生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。友人に進められたオーバーロードで小説を書いて見ました、私自身が料理を好きなので料理人の至高の41人です。アバターは星のカービイの「コックカワサキ」で行こうと思います。なおアニメのみの情報なので、かなりにわかなので、設定など間違っていればご指摘よろしくお願いします




オードブル 料理人異世界に立つ

オードブル 料理人異世界に立つ

 

西暦2138年。東京アーコロジー内の高級ホテルで、ある催し物が開かれていた。いまや超高級食材である生の食材を使った料理対決、そこに俺貧民層の料理人「川崎雄二」はいた。それは本来ありえないことだった、貧民層の人間が富裕層の人間に対して料理を振舞う、そんなことは本来ならば決してありえない。ただの富裕層の人間の戯れ、それでこの男「川崎雄二」はこのホテルの厨房で腕を振るった。他の参加者とは比べるまでも無い粗悪な素材、古い油にボロボロの包丁。料理の知識はあっても課題の料理は作った事は無いと言う重すぎるハンデ、更には他の参加者と異なり、誰一人サポーターなどいない状況で彼は100人前の料理を作り上げた。

 

「勝者、藤堂司!」

 

黒いタキシード姿の男の宣言を聞いて、大きく深く溜息を吐く。判っていた事だ、貧民層の俺が、富裕層の料理人の藤堂に勝てる訳が無い……俺は判りきっていた勝敗に何一つ文句を言わず、そのホテルの大広間を出ようとした。

 

「待て!お前は!お前は何も言わないのか!?」

 

「んだよ。敗者に何が言いたい?」

 

俺を呼び止めた勝者である藤堂に向き直る、俺はアーコロジーの中で苦しいながらも食材や、富裕層が捨てる食材を安く貰いうけ理想とする味には程遠く、ゴミみたいな材料で量も少ないが、それでも美味しいと喜ばれる料理を提供してきた。超高級食材を惜しげもなく使い、メインコックよりも腕のいいサポーターが何十人もいる藤堂に勝てる訳が無いのだ。

 

「僕が勝者だって!?ふざけるな!判ってるだろう!!僕が負けたんだ!!僕自身がそれを一番判っている!!!!見ろ!残っている料理の数を!!!!」

 

「うっせえなあ。審判が勝ちって言ってるんだから、素直に勝利を認めろよ」

 

広間に並べられた2つの机、1つは料理は何一つ残っておらず、もう1つはその大半が残っていた。料理が残っていない机が俺の机、料理が残っているのが藤堂の机。

 

「お前の勝ちなんだ!味も!細工の腕も!僕は何一つお前に勝っていない!僕にお前が捨てた勝利を拾えと言うのか!!」

 

おーおー、富裕層の人間はプライドもたけえなぁおい、俺は所詮見世物で呼ばれた男。そんな男が勝ってはならない、俺はどれほど素晴らしい料理を作ろうが敗れ、そして嘲笑を浴びなければならない。貧民層の人間が何が料理だと笑われなければならない。

 

「料理に勝ちも負けもねえ、ただ食う人間のことだけを考えて作る。俺は呼ばれたから料理をしにきた、勝とうが負けようが興味はねえ。ただ、食い終わった後にどっちの料理かって聞いて動揺する富裕層を見たのは笑えたがな」

 

俺の料理を流石富裕層と言って食いまくっているのは面白かったが、恥をかかされたと審判の連中は怒っているようだ。が、俺からすればお前達が藤堂の足を引っ張った結果の上の勝利だ。勝ち負けからすれば、藤堂が順当に料理していればもっと接戦だったと思う。

 

「お前はよくやったよ。料理のジャンルが違うサポーターを何人も抱えて良く料理したよ」

 

使う食材が違う。食材の切り方が違う、味付けが違う。補助ではなく、妨害に等しい中よく料理したと思う。

 

「覚えときな、金持ち共。フレンチの料理人に和食と中華の料理人をサポートにつけるなんて、馬鹿な真似は2度とするんじゃないってな」

 

有名な料理人でも料理の相性ってモンがあるんだぜって笑い、広間の写真を1枚だけ撮り、俺はそのホテルを後にするのだった……今日はコレだけじゃなくて、まだやるべきイベントが残ってるからな。

 

「間に合うか……?」

 

