生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー77 レイナースへのメニュー

メニュー77 レイナースへのメニュー

 

この世界の外貨を得るのに帝国と王国にアイテムを売るというのは俺も実に良いアイデアだとは思う。一番確実に資金を稼ぐ事が出来て、最終的に存在するかもしれない八欲王のNPCと戦う際にもナザリックのシモベだけではなく、帝国と王国の兵士や騎士も戦力として数える事が出来る。これは間違いなく、モモンガさんが打ち出した一手の中では最高の一手だとは思う……問題はジルクニフと共に来るレイナースの方だろうなあ

 

「カワサキの料理には呪いが解けるやつまであるんだね」

 

「いや、無理だし」

 

目を丸くするクレマンティーヌ。確かに呪いを解くことは十分可能だとは思う、思うけど単純に呪いを解くならこれ!なんてメニューは存在しない

 

「まぁ一番手っ取り早いのはレイナースに呪いを掛けたモンスターで料理を作ることだな」

 

「いや、気持ち的に無理じゃない?」

 

気持ち的に無理だろうし、捕獲出来ると言う保障も無いのでこれも無理。ではどうやって呪いを解くというのかと言うと、これは実際案外簡単な話である。

 

「いまの俺は料理にバフや追加効果を掛けるのに縛りは無いが、昔はそれなりに結構あったんだ」

 

クックマンのレベルが低い時は料理に付与するバフは食材に大きく左右された。その食材が持つ、バフ・デバフの適正に、追加効果との適合率など、例を挙げればきりは無いが料理を作るのに食材だけではなく、追加効果にも大きく左右されていたのだ

 

「肉だと力がつきやすいとか?」

 

「そうそう、そんな感じ。で、呪いを解くとなると縁起の良い食材にどんどん追加効果を付与すれば良い」

 

シンプルイズベスト、つまりこれが一番呪いを解くのが早くなる。では問題は何がある?と言うと、これが結構深刻で方向性を定めないと本当に大変なことになる

 

「食材だけで考えると作れる料理に統一性がまるで無い」

 

バランス?なにそれ美味しいの?ってレベルになってしまう。これは料理人とかにしては結構深刻だ。でもやると言った以上今更駄目とかいえないし……ある程度の方向性を定めて、それにそうように料理を作っていく必要がある。

 

「和食とか、中華とか洋食とかがめちゃくちゃ混じるとか?」

 

「そこに加えて、味付けもめちゃくちゃになるな。ある程度は整えるつもりだけど、カロリーとか多分物凄いことになる」

 

同じ女としては少し同情すると言いつつ、にやあっと笑っているクレマンティーヌは猫のように椅子から跳ね起きて

 

「じゃ、私は六腕の訓練を見てくるね」

 

「おー気をつけてなぁ」

 

ビーストマンの国に六腕も連れて行く、その理由は王国で好き勝手した事を悔い改めさせるためらしい。生きるか死ぬかの局面で人間の本性は出るとモモンガさんは言っていて、これは決定事項なので俺に覆す権限は無い

 

「あのさ、もしジルクニフがレイナースを置いてくって言ったらどうする?」

 

帝国とかとの連絡の橋渡しか、それとも俺に戦闘力が無いとか何か理由をつけて置いていく可能性はあるか、それ以前にレイナースが望む可能性も十分に考えられる。だけど……

 

「お前がいてくれるからなんにも心配して無い、護衛はお前だけで十分だ」

 

俺の考えていることも把握してくれているし、俺の性格も理解してくれている。だから必要ないなと言うとクレマンティーヌはさっきの不気味な笑みから打って変わり、華の咲くような笑みを浮かべ頑張ってくるねーと手を振り部屋を出て行く。その背中を見ながら俺は飲んでいたお茶を飲み干し、腕まくりをして調理の準備を始める。

 

「さてと、そろそろ始めるか」

 

作るメニューは大体決めている。前に俺の店に来た時に海鮮を好んで食べていたので、和食。それをうどんや巻物のネタに縁起のいい物を使い、それに追加効果を付与して呪いを解除するという方法を取ろうと思う。肉に魚、あとデザートがモロ洋食に、そこに中華なども混じってくるので、そこはとりあえず必要な事と言う事で我慢して貰おう。

 

「良い具合だな」

 

