生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー20 アウラとマーレのプリン・アラ・モード/シャルティアのお茶会

 

メニュー20 アウラとマーレのプリン・ア・ラ・モード/シャルティアのお茶会

 

俺は第6階層のピニスンの果樹園を訪れていた、その理由は簡単。ザイトルクワエから食材を確保したマーレとアウラに作ってやる料理の材料を求めてだ。ちなみに昨日収穫したトマトは酸味が強くそのまま使うのには適さなかったので、にんにくやハーブなどを加え、ピザソースにした。ガゼフとか言うのに会いに行く時に持っていく料理としては最適だろう

 

「ドライアードの魔法ってのは凄いな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ビクビクとした様子で頭を下げるピニスンにそこまで怖がらなくて良いと声を掛け、果樹園の中を見て回る。ピニスンが6階層に来てからまだ3日ほど……それなのにピニスンの果樹園と野菜畑は既に収穫出来そうな果物と野菜に満ちていた

 

「これはドライアード特有の魔法なのか?」

 

「は、はい!大地の力を借りて成長速度を上げてます。でもまだ、1回目なので、何回か繰り返す事でより果物とかに適した土地に改造を……することになりますけど」

 

ピニスンの説明になるほどなーと頷きながら、林檎を1つもぎ取り齧る。甘みが強く、やや酸味が利いているという感じの林檎だ

 

(これでまだ発展途中と聞くと夢が広がるな)

 

料理を作る上で野菜や果物と言うのはどうしても必要になる。アイテムボックスや食糧貯蔵庫にはまだ大量に備蓄があるが、それでもやはりナザリックの中で食材を手に出来ると言うのは大きい

 

「苺とかはどこにある?」

 

「こ、こちらです。どうぞ」

 

右手、右足を同時に出してギクシャクと歩くピニスンを見て、苦笑しながら振り返る

 

「あんまり驚かすなよ?」

 

「グルゥ」

 

アウラとマーレが護衛をすると言い張ったが、それでは何を使うかばれてしまうので嫌だと俺が言って、妥協案としてアウラの使い魔が護衛としてついている。その口に食材を入れる籠を咥えてだ、判っているのか判ってないのか判らないが小さく頷く狼を背後に従え、俺はピニスンに案内されながら果樹園で必要な果物を探すのだった

 

「林檎と苺にバナナ、キウイにオレンジ、それにさくらんぼ……まぁこんな物か」

 

1時間ほど果樹園に滞在し、使おうと思っていた果物を全て集め俺は自分の厨房に戻って来た。そして厨房に置かれた巨大な紅い果実に視線を向ける

 

「毒は無しっと」

 

クックマンの鑑定で毒がないのは確認している。ザイトルクワエの果実って所か、近づいて手で軽く叩いてみる。コンコンっと言う果物とは思えない硬質な音が跳ね返ってくる

 

「包丁じゃ無理そうだな」

 

と言うかこんなの切ったら包丁が刃毀れする。俺はそう思い、包丁ではなく鋸を手にした所で

 

「カワサキ様。お手伝いに参りました」

 

「おお、シホ。早速で悪いが、この果実を押さえてくれ」

 

切っている間に転がったりしたら困るからシホに押さえてくれるように頼む。鋸の刃を果実に入れる。やはり硬質な音を立てて鋸は果実に吸い込まれていく。ある程度切ると手応えが変わったので刃を引いて。包丁をその切込みから入れて両断する

 

「中も紅いか……しかしすごい香りだな」

 

「そうですね」

 

切り分けた両面から凄まじく甘い香りが漂ってくる。スプーンを2本手にし、1本をシホに渡してその果物の味見をする

 

「ん、これは」

 

「驚きました」

 

