ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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序盤はどうしてもキャラ紹介がメインになってしまいますね。



第2話 アイドルの日々

『Bernageの方々とコラボ……ですか』

 

「はい、それで……どんな人達なのか気になって。聖良さん達なら何か知ってるかもと思って……」

 

部室の席に座ってスマートフォンを片耳に当てる千歌。

 

通話の相手は数多くのスクールアイドル達が集う大会——“ラブライブ!”でも競い合ったことのある北都を代表する姉妹グループ、Saint Snow…………その一人、鹿角聖良だ。

 

『すみません……実は過去に一度、彼女達から共演の依頼が届いたことはあるのですが——』

 

「ええっ!?そうだったんですか!?」

 

『ええ。……でも、その時私と理亞は調整中だったので断ったんです』

 

「そうだったんですか…………」

 

自分達の他にも、以前コラボの提案を持ちかけていたことがわかってほんの少し安心した。

 

「ちょっぴり心配だったんです。私達よりもすごいスクールアイドルはたくさんいるのに、どうしてBernageさんはAqoursに……って」

 

『ふふ、もうそう自虐的になっているようじゃ困りますよ。あなた達は前回のラブライブで……見事私達を負かしてみせたんですから。いつまでもそんなんじゃ、私も理亞も報われません』

 

「そうですよね……すみま————ありがとうございます!」

 

『ああ、それと』

 

耳からスマートフォンを離そうとしたところで聖良の待ったがかかり、咄嗟に「はい?」と詳細を尋ねる千歌。

 

『ルビィさんに変わってもらってもいいでしょうか?理亞が少し話したいことがあるって……』

 

「お安い御用です!」

 

横の方で同級生である国木田花丸、津島善子と何気ないガールズトークに花を咲かせていた黒澤ルビィと視線を交差させ、ちょいちょいと軽い手招きをする。

 

「千歌ちゃん、どうかしたの?」

 

「ほいっ!」

 

「……?」

 

なんの説明もなしに差し出されたスマホを見て首を傾けるルビィ。

 

おそるおそる手にとって耳元へ近づけてみれば————遠く離れた地に住んでいる、友達の声が聞こえてきた。

 

『る、ルビィ?』

 

「理亞ちゃん!どうしたの?」

 

Saint Snowの片割れ、鹿角理亞。聖良の実の妹である彼女は、姉とのコンビネーションを活かしたパフォーマンスで全国でも上位の人気を誇るアイドルへと登りつめた実力者だ。

 

『あー……そのね…………ほら、本物でしょ?』

 

「…………?」

 

電話越しに誰かと会話を交わしているような様子の理亞。

 

彼女の声を聞いたルビィは怪訝な声でもう一度呼びかける。

 

「理亞ちゃん?」

 

『あー……ったくもう!…………あのねルビィ、Saint Snowに新しく入ったマネージャーがいるんだけど……あんたのファンみたいでね』

 

「えーっ!う、嬉しいな…………どんな人?」

 

『どんな……。面倒くさいから一度声を聞かせてあげてもらえる?』

 

『えっ……ちょっ……おまっ』

 

「え?いきなり!?ルビィも心の準備が——————」

 

ゴト、という重い質感の音が耳朶に触れ、同時に心臓の鼓動のような高速リズム。

 

先に沈黙を破ったのは、勇気を振り絞って自分のファンと向き合おうとしたルビィだった。

 

「あっ……あの……初めまして……?」

 

『————る』

 

「る?」

 

何かを溜め込むような静寂。

 

携帯越しに感じるのは、明らかに緊張した様子の少年の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルビィちゃんだあああああああああッッ!!!!』

 

「ピギっ……!?」

 

あまりの叫びにスマートフォンから発する音声が部室中に響き渡り、昼寝をしていた果南が飛び起き、衣装を縫い合わせていた曜が指先に赤い雫を作り、曲作りを進めていた梨子は見事に椅子から転げ落ちた。

 

『あ、あののの……自分、猿渡(さわたり)タクミ、16歳、初めてあなたを見た時から————』

 

『はいそこまで』

 

『あぶっ……!?』

 

誰かが誰かを突き飛ばしたような鈍い衝撃が伝わり、苦笑いを浮かべながらなんとなく向こう側の空気を察するルビィ。

 

『ごめんね。どうしても声が聞きたいって聞かなくて…………』

 

「う、ううん、大丈夫」

 

『じゃあね、ルビィ。またいつか、一緒にライブしましょう』

 

強引に話を切り上げた理亞は最後にそう言い残すと、ブツリと通話を終わらせた。

 

「な、なに今の……?あ、曜ちゃん血出てる」

 

「びっくりしたねえ……あ、へーきへーき」

 

「あ、あはは……」

 

苦笑しつつ千歌にスマホを返したルビィは詳しいことを話さないまま元いた席へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

「そういえば知ってる?“仮面ライダー”の噂」

 

「え?なんですのそれ?」

 

先ほどまで黙々と自分のスマートフォンをいじっていた鞠莉が皆にそう問いかけた。

 

「これデース!」

 

その場にいた全員に画面が見えるよう前方にスマホを突き出す鞠莉。

 

映っていたのはSNS上にアップされた数枚の画像。

 

どれも夜に撮影されたもので細かく目視することは不可能だが、その全てに赤と青の螺旋模様をした人影が確認できる。

 

「…………なにこれ?」

 

「私は知ってるわよ!人知れずスマッシュを倒して世の平和を守っていると噂される————正体不明の執行人!」

 

「善子ちゃんが好きそうな話題ずら」

 

「ヨハネ!!」

 

しばらく興味深そうにそれらの画像を見つめた梨子がふと口を開いた。

 

「どうして急にこんな話を……?」

 

