ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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一次予約した人は既にCSMアークルが届き始めてるみたいですね。
どうも、二次勢です()



第32話 フェスティバルの後

サイレンの音が響いている。

 

変身を解き、鈍い痛みが残る頭部を抑えながら————猿渡タクミはゆっくりと、瓦礫の中で立ち上がった。

 

「っつ…………」

 

よろめきながら周囲を確認する。

 

倒れている男が二人。一人は東都の、そしてもう一人は西都から派遣された仮面ライダーだ。

 

「…………なんとか、ビルドの暴走は止められたみたいだな」

 

クローズの捨て身の特攻により、ビルドのベルトからハザードトリガーを抜き取ることに成功。

 

現在この場で動けるのは自分だけだ。

 

「……状況を……確認しねえと」

 

通信機を取り出し、首相官邸へと繋げる。

 

仮に東都軍に分があったとしても、今から駆けつければ押し切ることは不可能じゃないはずだ。

 

敵のライダーは二人とも気を失っている。逆転を狙うのなら今しかない。

 

「…………首相」

 

向こうの通信機との接続を終え、来沢首相からの指示を仰ごうと呼びかける。

 

しかしタクミからの連絡に応じたのは…………全く別の人間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハロォ、グリス。調子はどうだ?』

 

「……スターク……?どうしてお前が————首相はどうした?」

 

ご機嫌な口調で語りかけてくるスタークから嫌な予感を覚え、咄嗟にそう尋ねた。

 

『来沢か……奴の仕事はもう終わったんでな、地獄へ永遠のバカンスでもどうかと思って……ついさっき送ってやったよ』

 

「…………っ……!?」

 

向こう側から高笑いをするスタークの声音が聞こえてくる。

 

「まさか……殺したのか…………!?お前北都を裏切るつもりか!?」

 

『何か考え違いをしているみたいだな。……オレは元より、お前らの味方じゃない』

 

「テメェ…………!」

 

爪が手のひらに食い込むほどに拳へ力を込める。

 

…………まさか奴は、最初から東都側の人間?いや、クローズが所持していたスクラッシュドライバーのことを考慮すれば西都政府の回し者と考えた方が自然だ。

 

「……いったい何が目的だ……!?」

 

『北都政府はもう用済みだがグリス、お前はまだ消すには惜しい。せいぜいキリオ達の糧となってもらうぞ』

 

こちらの質問には答えないまま、スタークはそこで通信を切る。

 

タクミは途方にくれた表情で膝を折り、地面を見つめた。

 

その直後、握っていた通信機から報告が届く。

 

 

 

『……北都軍全員に伝える、首相が何者かに暗殺された。繰り返す、首相が暗殺された。至急作戦を中止————』

 

 

◉◉◉

 

 

東都と北都の間で行われた戦争は、東都側の勝利で幕を下ろした。

 

同じ内容のニュースが何度もテレビ内で報道され、それは急速に日本中へ広がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………キリオが、仮面ライダー…………」

 

 

病室のベッドに横たわるキリオを見つめながら、松浦果南が呟く。

 

彼女と向かい合うように立っていた千歌、曜、ルビィの三人は、申し訳なさそうな表情で小さく「ごめんなさい」と口にした。

 

「……本当は、もっと前に言わなくちゃいけなかったと思うけど…………キリオくんが、みんなに言うのはやめろって……」

 

北都との戦争が終結した数日後、全国に散らばっていたAqoursのメンバーは再度東都に戻ることができた。

 

「えっと……そちらの方は?」

 

ふとダイヤが首を傾け、千歌達の隣に立っていたリュウヤの方を見やる。

 

「万丈リュウヤ。…………西都から来た、キリオと同じ仮面ライダーだ」

 

「あなたもひどい傷があるけど……大丈夫ずら?」

 

「ああ、顔にもらったから派手に見えるだけだろ。見た目ほど痛みはない」

 

「あはは……相変わらず頑丈だね万丈くんは」

 

花丸の問いに何気なく返答したリュウヤにユイが肩をすくめる。

 

「もしかして知り合いなの?」

 

「うん、万丈くんもあたしとみーちゃんと同じ、難波高校の生徒なんだ」

 

「なるほど、リトルデーモンね」

 

「普通にクラスメイトって言うずら」

 

またしばらくの沈黙が場を満たした後、意を決したように聖良が切り出す。

 

「それで…………今後のことなんですけど」

 

「はい……そうですよね」

 

千歌に続いてその場の全員が頷いた。

 

現在はSaint SnowとBernageも加え、13人で次に打つべき計画を考えている。

 

現在北都は東都と西都の勢力下にある————というのは表向きで、実際はほとんどが西都軍に占拠されている状況だ。

 

彼らの言い分は「東都軍は消耗している。代わりに我々が後始末を行おう」らしい。

 

怪しさ満点なのは確かだが、東都の兵士も国民も疲弊しているのは事実。何人か東都軍の兵士を同行させることを条件に、それは承諾された。

 

「今回戦場となった区域がとても広いらしくて…………今は西都の人達が何か……“調査”?に来てて、私達の家にも帰ることができません」

 

「ったく……胡散臭いったらありゃしねえぜ」

 

「聖良さんと理亞ちゃんに関しては、しばらくうちの旅館に住んでもらうことにしたんだ」

 

「ええ、本当にありがとうございます。……ほら、理亞」

 

「…………お世話になります」

 

白い床を見つめたまま、理亞はか細い声でそう言った。

 

