ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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CSMVバックル二次受注勢でもうすぐ届くのでめちゃくちゃ楽しみな作者です。
次はオルタリングとかこないかな……。


第28話 聖なるジャッジ

午前5時前の早朝。

 

十千万の地下にある研究室は、普段より一層神妙な雰囲気を充満させていた。

 

「万丈————おいコラ二度寝すんな、起きろ馬鹿」

 

「うぇ〜い…………」

 

(二日酔いのおっさんかこいつ……)

 

今日は重要な任務————北都侵攻作戦を実行する日だ。

 

集合時間までまだ時間があるが…………今のうちにここを出ておいたほうが“面倒なこと”は避けられる。

 

「ほら自分で立て。ベルト、忘れてないだろうな?」

 

「ああ……」

 

まだ瞼を重そうにしているリュウヤの肩を担ぎながら、キリオは自らもビルドドライバーを持っているか今一度白衣の中を確認した。

 

「……よし、行くか」

 

2人で地上へと繋がる扉を開こうとドアノブに手をかけたその瞬間、

 

 

 

 

 

「…………千歌」

 

 

 

まるで待ち構えていたかのように、1人の少女によって一足先にそれは開けられた。

 

「おはようキリオくん。…………本当に行くの?」

 

「ああ、黒澤妹を助けにな」

 

いつの間にかはっきりと覚醒していたリュウヤがキリオの腕を解き、「先に外出てるぞ」とだけ言い残して気まずそうな表情で去っていく。

 

「やっぱり……戦うしかないのかな」

 

「残念だがそうなるな」

 

これからキリオが何をしようとしているか、彼女はわかっているのだろう。

 

千歌は必死に泣き出しそうになるのをこらえながら、キリオと視線を合わせている。

 

「もっと早くにこうしていればよかったのかもな。…………そうすればお前達が……傷つくことなんて、なかったのに」

 

「……ううん、それは違うよ」

 

「……?」

 

「だって————そんなことしても、キリオくんが傷つくだけじゃん」

 

彼女はかすれた声音でそう言った。

 

ああ、まただ。また何を言えばいいのかわからなくなってしまった。これだけは()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ————」

 

「……?キリオくん?」

 

なぜだろう、視界が()()。知らない感情が湧き上がってくる。

 

「なあ千歌、俺は…………俺はどうすればいいと思う?」

 

自然と口に出ていたのがその質問だった。

 

戯言を。そんなものは自分で決めろ、とキリオ自身なら言うだろう。そうわかっていても問わずにはいられなかった。

 

誰かに自分は間違っていないことを証明してもらいたかったのかもしれない。

 

「わからないよ。……私はキリオくんみたいに頭がいいわけじゃないし。これまでみんなにいっぱい迷惑かけてきたから……こういう時にこうすればいいって…………言える自信もなくしちゃった」

 

俯き加減でそう答える千歌。

 

ベストな回答だ。だが同時に悲しくもある。

 

千歌は教え子として他の生徒よりもキリオの影響を受けすぎている節がある。彼の合理的かつ不器用な面が彼女にも現れてしまっている。

 

そうなったのもキリオ自身の責任だ。

 

「……悪いな、変なこと聞いて」

 

「でも!」

 

「……?」

 

「でもね…………私が“こうなったらいい”っていう……願い事ならあるよ」

 

千歌の横を通り過ぎようとした途端、彼女を肩を震わせながらキリオにそう切り出した。

 

 

 

 

「キリオくんには…………誰かの命を奪うようなことは、して欲しくない。みんなの正義のヒーローでいて欲しい……!」

 

 

 

 

雫を溜めた瞳で千歌がそう伝える。

 

キリオは目を伏せ、逃げ出したい気持ちで一心になりながらも口にした。

 

「…………いってきます」

 

「…………いってらっしゃい」

 

背中に感じる視線は、これまで戦った敵から受けたどんな攻撃よりも痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君から申し出を受けた時は驚いたよ。あれだけ戦争に否定的だった君がね」

 

「時間が惜しい。早く軍を動かしてください」

 

「わかっているさ、約束は果たすとも。黒澤ルビィくん……だったかな?Aqoursというスクールアイドルはもはや東都の宝といってもいい。協力は惜しまないよ」

 

どこか含みのある言い方でそう語る塔野首相。

 

キリオはリュウヤと共に、無数に整列しているガーディアン達の先頭に配置されていた。

 

「万丈、悪いがお前は隊列と一緒に正面突破で頼む」

 

「お前はどうするんだ?」

 

「……いざ戦闘が始まれば、軍と軍の衝突で乱戦になるだろう。その隙を見て俺は単独で北都政府の官邸へ向かう」

 

「グリスに遭遇したらどうすんだよ?今のお前じゃ1人で奴に勝つのは難しいだろ?」

 

「それは————なんとかするさ」

 

「大丈夫かよ……」

 

「とにかく黒澤妹を確実に助けるには少数で動いた方が断然いい。なるべく戦闘は避けるようにする」

 

「……本当だな?」

 

「ああ」

 

キリオの言葉を聞いて胸をなでおろすリュウヤ。

 

しかし————こちらが戦闘を避けるつもりでも、向こうからやってくる場合だってある。

 

その時は————

 

 

 

(…………千歌)

 

 

◉◉◉

 

 

「あ、善子ちゃん!」

 

「リリー、鞠莉」

 

難波高校の中庭でぼうっとくつろいでいた善子だったが、校舎の方から駆け寄ってきた梨子と鞠莉を見て我に返る。

 

「どうしたのよそんなに急いで?」

 

「実は……私達3人と、Bernageの2人だけでも、何かライブみたいなことはできないのかなって思ってて……」

 