俺とシホの驚愕の声が重なる。最初に感じたのは甘い香りに反して強烈な酸味、レモン系の強烈な酸味だ。だが嫌な酸味ではない、噛み締めるとバナナなどの柔らかい果実の食感だと思ったら、今度は桃などのやや固めの食感。そして噛んでいると甘い香り通りの甘み……だがその甘みも食べている間に味わいを変えていく……

 

「食べている間に食感と味がころころ変わるな」

 

「とても面白いですね。そして美味しいです」

 

これが異世界の果実か……面白いなと小さく笑う。こんな果物リアルじゃありえないからな……もろ異世界って食材はこれが初めてかもしれない

 

(種を残しておいて、栽培出来るか試してみるべきだな)

 

これは正直面白い上にかなり美味い。スプーンで中心部の種を傷をつけないように取り出し、水を張ったグラスの中に入れる。後でピニスンの所に届けて栽培出来るか試してみよう

 

「アウラとマーレにプリン・ア・ラ・モードを作ろうと思っているんだ」

 

前の食材になれの実験の時にプリンを作ると約束したからな。ついでにザイトルクワエの果実も使ってプリン・ア・ラ・モードにしようと思ったのだ

 

「カワサキ様はプリンを作るのは?」

 

「レシピは知ってるが、作るのは初めてだ」

 

元々俺は料理人ではあるが、スイーツ関連は正直お門違いである。一応レシピは把握しているし、ユグドラシルで作ったこともある。だが不安もあるのでシホに手伝いを頼んだのだ

 

「判りました。ではご一緒に作りましょう」

 

「すまんな」

 

普通の料理ならいくらでも作れるんだが、やはりお菓子関連は不安がある。なんせスイーツ関連はレシピ通りに作っても失敗する事が多いからな。俺はシホにフォローしてもらいながらプリンつくりを始めるのだった……

 

 

 

 

カワサキ様でも苦手な料理がある。それを知った私は失礼だが意外だと思った……カワサキ様と言えばどんな料理も把握している。まさに料理の神とでも言うべき存在だと思っていたからだ

 

「卵は砂糖を加えて、泡立てすぎないように丁寧に混ぜる……だったよな?」

 

「はい、それで大丈夫です」

 

カラメルソースは初心者が作ると難しいので私が担当し、カワサキ様がプリンを作っている工程を見ているのだが、不安に思う所など無く、スムーズに処理を進めている。私はグラニュー糖と水を弱火でゆっくりと加熱し、こげ茶色になってきた所でお湯をゆっくりと注ぎカラメルソースを伸ばす

 

(よし、良い具合です)

 

カラメルが均一に伸びた所でプリンの型に流し込み、器を回転させてカラメルを器のそこに均一に広げる。これで後はプリン液の準備が出来るまでの間に固まり、プリン液とカラメルが混ざらないようになる

 

「ん?んん?」

 

カワサキ様が不思議そうに首を傾げながらん?と唸っている

 

「どうしましたか?」

 

「いや、何か泡がな?沸騰寸前の牛乳を卵に混ぜるで合ってるよな?」

 

確認してくるカワサキ様にそれで合ってますがと返事を返しながら、カワサキ様の手元のボウルを覗き込む。確かにプリン液に大量の泡が浮いているのが見える

 

「混ぜ方があんまり良くなかったのかもしれないですね」

 

「ゆっくり牛乳を注ぎながら、混ぜるだよな?」

 

「それで合ってますが、泡立て器をボウルの底につけて、下からゆっくり混ぜたほうがいいんです」

 

浮かせて混ぜると思ったより力が入って、泡立ちの原因になってしまうからだ

 

「でも大丈夫です」

 

濾し器で濾せば問題ないですよと言うと、カワサキ様は頭を掻きながら

 

「いや、すまんな。やっぱり1度スイーツのレシピにも目を通しておくべきだよな」

 

「大丈夫ですよ。これは作っている時の感覚ですから」

 