「すみません、数日前からずっとこんな調子で……」

 

「いえ、お二人も大変だったでしょうし……疲れてもおかしくないですよ」

 

「…………」

 

その時、聖良の横で椅子に腰を下ろしていた理亞が何も言わずに立ち上がり、ゆらゆらとした足取りで病室から出て行ってしまった。

 

「ルビィ……ちょっと様子見てくる」

 

彼女の背中を追うようにルビィも駆け出す。

 

 

 

 

 

「……ライブ、どうしようか」

 

二人がいなくなった病室に、鞠莉の声がうっすらとこだまする。

 

「スクールアイドルは平和の象徴。戦争で国のみんなが疲れてる今こそ……私達で大きなライブをして、みんなを元気づけるべきだとは思うけど……」

 

「まあ……キリオくんならそう言うかもしれないけどね……」

 

千歌はこの病室にはいない、一人の少女の顔を思い浮かべていた。

 

「梨子ちゃんが目を覚ましたら、考えてみよっか」

 

梨子が意識を失った状態で発見され、西都の病院へ搬送されたという話は、善子と鞠莉から聞かされた。

 

原因がわからないらしく、今も向こうで昏睡状態が続いているらしい。

 

「ごめんなさい……あたしがしっかりしてなかったばっかりに……」

 

「そんな、ユイちゃん達のせいじゃないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………確かに、合同ライブをするにしても、梨子がいなくちゃ曲は作りにくいだろうしな」

 

「え?」

 

ベッドの方から飛んできた声に、千歌は思わず短い声を上げた。

 

「キリオくん!目が覚め————ああ、ダメだよまだ寝てなきゃ!」

 

「大丈夫だっつーの、身体に大きな傷があるわけでもないし」

 

乱れた病衣を整えながらキリオが上体を起こし、ベッドを囲んでいた千歌達へ順に視線を注ぐ。

 

「はあ…………また迷惑かけちまったな。……もう知ってるんだろ?」

 

「…………うん、さっきみんなに話した」

 

「そんな顔するな、バレたらバレたでやりようはいくらでもある」

 

キリオは千歌からリュウヤへ向き直り、口元を緩めながら言った。

 

「迷惑かけたな」

 

「……ほんとだよ、死ぬかと思ったんだからな」

 

顔を逸らしながら悪態を吐くリュウヤを見てつい吹き出しそうになる。

 

……リュウヤが止めてくれなければ、キリオはあのままハザードトリガーに意識を食われたままだった。

 

「…………無事で何よりです」

 

黙り込んでいたミカが不意にそうこぼす。

 

「…………Bernageの二人も、梨子達が世話になったな」

 

「お気になさらず、戦兎センセ。スクールアイドルは助け合いですから」

 

しばらく目を合わせ、表情を硬直させるキリオとユイ。

 

「…………?」

 

千歌にはそれが、なぜだか睨み合っているように感じた。

 

 

◉◉◉

 

 

「…………理亞ちゃん」

 

ルビィがそう声をかけると、休憩スペースに設置されているソファーの隅に座っていた理亞の肩がピクリと揺れた。

 

「大丈夫?」

 

「……なにが?」

 

「なんだかずっと苦しそう」

 

「平気よ…………べつに…………」

 

「————猿渡くんのこと?」

 

ルビィが一人の少年の名を口にした瞬間、理亞の瞳が潤む。

 

「…………私、怖かったんだ。戦争が始まった途端、タクミもルビィも、私から離れていっちゃって」

 

「理亞ちゃん……」

 

「だから必死だった、ルビィを取り戻すことに必死で————あいつの言い分なんか、聞こうともしないで……!」

 

戦争が終わったあの日以来、タクミとは連絡がとれていなかった。

 

何度か政府に問い合わせてみたが何もわからないまま、生死すら不明の状態だ。

 

「……バカだよ私。ダイヤだって、私に付き合わなければ怪物にならずに済んだのに」

 

「…………ううん、たぶん違うよ」

 

「え?」

 

「理亞ちゃんがそうしなくても、お姉ちゃんは同じことをしてたと思う」

 

ルビィは理亞の頰に触れ、彼女の瞳に視線を重ねた。

 

「私もそうだった。……誰かを守りたいって思ったから、怪物になる覚悟ができたの。理亞ちゃんだってそうでしょ?」

 

「………………」

 

「猿渡くんだって、きっと理亞ちゃんや聖良さん、北都の人達を守りたいって思ったから仮面ライダーになったんだよ。……その気持ちは、簡単に消えたりしない」

 

そう言って笑顔を浮かべるルビィを見て、ほんの少し胸の奥が暖かくなった気がした。

 

「…………そうだといいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、首相」

 

『おや、戦兎くん。身体はもう大丈夫なのかな?』

 

「ええ」

 

病衣姿のまま廊下の壁に寄り掛かるキリオは、ビルドフォンを耳に当てひっそりと話し出す。

 

「少し頼みがあるのですが……よろしいですか?」

 

『言ってみたまえ。今回の勝利は君と万丈くんがもたらしたものだ、報酬と言ってはなんだが……できる限りのことはしよう』

 

「助かります」

 

胸に手を当て、深く息を吸う。

 

やがて決心がついたようにキリオは切り出した。

 

 

 

 

「パンドラボックスの成分を……採取させてはもらえないでしょうか」

 

 

 




今回は北都との戦争のエピローグ感が強かったですね。
次回から本格的に解答編へと進んでいきます。

そしてラストに登場したキリオの発言の意味とは……。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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