生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー29 カワサキのフルコース その2

メニュー29 カワサキのフルコース その2

 

トマトと烏賊と蛸を使った炒め物の後、私達の前に差し出されたのは鮮やかなオレンジ色をした氷菓子だった

 

「オレンジのソルベになります」

 

8品によるコースと言っていたが、ここで氷菓子が出てくるとは正直予想外だった。デザートが出たと言う事はこれで殆ど終わりと言う事なのだろうか

 

「次はメインの肉料理になります。その前に1度口をサッパリさせていただこうと思っております」

 

その言葉にフールーダとロクシー、そして私も驚いた。菓子、しかも氷菓子となればそれはどれほど安くても金貨2枚に該当する稀少な物だ。それを口直しに出す……私の城に食用の氷は無いので、恐らくサカキの持込だろう。料理を作るだけではなく、財力もあると見た

 

(引き抜くのは難しそうだな……残念だ)

 

権力に対する欲などはまるで感じないし、女にもさほど興味のあるように見えない。これは引き抜くには難しすぎる、か。女を好むのならレイナースを差し向けるという事も考えた。料理に呪いを解呪する効果を付与できると聞いて、目に見えてレイナースがサカキに興味を持っている。レイナースの性格を考えれば、特別な食材が必要だとしても、それをどれほどの大枚を叩いても買い、呪いを解こうとするだろう。……私もそれを認めてはいる。だがもし可能ならばサカキをバハルス帝国に引き込める段階に達してからそういう動きをして欲しい物だな……。そんなことを考えながら小さなスプーンで氷菓子を口に運ぶ。舌の上で溶けるその冷たさと爽やかな柑橘系の果物の味と香り、だが甘さはそれほど感じず、苦味をやや感じる所から本当に口直しで氷菓子を出したのが判る

 

「ふふふ……ますます食欲が出てくる味だ」

 

「本当ですね。そろそろ大分お腹一杯だと思ったのですが……まだ入りそうです」

 

私の言葉にロクシーが賛同する。ここまで5品を食べている、普段の食事の量から考えればかなり多いのだが、それでもまだ食べたいと言う欲求が湧いて来る。

 

「……味わった事の無い果物の味だ。これは一体なんだ?」

 

「私の国の果物です。オレンジの仲間ですよ」

 

オレンジの……その割には酸味や甘みは余り感じないが、地方による物かと納得する。私達が氷菓子を食べ終わり、少し休憩しているとメインの料理が運ばれてきた

 

「大変お待たせ致しました。アントレ、レイジングブルのハンバーグ トマトソース煮込みになります」

 

底の深い皿の中心には楕円形の肉の塊、そして肉の上には2種類の茸が乗せられ、皿の縁にはざく切りにされたトマトが浮かぶ赤いソースが並々と注がれていた。前の魚料理はインパクトのある味だった……その為の氷菓子かと納得した

 

「レイジングブルというのは何だ?」

 

サカキの口にした食材が気になり、問いかけるとサカキはにこりと笑いながら

 

「私達の国に3種類生息する極めて凶暴な化け物牛です。しかしその味わいは格別ですよ」

 

モンスターの肉なのか……少しばかり眉を顰めるが、今までの料理を考えれば大丈夫だと判断する。フールーダも何も言わないと言うことは何も問題が無いと言うことだろう。ナイフとフォークを手にし楕円形の肉を1口大に切り分ける……のだが

 

「柔らかいな……しかし……これは」

 

普通の肉ではない、挽肉を成型した物だと判った。まさか挽肉とは思わなかったので、少し拍子抜けした

 

「フールーダ翁がいると聞いていたので、柔らかいハンバーグにさせていただきました。ですが味は保証いたしますよ」

 

料理の説明を聞くが、そうかと右から左に受け流す。もっと肉らしい肉を期待してた分だけガッカリしたが、味は素晴らしい物だろう。フォークで切り分けた肉を口に運び驚いた。煮込まれている事と挽肉と言う事で柔らかいと思っていたのだが、しっかりと歯応えがある。しかも噛めば噛むほど肉の旨味とトマトソースの旨味が混じりあい、その旨味を何倍にも引き上げていく

 

「……私でも噛みきれる、うむ。良い腕をしておるな」

 

「本当ですね。肉らしい肉と言うのは少しと思いましたが、非常に食べやすいです」

 

ロクシーとフールーダの言葉もどこか遠くに聞こえる。肉と言うのは総じて臭い物だ、獣臭さはどうしてもある。それなのにその獣臭さを殆ど感じない、トマトソースだけではない。肉自体にも何か仕掛けをしているのは明白

 

(この茸もだ)

 

