メニュー72 立食パーティ その2
帝国と王国の貴族をロ・レンテ城に集めての和平パーティ。これはジルも私もランポッサもだが、一波乱あると読んでいた。
「……わが国の貴族が気分を害す事をしたら申し訳ない。もしそうなった場合、約束の食料品の輸出はそちらが提示した額よりも安く提供する事を約束する」
「何、そう気にすることは無い。私も帝国を作り変えると決めた時は良くあった事だ。何かを変えると言うことは難しい……国を変えることはなお難しい」
ジルが気にする事は無いと優しい笑みを浮かべながら、ランポッサ3世に告げる。これがいままでの弱気なランポッサならば慰める事は無かっただろう、だが今のランポッサ3世ならば対等な同盟を組むことが出来る。どちらかに依存した形だけの同盟ではない、互いに互いを支えあいお互いの国を大きく発展出来ると考えたのだろう
(よく、ここまで来た)
まだ子供と思っていた。だが国を……今までの歴史を変えるような一手を打つことに躊躇いを持たない。それはジルが今までの帝国の皇帝の歴史を変えた瞬間と言える。この大きな歴史の転換期を見届ける事が出来るのはワシの長い人生の中でも最も幸運な瞬間なのかもしれない……
「まぁ、起きるかも知れないことを警戒しても仕方ない。何時までも私達がパーティに顔を出さないのも要らぬ不信感を与えるだろう」
「うむ、ではパーティ会場に行くとしようか」
カワサキが今日のパーティの為に準備をしている。正直に言うと、カワサキが料理を作っているのにパーティに参加しないのはあまりにも勿体無い。ジルもランポッサも同じ事を考えているのか、子供のような笑みを浮かべる。空腹の前には誰しも等しいと言う事か……玉座で話をしていたジルとランポッサも既に正装をして、パーティに参加する準備をしている。こうして話をしているよりも食事をしたいと思っているのは明らかだ、まぁそれもワシも同じかと苦笑しながら玉座の間を出る。
「待たせたな、では行くとしよう」
貴族のパーティに参加するのに不自然ではないように正装をしている、レイナース、バジウッドがジルとワシの護衛につき、ランポッサには同じく正装をしたガゼフが後ろについている。
(さて……と、どうなることやら……)
帝国を変えるとジルが決めた時もジルはパーティを開いた。パーティとなれば万全な警護を敷く為に直接的な護衛は最小限になる。変わる事を認めない者達がそんなチャンスを見逃すわけが無い。
(自らを囮とする気質は変わらんか)
自分の兄達を殺したことで壊れたジルの心……それは家族への情が少ないと言う事に現れているが、実はそれだけではない。人は簡単に死ぬ、それを見すぎた事によりジルもまた死に慣れ過ぎた。戦場に自ら出てガゼフをスカウトしたり、僅かな護衛だけで街を出歩いたりするのもそれだ。ジルは自らの生にさほど執着していない、本人は否定するだろうがワシから見ればそうとしか思えない
(さてさて、最後まで見届ける事が出来るかの……)
ジルが真の皇帝として大成すれば、宮廷魔術師としてのワシの役目は終わるじゃろう。ジルクニフこそがワシの最高傑作にして、至高の皇帝だ。これ以上才気溢れる皇帝は生まれることが無いだろう。そしてまた次の皇帝が王座につく、それをワシが見届けることは無い
(まさかワシにもまだこんなにも人の心があるとは……)
ワシの不完全な不老不死には限界が見え始めている。今はまだ元気だが、ジルが死ぬまでは生きられぬ。それは予感でも予想でもなく、確信であった。死ぬまでに魔法を極めようとするのか、それともジルと言う歴史を変えた皇帝を最後まで見届けるのか……
(全く、贅沢な悩みだ)
自分には過ぎた物だとつくづく思う、メイド達によるジルとランポッサの入室の言葉を聞きながらワシは顎鬚をゆっくりと撫でるのだった……
ジルクニフと王は簡単な挨拶を済ませ、自分達もパーティへと参加する。私は護衛としてパーティ会場をさっと見回す、並べられたテーブルには色取り取りの料理が並べられているが、カワサキ殿の店で見たような料理は殆どない
(……やはりカワサキ殿は素晴らしい料理人なのだな)
訪れる客、食べさせる相手に応じてここまで料理を作り分ける事が出来る。どれも片手に乗せられる用の少量で盛り付けられていたり、メイドがついて料理を提供する姿も見える
