ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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まさかのオリキャス発表に誰もが驚いた朝でしたね笑
ジオウも残すところ5話らしいですが、もしかしてこの先もまだまだレジェンドの登場を期待していいのでしょうか……?


第58話 星狩り族エボルト

「先ほど、確かにパネルがこちらに届きました」

 

『了解した、奴の行方はこちらでも探ろう。君達は引き続き警戒態勢を維持してくれ』

 

「はい」

 

首相との通話を切り、キリオは傍らに置いてある2枚の緑色のパネルを見やる。

 

片方は以前からキリオが所有していたもの、そしてもう片方はほんの数分前に首相官邸から送られてきたものだ。

 

スタークがパネルを狙っていると判明した以上、国の長がいる場所に保管しておくわけにもいかないということでこちらに白羽の矢が立った。

 

パンドラボックスが容易に奪われたことも考えれば政府が備えている戦力だけでは守りきれないのも事実。ならば仮面ライダー達が集結しているキリオの研究室で管理してほしい、とのことだった。

 

「さて」

 

ビルドフォンを上着のポケットへ突っ込み、梨子(ベルナージュ)を囲んで座っていた千歌達の輪に戻っていく。

 

 

 

 

「聞かせてくれベルナージュ。……エボルトってのは何者なんだ?」

 

キリオが椅子に腰掛けつつ投げかけた質問に、耳を傾けていた千歌達も息を呑む。

 

左から順に月、曜、千歌、キリオ、リュウヤ、タクミ、ミカ、理亞、聖良。各々の顔をうかがった後、ベルナージュは物語を語り聞かせるかのような口調で静かに切り出した。

 

「————エボルトはこの地球ではまだ確認されていない惑星、“ブラッド星”から来訪した生命体。奴は我々の故郷、お前達の言うところの“火星”を……たった1体で滅ぼした」

 

「火星を……滅ぼした……!?」

 

「……って、ユイちゃんの正体はそのブラッド星人ってこと!?」

 

「そ、そんなわけないよ……!だってユイちゃんは……小さい頃から、ずっとわたしと————!」

 

驚愕するキリオ達を尻目に、遠い場所を見つめるような眼差しで火星の王妃は続ける。

 

「あの小娘は地球人だ。……ただ、エボルトに肉体を乗っ取られたことでその意識は奥底に沈められている。ちょうど今の梨子のようにな」

 

「憑依されてるってわけか……」

 

つまり葛城ユイ本来の人格は別にあり…………これまでブラッドスタークとして暗躍し、戦争を引き起こそうとしていたのは“エボルト”という地球外生命体の意思というわけだ。

 

それだけじゃない。————難波重工を利用して多くのスマッシュを生み出したのも、スクラッシュドライバーを作ったのも全て奴の仕業ということになる。

 

「そうか、じゃあ……!今までの振る舞いは葛城自身じゃなくて、そのエボルトって野郎が……!……よかったじゃねえか氷室!!」

 

「確かに……様子がおかしくなる前のユイちゃんって、科学は毎回赤点とっちゃうくらい苦手だったのに……急に色んな発明を思いつくようになって————」

 

次々と噛み合っていく記憶の謎に言葉を失うミカ。

 

同時にこれまでの屈辱と怒りがこみ上げ、彼女は強く口を結んでは手に力を込める。

 

「エボルトが惑星を滅ぼすには、その星に宿る“エレメント”を一定数集める必要がある。……そしてそれが揃った時、あの破滅の塔が完成し————何もかもが()()()()()()ことになる」

 

エレメント————とはおそらくフルボトル内の成分を指しているのだろう。

 

……スターク、もといエボルトが所有していたボトルは、全て自らの力で生成したものというわけか。

 

「……最後に残ったワタシはエボルトの肉体と精神を切り離すことに成功したが、奴は“あの箱”とともにこの星へ逃亡。ワタシ自身も大半の力を使い果たし、このバングルに精神を封じ込めることでなんとかその追跡を試みたのだが————」

 

「地球へ来る頃には自力で行動することも叶わないほどに弱ってしまった……ということか」

 

目を合わせることなくベルナージュが頷く。

 

顎に手を添え、思考を巡らせていたキリオはゆっくりと目を瞑った。

 

 

 

ベルナージュから逃げてきたエボルトが辿り着き、そして次の標的として選んだのが……この惑星、地球。それは考えるまでもなく5年前の出来事だろう。

 

その直後にパンドラボックスが飛来し……推測の域を出ないが、エレメントを集めることなく力を解放した影響から不完全な状態であるスカイウォールが形成。惨劇を引き起こすこととなった。

 

————これで、全てが繋がった。

 

 

「エボルトが完全に力を取り戻すことだけは阻止しなくてはならない。……奴を止めることはワタシの悲願でもある。そのためにお前達にはこれからも働いてもらうぞ」

 

「なんで命令口調なんだ……?」

 

「やっぱり王妃様なんだね……」

 

普段の梨子が絶対に見せないような冷たい表情のまま高圧的な態度をとるベルナージュに苦笑する。

 

「……もうひとついいか?」

 