白く柔らかい茸と、太い茎を持つ黒い茸、白い方は柔らかく、黒いほうは歯応えが強い。その2種類の茸から出た旨味がトマトソースと肉に染みこんでいる。そして茸自体も美味い

 

「私の知っている挽肉とは別物だな」

 

ワインを口に含みそう呟くと、サカキはそうでしょうと笑う

 

「肉の塊を包丁で丁寧に切り、食感を残すように挽肉へとしました。普通の挽肉よりも肉が大きく、脂も混ぜ込んでいるので味わいは素晴らしい物であると自信を持って言えます」

 

そしてなによりも女性と老人にも食べやすいように考慮しておりますと笑うサカキ。私のような若い男は肉が好きだが、フールーダでは普通の肉では噛み切れないし、ロクシーも獣臭い肉は苦手としている。それなのに2人とも本当に美味しそうに食べている

 

(美味い)

 

何度も何度も美味いと言うのは流石に皇帝として相応しくない。だから美味いという言葉を飲み込むが、本当に美味い。ステーキなどを好んで食べていたが、これは柔らかいのに歯応えがあり、そして獣臭さも無い。そしてトマトのソース、これが良い。これも恐らく肉の臭みを消す事と旨味を増させるのに一役買っていると思うが……食べている時に感じた香り。感じたことの無い香りに南方のスパイスと当りをつけ、サカキに尋ねてみる事にした

 

「この旨味を出すには専用のハーブなどが必要なのか?」

 

サカキがいなくても食べたいと思い、サカキにそう尋ねるとサカキは小さな小瓶を2つ差し出してくる

 

「これはナツメグと言うスパイスです。これを一振りと塩胡椒一振りとあわせれば肉の臭みは大体が消えるでしょう」

 

予備がありますのでどうぞと言うサカキ。見た事も聞いたこともないスパイスを簡単に手渡してくる、根が善人なのだろうが……少しばかり心配になる

 

「お前騙されやすいとか言われないか?」

 

「親友とその娘にもよく言われます」

 

肩を竦め、困ったように笑うサカキ。その人間味溢れる姿を見て、その親友と娘とやらもサカキに対して同じ心配を抱いているんだなと思うと、思わず釣られて笑ってしまうのだった……

 

 

 

 

 

陛下が連れて来た料理人と聞いて最初は警戒していたが、話をし、話を聞けばその警戒心はいつの間にか消えていた。

 

(最初は人間じゃないと思ったのですが……)

 

私の勘は大体当たる。最初に見たとき、サカキという人間がモンスターに見えたのだが、それすらも今では気のせいかと思える。少々目付きは悪いが根は善人なのだろう、そして並外れた料理の腕と知識を持っている

 

(これほど計算された料理は初めてかもしれない)

 

トマトのソースと共に煮込まれた肉料理。柔らかく、獣臭くもなく、しかし肉としての味わいを残している。肉の旨味ばかりに気をとられるが、中には野菜の微塵切りも練り込まれていて、それが食感とスパイスだけでは消せない肉の臭み消しをしている。パンでソースを最後まで綺麗にふき取り頬張る

 

(この味は何?)

 

肉の旨味、茸の旨味、玉葱の旨味、トマトの旨味、そしてスパイスなどの旨味、それだけでは説明出来ない何かがこのソースにはある。深い味とコクを作り出す何かが……

 

「お気に召しましたか?」

 

「え、ええ。とても」

 

私が考え込んでいると良いタイミングでサカキが声を掛けてくる。口元は笑っているが、目は剣呑な光を放っている。だが害を為そうとかそういうのではない、それは自分の料理の味が判るか?と問いかけているように見えた。それは自分の料理に傲慢とも言える自信を持つからこその光……自分の味は誰にも理解されることは無い、そしてこれよりももっと良い物を作り上げて見せると言う熱意。料理に対する深い知識と情熱を感じさせた

 

「とても良い腕をしていますね、それに知識も言葉も素晴らしいです、さぞ苦労を為されたのでしょう」

 

「昔は貴族の抱えなどをやっておりました。ただまぁ……厄介なお嬢様に好かれましてね、地位も店も何もかも失い1から出直したり、私も色々やりましたよ」

 

肩を竦めながらいうサカキ。苦労なんてものじゃない、1から積み上げ、そしてそれを失いまた出直した。熱意と情熱が無ければ出来ないだろう……そしてそれと同時にこの男は決して陛下の料理人にならないとも確信した。この男は貴族などは好いていないと

 

「では続きまして、デセール アイスクリームになります。どうぞ、ご賞味あれ」

 

小さな皿に盛り付けられた白い球体とその球体に掛けられている赤いソース。その彩が目を引く

 

「これは広場で振舞ってくれた物と同じか?」

 