「ゴウン殿がおられないな」
「そうですね……ご招待はしたのですが……」
カワサキ殿を通じてぜひゴウン殿にも参加して欲しいと頼んだのだが、その姿は無い。カワサキ殿が何か聞いているかもしれないと思い、その姿を探すがカワサキ殿の姿も見えない。
「最初から参加している余裕が無いのかもしれませんね」
カワサキ殿とゴウン殿が王国を訪れたのは自分達の国を滅ぼしたモンスターを追っての事。その事を考えれば、私達がどれだけ無茶な頼みをしていたのかが良く判るな
「とりあえず、カワサキ殿が姿を見せるのを待つとしようか」
「はっ!」
着慣れない正装をしているが、それでも王を守ることは私の役目だ。ぴったりと後ろをついてパーティ会場を見る。
(……今の所それらしいものの姿は無い)
今までと異なり非情な決断もとる王に恐れを為している貴族は多い。しかもここには帝国の貴族も皇帝もいるとなればやはり、この場所に襲撃を仕掛けようと考える愚か者はいないと言う事か
「ほう、見たことのない料理だな。ガゼフ何か知っているか?」
そう言われ王が見つめている料理に視線を向ける。カワサキ殿の店では色々食べてきたが、果たして自分の知っている料理かと僅かな不安を抱いていたが、料理を見て安堵した
「ピザと言う料理です。チーズをふんだんに使った料理です。私も1度食べましたが、実に美味でした」
チーズと言うのは高級品だ。それをふんだんに使っていると聞いて王も興味を抱いたのか、給仕をしているメイドに声を掛けてピザの皿を受け取る。私もピザの皿を手にしたのだが、前に食べた物とは随分と違うと思った。具材はシンプルにトマトとハーブ、それとたっぷりのチーズ。肉や海鮮と言う具材の姿は無いが、それでも美味そうに見える。普段なら毒見である私が先だが、カワサキ殿が毒を盛っている筈が無いと同時にピザを手に取り噛り付く
「んむ、これは良い、実に美味い」
「はい、とても美味です」
見たこともない料理と言う事で遠巻きに見ていた貴族達が私と王の言葉に耳を傾けているのが判る。カワサキ殿の料理はどれも絶品だが、見覚えの無い料理が多い。それ故にピザに興味はあるが食べるのに抵抗のあった貴族がこちらに聞き耳を立てているのが判り、思わず苦笑する
(うむ具材はシンプルだが、これは良い)
サクサクとした食感になるまで焼かれたピザ生地、それはパンとは全く違う食感なのだが、それがまた良い
「チーズが零れないように焼かれているのだな、実に興味深い」
チーズと言うのは熱を加えると溶ける。前に食べた時も生地を噛み切ればチーズは零れ落ちていた、だが今回のこのピザはチーズが零れ落ちることは無い、そういう風に調整して焼かれていると言うのは判る。だが生地は丁度いい焼き加減であり、そして具材も焦げていない。まるでチーズだけに熱を加えたように思える。
「ソースにしたトマトとざく切りのトマト、それにこのハーブがいい」
「はい、このようなハーブは初めてです」
甘く爽やかな香りのするハーブは濃厚な味のピザに乗せられる事でピザの味を大きく変えている。チーズの濃厚な味とトマトの酸味と甘みの中に、アクセントとしてハーブの苦味と甘い香り。口の中がさっぱりとし、ピザを齧る手は止まらない
「もう1枚貰えるか?」
「は、はい!どうぞ」
あっという間に食べ終え2枚目を頼み歩き出す王を見て、私も2枚目を受け取り後を追って歩き出す。
「このように歩きながら食べると言うのはあまりマナーが良くないが、たまにはいい物だ」
カワサキ殿に出会う前の憂いに帯びた顔ではない、心から嬉しそうに笑う王に良かったと安堵する。確かにまだこれからではある、だが確かに王国はゆっくりとだが変わろうとしている。
「ほう、ひき肉を鶏肉で包んだ物か、面白そうだな。1つ貰おうか」
「はい、こちらバロティーヌと言う料理だとカワサキ様から聞いております」
バロティーヌ……これも聞いたことの無い料理だが、実に興味深いな。肉を肉で巻くという調理法は面白いと思い、私も1つ貰おうと思った所で背後から声を掛けられた。
「俺の料理はどうかな?舌に合ったかな?」
「カワサキ殿。ええ、勿論。どれもこれも絶品です」