ただお茶を飲んでクレマンティーヌと話をしていた訳ではない、昆布を水に漬けて待っている時間でメニューを考えたり、今後の事を考えながら話をしていたのだ。しかも使う昆布もバニシングセイルの潜む海の氷で出来た昆布だ、ランクで言えばA相当。今回はA相当の食材を使い、レイナースの呪いを解除するつもりだ

 

「強火だな」

 

本当なら昆布は中火よりの弱火で出汁を取る。だが氷の昆布の名と姿に偽りは無く、氷の結晶である。温度が高くないと十分に出汁を取れないので、強火よりの中火でお湯を沸かし。その中に氷の昆布を投入する、その瞬間に湯気が出て、お湯の温度が一気に低くなる

 

「ここからだな」

 

沸騰してはいけないが、火が弱ければ氷の昆布の力に負けて出汁が出ない。沸騰せず、そして冷えすぎないその中間を見極めるのは実に難しい、少しでもバランスが崩れれば一気に海草臭くなり、えぐみも出てしまう……そのギリギリのラインを見極め、ここだと言うタイミングで昆布を取り出す。

 

「完璧」

 

氷の昆布の氷が溶けて、海草としての昆布が姿を見せる。これが氷の昆布で出汁が取れた証拠だ、少しの間出汁を休ませて、味を馴染ませている間にアイテムボックスから次の食材を取り出す。黒く、ゴツゴツとした殻をした巨大な海老……岩石伊勢海老を取り出す。これも食材モンスターの中ではAランク、この上には宝石で来た殻を持つ宝石伊勢海老が存在するが、それはSSランクなので使う事は勿論無い。鍋の中に岩石伊勢海老を入れて1度茹でる、だが完全に火を通す目的ではなく岩石伊勢海老の下拵えとしてだ、岩石伊勢海老はその名前の通り甲羅と身までもが岩石で構築されている。これを1度茹で、黒い色から一瞬赤くなる瞬間に取り出すことで甲羅も柔らかくなり、身も柔らかくなる。だがその一瞬を見逃せば再び岩石になり、身が柔らかくなる事は無くなる。高レベルの食材モンスターは捕獲が難しいか、それとも調理が難しいかのどちらかだ。岩石伊勢海老は当然ながら後者になる

 

「ここっ!」

 

クックマンのスキルと俺の料理人としての勘に従い、鍋から海老を取り出す。黒い姿ではなく、鮮やかな赤色に完璧な茹で上がりだと確信する。だが、まだ調理は全くと言って終了していないので、このまま調理を進める。包丁を頭と尾の間に差し入れ、頭と尾を切り離す。そして腹側の殻を切って海老の身を取り出す、殻の色に対して中はまだ生だ。手の温度で熱くなる前に皿の上に乗せておく

 

「酒を入れてっと」

 

最初に作った昆布出汁に、酒を加えて加熱する。アルコールが飛んだら半分に割った海老の頭と尾の殻を加え煮詰める。

 

「このままでも十分に美味いが……ここで一工夫だ」

 

氷の昆布と岩石伊勢海老の出汁で十分に美味いが、ここに薄口醤油と塩を加えて味を本当に少しだけ調えたら海老の殻を取り除き、身を茹でる。身が鮮やかな赤と白に染まればこれで今出来る準備は完了だ。

 

「これで1度おわりっと」

 

後はうどんを入れて仕上げるだけなので保存をかけて蓋をしておく、昆布は「よろこぶ(喜ぶ)」の語呂合わせの意味があり、成長が早く繁殖力があることから、繁栄の象徴としてお祝い事やおめでたい席にに欠かせない食材で、海老も漢字で「海の老人」と書き、長く伸びたひげと腰が曲がって丸くなった姿から、「腰が曲がるまで長寿を願う」という意味が込められ長寿を象徴し、また茹でると鮮やかな赤色になるが、赤色には邪気を祓う魔除けの力があると言われ、殻が鎧に見え力強さの象徴でもある。

 

「次は鯛の御頭付きの刺身とバイ貝の刺身……後は鰤でも使うか」

 