「いいじゃないそれ!……って、どうして私に黙ってたのよ!」

 

「Stay cool、善子。ついさっき、私と梨子で思いついたことなの」

 

「ああ、そう……」

 

「でもね、校内のどこを探しても……ユイちゃんとミカちゃんがいなくて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『聞こえているか?』

 

「ああ」

 

キリオとリュウヤの腕に巻かれた金属製バンドから塔野首相の声が聞こえる。

 

政府から支給された通信機だ。今回の作戦ではここから流れる指示を聞いて動くことになる。

 

「さっき言った通り俺は単騎で動かせてもらう。指揮は万丈に伝えてくれ、こいつに務まるかはわからないけどな」

 

「いちいちムカつかせるなお前」

 

『いいだろう、目的を果たした後でこちらに加わってもらえれば問題ない』

 

リュウヤは軍用車で大軍と共に移動中。キリオは1人マシンビルダーに搭乗。

 

既に北都の連中もこちらの動きに気付いているだろう。迎撃行動が始まるのも時間の問題だ。

 

「健闘を祈るぜ万丈」

 

『本当に大丈夫なんだろうな?』

 

「俺より自分の心配をしろガキンチョ」

 

そう言うとキリオは車体の進行方向を変え、隊列から徐々に離れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ある程度進んだらそこでニンニンコミックに変身して……あとは隠密行動を……)

 

正直言って今回の作戦が成功するかは……自分達の力量にかかっている。

 

軍隊と軍隊の戦いではお互いにほぼ互角。勝敗を決するのはやはり————仮面ライダーの力だ。

 

「今は信じるしかない」

 

自分が正しいということを信じるしかない。それしか——————

 

 

 

 

 

「………………!」

 

廃れた畑のような道をしばらく進んでいくと、奥の方で何者かがこちらを見つめながら立っていることに気がついた。

 

その人物から数メートル離れた場所でマシンビルダーを停車させ、キリオはヘルメットを外す。

 

「何しに来た。今はお前に構ってる暇はないぞ————スターク」

 

「フフフ……相変わらず冷たいねえ」

 

組んでいた腕を大きく広げ、心底嬉しそうな様子を見せるコブラの戦士。

 

「今回はお前の味方をしに来たんだよ。オレとしても、北都に好き勝手やられるのは回避したいんでね」

 

「信用するとでも?」

 

「あー、わかってるよんなことは。…………だからブツだけ渡しておく。オレは戦争に加わる気はない」

 

ひゅっ、とスタークは懐から取り出した物をキリオ目掛けて放り投げた。

 

 

 

赤い、カーブがかかった形状の中心には大きくメーターらしきものが取り付けられている。

 

「これは…………?」

 

受け取った物を見つめ、キリオは問う。

 

「“ハザードトリガー”…………そいつをビルドドライバーに挿せば、今までよりもずっと強い力が手に入る」

 

「強い力…………」

 

「まあ多少デメリットがないわけではないが…………今のお前がグリスを倒すには、そいつを使うしかないだろうな」

 

じっと渡されたそれを見つめ、キリオは数秒考えこむような仕草を見せる。

 

 

 

これまでの戦いから考えて……スタークはネビュラガスの扱いが飛び抜けて上手い。奴が使用しているブレードや銃も、ガスを自由に扱えるように設計されているのだろう。

 

で、あれば……このアイテムの効果はおそらくグリスと同じように——————

 

「そう心配するな。別に使ったからといって死にはしない」

 

「だろうな。使用者の寿命が削れるアイテムなんて……発明品としては二流もいいとこだ」

 

スタークがそういった物を作らないと断言できないのも確かだが……今はそれよりも気になることがある。

 

「おいスターク…………お前まさか……ビルドドライバーの構造を理解しているのか?」

 

「んん……?」

 

そうだ。このアイテム……ハザードトリガーは明らかにビルドドライバーでの使用を想定したものだ。

 

「それだけじゃない……スクラッシュドライバーや……お前が使っている銃や剣……。いったいどこでその技術を手に入れたんだ?」

 

「おっと、甘く見てもらっては困るな。これでもオレは、あんたに負けないくらい“天才”だと自負しているんでね」

 

「仮にそうだとしても!……短期間であんな物を作るには、それなりの設備や人材が必要なはずだ!!」

 

「それ以上はノーコメントってことで。……じゃあな、せいぜい頑張ることだ」

 

「……!待てッ!!」

 

黒霧に包まれて消滅していくスタークを睨む。

 

誰もいない空を見据えつつ、キリオは再びマシンビルダーのエンジンをかけた。

 

 

 

(……間違いない、奴には“協力者”がいる)

 

それもとても大きな。

 

スクラッシュドライバーなんて高度なシステムを短い間で完成させるには……それこそ難波重工のような大企業からのサポートが必要だ。

 

そしてスタークは…………この国における、何か強力なものの陰に潜んでいる。

 

(この国で……今影響力のあるものに…………奴は身を隠している)

 

大企業へのパイプ…………政府か、軍か。……いや、どちらもピンときてくれない。

 

(…………くそっ)

 

考えたくない選択肢が脳裏をよぎる。確かに一度は考えた可能性が。

 

だが()()が意味するのは————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そろそろ、覚悟を決めなきゃいけない時なのかもな。————俺も、“お前達”も」

 

 

 

 




スパークリングに先駆けてハザードトリガーが登場!
相変わらず嘘は言ってないけど言葉足らずなスタァク……。

来週辺りから執筆にとれる時間も多くなってくると思うので、活動報告にもある通り新たな作品と並行して進めていく予定です。

P.S.早く映画見たいな……。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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