ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
先日の公開日に平ジェネを見てきました。
いや……あれは……もともと乏しかった語彙力がさらに消し飛びますね。あれはずるいですよ……。
ネタバレなしで言えるのは仮面ライダーはちゃんと存在するんだ!!ということ(笑)
その上ルーブやらグリッドマンやらが最終回を迎えて……あぁ……週末の楽しみが……。
「浦の星がグリスに攻撃されてるって……ほんとかよそれ!?」
「スタークの言うことを信じるのは癪だが……もしそうならすぐにでも向かわないと」
そう言ってボロボロの身体を引きずりながら歩き出したキリオは、一歩二歩と踏み出したところですぐに膝をついてしまう。
見るからに消耗し切っている彼は、それも意に介すことなく立ち上がろうとした。
「お、おい!……待てよ。そのケガじゃまともに戦えないだろ!」
「…………いいや、いける」
「おいっ……!無理だって!」
キリオの肩を掴み、リュウヤは彼の半ば虚ろな状態の瞳と目を合わせた。
「…………!」
直後、表現し難い寒気が全身に走る。
キリオの暗い瞳の奥に宿った炎が、自分にも燃え移ったような感覚だった。
「……やらなくちゃいけないんだよ。俺は————仮面ライダーなんだから」
「………………」
キリオは以前こう言った。“誰かのために戦うことが、結果的に自分のためになっている”と。
自分が過ごす“日常”を保つために、彼は戦っている。
(……なんだ?この感じは…………)
何かがひっかかる。キリオは本当に………………そう思っているのか?
彼の真意は————
「……!万丈、それは……?」
「あ?……ああ、ナイトローグとかいう奴が落としていったボトルだよ」
「ちょっと貸せ」
リュウヤの手から取り上げた1本のフルボトルを見る。
透き通ったブルーに一機のロケットが大きく刻まれていた。
「ロケットボトル……よし、これでいこう」
「お、早速使ってみるってか?」
「ここから学校へ向かうにはマシンビルダーじゃ少し時間がかかる。……それに、今まで手に入れたボトルの組み合わせを消去法で考えれば——」
キリオはビルドドライバーを腰に装着し、また別のボトルを1本だけ取り出し、軽く振った。
《パンダ!》
《ロケット!》
《ベストマッチ!!》
《Are you ready!?》
「おお!?」
「やっぱりな。…………変身」
白とスカイブルーの装甲が形成され、キリオの身体を挟み込む。
《ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!!》
右手には巨大な爪。左手には存在感のあるロケットが装着されている。ビルドの新たな姿だった。
「これで俺が持ってるボトルは21本、その内発見できたベストマッチは10……か。……パネルにはめる時1本余るな」
「パネ……なんだって?」
「こっちの話だ。……ほら、しっかり掴まってろ」
「え?」
キリオは生身のリュウヤを右腕で抱え、左手のロケットから勢い良く炎を噴射。
そのまま上昇し、瞬く間に空へと飛び上がった。
「えっ!?ちょっ……!うおおおおおおおおおおおおお!?」
「叫ぶな馬鹿。舌噛むぞ」
「筋肉つけろやあああああああ!!!!」
◉◉◉
「うっ……!うぅぅうぅ…………ッ!!」
黒霧に包まれた赤毛の少女が苦しそうに身を曲げる。
傍でその様子を眺めていたスタークは、思い出したように1本のボトルを取り出してはそれを彼女の左腕へ
「ああっ……!くぅ……!!」
「危ない危ない。こいつを忘れるところだったぜ」
赤い閃光が少女————黒澤ルビィから放出し、徐々に小柄な影が膨張したシルエットに変貌する。
「あああぁぁああ……!!ああああああああああッッ!!」
霧が衝撃波と共に拡散。
「きゃあッ!?」
「なんなの……!?」
「◼︎◼︎◼︎◼︎……!!」
千歌と曜を襲おうとしていたスマッシュが吹き飛ぶ。
その場にいた全員の視線が、赤い戦士とその隣に立つもう一体の怪物へ向けられた。