ダイブマシンをセットして、PCを起動する。DMMO-RPG「ユグドラシル」一世を風靡したゲームの最終日。それが今日だった。そもそも料理大会だって、本当は昨日の予定だったのに、富裕層の予定とかで延長されたのだ。

 

(でもまあ、良い土産話は出来たよな)

 

俺は異形種ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルドメンバー。アバターはオレンジのよく判らん、柔らかそうな人型の生き物「クックマン」戦闘技術の取得に制限がかかる代わりに、料理に様々な効果をエンチャントするスキルに特化した種族だ。無論人気などある訳も無かったが、俺には最高のアバターだった。リアルで作れない料理をゲームの中で再現できる、それだけでクックマンを選んだのだ。戦闘に関してはどうでもいいと思っていたのだが、異形種狩りにあっている時にモモンガさんに出会い、アインズ・ウール・ゴウンに誘われた。戦闘に関して期待できるわけは無い、ただロールプレイを大事にするモモンガさんは自らのギルドの拠点に食堂を作りたいらしく、リアルでも料理人の俺を誘ってくれたのだ。

 

(ウルベルトさんとか、居ないかなあ)

 

この写真を見せてやりたい、富裕層の馬鹿舌共を俺の料理で唸らせたのだ。貧民層の俺が富裕層に勝ったんだ、その証拠を仲間に、皆に見せてやりたい。ウルベルトさんはきっと爆笑するだろうし、モモンガさんもきっと笑ってくれるだろう。そう思って俺はユグドラシルにログインしたのだった。

 

「いない……間に合わなかったのか?」

 

コック帽にクッキングコート姿の丸い巨人、それが俺「川崎雄二」のアバター「コックカワサキ」だ。誰もいない円卓の間を見て落胆する、時間は11時58分……もう皆ログアウトしてしまった。いや待てよ?

 

「スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが無い」

 

ギルド武器が無い、それにモモンガさんが最後まで残っていないなんてことはありえない。

 

「玉座の間だ!」

 

最終日だからとモモンガさんはそこにいるはず。最後まで使うことの無かったギルド武器を手にして、そこにいるはずだ。俺はそう確信し、円卓の間を出て玉座の間に走った。本来いるはずの戦闘メイド達の姿も無い、それがモモンガさんが玉座の間にいると言う確信になった。

 

(ええい、足が遅すぎる!)

 

クックマンはHPこそ高いが、攻撃力・防御力・素早さなどは絶望的だ。なんせ料理人だ、戦闘に直結するスキルやステータスは絶望的なのは当たり前だ。更に言えば、超ド短足なので走っているつもりでも、実際は歩いているようなスピードで、しかもぽきゅぽきゅっと言う間抜けな足音が出るのが更にいらだたせる。

 

「ま、間に合えええ!!!!」

 

走っていては間に合わない、最後に顔くらいは見たいと思い、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い、転移した瞬間。凄まじい衝撃が襲ってきて、俺は立っていられず、その場に倒れこんだ……

 

「うっぷ!?なんだ!?」

 

顔を上げたら俺は玉座の間ではなく、木々が生い茂る森の中にいた。口の中に入った草をぺっぺっと吐き出す、ったく苦い草……

 

「苦い……だと?」

 

DMMOで味や臭いに関する物は法律で禁止されている、味なんて感じるはずが無い。俺の気のせいだと思い、草をちぎり、頬張る。青臭い臭いとエグミと苦味……

 

「ぺっぺっ!マジかよ……味を感じるだと……!?」

 

最終日が変わった?いや、そうだとしても味を感じるのはどう言う事だ。コンソールも出ない、GMコールも出来ない……どうなってるんだ。

 

「待て待て、落ち着け落ち着け、こういうときは……」

 

肩から提げている鞄からフライパンと包丁を取り出す。クックマンの専用の武器と防具だ。攻撃力と防御力は皆無だが、作った料理のバフや追加効果の効果を倍増させる効果がある。

 

「……出来るか?」

 

アイテムボックスを開くイメージをしながら、虚空に手を伸ばす。俺の手が黒い穴の中に吸い込まれ、黒い穴から手を引き出すと、取り出そうと思っていたドラゴンのフィレ肉の塊が握られている。何ドラゴンだったか忘れたが、たっち・みーさんが狩って来たドラゴンだったのは覚えている。

 

