生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー24 薬膳スープ

 

メニュー24 薬膳スープ

 

ここ最近ずっと身体の調子が悪い、妙に手足が痒く、息苦しい。今日もずっと身体が重く、起きるのも辛かったのだがガゼフの責任を追及しようとする貴族の事を考え無理に動いたのが大きく響いていた

 

(ガゼフの意見を全て認めないのは既に真実を知っているからだろう)

 

スレイン法国の特殊部隊が展開されることを知っていた。そしてそこにガゼフが派遣される事も伝えた。アインズ・ウール・ゴウンと言う魔法詠唱者が助太刀しなければ、間違いなくガゼフは死んでいただろう……しかしこの病状は何だ。最初は毒を盛られたのかと思ったが、毒見役はなんともなく、そして医者も原因がわからないという。そして治癒も効かない……病気なのか、それとも毒なのか……ただ自分がどんどん衰弱していく事だけは判る。少し休もうと思い、目を閉じると私の意識は深い闇の中に沈んで行くのだった……

 

(何だ?)

 

やけに騒がしい……どれほど眠っていたのか判らない、もしや1日眠っていたのでは?と思いゆっくりと目を開く

 

「ランポッサ王……良かった。意識が戻られたのですね」

 

「ガ……ゼフ?」

 

何故ガゼフがここにいるのか?一瞬理解出来なかった。ここは私の私室、許可無く入る事など出来ないからだ

 

「ゴウン殿、カワサキ殿。王が目を覚ましました」

 

ガゼフが更に私が知らない人物の名を叫ぶ。身体を起こそうとするとガゼフが背中に手を回し、立ち上がるのを手伝ってくれた

 

「お初にお目にかかる、ランポッサ三世殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。旅の魔法詠唱者だ」

 

「俺はカワサキ、アインズさんの友人だ」

 

ガゼフと同じ黒髪、黒目の男性が2人。それが何故私の寝室にと混乱していると、ガゼフは私の独断ですと深く頭を下げた後

 

「カワサキ殿が教えてくれたのですが、食物にはアレルギーと言う物があり、それを持たない者には何の影響も、被害も出ず、そのアレルギーを持つ人間だけを殺す食品があるのだと……そしてカワサキ殿が言うには、えっとなんでしたか?」

 

「甲殻類アレルギーだな。海老や蟹、それと貝類が国王さん、あんたのアレルギーだ。正直寄生虫とかじゃなくて良かったと思ってるよ」

 

海老や蟹?そう言えば、最近貴族派から私の方に寝返ってきた貴族達が献上品として差し出してきたのが貴重な海鮮だったが……

 

「ま、まさか……?」

 

「それを食べたのが国王さんの体調不良の原因だ。まぁ軽度だったから良かったが……正直危ない所だった」

 

間に合って良かったよと笑うカワサキ殿。心配そうにこっちを見つめているガゼフは頭を振り

 

「心配無用です。今日の門番と王室の警護は私の部下でした。私達がここに来たことを知る反王派の貴族はいません」

 

その言葉にホッと息を吐く。もし反王派の息がかかっている兵士では、ガゼフが捕らえられていた可能性があるからだ

 

「国王さんよ、まずはこれを飲んでくれ」

 

「これは?」

 

爽やかな香りのする飲み物を差し出されるが、紅茶ではない様子だ

 

「ハーブティーだ。まずはアレルギーで弱った身体を回復させないといけない、まずはこれを飲んで、次にここで調理させて貰いたいんだが良いか?」

 

あ、喋り方が不味いか?とうろたえるカワサキ殿。だが私はカワサキ殿に救われた

 

「命の恩人にそんな事は言わない。カワサキ殿、ゴウン殿、それにガゼフ。ありがとう」

 

まさか食物にそんな物があるなんて思ってもみなかった。だがカワサキ殿の茶と治療のおかげで意識が戻ったと聞けば、私が知らないだけでそういう物があったのだろう

 

「暗殺狙いか、事故なのか、それを今ここで断定する事は出来ませんが、1度献上された物を検分し、そして献上してきた者を調べるというのは如何ですか?」

 

新鮮な海鮮と言うのはそれだけで稀少品だ。それを献上してくることで忠誠心を示すというのは少なからずあったが……アレルギーと言う物があるのなら、それが暗殺を狙って用いられたのか、それとも単なる事故なのか?それを調べる必要がある

 

「疑って掛かるのは余り宜しくないと思いますが、まずは1度様子を見てみるべきかと」

 

