話は途絶える。
「…………やっぱ変な奴」
《◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!》
「うおっ!?いつの間に!?」
突如横から飛翔してきたクローズドラゴンが意味もなくリュウヤの周囲を飛び回る。
「……ったく、キリオの野郎……こんなポンコツ一匹でどう戦えってんだよ……」
スクラッシュドライバーは依然キリオの手元にあるため、変身することはできない。
このまま何も渡されないとなると————また生身で敵に殴りかかることになってしまう。
「さすがにそれはないと思いたいが…………」
「あっいた!」
「万丈くーーーーーーん!!」
歩道側から自分を呼ぶ声が聞こえ、リュウヤは反射的にそちらへ顔を向けた。
セーラー服に身を包んだ少女が2人、細い腕を懸命に振っている。
「確か……渡辺と黒澤だったか。なんか用かーーーー!?」
「キリオくんが呼んでるよー!!」
考えていた矢先に彼の名前が出てきた。
今度はなんだ、と期待と不安が入り混じった感情を抱きつつ、リュウヤは海岸から離れた。
「たった今最終調整が終わってな。……これがお前の新しいベルトだ」
「おぉー!——————って」
再びキリオの部屋へ呼び出されたリュウヤを待っていたのは、新たな装備。
本来なら喜ぶ場面なのだろうが、手渡された物が視界に入った瞬間、リュウヤは眉をひそめて低く口にした。
「……これ、お前と同じやつだろ?」
そう、キリオが渡してきたアイテムは……他ならぬ“ビルドドライバー”だったのだ。
スクラッシュドライバーよりも低いハザードレベルで扱える分、当然スペックに差はある。
「不満か?」
「いや不満っつーか…………いわゆる旧式だろこれ?」
「旧式…………」
「あっいや……」
ドライバーにケチをつけた途端露骨に悲しそうな顔をするので慌てて訂正しようとあたふたする。
そこでふと2人のやりとりを眺めていた千歌が首を傾け、ひとつの疑問を投げてきた。
「……このベルト、ボトルが2本必要なんだよね?万丈くんは持ってるの?」
「あ、そうだよ。俺はドラゴンボトルしか持ってねえぞ」
「心配するな、そのためにクローズドラゴンを作ったんだ」
「この子、ただのペットじゃなかったの?」
きゃっきゃと笑いながらクローズドラゴンと遊んでいた曜とルビィがきょとん、とした表情でそう問う。
「当然だ。こいつにはボトルの成分を2本分にする機能がある」
「ほお……?」
「それってすごいの?」
いまいち実感がない様子のリュウヤ達を見て、キリオは少し残念そうに眉を下げる。
「……この天才的な発明の価値がわからないとはな」
「まあ細かいことはどうでもいい!仮面ライダーにさえ変身できれば、俺は問題ねえ!」
「ま、お前の言う通り……スクラッシュドライバーより多少性能は劣るだろうが、そこは持ち前のハザードレベルでカバーしてくれ」
ビルドドライバーはキリオ自身が安全に扱えるよう開発したアイテム。
少なくともスクラッシュドライバーのように暴走する心配はなくなるだろう。
ひとつ気になるのは……敵はこれからも変わらず
(……そろそろ本格的に考えなきゃならないな————ビルドドライバーの拡張アイテムを)
◉◉◉
「うっ…………!!」
薄暗く、広大な空間に金属が擦れるような音が響く。
目立った障害物は一切見られない、闘技場のような部屋で————2人の戦士が拳を交わしていた。
「はあっ……はぁ……っ……!!」
黒い装甲に身を包んだコウモリは倒れ伏した後、数秒かけて立ち上がる。
対峙しているのは、腰に手を当てて余裕な様子を見せている赤い蛇だ。
「もう終わりか?」
「は……っ……!ぐ————!」
黒い戦士————ナイトローグは目の前の人物に視線を注いだ後、再びコンクリートの地面に膝から崩れ落ちてしまう。
「やれやれ……お前の力は、こんなものじゃないはずだぞ?」
「あぐっ……————!」
赤い戦士————ブラッドスタークがローグの首を鷲掴みにし、強引に立ち上がらせた。
「今のお前なら戦場に一歩踏み出しただけで御陀仏だろうな。……それが嫌なら本気を出せ」
「そんな……こと……できな…………!」
《コブラ!》
《スチームブレイク!コブラ!!》
「————————」
視界がチカチカと明るくなった刹那、暗転したような漆黒に包まれる。
紫色の禍々しい光弾をゼロ距離で受けたナイトローグはそのまま後方へ吹き飛ばされ、数メートル離れた先にあった壁に激突。
悲鳴すらあげる暇もなく絶大な一撃を受け、闇夜のような鎧とマスクが解除される。
「ぐぅ……っ……!けほっ……!げほッ!!ゲホ……ッ!!」
屈強な印象を与えるスーツの中から現れたのは黒髪の少女。
瞳から完全に戦意を感じない彼女に大きくため息を吐くと、スタークは踵を返し口を開いた。
「もうじき北都が東都へ再度襲撃を仕掛ける。オレ達もそれに乗じて東都へ向かうぞ」
「…………それ……って…………パンドラボックスを……?」
「それもあるが…………本命は別にある」
ひょろひょろと定まらない足取りで靴音を鳴らすスターク。
表情は読み取れないはずなのに、マスクの下には邪悪な笑みがあると瞬時にわかった。
「あいつらにも頑張ってもらわないとな。いや————」
スタークはどこからともなく1枚の写真を取り出しては宙に放り投げる。
そこに写っているのは……1人の赤髪の少女。
「あいつ風に言えば……
1発の銃声が炸裂する。
スタークの持つトランスチームガンから放たれた一撃は、写真に写る少女を的確に撃ち抜いていた。
少し遅めのクローズドラゴン登場。
そしてスタークが狙いを定めたのはまさかの……!?
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。