鯛はもちろん目出度いとの語呂合わせで、昔はリアルで祝い事と言えばこれと言うほどの魚だったらしい、バイ貝は幸せが倍になりますようにだったな。鰤などの出世魚は先々の繁栄、出世を願う意味があるので、これで巻物を作ろうと思う。これだけでは飯が足りないので、蓮根と筍、それとイクラでちらし寿司……後はデザートで桃のスライスとガチャで回しまくって入手しているバームクーヘンをアレンジして見るとするかな、夜に来るらしいがそれまでにしっかりと準備を進めるとしよう。これだけの縁起物に解呪の効果を付与すれば、間違いなくレイナースの呪いは解ける……はず。

 

 

 

 

 

「では、こちらにご入室ください。ジルクニフ様、フールーダ様、ランポッサ様、ガゼフ様はこちらへ」

 

老齢な執事に案内され、私だけが別室に入室されるようにと言われる。私の呪いを解く為にカワサキさんが腕を振るってくれるらしい、待ち続けたときがもう目の前に来ていると思うが、それと同時に失敗したらと言う期待と恐怖がない交ぜになった複雑な感情が胸を埋め尽くす。口を開きかけた皇帝陛下でしたが、それを閉じ執事……セバスに案内され通路を進んでいく。その姿を見ながら扉に向き直るとここに来るまでも何人も見たメイドが2人扉の前に控えていた、帝国でも見ないような容姿に優れ、そしてメイドとしての技能も恐ろしいほどに高い美女達。カワサキさん達に仕えているメイドと聞いているが、正直これほどの美女そろいだと顔が治ったとしても自分が劣っているように思える

 

「カワサキ様にご無礼なきように」

 

「それではお通りください」

 

若干警戒するような視線を向けられながら部屋の中に足を踏み入れる。

 

「ようこそ、レイナースさん」

 

「は、はい、今回はよろしくお願いします」

 

食事で呪いが治る……普通なら何を馬鹿なと思う。だけど、カワサキさんの料理を食べて元気になっているランポッサ三世もいる。呪いと怪我と言う差はあるが、私だって元の美しい顔に戻ると願っても良いと思う

 

「今回出す料理は縁起がいい物を食材としている。それらを俺の能力で強化して、レイナースさんの身体を蝕んでいる呪いを中和する。これ1回で治るとは言い切れないし、定期的に食事をする事で時間を掛けて治癒する可能性もあると思って欲しい」

 

「……全てお任せします」

 

思いつく限りの全ては試した、残されたカワサキさんの料理を口にすることによる治療。それが私の最後の希望なので、全てをカワサキさんにお任せすると返事を返す

 

「じゃあ早速料理を出していくからな」

 

一体どんな料理が出てくるのか……やはりスレインなどの質素な食事だったりするのか、期待と不安を抱きつつカワサキさんが料理を持って来るのを待ち、そして机の上に置かれた料理を見て驚いた

 

「これは魚ですか?」

 

「そう、前に来た時に寿司を食べてくれただろう?だから生魚……刺身や、海の食材をメインにして用意している」

 

氷で出来た皿に頭と尾が残されたピンク色の魚が堂々と鎮座している。胴体は綺麗に捌かれ、白く澄んだ身が見える

 

「食べる前にこの指輪を身につけてくれ、そうすれば箸が使えるようになるから」

 

差し出された茶色の指輪を指に嵌め、2本の棒……箸を手にする。

 

「いただきます」

 

手を合わせてから箸で魚の身を持ち上げる。薄く切られているからか、それとも魚の鮮度がいいのか、光が透けて見えるようだ。少し緊張しながら醤油につけて口に運ぶ

 

「……とても美味しいです」

 

コリコリとした独特の食感、しかし決して味が淡白なわけではない。口の中一杯に広がる濃厚な魚の旨み……氷の皿で出されたが、その冷たさもまた味をより楽しませる工夫なのだと驚いた

 

「これは鯛と言う魚で俺達の方でめでたい、つまり良い事があるようにと言う意味が込められている」

 

「良いことがあるように……ですか」

 

正直食事で呪いを解くと言うことで薬のような味を想像していたのですが、本当にただただ美味で言葉も出ない。

 

「そしてこれだ」

 

「……なんでしょうか、これは」

 

見たことの無い奇妙な刺身……妙に光沢があり、全体的に光っているように見える。

 

「バイ貝という貝だ。これは幸せが倍になりますようにと言われて出される」

 

貝は火を通すのが一般的だが、これは鮮度がいいから生で大丈夫なのだろう。少し怖い気持ちを抱きながらもバイ貝の刺身を箸で摘む、箸の先からも貝の硬さが伝わってくるようだ