「いいえ、あれは時間もありませんでしたので手抜きです。これはそれよりも美味しいと断言します」

 

陛下が珍しいものを食べたと喜んでいたが、それすらも手抜き。今度のはそれよりも美味いと聞いて陛下の顔が緩む。思わず咳払いすると陛下が顔を引き締める、どうもうちの陛下は気が緩むと歳相応の面が出てしまうのが良くない

 

「っ!すっ……んんむう?甘い……なんだ……これは」

 

「私の国でも大変珍しい、味と香りの変わる果物です、名前はないのですが、貴重な物ですよ」

 

味が変わる?その言葉に驚き、ソースだけをスプーンで掬い頬張ると……噛んでしまった。液体だと判っているのに、口にした瞬間私はそのソースを噛み締めていた

 

(酸味……それに甘み……なんて面白い)

 

最初に感じたのは舌を刺すような強烈な酸味、その酸味に驚いていると今度はほのかな甘み、噛み締めているとそれは口の中で強い甘みと香りを放ってくる

 

「魔法だ……まさにこれは魔法のソース」

 

「まぁそう言われる事もありますね。1つの木の実で幾つもの味を味わえる、奇跡の果実と言えるでしょう」

 

奇跡の果実……正にその通りだ。このソースだけでも十分にご馳走と言えるだろう、そこに牛乳を加工した冷たく甘い氷菓子……この旨味を知ってしまうと帝国の氷菓子はもう食べたいとは思えないだろう

 

「では最後にカフェ・ブティフール。コーヒーとクッキーになります、コーヒーは苦味が強いので、砂糖やミルクを入れてお楽しみください」

 

黒い液体が並々と注がれたカップと小さなクッキーが2つ。それがフルコースの最後であり、見た事も無い飲み物に一瞬気後れするが、陛下とフールーダ様はコーヒーを口に含み顔をくしゃっと歪めた

 

「こ、これは強烈だな。そのまま飲むにはまるで薬のようだ」

 

「苦いぞ……」

 

フールーダ様と陛下が顔を顰めるとサカキは苦笑しながら

 

「砂糖とミルクを入れた方が飲みやすいと言ったではないですか」

 

そう笑う私と陛下は言われたとおりに砂糖とミルクを入れる。すると黒い液体が、茶色に近い色になる

 

「ほう……まろやかな味だ。ほんの少しだけある苦味も良い」

 

「確かに味がまるで変わっていますな」

 

サカキの料理はまるで魔法だ。心を掴んではなさない……サカキ自身も善人で悪い人間ではないだろうが、それでも私は一抹の不安を抱かずにはいられないのだった……程よい甘さでサクサクとした食感のクッキーを口にしながら、私はそんなことを考えていたのだった

 

 

 

 

少し雑いかと思ったが、皇帝とその妻と相談役は大層喜んでくれた。やはり食事の力は偉大だな

 

「サカキよ。旅人と言うのなら私に仕えてみないか?勿論お前の友人のモモンとやらも一緒で構わない」

 

食事の後上機嫌なジルクニフに言われる。確かにそれも情報を得るという目的のためならば1つの手ではある、事実王国で話をつけてなければ靡いていたかもしれない、大きな拠点は俺もモモンガさんも欲しいものだ。自分達の動きの隠れ蓑になる。……だが

 

(アルシェの話もあるしな)

 

毒親からアルシェの妹を助けるという約束をしている。だからこれから俺は一騒動起こす訳で……こういう時モモンガさんのアドリブ能力が欲しいと思いながら、即興で物語を考える

 

「申し訳ない、私達の旅と言うのは私達の国を崩壊寸前にまで追い込んだ魔物を追っての旅なのです」

 

ほうっとジルクニフの目が鋭くなる、真実か嘘かを見極めようとしている目だ

 

「お前は料理人なのに敵討ちの旅をしているのか?」

 

「ええ、と言ってもモモンの付き添いですよ。私は料理で補助魔法を使える、時間は掛かりますが、魔法よりも効率が良い場合もあります」

 

毒や呪いを解除することも出来ますのでと言うと、やはりレイナースが大きく反応する。呪いを抱えているのだろうか

 

「そのモンスターと言うのは?」

 

「正体は判りません、ただ何もかも吸い込み、消えていくのです」

 

本当モモンガさんのアドリブ能力が欲しい、背中に冷たい汗が流れるのが良く判るよ

 

「ではお前がこの国に来たのは?」

 

「帝国付近で見たという噂を聞いたからです。しかし同時に王国でも見たと言う話が出て、6人チームを3人3人でわけ行動しています」

 

どうだ、どう出てくる……と言うか、本当よくモモンガさんこんな橋渡りやって来たよ。うっかり骸骨って渾名は返上だ

 