ガゼフの進言にそうかもしれないなと呟き、私は再びベッドに横になる。気分はよくなったが、まだ身体の倦怠感は残っている。申し訳ないが、横になって話を聞かせてもらうとゴウン殿とガゼフに向かって言うのだった……

 

 

 

持ち運びの即席キッチンのコンロの上で鍋を掛ける。本当はもっと手間をかけたいのだが、こんな簡易キッチンでは凝った料理を作るのは無理だ。鶏腿を1口大に切り、手羽先は包丁で切り込みを入れる。次にしょうが、にんにくを皮付きのまま2欠けずつ薄切りにし、ネギは青い部分までを斜め切りにする。鍋に胡麻油をしいて、ネギと手羽先、鶏腿を入れて軽く焦げ目が付く程度に焼きを入れる

 

(なんか悪い話してるな)

 

モモンガさんと国王さんとガゼフさんが何かを話し合っている、アレルギーだったら不味いと思い、慌ててここまで来たが、料理をしていると気分が落ち着いてきたのか、流石に焦りすぎたか?と言う考えが脳裏を過ぎる。確かに重度のアレルギーだったら生死に関係する。もしこの世界にアレルギーと言う概念がなければ何の証拠も出ない暗殺になるか……そこまで考えた所で小さく笑ってしまう

 

(アレルギーで暗殺か……)

 

馬鹿馬鹿しいとは言い切れない。現に国王さんはずいぶんと衰弱していた……本当ならアナフィラキシーショックを起こしていてもおかしくは無いが、しかし暗殺とは飛躍しすぎただろうか?しかし体質を知って、献上していたとなるとそこには悪意しかない。中世時代の食事に関する知識って言うのはこんな物なんだろうか?アレルギーって言うのをある意味暗殺手段として用いられて来たのだろうか?この世界の食事事情などが少し心配になってくるな

 

「良し、こんな物だな」

 

ある程度焼け目が付いた所で水を注ぎ、刻んだにんにく、しょうが、斜め切りにしたネギにユグドラシルのアイテムで状態異常に効くと言う木の実を適当に4種類ほど入れて、塩を軽く振り、酒を回しいれる。後は弱火でコトコト煮込むだけだ、ここまで来れば判るが、俺が作っているのはなんちゃってサムゲタンとでも言うべき煮込みだ。スープにたっぷりと薬膳と鳥の出汁を使うことで身体を温めつつ、栄養も取ってもらう。ついでに惜しげもなく回復魔法や、バフを付与する。これだけ付与すれば、国王さんも元気になるだろう

 

「うん、良い具合だ」

 

スープがトロリとしてきて、白くなってきたら完成。器に移し、細切りにした白髪ネギと、スライスした唐辛子を散らす。白いスープに赤い唐辛子が映えている。木のさじを刺してベッドの上に上半身を起こしている国王さんの元へ運ぶ

 

「どうぞ。薬膳スープです、これで大分体調が良くなると思いますよ。アインズさんもガゼフさんも1度休ませてやってください」

 

まだ身体は弱っているのだから、難しい話は後で良いでしょう。と2人に注意して、ベッドの脇の机にスープの皿を置く

 

「これは良い香りだ」

 

先ほどよりも顔色は良いが、それでもまだ声に元気が無い。無理やりポーションや回復魔法で回復させたツケが回って来ているのだろう

 

「熱いので気をつけて、中の木の実もそのまま食べられるので良く噛んでお召し上がりください」

 

スープに対する注意を伝えてさじを渡す。国王さんは頂こうと口にし、スープを掬う

 

「温かい料理など何時振りだろうか」

 

その言葉を聞いてきっと王族と言うのは毒見などが多くて温かい料理を口に出来ないのだと悟った。本当に王族や貴族と言うのは大変なんだなとしみじみ思った

 

「おおお……まるで熱が体中に広がるようだ」

 

きっとその言葉に偽りは無いだろう。スープとして口にした俺の魔法は国王さんの体の中を回り、弱っている部分を速やかに回復させる。一晩もあれば完全に体調は回復するだろう

 

「とても優しい味だ……昔母が作ってくれたものに良く似ている」

 

小さく溜息を吐く国王さんはさじで手羽先に触れる。スキルで煮込み時間を加速されたそれはさじで触れるだけで簡単に骨から外れる

 

「これほど柔らかく煮られている鳥は初めて見た。味もな」

 

息を吹きかけながらスープと鶏肉を口に運ぶ国王さん。最初はゆっくりとだったが、徐々にそのペースは上がり、顔色も良くなっている

 

「ゴウン殿。王はさほど物を食べられるお方ではないのだが……」

 

「ああ、それはきっとカワサキさんのタレントですよ。カワサキさんは料理に色んな効果を付与出来るんです」

 