全身を強固な装甲で覆われた赤い身体。頭部には砲台、両肩にはウイング状の巨大なシールドが装備されている。
まさに“兵器”と表現するに相応しい姿がそこにあった。
「“キャッスルハードスマッシュ”……。さあ、存分に戦え!」
高笑いを響かせながら赤い戦士の姿が霧と共に消えていく。
「…………ッ!!うあああああああっ!!」
シールドを前方へ展開したルビィは、そのままスマッシュ目掛けて強烈な体当たりを繰り出した。
「◼︎◼︎……ッ!!」
うめき声をあげながら廊下を転がるスマッシュを尻目に、千歌と曜を庇うように両腕を広げつつ彼女は言った。
「2人とも逃げて!!」
「ルビィ……ちゃん……?ルビィちゃんなの……?」
「早く!!」
「………………!!」
理解が追いつかない状況に対して恐怖に満ちた表情を浮かべる2人の少女。
怯えながらも必死にその場を去っていく千歌と曜だったが…………その恐怖心の矛先は自分達を襲ったスマッシュだけじゃなく————明らかにルビィまでもが含まれている様子だった。
「…………あ」
ふと横にあった窓に自らの姿が映る。
ルビィは変わり果てた自分を認識した途端、奥底から悲哀の感情が湧いてくるのがわかった。
「これが…………ルビィ……なの……?」
————オレならお前に力を与えることができる。この状況を打破できる力をな。
「ルビィも……怪物に……」
「◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!」
「……!」
起き上がったスマッシュが巨翼を広げ、一直線にこちらへと突撃してくる。
「きゃあっ!!」
咄嗟にシールドで防御するが、勢いで負けてしまい後方へ思い切り倒れてしまった。
痛みを堪えながらもすぐに体勢を立て直し、シールドを構えたまま再度体当たりを試みる。
「や……やああああああああっ!!」
狭い廊下での不可避の攻撃。スマッシュはなすすべなくルビィの突進を全身に浴びた。
そのまま壁を突き破り、両者が校庭へ放り出される。
「くぅ……!」
勢い余って地面を転がる。戦い慣れていないせいだろう、一挙一動する毎に余計な体力を消耗してしまう。
「◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!」
大きな翼を備えたスマッシュがこちらを睨んでくる。
今すぐここから逃げ出したい。でもそれはできない。今ここで学校のみんなを守れるのは————
「負け……ない。……負けない…………もん……!!」
————自分だけだから。
「うおりゃああああああッッ!!!!」
全身を使った回し蹴りが数十体のスマッシュ達を一気に薙ぎ払った。
黄金色の軌跡が消え、仮面ライダーグリスは肩で息をしながら地面を見つめていた。
「ハア……ハア……へへっ…………今のでかなり、ハザードレベルが上がったか……?」
ふと横を見ればお互いに身を寄せて身体を震わせている女生徒達が見える。
「あっ……あの……」
「助けてくれて……ありがとうございます……」
「あ……?……あー…………」
少し落ち着いた途端に自分の生ぬるさに嫌気がさしてきた。
……もともと自分はこの学校を襲撃しにやってきたんだ。スタークが引っ張ってきた奴らなんか放っておいて、さっさと用を済ませばよかったはず。
猿渡タクミは既に取り返しのつかないことをした。後戻りはできないのに————
「……チッ」
ここに目当てのものは見つからなかった。これ以上長居するのは危険だ。
一旦帰還して————————
「…………!?」
直後、校舎付近から爆音と衝撃が届いてきた。
「なんだ…………!?」
じっと目を凝らし、遠くに見える大柄な影を見据える。
「……なんだあのスマッシュ。あんなの見たことないぞ」
スマッシュの残党……かと思ったが、明らかに先ほどまでは確認できなかった種類のものがそこにはいた。
城を模したような外見に大盾で武装されている。…………新型か?