カワサキ殿がそれは良かったとにこにこと笑い、クレマンティーヌ殿と一緒に何かを運んでいる。
「何を運んでおられるのですかな?」
「今日のメインを作る為の調理道具ですよ。ねー、カワサキー。重いから早くもってこーよ」
クレマンティーヌ殿が話すのは後でと言う。それは王に対する言葉遣いではないが、普段飄々としているのにそのつらそうな態度を見れば、運んでいる物が相当重いのだと判る
「申し訳ないですが、これで失礼します。もう少ししたら、今日のメイン料理の調理を始めるので、ぜひ来てください」
私達にそう声を掛けて歩いていくカワサキ殿達。ゴウン殿の事を聞きたかったが……この場で料理を作るというので、その時に聞けばいいと思う事にした。
「ああ、すまないが1つで結構だ」
そして王が2つ乗せられるバロティーヌを1つで良いと言う姿に思わず笑いそうになり、それを必死に堪え私も1つでとメイドに声を掛けるのだった……
カワサキが腕を振るったと言うパーティ、そこに置かれている物の大半は見知らぬ料理が多い。もしくは名前を知っていても、全然違う味付けだったりする。最初は量が少ないと思ったが、カワサキが何かを運び込んでいる姿を見て、メインはまだ準備されていないと知った。
(じゃあ、あんまりこれを食うのも考えもんだな)
くりぬいたパンを器にして、野菜を詰め込んだ料理。あんまり野菜は好きじゃないんだが、トマトソースで煮られているのと、1口サイズの野菜ならそこまで気にする事はないかと選んだのだが。いろんな野菜の風味はするわ、香辛料も刺激も効いているで、結構食べていたがこれ以上食べていてはメインが食べれないかもしれないなと思い、4つ目に伸ばしかけた手を引っ込めてメイドが運んでいる赤ワインを飲んで少し気分を落ち着ける。
「ふむ、それならば、少し食べるペースを抑えるか」
「いや、陛下、さっきからデザートしか食べてないじゃないですか」
1口サイズのケーキばかりを取り皿に乗せている陛下に思わずそう呟く。確かに陛下は甘い物が好きだが、流石にちょっとこの量はどうかと思う。
「そう言うなバジウッド。レイナースを見ろ」
レイナースは流れるような足捌きでケーキばかりを回収している。その姿を見て頭が痛くなった……エ・ランテルでカワサキの店で料理を口にするようになってから、どうもはっちゃけているというか……お前どうした?と言いたくなるレベルなんだよな……
「って、フールーダ様は!?」
一緒にいたはずのフールーダ様が居なくて、思わず辺りを見ると陛下がフォークをテーブルの一角に向ける。
「爺なら、あそこで蛸を食べているぞ?」
「……自由すぎるだろ」
一応元敵国だ。もう少し、何と言うか…警戒とかそういうのはないのか?と言いたくなる。だが陛下は俺の考えている事を読んだのか、口直しのスープを受け取りながら笑う。
「カワサキが腕を振るっておるのだ。毒殺などを心配する必要も無い、毒見もいない。たまには爺だって羽目を外したくなる時もあるだろう」
毒を受けないアクセサリーは念の為に装備しているって事なのか……なんか1人だけ気を張っていたのが馬鹿みたいに思えてくるな
(なら、俺も食うか)
メインは今から調理されるというので、それを食べる程度の余裕は残しておきたいが……
「うん?待ってくれ、それは何だ?」
俺の横を通ったメイドが銀色の包みを運んでいるのを見て思わず呼び止める。
「はい、こちらは魚の包み焼きと言う料理だそうです。お1つどうですか?」
魚の包み焼き……か。魚が希少品と言うこともあり、1つ貰うことにした。もう1人だけ警戒しているのも馬鹿らしいし、俺も食事を楽しんでも悪くないはずだ。
(へえ……これは海の魚か)
川の魚かと思ったが、ここら辺では獲れるサイズではない魚の切り身と野菜が銀色の包みの中にある。封を開けると広がる香りに陛下も、ホイル焼きとやらを運んでいたメイドに声を掛けて、それを受け取る
「ほう、良いじゃないか」
「見た目は凄いシンプルですけどね」
包みを開けると同時に広がる香り、ハーブが使われているのが判る。だが封を開けるまで全く香りがしないというのは面白い
「あふ……ふっふっ……あちちち」