キリオは顔を上げ、幻想的に浮かんでいる翡翠色の瞳と視線を交わした。

 

「あんた、俺の過去を知ってるような口ぶりをしていたな。5年前、スカイウォールが現れる以前のことについてだ。……なにか知ってるなら全部教えてくれ。あんたは過去に俺と会ったことがあるのか?」

 

「……!私からもお願いします!」

 

そう言って隣に座っていた千歌が頭を下げたのを一瞥した後、キリオは改めて表情を引き締める。

 

……これまでなんの手がかりもなかった自らの記憶————その答えがわかるかもしれない。

 

「確かに……ワタシはお前を知っている」

 

「……!じゃあ……!」

 

「だが」

 

ベルナージュは期待に満ちた眼差しから逃れるように目を伏せると、ほんの少し声の調子を下げながら言った。

 

「それを明かすことはできない」

 

「……え?」

 

直後に彼女はキリオの横で腕を組んでいたリュウヤに目を向け、再度口を開いた。

 

「万丈リュウヤ。————お前が、希望になる」

 

「へ?」

 

「ちょっ……!?」

 

その言葉を最後にベルナージュの瞳は閉じられ、倒れかけた梨子の身体を月と曜が受け止める。

 

「キリオくん……」

 

気遣うような視線が千歌から注がれる。

 

記憶の鍵となる回答を聞き出すことが叶わなかったキリオはその場で膝を折り、ベルナージュが残した謎の意味を探る余裕もなくただ頭のなかに反響する言葉に目を泳がせていた。

 

 

 

————ワタシはお前を知っている。

 

 

◉◉◉

 

 

「じゃあ、私達はこれで」

 

「また今度ね」

 

「うん、じゃあね2人共」

 

意識を失った梨子を家に運んだ後、曜と月とは玄関先で別れた。

 

 

 

 

自宅へ戻り、階段を駆け上がっては廊下を進んだ先にある部屋へとお邪魔する。

 

「なんだかすっかり賑やかな感じになりましたね」

 

「あはは、そうですね」

 

敷かれた布団の上に正座をした浴衣姿の聖良が何気なく口を開く。

 

現在理亞と聖良が匿われている十千万の一室。そこに訪れた千歌を加えて、3人はこれまで起こってきたことを振り返るようにぽつぽつと言葉を繋いでいった。

 

「この短期間で、本当に色々なことがありましたよね」

 

「……いつの間にか戦争に巻き込まれて、それでもスクールアイドルを守るために頑張って、ライブもやって……」

 

「————やっと、全部終わったと思ったのにな」

 

不意に理亞がそうこぼし、千歌と聖良は曇った表情で口を閉じた。

 

「地球外生命体かあ……」

 

「まさか、宇宙規模の話になるなんて思ってもみませんでしたね」

 

「……ですね」

 

千歌が天井を見上げた先にあった明かりに目を細める。

 

ブラッド族————通称“星狩り族”とも呼ばれるそれは、多くの惑星を転々と渡り歩いてきた“生きている災害”だ。

 

戦争が終わった矢先、休む暇もなくそんなものが現れるなんて。

 

 

 

直後、ほとんど無音に感じるほど静かな物音とともに部屋の襖が開かれた。

 

「えっと……失礼……します」

 

「あ、ミカちゃん」

 

千歌達と同じく十千万の浴衣に身を包んだミカが恐る恐る中へと歩み寄ってくる。

 

「ほんとにいいのかな……わたし、ここにいて……」

 

「なに言ってるのさ。美渡姉も志満姉も歓迎してくれたじゃない」

 

「タクミだって結局はここでお世話になることになったわけだしね」

 

今は地下にいるであろう男性陣を思い浮かべる。

 

少し前まで互いに拳を交えていた間柄だったが、今は共に西都との代表戦を勝ち抜いてきた仲だ。……なので無駄な争いが展開されるようなことはないと思いたい。

 

「さて、こんな大変な時だからこそ気分盛り上げていかなくちゃね」

 

「……私、もう眠いんだけど」

 

「ダメだよ理亞ちゃん、夜はこれからなんだから。さ、今日はなに話そっか」

 

枕を抱えながら上機嫌な様子で皆に語りかける千歌。

 

その片隅で……影のかかった表情を浮かべている者が1人。

 

 

「…………エボルト」

 

 

誰にも聞こえない声量で、ミカは怨敵の名を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいキリオ、寝なくていいのか?お前もだいぶ疲れてるだろ」

 

机に向かって黙々と何かの作業に励んでいた青年にリュウヤがそう呼びかける。

 

付近の長椅子の上にはこちらに背中を向けながら寝息を立てているタクミの姿。自分も彼と同じように今にも倒れそうなほどの眠気に苛まれている。

 

そしてそれはキリオだって例外じゃないはずだ。

 

「もうすぐひと段落つくから気にするな」

 

「そうか。……ていうか、今度はなに作ってやがるんだ?」

 

「お前の————クローズの強化アイテムを設計してやってんだよ」

 

「えっ!?マジで!?」

 

思わぬサプライズについ大声を上げてしまう。

 

「ちょっと見せろよ……!」

 

