ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
予告でエボルがやばそうなアイテム持ってましたし、一体どこまで強くなるんだあいつ……。
「じゃ、行ってくるね」
「席は特別に用意しておきましたから、楽しんでいってくださいね!」
「ああ、頑張れよ」
ステージ衣装に着替えた11人の少女がこちらへ手を振ってくるのを、キリオは半眼で見送った。
この祭りの目玉と言ってもいい、東都と西都それぞれを代表するスクールアイドルのライブだ。
さすがに今回ばかりは居眠りの類はできない。モラル的にも、スクーライドル部の顧問としても。
「えーっと……席は確か…………」
Bernageの葛城ユイが無理やり作った関係者席に座るよう言われたが……。
「……まさか、あれか?」
先頭列よりもさらにステージに近い、飛び出した席が
やけに目立つ位置に用意された関係者席に渋々歩み寄り腰を下ろすと、背後から千歌やユイ達のファンの恨めしそうな視線が刺さってくる。
「「どうしてこんな席を用意したんだ…………」」
隣の席から聞こえてきた声と重なる。
「え?」
「ん?」
キリオと同じ、もう一つの“関係者席”に座っていたのは高校生くらいの少年。
彼も同じ心境だったのか、キリオとは言葉を交わすこともなくただゆっくりとこちらを見つめたまま頷いた。
後ろから注がれるファン達の視線に耐えられそうにないキリオは同じ境遇である彼へ自然と口を開く。
「……もしかして、葛城ユイの知り合い?」
「あんたもなのか?」
「俺は——Aqoursの付き添いで来ただけの教師さ」
「ああ、そういや……さっきコラボがどうとか言ってたな、葛城のやつ。……俺はあいつのクラスメイトで、半ば強制的に連れてこられた」
「なるほど、なんとなく想像できる」
それにしてもわざわざ一人だけライブに招待するなんて不自然だ。この少年は葛城ユイの彼氏————いや、さっき彼はそんなことは口にしていなかった。
「お、始まるか」
「…………」
既に時刻は19時を回っており、先ほどまで点灯していた照明が消えたことで会場は一気に暗闇に包まれる。
そして押し上げるような歓声と共に————彼女達はステージに現れた。
まずは1曲目。不意を突くように始まったのは————Bernageの二人が披露する「
天体をコンセプトとした神秘的な衣装を身にまとった赤と黒、二人の歌姫が会場を独自の世界観に引き込んでいく。
(……この二人のライブをちゃんと見たのは初めてだが……なるほど、確かにこれは————)
メンバーが二人しかいないという点は北都のSaint Snowと同じ、イメージカラーも通ずるものがあるが…………こちらの方が観客を魅了するというスキルに長けている。
葛城ユイ——普段見せている“お調子者”がまるでフェイクのようだ。この瞬間だけを切り取ってみればいつもの幼さよりも妖艶さが勝っていることは明白。
そして氷室ミカ——最初に顔を合わせた際の控えめなイメージともまた違う、物静かな魅力を秘めている。加えて彼女に関しては歌唱力がずば抜けている。全スクールアイドルの中で随一と言っても過言ではないだろう。
——————『ああ、ダメだなこりゃ』
「うっ…………!?」
「……?どうかしたのか?」
頭に亀裂が入るような痛みが走る。
隣で苦しそうに表情を歪めたキリオを見て、隣に腰掛けていた少年が声をかけた。
「おいあんた、大丈夫なのか?」
——————『火星でダメージを受けすぎたか。……仕方がない、一旦活動は休止としよう』
声が、聞こえる。…………誰の?
よく
「おい、あんた!!」
「……お……まえは……」
「あ!?」
——————『ドライバーと……そのパネルはお前に預けておく、無くすなよ?……ああ————』
「……誰だ……!?」
——————『もう聞こえてないか』
「おいッッ!!」
「……!?」
少年に肩を揺すられて我に帰る。
ふと顔を上げれば赤と紫のライトがステージを彩っていた。
「……すまない、急に頭痛が……」
「ったく……びっくりさせんなよ」
「悪いな……えっと……」
「万丈だよ、万丈リュウヤ」
「万丈……か、礼を言うよ。俺は戦兎キリオだ」
流れでお互いに自己紹介を終えたところで会場を満たしていた音楽が止まり、Bernageの二人もフィニッシュのポーズをとる。
鼓膜が痛むほどの歓声が上がり、ステージを照らしていた光からは徐々に色が抜けていった。
「さあて皆さん、こんばんわーーーーーー!!」
軍隊の如く揃った拍子で返答するファン達を見て、キリオとリュウヤは耳を塞ぎながら瞳を細める。
「あわわ……びっくりした。もうちょっと抑えて抑えて。あんまりうるさくしちゃうとスタッフさん達に怒られちゃう!」
ニッと口の端を上げたユイはマイクでステージ上手を指し、観客の視線がそこへ集中する。
「今日のライブはあたし達だけのものじゃないよ!なんとスペシャルゲストに来てもらっています!!」
ざわつくファン達からは既に落ち着きが失われている。Aqoursが出演することは事前にわかっていたので、観客のなかにはわざわざ東都から足を運んだ者もいるかもしれない。
「Aqoursの皆さんですどうぞーーーーーー!!」
ユイの呼びかけに応じて千歌達9人が一斉にステージの横から登壇する。
トップ3の内2つのグループが並んでいることがよっぽど衝撃的だったのか、コールまで上がるほどの盛り上がりっぷりだった。
「あいつらって…………」
「こんなに人気あったんだなあ…………」
キリオとリュウヤは今まで興味を示していなかった身近にいた少女達の一面を思う知らされることとなった。
「はーい皆さーん!かんかん!」
————みかん!