焼き立てなのか、フォークで少しだけ切って口に運んだのだが、その熱さに思わず呻く。陛下はそんな俺の様子を見て、良く冷ましてから口に運んだ。人で料理の熱さを調べるのは正直どうかと思うんだがな……
「美味い…これもまた味わったことの無い味だな」
「そうですね、なんでしょうかね?」
基本的な下味に俺達の知らない調味料が使われている。こってりとした味なのだが、決してくどい訳ではない。魚の脂と野菜の甘みが溶け出している……それらは本来全て異なる味付けだが、この下味が全てを包み込んで1つにしている。
「美味いなぁ……こんな魚は久しぶりだ」
やや赤味を帯びた魚は脂がたっぷりと乗っているのに全くくどくない。普通これだけ脂が乗っていれば、多少は口の中に味が残る物なんだがな……野菜の風味だけとは言えないな。胡椒のピリリとした味はあるが、それとはまた別の辛味が利いていると言うか……上手く説明できないがそんな感じだ。やや苦手な野菜を食べながら、この味の秘密はなんだろうなと考えていると、目の前に小さな小皿が差し出された
「この僅かに辛味のあるソースをつけても美味いぞ」
「陛下、どこからそれ持ってきました?」
メイドがこれも一緒にって言われてたのを忘れてましたと言って持ってきたとさらりと告げるので、俺もそれを受け取り魚の上に乗せてみる。赤い身に白っぽいソースって言うのが映えてるな
「ん!いやあ、これはうめえなあ」
「うむ。絶品だ」
恐らく南方の調味料だと思うのだが、いやいや、これは面白いな。僅かに辛く、鼻に抜ける感覚がある。それは馴染みがない物なのだが、それがまた面白いと思うのと同時に、美味しいと思わせてくれる。
「お、パスタか、1つ貰うぜ」
ホイル焼きの次は少ししっかりした物をと思い、ピザって物を食おうと思ったんだが、パスタがあるのを見つけてそれを受け取る
「む、随分と面白い形をしたパスタだな」
「本当ですよね」
まるでペンの先のような形をしたパスタだ。ソースは赤いから多分トマトソース。トマトソースのパスタというのはかなり一般的だが、カワサキの作る物だから俺の知っている物とは違うだろう。それにこんなパスタは初めてだからどんな味かという期待もある。フォークで差して口に運ぶ。もっちりとした俺の知るパスタとは全く異なる食感。噛みごたえがあるというか、何というか、上手く説明出来ないが……凄く独特な食感だ。
「む、挽肉か……トマトソースに挽肉を入れるのか」
「結構珍しいですよね」
俺達の知るトマトソースというのはトマトを潰して、それに水を加えて玉葱などの野菜を加えて摩り下ろしたチーズなどを加えてパスタに掛けるのが主流だ。しかしそこに挽肉を入れるとはまた珍しい
「肉の脂が出ているからソースの味が良いのだな」
普通トマトソースに雑味が出るという事で入れないんだが、カワサキのは挽肉が入っていても美味いな。多分俺達の知る作り方とは違う作り方をしてるんだろうな
「しかし、このパスタが美味いな」
「本当ですね」
普通のパスタと違い、ペンの先の形をしたようなパスタ。独特な食感があって実に面白いし、美味いな。
「む?始まったみたいですよ、陛下」
「うむ。見に行くとするか」
会場の中に広がった何かを焼く音。カワサキの言うメインの料理が振舞われ始めたのだと思い、パスタを食べ終わったら見に行こうと思っていたのだが……
「おい!骨が無いって言ったのに、骨が入ってるじゃないか!お前何を考えているんだ!」
男の癇癪を起こした声が会場が響き渡る。その声を聞いて、和やかだった会場の雰囲気は一気に変わった。
「陛下」
「……馬鹿な男もいたものだ」
陛下がやれやれという感じで肩を竦める。帝国と王国の和平のパーティで陛下かランポッサ3世に何か仕掛けてくるかもしれないと警戒していたが、まさかカワサキを狙うとは……
「噂の通りなのかも知れませんね」
噂では八本指の違法娼館を潰した男がカワサキだったという話を聞いた。俺からすれば眉唾物だったが、もしかすると事実だったのかもしれない。
「行くぞ、バジウッド。こういう時の定石は決まっている」
「はい、お供します」