だからきっと食欲増進とか、治癒の効果を付与してくれたんですよとモモンガさんが呟く

 

「なるほど……道理で活力が漲っているのか」

 

ぐっと握り拳を作る国王さん。さきほどの弱々しい姿からは想像出来ないような力強さに満ちているし、声に覇気が溢れている

 

「カワサキ殿。申し訳ないが、もう1杯頂けるか?」

 

食欲が出てきて、顔色が良くなって来ている。もしかしたら効果が強すぎたか?と思いながらも、勿論と返事を返し、2杯目のスープを皿に注ぐ

 

「うむ……美味い。この木の実がいい、香りと食感が実にいい」

 

喜んでくれているが、あの木の実は回復用のアイテムで、実は俺は食べた事が無い。だがここまで元気になっていると言うことは、間違いなくいい効能を齎してくれたのだろう

 

「しかし、これは少しばかり物足りん」

 

「食欲が無いと思ったのでスープだけにしましたが、本当はこれに米や麺を入れるんですよ。でも回復したばかりですから無理は禁物です、また次の機会をお待ちください」

 

今からでも入れてくれても良いのだが?と言いたげな国王さんに我慢してくれと言う。今は回復したばかり、無理は禁物だ

 

「海鮮を献上してきた一団を暗殺をもくろんだとして、捕らえるべきか?」

 

「そこは難しいところかもな。本当に忠誠の証として献上した可能性もあるぞ?」

 

川魚がここら辺で手に入る魚介類と聞いた、忠誠心を持ち入手の難しい海鮮を献上したと言う可能性もある

 

「もしも害を為そうとして献上しているのなら海老や蟹と言った甲殻類を献上するでしょうが……流石にそうと言い切ることも出来ないのでは?」

 

本当に忠誠心の証として献上されていたとしたら、それだけで捕らえられるのはあまりにも不憫と言う物だろう

 

「まずは様子見をしてみればいいだろう?海老や蟹を献上してくるか、それがどれくらいの頻度か?って言うのを調査すればおのずと答えは出てくると思うよ」

 

正直初めてのアレルギーの話でやばいと焦っていたが、それだけで暗殺と判断するのは余りに早すぎたのではないか?と思う

 

「甲殻類アレルギーって言うのが判ったから、まずは甲殻類は控えてください。出汁等も良くないのでスープなどは勿論、僅かでも混ぜるような料理も控えるように」

 

海老や蟹は良い出汁が出るので料理に使いやすいが、甲殻類アレルギー持ちには命にかかわる可能性もあるので、それらは控えるように

 

「う、うむ。判った、そのほかに気をつけるべき食品はあるだろうか?」

 

「生魚とかも控えたほうが良い」

 

食べる文化があるか判らないが、生魚も控えたほうがいいだろう。見た所、国王さんは胃があんまり強いほうではないように思える

 

「しっかり火を通した物を口にするように気をつけることと、信用出来る料理人に海老や蟹は駄目だとしっかり伝えることだな」

 

アレルギーで暗殺と言うのは考えられないが、これから献上される食品をしっかり確認し、海老や蟹を食べないように気をつけてくださいと俺は国王さんに強く釘を刺すのだった……

 

 

 

 

 

お父様からの召集があり、王座の間に来た私は目を見開いた。先日まで痩せて覇気の無かったお父様が覇気に満ち溢れていたからだ、その姿を見て他の貴族も言葉も無い。言うならば今のお父様は王気に満ちている……

 

(一体何が……)

 

これほどまでの変貌何かあったと思うべきなのでしょう……一体何がと考えを巡らせていると背後の青年。白い鎧に身を包んだ私が何よりも欲しい相手……クライムが立ち止まっていてはと小声で忠告してくれる。私はその言葉に我に返り、クライムを伴って私の席へと移動する

 

(バルブロお兄様にザナックお兄様……それにレエブン候も)

 

反王派貴族も、王派の貴族も全員呼ばれている。一体これから何が起きるのか?

 

「先日ガゼフ戦士長を助けてくれた魔法詠唱者が私を訪ねてきた。聞けば私の古い友人の血族との事。丁寧に迎え入れた」

 

その言葉に反王派貴族が身体を竦める。いない、存在しないと言い張っていた人物が訪ねて来た……今まではその存在が不確かだったからこそ好き勝手言えたが、その人物が実際にいるとなればガゼフ戦士長の話が真実だったと言う証明になる

 

「アインズ・ウール・ゴウン様、カワサキ様。どうぞお入りください」

 

ゆっくりと王座の間の扉が開き、2人の人物が姿を見せる。1人は黒髪、黒目で白い服装に身を包んだ、鷹のように鋭い目付きをした男性。そしてもう1人を見て息を呑んだ

 

(あの人は……いいえ、あれは何?)