スイーツを作ると言うのは言葉で言うよりも遥かに難しい。混ぜ方、温度など、そんなので簡単に変わってしまう。濾し器で丁寧にプリン液をカラメルを入れた型の上に流し込むカワサキ様の横顔を見つめる。料理に関して何処までも真摯で、シモベ達や私達に厳しく、そして優しい御方……他の御方達が消え、創造主である御方と共にあれる私はどれだけ幸福だろうか?階層守護者の皆様や、プレアデスに少し申し訳ないと思ってしまう

 

(いつか戻ってこられるのでしょうか)

 

他の御方達も戻って来てくれるのだろうか?っとそんな事を考えているとカワサキ様はプリンの型を2つ、蒸し器の中に入れ

 

「シホ。食堂の手伝いで忙しい中手伝ってくれてありがとう。また作る時……手伝ってくれるか?」

 

「勿論です、いつでもお手伝いしますよ」

 

でも私はその幸福をずっと大事に胸に抱いていたい。そう思うのだった……

 

 

 

シホからカワサキ様の部屋に早急に向かうようにと言われたあたしとマーレは9階層の通路を早足で歩いていた

 

「お、お姉ちゃん。僕達何かミスしたかな……」

 

「大丈夫だと思うけど……」

 

あたしもマーレもカワサキ様に叱られるような真似はしていないと思うんだけど……でもこうして名指しで呼ばれたことを考えると、何か失態をしてしまったのでは?と言う恐怖をどうしても感じてしまう

 

「アウラ様、マーレ様。カワサキ様がお待ちです」

 

カワサキ様の御部屋の前で待っていた一般メイド……確かシクススが扉を開いてくれる。あたしとマーレは怯えながら、カワサキ様の御部屋に足を踏み入れた

 

「おう、アウラ、マーレ。待ってたぞ」

 

上機嫌なカワサキ様に少し拍子抜けしながら

 

「第6階層守護者アウラ「いや、そう言うの良いから、そう言うのはモモンガさんにやってくれ」

 

あたしの言葉を遮ったカワサキ様はまぁ椅子に座れと言う。マーレと一緒にきょどきょどしているとカワサキ様はあれ?と首を傾げながら

 

「前にプリンを作ってやるって約束したけど、覚えてないか?」

 

「「いいえ!ちゃんと覚えてますッ!」」

 

覚えてはいたけど、まさか本当に作ってもらえるなんて思ってなくて……もしかして呼び出されたのって……

 

「ザイトルクワエの果実と一緒にプリンを作ったんだ。ほら、早く座りなさい」

 

お叱りではなく、ご褒美だと判ったあたしとマーレはカワサキ様の言葉に笑顔を浮かべながら返事を返し、座るように促された椅子にゆっくりと腰を下ろすのだった

 

「カワサキ特製プリン・ア・ラ・モードだ。っと言っても俺はあんまりスイーツは得意じゃなくてな……シホに手伝って貰ったんだがな」

 

カワサキ様があたしとマーレの前にプリンのお皿を置きながら笑う。御方に作って貰った物を口に出来る、それだけでシモベには過ぎた褒美だ……

 

(綺麗……)

 

プリンを中心にたっぷりの果物と生クリームとアイスクリーム。あたしとマーレで取った紅い果実もちゃんと使われている……それにプリンもかなり大きめでそれを見るだけでも、思わず笑みを浮かべてしまう

 

「カワサキ様、いただきます」

 

「い、いただきます!」

 

はいどうぞと笑うカワサキ様を見ながら、あたしとマーレはスプーンを手にした

 

(わわ、ど、どこから食べよう……)

 

スプーンを手にするとどこから食べようかと迷ってしまう。大きめの皿の中心にでんっと鎮座した巨大なプリンか、それともその周りに並べられた果物か……それともアイスクリームか……どこから食べようか目移りしてしまう

 

「んー♪おいしー」

 