夢の中にいるはずのタクミが「うるせえ」と寝言をこぼしたのを聞き、リュウヤは1段階声量を抑えつつキリオの方へと駆け寄った。

 

何やらナックル状のアイテムの設計図が描かれた紙を睨みながらキーボードを叩くキリオ。

 

やがて彼は悩むように唸ると、椅子を回転させてリュウヤに一声言い放った。

 

「お前、気をつけた方がいいぞ」

 

「は?」

 

前触れもなく投げかけられた言葉に間の抜けた返事をしてしまう。

 

「『エボルトが完全に力を取り戻すことだけは阻止しなくてはならない』……って、ベルナージュが言ってただろ?」

 

「え?ああ……それがどうかしたのか?」

 

「エボルトは葛城に憑依している——つまり寄生能力を持っているわけだ。それを踏まえた上でこれまでの奴の行動を思い返してみろ」

 

「エボルトの行動……?」

 

リュウヤの脳内にクエスチョンマークが乱舞するのを察知し、キリオは引きつりながらも正解を伝えた。

 

「あいつがスクールアイドルを崩壊させてまで引き起こしたのはなんだ?」

 

「それは……戦争?」

 

「そうだ。……その理由は?」

 

「そう言われてみれば……詳しいことは全然知らねえな」

 

「答えはこのなかにある」

 

————チン!と電子レンジのような音が響き渡り、反射的にそちらへと顔を向ける。

 

フルボトル浄化装置に取り付けられていた小窓が開き、その中には設計図に記されていたものと同じ形状のアイテムが押し込まれていた。

 

キリオはそれを取り出し、冷ますように息を吹きかけながら胸元まで掲げてみせる。

 

「“クローズマグマナックル”。……エボルトが生み出したボトルの力を最大限に引き出せるように設計したものだ」

 

「エボルトが……生み出した……?」

 

「ほれ」

 

キリオが顎で指し示した先を見てみれば、卓上に置かれた1本のフルボトルが視界に入った。

 

黒曜石を思わせる艶がかった漆黒に龍の意匠が刻まれているのがわかる。

 

「これ……もしかして焦げたスクラッシュゼリーから出てきたのか!?」

 

「ああ、お前が受けたあの熱線は…………おそらくパンドラボックスのエネルギーをそいつに吸収させるのが目的だったんだ。お前をさらに()()するためにな」

 

「でもどうしてだ……?エボルトは俺を強くして何がしたいって言うんだよ?」

 

「そこでさっきの話に戻る。お前、気をつけた方がいいぞ」

 

「だからなにをだよ!」

 

焦らすような口調で語ったキリオは、一度間を置いてから再度本題に入った。

 

 

 

「エボルトは……お前の身体を乗っ取るつもりかもしれない」

 

「……は?」

 

予想もしていなかった言葉にリュウヤは絶句した。

 

呆然と立ち尽くす彼に、キリオはどこか淡々とした調子で続けていく。

 

「さっきも説明した通り、クローズマグマナックルはその黒いボトル……“ドラゴンマグマフルボトル”に合わせて作ったものだ。————要求されるハザードレベルは5」

 

「ハザードレベル……5……」

 

「万丈の異常なハザードレベルの成長速度…………そこに目をつけられたんだろう。代表戦での奴との戦いを経て、お前は俺や猿渡、そして氷室さえも超える域に達していたってわけだ」

 

「まさかエボルトはそのために……より強い身体を手に入れるために戦争を仕掛けたっていうのか……!?」

 

「その可能性が高い」

 

エボルトが戦争を引き起こした理由……それは、奴自身の力を取り戻すことに大きく関係していたんだ。

 

ビルド。

 

クローズ。

 

グリス。

 

ローグ。

 

三国のなかに配置した仮面ライダー達。それらを互いに戦わせ、成長させることで————エボルトは新たな肉体となる人物を見出そうとしていたのだ。

 

「そして最終的に目標値に到達したのが…………万丈、お前だったんだ」

 

「……っ……」

 

突然突きつけられた情報に、リュウヤは青い表情を浮かべたじろいだ。

 

「……ともかくだ。お前が今以上に強くなるのは頼もしいことに変わりないが、同時にエボルトに狙われる危険性も————」

 

少し脅かし過ぎてしまったか、と最後に言葉を添えようとしたところで遮るように着信音が聞こえてくる。

 

 

 

「……なんだこんな時間に……」

 

机の上に放置してあったビルドフォンを手に取り、誰からの電話なのかも確認しないままそれを耳に当てた。

 

「もしもし?」

 

直後、キリオは向こう側で発せられた声に目を剥くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『夜分遅くにすみません〜……!ちょっと戦兎先生とお話がしたくてぇ……我慢できずにかけちゃいました!』

 

 

それは葛城ユイ————いや、彼女の身体に憑依した地球外生命体、エボルトからのものだった。

 

 




エボルト周りの解説回でした。
今回の話からわかる通り、この作品でのエボルトは葛城巧や桐生戦兎の天才要素を持ったキャラクターとして描いています。
……と、いうことは?
気付いた方もいらっしゃると思いますが、実はもう答えは出しています。

解答はもう少し先のお話で。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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