「かんかん!!」
————みかん!!
「かーんかーん!!」
————み・か・ん!!!!
「……なんだ、これ」
「コールってやつじゃないか。……そういえば前に千歌達が決めたって言ってたな」
「はあ……」
リュウヤはスクールアイドルにあまり興味がなかったのか、ライブに関しての知識もほとんど見受けられない。キリオが言えた口ではないが。
「う〜ん千歌ちゃんったら可愛すぎだよまったく〜!!」
「それでは次の方————」
9人全員のコールと紹介が終わり、いよいよ次のプログラムへと移ろうとミカがマイクを持ち口元へ近づける。
「それではここで2曲目……Aqoursの皆さんで、『未来の————」
瞬間、ステージを照らしていたライトが騒音と共に消え、会場に暗闇が訪れた。
「なんだ…………!?」
何かが破壊される音。
すぐそばで巨大な炎が上がり、客席に座っていた人達は咄嗟にその場を離れようと滝のように会場から逃げていく。
「なに……?なにが起きてるの……!?」
ステージの上に立っていた千歌達はただ呆然と逃げ惑う人々を見下ろすことしかできなかった。
「と、とにかく避難を!」
「……!あれって————」
梨子が指で示した先にあるのは大柄な人影。
暗闇に煌めくのは右腕から射出されている火柱。炎を操る————スマッシュだ。
「怪物……!?」
「スマッシュですわ!」
「……!危な————」
バーンスマッシュが放った火球は照明が取り付けられていた柱に直撃。被弾した部分が焼け切れ、ステージへと真っ直ぐに落下してくる。
「……!!ユイちゃん危ない!!」
「きゃああああああああっ!?」
地を蹴り飛ばし、駆け出したミカはユイの身体を覆うようにして庇った。
「二人とも…………!!」
「千歌ちゃん!?」
千歌が伸ばした手は空を切るも、彼女はユイとミカを助けたい一心で走り出した。
「ダメ……!間に合わな——————」
「うおおおおおおおおッッ!!!!」
刹那、驚異的なスピードで壇上へと上がってきた人間が一人。
一人の少年はユイとミカを腕で包み込むようにして突き飛ばし、そのまま勢いに任せて落下してくる柱の真下から連れ出した。
「あっぶねえ……!死にとこだった……!!」
「万丈くん……!?」
リュウヤが二人を助け出したのを見て胸を撫で下ろすのも束の間。千歌はスマッシュの銃口がこちらへ向いていることに気がつき、目を見開いた。
《ボルテックブレイク!》
その直後、螺旋状の斬撃が発射された火球を打ち落とした。
先日目撃した赤と青の戦士が、千歌達を守るようにスマッシュの前に立ちはだかる。
「……!仮面……ライダー……?」
「お前達なにやってる!ここは危険だ、早く逃げろ!!」
「はっ……はい!!」
バーンスマッシュの火球を防ぎつつ彼女達の逃げ道を作る。
「……くそっ……!」
「万丈くん……!?」
「先に行け!!」
ユイや千歌達を送り出したリュウヤが続こうとしたその時、彼を行かせまいとする
身体のあちこちに備えているプレス機構が特徴的な怪物。生身でこの両腕に挟まれればひとたまりもなさそうだ。
「おいお前……!なにしてんだ!?」
キリオは傍でプレススマッシュと対峙しているリュウヤに気がつくも、バーンスマッシュの対応で手が出せないでいた。
「チィ……!————オラァッ!!」
「……!?」
予想外にも素手でスマッシュと戦い始めたリュウヤに呆気にとられるも、その奮闘ぶりを見てしばらくは持ちこたえられると判断。
キリオは1本のフルボトルを取り出しては、隙を見てリュウヤへと投げ渡した。
「あ……?なんだ——これッ!?」
プレススマッシュに拳を浴びせながらも受け取った青いボトルを見つめるリュウヤ。
「さすがに素手のままじゃ埒があかないだろ。それを振りながら戦え」
「振りながら……てかあんた誰だよ!?」
「んなこた今はどうでもいいんだよ!こっちはこっちで手一杯なんだ!!死にたくなけりゃ死ぬ気でやれ!!」
「くっそ……どうしてこんなことに…………!!」
◉◉◉
「はあ……っ……はあ……っ!」
「ここまでくれば…………平気だよね……?」
会場から逃げてきた人々が多く集まるなか、千歌達はふと欠けている人物がいることに気がつく。
「……キリオくんは?」
「このなかにいるんじゃないかな」
曜が示した先に見えたのは通る隙間もないほどの人混みだった。
「……はぐれないように探しましょうか」
「まったく世話が焼けるわね」
「……あれ?」
不意にミカが短く声を上げ、皆の視線が彼女へと集中した。
その表情からは血の色が抜け落ちており、いつものそれよりも一層気弱な印象を与えてくる。
「どうかしたの?」
「……ユイちゃんが————」
「おーおー、やってるやってる」
夜闇のなかでスマッシュと戦う仮面ライダーと少年の姿を目で追う者が一人。
高台の上で血のように赤い"蛇"が眼下を見下ろし、不敵に笑った。
「さあ、実験を始めようか」
今作での万丈ポジと主人公がついに出会いました。
ライブ中に襲撃……というのは読者の方々もなんとなく予想できたと思います(笑)
さて、最後にスタークが口にした言葉が示す意味とは……。
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。