マーレがアイスクリームを食べて幸せそうに笑う。普段ビクビクしているのに、こういうときばっかり早いんだからと思いながら、あたしは紅いソースが掛けられたアイスクリームにスプーンを向けた。プリンはメインだし、あたしも好きだから先に溶けてしまうアイスを食べようと思ったのだ

 

(ん、甘い)

 

口の中で溶けるアイスクリームの冷たい食感と甘みに思わず顔が緩みそうになった時、舌を刺す酸味に驚く

 

「酸っぱ……え?あれ……甘い?」

 

最初は飛び上がるほど酸っぱかったのに、今は甘い。それにソースなのに歯応えがある。その奇妙な紅いソースに思わず首を傾げる

 

「酸っぱい……、あ、あれ?柔らかい……んん?今度は甘い」

 

マーレはあたしと一緒に採った果実を口にして目を白黒させている。

 

「ははは、アウラとマーレが採ってきた果実だけど、食べているうちに味が変わるし、食感も変わる。面白いからソースにしてみたんだけど……味はどうだ?」

 

皮を剥いて鍋で煮ただけの簡易ソースだが、味が変わって面白いし何より美味いだろ?と笑うカワサキ様。確かにこんなに美味しいソースは食べた事が無い。それがあたしとマーレで採って来たと言う事もあり、より美味しいとも思わせてくれた

 

「「美味しいです」」

 

食べている間に味が変わる、こんなに面白い果物を初めて食べた……酸味を伴った甘さだから、アイスクリームや生クリームで甘くなった口をサッパリさせてくれる

 

(そろそろプリンを……)

 

お皿の上の果物やアイスクリームが半分ほどになった所で、メインのプリンにスプーンを向ける。すっと入ったスプーン、カラメルの部分と一緒にプリンを少しだけ取り頬張る

 

「「美味しい……」」

 

マーレと一緒に美味しいと呟いた。思ったよりも甘くなくて、卵の濃厚な味が口一杯に広がって……もうただただ美味しい。それしか考える事が出来なかった。笑顔で食べているあたしとマーレを優しく見つめるカワサキ様の視線がどこかむず痒くて……でもとても嬉しいと思った

 

「「ご馳走様でした」」

 

「はい、お粗末様」

 

そう笑ったカワサキ様はあたしとマーレの頭をぐりぐりと撫で回し

 

「モモンガさんのお手伝いをこれからも頑張ってな。頑張ればまた、何か作ってやるからな」

 

勿論お手伝いをしなくても作ってやるけどなと笑ったカワサキ様に見送られ、マーレと一緒にカワサキ様の御部屋を後にする

 

「お、お姉ちゃん。これからもっともっと頑張る」

 

「うん、頑張ろう」

 

カワサキ様とアインズ様に喜んで貰えるようにもっともっと頑張ろう。マーレと同じことを口にし、あたし達は9階層を後にするのだった……

 

 

 

 

アウラとマーレにプリンを振舞った次の日。俺はシャルティアが確保したと言う葉っぱを前に腕組していた

 

「さてと……次はこれか」

 

鑑定の結果「万病に利く薬草」と言う事が判明した葉っぱ。紅い果実を回収するのと同時に、パンドラがコレクター魂を持って回収したザイトルクワエの種子。この万能薬を量産出来ないか?と言う事で、シャルティアが回収した8枚の葉っぱの内、4枚をパンドラとモモンガさんに預けた

 

「つっても諸に葉っぱだよな」

 

食材適正はコキュートス、アウラ、マーレが回収した中で最大の80……なのだが、葉っぱである

 

「どうすっかなあ……」

 

葉っぱだから天ぷら……いや、シャルティアのイメージじゃないな。んーパスタの生地に練りこむ……面白みが無いな……

 

「そう言えば……シャルティアはお茶会とか好きだったか?」

 

死体愛好家、両刀使いとか……ペロロンチーノにシャルティアの設定を聞かされたが、確かお嬢様だからお茶会とかも好きとか……って聞いたような……いや、うろ覚えだから確信は無いんだが、確かそんな話を聞いたような気がしなくも無い