「それがですね…………この写真、どれもこの内浦で撮影されたものらしいのデス」

 

ええっ!?とふわふわ漂っていた皆の視線が一気に鞠莉のスマートフォンに集中する。

 

「……って、そのスマッシュとかいう怪物、私見たことないんだけど……」

 

「街に侵入してきたなんて話も聞いたことありませんわ」

 

「騒ぎになる前に倒されちゃうんじゃないかな?」

 

徐々に盛り上がりを見せる仮面ライダートークの最中。引きずるような重い足音が体育館から聞こえ、数秒後に死んだような目をした青年が戸を開けて部室内へと足を踏み入れた。

 

「うーす…………」

 

「あ、キリオくん」

 

「先生と……呼べ……」

 

「うわっ!すごい隈!」

 

「今日は一段と気怠そうずら」

 

「ロクに身体を動かしてもいないのに、どうしてそんなに疲れているんですの?」

 

「大人の仕事は……大変なんだよ…………」

 

 

 

 

————ここ数日、立て続けにスマッシュが現れている。

 

奴らを倒した後、好奇心に負けてすぐにボトルを浄化してしまうせいか連日の疲労が蓄積されているのだ。

 

それよりも気がかりなのは千歌達が話していたこと。こうも戦う毎に写真を撮られてしまっては正体がバレるのも時間の問題だ。面倒事は嫌いなのでそれだけは極力避けたい。

 

「ねえキリオくん、仮面ライダーって知ってる?」

 

「知らん」

 

「こういうの興味なさそうだもんねえ……」

 

「ていうかそんな都市伝説よりもな、まずは西都を代表するスクールアイドル様達との共演について話し合えよ。曲とダンスは大丈夫なのか?」

 

「それなんだけどね、私達の曲を向こうで練習して、一緒に踊ってくれるみたい」

 

……いいのかそれで。西と東を代表するスクールアイドルがコラボするまたとない機会だぞ。

 

決めるのは千歌達の役目だ。キリオがとやかく言う筋合いはないが————客観的に聞いて物足りない感じはある。

 

「お前達はそれでいいのか?」

 

「当日まであと一週間もないし……負担が減るならこっちもありがたいかな……って」

 

「まあ、それもそうか」

 

急な出来事で彼女達も戸惑っている。

 

合同ライブを申し出たのはBernageの方だ。とりあえずは向こうのペースに合わせるとしよう。

 

 

◉◉◉

 

 

難波高校————それは国内で最大級の規模を誇る重工業メーカー、“難波重工”の傘下である高等学校である。

 

様々な分野において優秀な人材を輩出しているこの学校は、現代社会で凄まじい人気を持つスクールアイドルについても力を入れている。

 

Bernage————彼女達こそが難波高校のスクールアイドルであり、西都を代表するエンターテイナー。

 

 

 

 

 

「やっほー万丈くん。元気してた?」

 

「うわっ……!?——なんだお前かよ、葛城」

 

「なんだとはなんだ。西都の代表と言っても過言ではない、このあたしが自分から挨拶してあげてるっていうのに!」

 

ユイの呼びかけに顔をしかめたこの少年の名は万丈リュウヤ。

 

5年前——スカイウォールの惨劇が起きたその日、孤児院の前で倒れていたという天涯孤独の男。

 

苗字と名前は孤児院を経営している老夫婦から貰い、以降は施設で暮らしている…………という部分を抜けば、他の生徒達と変わらない普通の少年だ。

 

強いて言うならば格闘技のクラブに通っており、それなりの実力を持つということくらいか。

 

「……ていうか、お前はなんで俺にちょっかいかけてくるんだよ」

 

「え?…………仲良くなりたいからって理由じゃ……ダメ?」

 

「その上目遣いウザいからやめろ」

 

「えー……」

 

リュウヤは入学当初から声をかけてくる彼女のことがどうにも好きになれないでいた。

 

彼女————葛城ユイとその幼馴染である氷室ミカはBernageのメンバーだからという理由の他に、その容姿の秀麗さも相まって男女問わず校内でもかなりの人気がある。

 

なかには「うざかわ妹系」であるユイに対して苦手意識を感じる者もいるが、皆少なからず興味は持っているのだ。

 

だがリュウヤは違う。なぜだか二人について“クラスメイト”以上の感情が抱けない。

 

「万丈くんってさ、格闘技やってたよね?」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「戦うの、好きなの?」

 

「なんだその質問……」

 

思えばどうして格闘技を始めたんだったか。

 

いざ問われるとはっきりした答えが浮かばない。

 

「……日頃のストレス発散……か?」

 

「なるほどなるほど」

 

人通りの少ない放課後の廊下。

 

小柄な身体をウサギのように飛び跳ねさせ、ユイはリュウヤの横を通り過ぎる。

 

「今度ね、東都のスクールアイドルさん達と一緒にライブするんだ!よかったら君も見においでよ。チケットは取っておくからさ!」

 

その言葉を残して教師に注意されながらも構わず廊下を走り去っていくユイ。

 

「……スクールアイドルね」

 

孤児院でよく懐いてくる子供達からも何度か聞いた名前だ。

 

三国の平和維持に一役買っていると言われるあの——————

 

「……まあ、見に行くだけなら」

 

どうせ他に用事はないんだ。一度この目で確かめるのも悪くない。

 

みんなが夢中になっている…………スクールアイドルとやらを。

 

 

 




原作とは大きく改変された設定でお送りします。
物語が始まる前の時点でAqoursは決勝でSaint Snowを下し、ラブライブで優勝。
その当時Bernageはまだ有名にはなっていませんでした。

ビルド本編における主人公達のポジションも着々と埋まってきましたね。
そろそろスタークとローグも出したいところ……。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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