 

黄金の装飾を持つ漆黒のローブに身を包み、王族や貴族でも見たことの無い装飾品を大量に身につけ、その手には黄金の杖を持った魔法詠唱者……フードを目深に被っているので顔は見えないが、圧倒的なまでの存在感を伴っている姿を見て誰もが息を呑んだ

 

「此度は態々我が友の訃報を届けに来て貰い感謝する。アインズ殿」

 

「いえ、我が父もそれを望んでおりました。それに訪ねて来た事で、戦士長殿を救う事も出来た。父がきっとそれを望んだのでしょう」

 

親しい関係のように思えるが、僅かに、本当に僅かに互いにギクシャクした雰囲気がある。旧友の息子と言うのは嘘なのかもしれない

 

「そしてカワサキ殿。君にも感謝する、私の体調不良を治すだけではなく。老いた身体をここまで癒してくれた事を」

 

「なに、俺は料理人さ。飯を作って人を生かす、それが俺の仕事だよ」

 

料理で?それだけでお父様をここまで別人のように変えたと言うの?私だけではない、お兄様達の視線もカワサキへと集中する

 

「さて、そこでだ。カワサキ殿がお前達にと料理を振舞ってくれたのだ、是非賞味してくれ」

 

パンパンっとお父様が手を叩くと見たことも無いメイド服の女性がカートを押してくる。そしてクロッシュを空けてその上に置かれていた料理の子皿を私達へと配り、アインズの後ろに控える。どうも彼のメイドのようだ

 

「カワサキ殿とゴウン殿の土産物である。上質な肉をたっぷりの野菜と共に炒め、餡を掛けたものだ」

 

配られた皿には、薄く切られた肉が何枚も盛り付けられ、赤や緑、それに黄色などの鮮やかな野菜と茶色いソースのような物が掛けられていた

 

「ではガゼフ。毒見を」

 

「は!ガゼフ・ストロノーフ。 毒味役として賞味させて頂きます」

 

一礼してからフォークで皿の上の肉と野菜を頬張る戦士長。とても美味ですと笑いながら、再びお父様の後ろに控える

 

「では皆の者も食べるが良い。カワサキ殿は南方の料理人ではあるが、その料理の腕は南方1との事だ」

 

南方1の料理人が作った見た事も無い料理……余り料理には興味は無いが、そんな話を聞くと興味が湧いて来る

 

「美味い!なんだこの肉は……今まで食べたことも無い」

 

「肉も美味いが、この野菜だ!歯応えが実に良い」

 

最初は南方の料理人と言う事で、警戒するような目をしていたが、一口食べればそこからは絶賛の嵐だ。私も野菜を口に運び

 

「美味しいですね」

 

「っはい、とても美味です」

 

クライムも美味しいと笑みを浮かべる。炒められているのに、しっかりとした歯応えがある。掛けられている茶色いトロミのあるソースは甘さと辛さを持っていて、それが肉の脂と歯応えと合わさると全く別物の料理のようにさえ感じさせる

 

「カワサキ殿。とても美味である」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

……屈強な体格で目付きも鋭く勇ましさ、だが決して無骨という訳ではなく、洗礼された所作もあり、力強さと美しさ両立していて、南方の蛮人ではなく、南方の貴族や王族に仕えている人物と言う印象を感じる

 

「しかし、王よ。せっかく海鮮を献上したと言うのに……何故それを料理させないのですか?」

 

「これほどの料理の腕を持つ男。海鮮もさぞ上手く調理してくれるでしょうに」

 

先日献上された海鮮の数々、確かにこれほどの腕を持つ料理人がいるのなら海鮮で料理を作って貰えば良かったのでは?と思ったのだが

 

「それなのだが、カワサキ殿に聞いたのだが、世の中にはアレルギーと言う物があるそうだな?」

 

「その通りです。特定の食材に対して強い拒絶反応を出す体質の事です。ランポッサ国王陛下の場合、甲殻類、つまり海老や蟹に対して強い拒絶反応を示します。ゆえに、海鮮料理は控えさせていただきました」

 

アレルギー……その聞いた事も無い言葉に、それが真実でしょうか?と思ったのですが、カワサキの言葉を補足するようにゴウン殿が口を開いた

 

「南方では時折それで亡くなる者もいるのです。毒でも、呪いでもない、体質で死に至るもの。アレルギーは非常に恐ろしいものなのです、現にランポッサ国王もアレルギーで危ない所でした」