 

「良し決めた。餅にしよう」

 

まぁ葉っぱは違うが、そこは食材適正80。食用にしても大丈夫だろう、丁寧に洗ってざるの上にからげておく

 

「あーっと確か……」

 

なんかのイベントで黄金小豆の餡子って言うアイテムが有ったよな。本当は小豆から作りたいが……小豆単体はアイテムではないので、この世界で獲得する必要がある。アイテムボックスを探していると、お目当ての黄金小豆の餡子を見つける

 

「これはまた……派手だな」

 

黄金小豆の名に相応しく黄金色だ。スプーンで掬って味見してみる、これは漉し餡だな……滑らかな食感が良い感じだ

 

「ん、程よい甘さだな」

 

甘すぎず食感も実に丁度良い。これなら最高だなと呟き、今度はうるち粉ともち米をボウルに入れて、ぬるま湯を加え捏ねる。生地の硬さの目安としたら耳たぶくらいの硬さって所だな、スイーツは苦手だが、和菓子関連はリアルで作った事があるので得意な物だ。その後は生地を10等分ほどに分け餡子を包んで

 

「蒸し上げれば完成っと」

 

蒸し時間は大体20分ほど。その間に緑茶の茶葉と、急須、湯呑みの準備をし、1度厨房から俺の部屋へ移動し、手紙を書き上げる。手紙と言っても簡単な物だ、ナザリックの外の草原に来るようにとシャルティアに伝えるだけだ。部屋を出て

 

八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)いるか?」

 

そう問いかけると音も無く虫型のモンスターが姿を見せる、一般メイドには頼めないからなと苦笑しながら

 

「これをシャルティアに渡してくれ、頼めるか?」

 

「お任せください」

 

手にしていた手紙を八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)に渡す。これでシャルティアを呼ぶのはOKっと

 

「じゃあ、次はモモンガさんだな」

 

勝手に外に出ると怒られるから、モモンガさんも巻き込もう。俺は餅が蒸しあがるまでの時間を利用してモモンガさんの部屋に足を向けるのだった……

 

 

 

 

入浴を終えて吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)に着替えるのを手伝わせ、部屋に戻ると八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)が何かを持って待機していた

 

八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)?どうしたでありんす?」

 

許可無く入ってくるほど八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)は愚かではない、何かの用事か?と問いかけると八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)は私の前で膝を突き

 

「カワサキ様より、シャルティア様に手紙を預かってまいりました」

 

差し出された手紙をひったくるようにして奪い、封を切って中身を確認する。そこにはナザリックの外で茶会をするので来る様にと言うカワサキ様のお言葉と地図らしい物が書かれていた。御方に呼ばれた、それだけで踊りだしそうなほどに嬉しい。何事か?とこっちを見つめているシモベに視線も向けず、私は地図に書かれた場所に向かうのだった

 

「ここですよね……」

 

地図に書いてある場所には紅い布と日除けが設置されていたが、カワサキ様のお姿は無い。周囲を見渡していると背後から御方の気配を感じ振り返り目を見開いた

 

「シャルティアか、ずいぶんと早かったな」

 

「あ、アインズ様!?」

 

カワサキ様ではなく人化なされたアインズ様がそこにいて、思わず声を荒げてしまい

 

「も、もうしわけありんせん」

 

「いや、気にするな。急に私が現れれば、動揺するのも無理は無い」

 

そう笑い私の不敬をお許しになられたアインズ様はブーツを脱いで紅い布の上に座り込む

 

「どうした?お前も座るが良い」

 

「は、はい!」

 

隣に座ってよいと言う最大級の褒美に顔が紅くなるのを感じながら、アインズ様の隣に座る。死者の王としてのお姿も素敵でありんすが、人間の姿を取られたアインズ様も素敵でありんす……暫く待っているとカワサキ様がナザリックの方から歩いてくるのが見える。荷物を手にしているので、立ち上がろうとするとアインズ様に制された