 

「……これは凄く独特ですね」

 

「まぁ貝だからな」

 

コリコリとしているが、鯛とはまた異なり歯を跳ね返すような弾力。硬いのだが柔らかいという不可思議な食感に驚きながらも、箸は止まらない。呪いを解くという目的ではなく、食事を楽しんでいる自分に気付き、ほんの少しだけ恥ずかしいという気持ちになる。刺身を食べ終わると少し間が空いてから次の料理が運ばれてくる

 

「これは巻き寿司ですね」

 

手巻き寿司ではなく、既に巻かれているのは初めて見る。だけど巻き寿司には変わりは無いだろう

 

「これに巻かれているのは鰤、出世魚と呼ばれ、先々の繁栄、出世を願っている」

 

繁栄か……仮に呪いが解けても私の家はもう潰れているし、騎士としての出世も願っていない。正直私にとって魅力的な話ではないが……

 

「……美味しいです」

 

でもその魚の味は本物だ、脂が乗っているのにさっぱりとした独特の味。そこに寿司飯の酸味と海苔の豊かな風味が加わる……8個しかないのが少し残念になるくらい美味しい

 

「次も飯が続くから少し少なめにしているからな」

 

食べたりないと思っているのが見抜かれたのが恥ずかしい、それを誤魔化すように醤油につけて鰤の巻き寿司を口に運ぶ。何度も食べても美味しいけど、食い意地の張った女と思われたのは正直かなり辛い。若干気落ちしていると、次の料理が運ばれてきた

 

「綺麗ですね」

 

「ちらし寿司の彩りには気をつけているからな」

 

薄く焼かれた卵が散りばめられた小さな皿。皿の大きさからしてそれほど沢山盛り付けられているようには思えないが、逆にこれくらいが丁度いい量なのかも知れない

 

「ちなみにそれには魚や肉は使ってない、卵としいたけと蓮根と筍だけだ」

 

肉や魚を使ってないと聞いて少しがっかりしたのだが、材料を惜しんで肉や魚を使ってないのではないと思う

 

「蓮根は穴が多く、未来を見通せると言われ、筍はまっすぐ育つ野菜だから、道を違えずどこまでも真っ直ぐに育つようにと言う意味がある」

 

未来を見通す……呪いによって用意されていた自分の道を失い、さまよいながら生きてきた私だ。でもこの料理で呪いが解け、暗かった未来が明るくなり、曲がりくねった道が真っ直ぐになると考えれば実に縁起の良い食材だと思う

 

「じゃあ最後の料理の準備があるから、ゆっくり食べていて欲しい」

 

そう笑って奥の部屋に向かうカワサキさん。異形種で人の姿は偽りと聞いていても、その大きな背中に救いを求めてしまう。呪いが解けて、帝国四騎士を辞めた後……やりたい事は沢山ある。でもいざそうなると僅かな不安もある……でもいまはまず、呪いが解けることを祈ってちらし寿司を食べたいと思う、さっきから顔が熱くなっているのは料理を食べたからでもないし、羞恥心からでもない。これがきっと呪いの解ける前兆だと思えるから……

 

(……酸っぱい)

 

巻き寿司と比べると酸味が強い、だがその酸味が食欲をそそる。ご飯の中に混ぜ込まれている野菜だろうか、そのしゃきしゃきとした食感も1口、また1口と食べたくなる。肉や魚が入っていない……いやこれは逆に肉や魚が入っていないからこそ、この奥深い味が……

 

「この香りは」

 

ちらし寿司を食べていると鼻を引く香りに気付いた。濃厚で、一度匂いを嗅いだら忘れられないこの香りは……

 

「これで最後、伊勢海老をまるまる一匹使ったうどんになる」

 

巨大な海老がまるまる1匹、その周りに彩りの緑の野菜と赤と白の楕円形の何か、琥珀色に輝くスープの中に沈んでいる太くて白い麺に目が引かれる。パスタではない、うどんと言うらしいが……これほど太い物は初めてかもしれない

 

「海老は長寿と魔よけ、かまぼこは魔よけと浄化を意味している、これで大丈夫だと思う」

 

これが最後……妙な緊張感を感じながらスプーンでスープを口に運ぶ、海老の濃厚な旨みだけではなく、口に入れた瞬間何もかもを飲み込むような……口では上手く説明出来ない凄まじい深みを持った味が口の中に広がる