俺だけではない、ランポッサ3世もガゼフを引き連れて、大声を上げている男の元へ向かっている。大方、このままカワサキが帝国と王国の御用達の料理人になることを妨害したい、王国か帝国の料理人の差し金だとは思うが、とりあえずカワサキに危害を加えないうちに止めに入るか……俺も陛下もレイナースもガゼフもランポッサもそう思って、カワサキの元へ向かって居ただろう。だがそこで俺達が見たのは、見たことも無い、余裕と相手を完全に見下した視線で笑うカワサキの姿なのだった……
巨大な昆虫モンスターに追い回され、捕まれば齧られると言う死と隣り合わせの訓練を続けているゼロ達、だがそんなゼロ達にも憩いの一時があった。
「「「「「いただきます」」」」」
それは食事の時間だ。エ・ランテルで食べていたようなステーキや、チキン南蛮と言うご馳走は出ることは無い、だが決して質素な食事でもない。レベリングに適した、食事が提供されている
「ああ。うめえなあ……死に掛けたから余計にそう思う」
今日は足と肩を齧られたゼロが味噌汁を啜りながら、しみじみと呟く。
「いや、ゼロはまだいいだろ。俺なんて、手首食われたぞ…」
「もうくっついているから良いだろう。俺は頭を噛み千切られかけたのだからな」
殺すなと指示を受けているモンスターだが、勢い余ることもある。今回、ぺシュリアンはあと少しで胴体と首がおさらばする寸前だった。
「食事時にそういう話はやめてくれない?食事が不味くなる」
とは言え、モンスター殺しや人殺しを経験しているだけあって、その程度で食事が止まるような面子はこの5人の中には居なかったが……
「……全くだ(ボロボロ)」
「「「いや、号泣しながら飯を喰うのいい加減にやめろ」」」
今日のメニューである、チンジャオロースと卵焼き、かぼちゃの煮物に野菜サラダと味噌汁。1汁3菜のメニュー、中華と和食と混じっているが、高カロリーのチンジャオロースで消費したカロリーを補給させるメニューだった
「アンデッドになって長く、人間としての事を忘れていたが……ああ、食事とはこんなにもいい物だったと思い出したよ」
米の一粒、汁の一滴すら残さないと言わんばかりに丁寧に、丁寧におかずを噛み締め、ご飯を口にするデイバーノック。
「まぁ、確かに美味いよなあ」
「味の好みも考えてくれるとは感謝の極み」
今回は卵焼きだが、マルムヴィストは辛口を好み、ぺシュリアンは甘い物を好む。そしてエドが飲んでいる味噌汁は白く濁り、ゼロの味噌汁は茶色だ。
「訓練は厳しいが、ここはいい環境だぜ、全く」
「ああ、そうだな。最初は殺されるかと思ったがな」
「基礎訓練らしいからなぁ」
「それより私は魔法を学びたいんだが……」
短時間でのレベリングの為に非常に厳しい物となるが、7時間訓練すれば後は休息を取ることも許され、食事は自分の好みに合わせてある程度は融通を利かせてくれる。飴と鞭とわかっているが、強さを求めているゼロにとって、ナザリックの環境は喜ばしい物だった。そして飴と鞭はまだも続く
「どうも始めまして、私はパンドラズ・アクター。モモンガ様の忠実なるシモベ、以後お見知りおきを」
昼食の後にやってきたパンドラズ・アクターに怪訝そうな顔をしたゼロ達だが、次の言葉に顔を輝かせた。
「貴方達に提供する装備が決まりましたので、それの試し切りなどをやってみましょうか」
その言葉に歓声を上げるゼロ達だが、エドは1人だけ渋い顔をしていた。
(装備って事は、次の段階って事よね。次はどうなるのかしら……)
基礎訓練は終わり次の段階に入ったと言う事を理解しているのはエドだけであり、喜んでいるゼロ達を尻目に卵焼きを頬張る。モンスターに追われるよりも厳しい訓練……それを想像したエドとデイバーノックは口にしている料理が急にしょっぱくなったように感じるのだった……
メニュー73 立食パーティ その3
今回の話でわかりました。1つの話に複数の料理を出すと話が動かないという事を学びました、色々と書いてみないと判らないですが、これは大きな発見ですね、とても勉強になりました。次回はカワサキの視点から書いて行こうと思います、主になんでカワサキが笑っていたのかですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……
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