「まさか東都の新兵器か?…………いや、なんにせよ————」
もう仕事は終わった。スマッシュを野放しにしておく理由はない。
「——————ぶっ潰す」
凄まじい脚力によって生み出されたクレーターのみを残し、タクミはミサイルのような速度で新型スマッシュとの距離を詰めた。
「一撃で決める……!!」
《スクラップフィニッシュ!!》
両肩から射出されたヴァリアブルゼリーの力でさらに加速。
加えて腕にまとったゼリーを機械的な巨腕に変形させ、そのままスマッシュ目掛けて振り上げた。
「おおおおおおおおおおッッ!!!!」
グリスの間合いにスマッシュが到達するまで残り数メートルかと思われたその時。
「…………え?」
急な出来事に思わずそう声を漏らした。
突如気絶するように体勢を崩したスマッシュは、その装甲をボロボロと分解しながら徐々に人の姿へ一人でに変わっていったのだ。
「ちょっ……なっ……!?」
反射的に必殺技をキャンセルしたタクミは、移動する速度を落としながら両腕を広げる。
意識を失った状態で現れた人間をそのまま受け止めた。
「なんなんだよ一体……!?」
自分の腕の中で眠っている者の顔を恐る恐る見る。
そこには…………自分のよく知る人物の、疲労と苦悶に満ちた表情があった。
「Aqoursの……ルビィ……ちゃん…………!?」
◉◉◉
「………………うっ……!」
全身に出来た傷が痛む。戦いから帰った後はいつもこうだ。
この痛みだけはどんなに経験を積んでも克服できる自信がない。
難波高校生徒寮。
高級ホテルじみた広さのロビーで自分の身体を引きずりながら階段へ向かおうとしているのは————Bernageの片翼、氷室ミカだ。
制服はもちろん、着用していた黒のタイツまでもあちこちが無残に引き裂かれている。
「ミカちゃん……!?」
「……あ、梨子さん。こんにちは」
踊り場でばったりと鉢合わせになったのは東都から派遣されてきたスクールアイドル、Aqoursの桜内梨子。
彼女はズタズタになったミカを見るなり血相を変えて歩み寄ってきた。
「こんにちはじゃないわよ……!どうしたのこの怪我!?」
「ちょっと転んじゃって……。ほら、わたしってドジだから……あはは」
「とにかく手当しないと!」
「このくらい自分で……って、梨子さん……?」
有無を言わせずにミカの手を優しく引っ張った梨子は、そのまま保健室のある方向へと向かった。
「ごめんね、ちょっと沁みるかも」
「ううん……大丈夫、慣れてるから。…………いたっ!」
保健教諭が留守だったので、梨子が自ら消毒液とガーゼを調達してミカの傷口に応急措置を施していく。
ベッドに腰掛けながら彼女に身を預けていたミカは、その場を満たしていた沈黙に気まずさを覚えながら、地面だけを見つめていた。
「…………またユイちゃんに怒られちゃうな」
「え?」
心の中で呟いたはずの言葉が無意識に口から出てしまっていた。
ハッとそのことに気がついた時には、梨子は首を傾けてこちらに視線を注いでいた。
「ユイちゃんがどうかしたの?」
「う、ううん!なんでもない!なんでもないです……!!」
「そ、そう……?」
慌ててその場を取り繕うミカだったが、それがよほど不自然だったのだろう。梨子の表情を見るに何やら違和感を植え付けてしまったようだった。
「ほら、動かないでね」
「うん…………」
ミカは梨子とは一切目を合わせようとはしなかった。
彼女に限らずAqoursの人達と一緒にいる時はどうも落ち着けない。
彼女達に隠し事ばかりしているせいだろうか。とにかく罪悪感で押しつぶされそうになる。
「はい、これでおしまい」
「あ、ありがとう……ございます」
「うふふ、どうして敬語なの?」
「あっ……ごめんなさい……」
くすくすと笑う梨子を見て、ほんの数ミリ程度だが安心する。自分はこの場を……彼女と二人きりの状況をうまくやり過ごせたと思えたからだ。
「服も取り替えないと……」
「私がとって来ようか?」
「ううん。これ以上は悪いし……」
手当のために脱いでいたブレザーを手に取り、袖を通していく。
「ミカちゃんは、スクールアイドルをやろうと思ったきっかけとか、ある?」
「え?」
それは保健室を出て行くまでの、束の間の雑談の続き。何の意図もなく発せられた梨子からの質問だった。
「きっかけ…………」
「うん。私は浦の星女学院に転校してきたその日に、千歌ちゃんに誘われて……。最初は断ってたけど、結局最後は承諾しちゃって、こうして今も続けてるんだけど——————」
——————『みーちゃんみーちゃん!スクールアイドルやろうよ!一緒に!!』
いつかの友達の姿が脳裏をよぎる。
凍ったように動かなくなったミカは、目を大きく見開いたまま一言だけ答えた。
「……わたしも……同じだった」
「そうなんだ!それってやっぱりユイちゃんが————」
二つ目の質問が飛んでくる前に、ミカは何も言わずに部屋の扉を開けていた。
「ミカちゃん……?」
「ごめんなさい」
呆然とする梨子に、ミカは背を向けたままそう言った。
「…………壊したのはわたしなんだから。……わたしが、償わないと」
相変わらず身体を小さく引きずりながら廊下を進むミカ。
その背中からは、普段の弱々しい雰囲気は見られなかった。
奮闘するルビィちゃん、とてもかっこいいと思います!()
東都、北都、西都の三箇所で物語が進行しているのでやはりスローペースになっちゃいますね(焦)
Bernageの過去についてもいつか丸々1話使って書きたいと思ってます。おそらくそこでユイやミカといったキャラクターがこの作品でどういったポジションなのかがはっきりすると思います。
ではまた次回でお会いしましょう。
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。