 

「カワサキさんが主催の茶会だ。私とシャルティアは招待された側、動くとカワサキさんに怒られるぞ」

 

そう言われてしまえば動く事などできんせん。わ、判りましたと返事を返し浮かしかけた腰を元に戻す

 

「待たせたみたいで悪いな。最後の仕上げをしていたんだ」

 

そう笑って靴を脱ぎ、私とアインズ様と同じように布の上に座ったカワサキ様は手にしていた箱を開け、中から何かを取り出す

 

「シャルティア、お前が見つけてきたザイトルクワエの葉っぱを使った草餅だ」

 

白い皿に2つ乗せられた丸い何かには確かに私がアルベドと奪い合った変わった葉っぱが巻かれていた

 

「あ、ありがとうございます」

 

差し出された皿を両手で受け取る。葉っぱのいい香りがここまで広がってくるのが良く判る

 

「ほら、モモンガさんも」

 

「ありがとうございます。ところでカワサキさんの分は?」

 

アインズ様の問いかけにカワサキ様は勿論俺の分もあると笑い、箱から自分の分の皿を取り出す。

 

「草餅に合うように日本茶にした。少し苦いが、この苦味が草餅とよく合うんだ」

 

私とアインズ様に筒状のコップを差し出すカワサキ様。その中身は緑色で私が普段口にする、紅茶とは違うが豊かな香りがする

 

「いただきます」

 

「い、いただきます」

 

アインズ様から少し遅れていただきますと口にして、草餅を手にする。こうして手にすると非常に柔らかいのがよく判る

 

(良い香り……)

 

葉っぱの香りが強いのだが、それは決して不快な香りではなく、清々しい緑の香りだ

 

「ふむ……中は甘いが、外に撒かれている葉っぱが少し苦味があり丁度いいな」

 

「おお。これは中々だ。この葉っぱが滅多に手に入らないのが残念な所だな」

 

アインズ様とカワサキ様がにこやかに話している。そのお姿を見る事が出来るだけでも、シモベにとっては過ぎた褒美だろう。

それに加えてカワサキ様の料理を口にしてもいいだなんて……私は今絶対他の守護者よりも恵まれた立場にいる

 

「カワサキ様。美味しいでありんす」

 

「そうか、それは良かった」

 

初めて食べる餅という料理の柔らかくモチモチとした食感。そして餅の中に包まれた黄金の餡……食べた事も見たことも無い、初めての甘味に思わず顔が緩む

 

「良い天気だ。たまにはこうして外で食べるのも悪くない、そう思わないか?シャルティア」

 

「は、はい!わらわもそれが素晴らしいと思うなんし!」

 

急に話を振られ少し動揺しながら返事を返すと、アインズ様とカワサキ様は私の頭を一度ずつ撫でて

 

「そうだな。じゃあ今度は守護者皆でピクニックでも行くか」

 

「それは楽しいかもしれないですね。あ、でも、アルベド達が御身がと言って反対するかもしれないですね」

 

「良いって良いって、強引に話を進めてしまえば良いんだよ。シャルティア、アルベド達に余計な事を言うんじゃないぞ?」

 

「は、はい!判ったでありんす」

 

ん、それで良いと笑うカワサキ様と太陽を見て眩しそうに目を細めているアインズ様。他の守護者やシモベが見ることの出来ない、御身達の姿を私はしっかりと目に焼き付けるのだった……

 

 

メニュー21 樹液料理/モモンガさん、お寿司を食べたい

 

 




久しぶりにがっつり料理描写が書けたと思います。アウラ、マーレよりシャルティアが若干良い思いをしている理由は皆さん察していると思いますが、お口にチャックでよろしくです!樹液料理……これは知ってる人は知っていると思いますが、北海道周辺の料理で2品考えております。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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  • 間違っていない

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