「……どうなってるかはまるで判らんが……とりあえず、飯でも作るか……」

 

混乱しきっているからこそ、飯を作ろう。俺は料理人だ、料理さえすれば落ち着ける。ここがどこで、ログアウトも出来ない、味も感じる、匂いもあるという謎は確かに気になる、気になるのだが……

 

「こんな食材。リアルじゃ絶対手に入らん」

 

料理人として素晴らしい食材を目の前にして、料理をしないなんて選択肢はありえない。これが夢だとしても、それで良い。最高の料理を作る。それだけを考えファイヤーで炎を起こし、ドラゴンのフィレ肉に塩コショウを振り、軽く下味をつけながら、自分が今どこにいるのかを考える。まずリアルはありえないし、ユグドラシルのアップデートというのもありえない。じゃあなんだ?と考え、脳裏に過ぎったは自分でも馬鹿馬鹿しいと思う考えだった。

 

(異世界転移……とか?)

 

は、馬鹿馬鹿しいと思いながら、加熱したフライパンにドラゴンの脂の塊を加えて炒める。脂が溶けて来た所で500gはあるドラゴンのフィレ肉を丁寧にフライパンの上に置く。肉の焼ける音が食欲を刺激させる。ここまで来ると、流石にこれが現実なんじゃと思ってくる、夢にしてはリアルすぎるからだ。ここが現実と思うと同時に1つの疑問が脳裏を過ぎる。なんで俺はナザリックじゃなくて森の中にいるんだろうな、と思いながら肉を見つめる。ステーキを焼く時、何度も何度もひっくり返すのは論外だ。肉をひっくり返すのは1度だけ、それも肉の表面に脂が浮いてきたそのタイミングだ。そして引っくり返してからの焼き加減でレアなのか、ミディアムなのか、ウェルダンなのかを決めるのだが……

 

(流石ドラゴンの肉、牛肉の焼き時間とは違うぜ)

 

まだ焼いているのだが、表面に脂が浮いてくる気配は無い。牛肉なんて焼いたことは無いが知識では知っている。牛肉ならとっくに表面に脂が出てくる時間なんだがなっと思いながら、付け合せの野菜を一口大に切り分け後を振り返ることなく声を掛ける。

 

「おい、そこで見てる奴。腹減ってるなら、一緒に飯食わないか?」

 

さっきから視線を感じるし、ぐううっと腹を鳴らす音を聞けば誘わないわけには行かない。振り返らずに背後に向かってそう問いかける。

 

「モンスターでも料理なんてする奴いるんだね」

 

木々の間から顔を出したローブを身に纏った女が、にやあっと化け猫のような表情で笑う。

 

「私を料理にするつもりなら抵抗するよ」

 

エストックを手にする女に冗談じゃないと笑う。俺はレベル100だが、クックマンのデメリットでレベル50の人間にも負ける。それほどまでに弱い俺は戦うつもりなんて無い、そして更に言えば……

 

「馬鹿言え、人間は不味いんだよ。それに俺は弱い、お前と戦うつもりも無い。俺は美味い料理を作りたいだけだ、んで食ってる人が笑ってくれればそれでいい。あんたを誘ったのは、まぁあれだ。1人で食う飯は不味いって訳だ」

 

俺がそういうとローブを纏った女は変なモンスターと笑いながら、俺の前に座り込む。一瞬ローブの下が見えたが、水着みたいな格好だった。ゲームとかで見るビキニアーマーって奴か?黒い色なので、戦士と言うか女王と言う印象が……

 

(マジモンのファンタジーの世界か?いや、まあ別にいいが)

 

まぁ、人の服装はその人の自由、俺は料理さえ出来ればそれで良い。ここがどこだとか、そういうのは興味は無い。ただ1つ気がかりなのは……

 

(モモンガさんもいるのかな?)

 

俺がこの世界にいるように、モモンガさんもこの世界にいるのかな?俺はそんな事を考えながら、食前酒には丁度良いし、それにドラゴンのステーキにフランベにも使おうと思い、アイテムボックスから知恵の林檎で作ったワインを取り出すのだった……

 

メニュー1 ドラゴンフィレ肉のステーキとガーリックライス

 

 




カワサキガ遭遇した現地人。一体なにマンティーヌなんだ……個人的に割りと好きな人物なので、生存ルートで行きたいと思います
次回はクレマンさん視点から書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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