 

寸前で間に合ってよかったですとゴウン殿が笑う。確かにここ数日のお父様は酷く調子が悪そうだった。今は、見た事も無いほどに活力と覇気に満ちていますが……つい先日は死人のようだったことを思い出すと、アレルギーと言う物の信憑性も増してくると言うものだ

 

「アインズ殿とカワサキ殿の忠告で海鮮を食べる事には気をつけるようにした、あの様な思いはもうごめんだからな」

 

そう笑うお父様だけど、その目は全く笑っていない。玉座の間に集まっている全員を睨むように見つめている

 

「とりあえずだ。まずはガゼフが遭遇したというスレイン法国の一団、その当事者のアインズ殿も証言してくれたが、やはりカルネ村を襲撃したのはスレイン法国と言う事で間違いないようだ。ガゼフの証言とアインズ殿の証言を元に、調べ直すことを命じる。よいな?虚偽ではないと言う事が判ったのだ、今度こそ嘘偽りの無い調査を待っているぞ。アインズ殿、カワサキ殿、此度は真に感謝している。今日は城にて休んでくれ」

 

穏やかに笑うお父様に頭を下げる2人。その2人を睨んでいる一部の貴族を見ながら、私はこの2人が切っ掛けで王国が変わると言う事を確信するのだった……

 

 

私とカワサキさんはランポッサ王が用意してくれた王城の一室のベッドに横になりながら、これからの事を話していた。ユリは女性と言う事もあり、カワサキさんが頼み込んで2つの部屋が繋がっている部屋を当てて貰った。隣の部屋はユリが使い、この部屋は俺とカワサキさんで使っている

 

「これで王国との橋渡しは出来ましたね」

 

「ああ、向こうも友好的な関係でありたいと言っていたしな」

 

それはきっとカワサキさんの料理の存在が大きいと思うが、向こうから友好的な関係を築こうと言ってくれたのは大きい

 

「それよりも、モモンガさん。あのお姫様、どう見た?」

 

「綺麗な子だと思いましたが?」

 

違うそうじゃねえよと返事を返すカワサキさん。ランポッサ王の娘と言うラナー王女、人を惹き付ける魅力を持つ少女だと思ったが……

 

「判らないなら良いが……あの娘さん、おっかないぞ?ああ、やだやだ。あの目とかそっくりすぎる」

 

自分を抱きしめるようにして震えているカワサキさんにどうしたんです?と問いかけるとカワサキさんは深い、深い溜息を吐きながら

 

「俺を貧民層に落とした女に似てるんだよ。俺を自分のものにしたいとか、永遠に私と一緒にとか言ってた奴に目がそっくりすぎる」

 

「……それはなんとも」

 

自分の話をしないカワサキさんの過去が俺が思っていたよりもヘビーだった

 

「店をデミウルゴスに似た男に奪い取られた後は酷かった。家で寝てたら首輪を手にして突入してくるし、永遠に一緒に居ましょう?とか言ってナイフを持ち出すし、俺を雇うって言ってくれたレストランに嫌がらせを……「もう大丈夫です!思い出さなくても大丈夫です!!」

 

これ以上思い出させたらカワサキさんが大変な事になるので、もう良いですと叫ぶ。その証拠にカワサキさんの目から光が消えつつあった

 

「と、とりあえず、王都に居るセバスとソリュシャンに話を聞いたら。1度ナザリックに戻りましょう」

 

「ああ、そうしてくれ……ぐう……と、トラウマが……蘇りそうだ」

 

真っ青な顔をしているカワサキさんにゆっくり休んでくださいと言うと、返事も返さずベッドの中に消えて行くカワサキさん。よほど嫌な思いをしたのだろう、とりあえずカワサキさんのトラウマが再発しかけたが、国の中枢人物との繋がりが出来た今回はそれで良しとしよう

 

「本当大丈夫ですか?」

 

「大丈夫大丈夫。明日には大丈夫だから……ああああああ……」

 

カワサキさんの深刻なトラウマの扉を開くという事態はあったものの無事に繋がりは出来た……計画通りに話は進んだと思うべきだろう……

 

 

メニュー25 すき焼き風肉じゃがとシーフードグラタンに続く

 

 

 

 




カワサキさんのトラウマ、ラナー姫の様なタイプの女性。あの目を見て、トラウマを再発しかけております。クライム君がターゲットと知れば、きっと親身になって相談に乗ってくれる事でしょう。次回はセバスとソリュシャンで、ナザリックへ戻り。そこからエ・ランテルなどの話に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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