 

(……暖かい)

 

スープが熱いからではない、口にした瞬間に身体の奥から温まってくる。うどんという麺はパスタとは違う、もちもちとした弾力があるのだが、それがこのスープに絡みうどんを口にする度にどんどん身体が熱くなって行くのが判る。

 

(美味しい)

 

食べれば呪いが解ける……そんな考えはもう私の頭の中には無くて、ただこの美味しい料理を食べたい。それしか考えることが出来なかった。スープに浮かんでいる巨大な海老の身、ぷりっとしていて……中は柔らかくも適度な弾力がある。それにスープの海老の香りと海老の味が完全に一体化している……

 

「……ふう」

 

殆ど夢中で食べてしまい、大きく息を吐き。机の上に置かれていたタオルで殆ど無意識で顔を拭っていた、熱いうどんで汗をかいていて、その汗を拭いたいと殆ど無意識で顔を拭っていた。

 

「すいま……え?」

 

手にしているタオルに膿の色は無く、恐る恐る顔に触れる。いつもはべちゃっとした膿の感触がするのだが……それがない。鏡、鏡を……殆ど無意識で顔を映せるものを求め立ち上がろうとした時、カワサキさんが私の目の前に立った。

 

「ほら、鏡だ」

 

その言葉と共に机の上に鏡が置かれた、何度も深呼吸を繰り返し、覚悟を決めて髪を上げて、閉じていた目を恐る恐る開く……鏡にはもう二度と見れないと思っていた美しい私が自分を見つめ返していて……

 

「……っぐ……うっ……うっ……」

 

感謝の言葉も出ない、溢れ出る涙を抑える事が出来ず。私は自分の顔を見つめて涙を流し続けるのだった……

 

 

 

 

7-3くらいの勝率は確信していたが、呪いが解け元の素顔になったレイナースの姿を見て安堵した俺はそのまま部屋を出た。

 

「ふう、これで一息つけるな」

 

肩の重みが取れた気分だ。後は、帝国と王国との話し合いをモモンガさんが纏めて、竜王国に出発する日程を決めるだけ……そう思っていたのだが、懐に入れていた鈴が鳴った。リグリットに預けておいた連絡用のアイテムだ

 

「もしもし、カワサキだ」

 

『ああ、悪いねえ』

 

悪いと言っているが、この声の感じでは全く微塵も悪いなんて思っていないと確信する。

 

「俺とアインズさんも話をしたいと思ってる。だから後でこちらから連絡をする」

 

『まぁ顔を見て話をするって言うのが筋だね。判ったよ、のんびりツアーと待ってるよ』

 

こりゃあ竜王国に行く前に一騒動ありそうだ。まぁ、そろそろ仕掛けてくるかもしれないと思っていたが、竜王国に出発する前で良かった……

 

「いや、良くないか?」

 

モモンガさんが怒るかな……いやでも、帝国と王国は1つにする必要があったし……うーん。とりあえずレイナースが泣き止んでからジルクニフ皇帝の所に案内して、ジルクニフ皇帝とランポッサ国王を送り返してから

 

「あ、貴方こそ!真の魔法詠唱者だ!ワシを!ワシを弟子にしてくれええ!!」

 

通路の奥から聞えてくるフールーダ翁の必死すぎる叫び声と俺の脳裏に響く

 

【助けてください!魔力を抑制する腕輪を外したら大変な事に!】

 

大変な事になっているのは十分判るけど、レイナースをここに残しておくといろんな意味で危険だ。具体的にシモベとか、シモベとか、エントマとか……だから俺はメッセージで助けてくれと叫ぶモモンガさんに非情とも取れる返答を返した

 

【ごめん、無理。もうちょっと頑張って】

 

【何を!?私は何を頑張ればいいんですか!?待って!メッセージを……】

 

助けを求めているモモンガさんには悪いが俺には何にも出来ないのでメッセージを切り、レイナースが泣き止んで部屋を出てくるのを黙って待つことにするのだった……

 

 

下拵え 悲劇(笑)へ続く

 

 

 




レイナースの呪いを解く事となりました。縁起のいい食材にカワサキさんが能力で強化と言う形ですね、これしか思いつかなかったので、石を投げるとかは止めて下さいね?次回は再び下拵え、悲劇(笑)と言う事で何が待っているのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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