「筋は通っている。恐らく親友の娘と言うのが他のチームのメンバーか?」

 

「はい、それとこの場所に来るまでに現地の人間もスカウトしています」

 

クレマンティーヌを見られているからの話だ。俺には判らないが、スレイン法国の訛りがあるって聞いてるし

 

「それならば止めることは出来まい。それに良い話を聞けた、これから暫く帝国の護りを固めるとしよう」

 

信じてくれたと思って良いのか、小さく小さく安堵の溜息を吐く。胃が痛い……

 

「それでサカキよ、お前はどうするつもりだ?」

 

「明日の夜にでも出発して友と合流する予定です。なんせ相手は神出鬼没ですから、帝国を通り過ぎている可能性もあります」

 

情報は幾らあっても足りないと言うと、ジルクニフはそうかと呟き

 

「サカキよ、無理はするなよ。お前の料理の腕はいい、また食べたいと思っているからな」

 

少し訝しげにしているが、大筋では納得してくれたようだ。ジルクニフは手を叩くと、バジウッドが俺に近寄ってくる

 

「陛下は大層お喜びになられた。これは報酬だ、受け取ってくれ」

 

「宜しいのですか?」

 

それは金貨の詰め込まれた皮袋が2つ。どう見ても料理の代金としては高すぎると思うのだが

 

「なに、あのナツメグと言うスパイスの礼も兼ねている。もし敵を見つけたら、また訪ねて来い。何かに困ってもな、出来る限り協力しよう。レイナース、サカキを城の外まで案内してやってくれ」

 

レイナースに俺を城の外まで案内するように言う、ジルクニフに頭を下げ、俺は王座の間を後にした

 

「爺。サカキの話をどう見る?」

 

「7割真実、3割虚言と言う所でしょうな」

 

カワサキは大丈夫だと判断したが、2人はカワサキの嘘をある程度見抜いていた、これがモモンガならば騙しきれたかもしれないが、カワサキにそれを求めるのは酷だった

 

「3人3人と言うのは確実に嘘だろうな。もっと大勢いるだろう」

 

「でしょうな、弓兵や、魔法詠唱者なども多数いるでしょう。滅んだ国の生き残りを纏め上げているはずですから、恐らく帝国に来たのも協力できるかどうなのかの判断をするためでしょうな」

 

ただその嘘を3人3人の計6人チームと言うのは嘘で、もっと大勢いるんだろうなと言う前向きな勘違いであったのが、カワサキにとっての救いだったりする

 

「サカキ、呪を解くには特別な食材がいると聞きましたが、それはどんな物なのでしょうか?」

 

「それを口にするのは難しい、呪いにもよるし、強力な呪いなら準備も必要だ」

 

ここまで尋ねてくると言うことは、やはりレイナースは呪われているんだなと確信する

 

「私の顔半分は呪いで醜く崩れています、私はその呪いを解きたい」

 

「それはそうだろうな」

 

顔と髪は女の命、俺で言えば包丁や料理を作る腕と言える。レイナースの気持ちは判るが、今は駄目だ。アルシェの事もあるし、モモンガさんと合流するのもある

 

「皇帝の前でも話したとおり、俺は国を滅ぼした魔物を追っている。だからまた旅立たないといけない」

 

俺の言葉にレイナースの顔が目に見えて暗くなるのを見て、流石に気の毒になる

 

「仲間と合流したら呪いを解除するのに必要な食材を集めておく。もし見つける事が出来たなら、その時はお前の呪いを解こう」

 

「……約束ですわよ?」

 

「ああ、約束する。でもさっきも言ったとおり、直ぐは無理だ。少なくとも半月は準備の時間が要るし、拠点の事もある。拠点が決まればもう1度訪ねるよ」

 

直ぐに呪いを解く準備が出来る訳ではない。だからレイナースに直ぐに尋ねて来ても駄目だと言う、呪いのレベルに応じてはナザリックの食材を使う必要が有るので、モモンガさんに一応許可を得る必要がある。レイジングブルはアウラに作ったハンバーグの残りを使っただけだし、ザイトルクワエのソースは流石に勿体無いので、少しワインを混ぜて薄めて使ったし、まぁ多分大丈夫だろう

 

「半月……半月で呪いが解けるなら待ちますわ。ではサカキさん、お気をつけて」

 

城門の外まで見送ってくれたレイナースに礼をいい、俺は歌う林檎亭に戻るのだった……だがそこにシャルティアの姿はなく

 

「シャルティアは?」

 

「少し散歩に出て来ると言って出かけました」

 

エントマの言葉に顔を顰めるが、しかし、忠誠心の高い階層守護者ならば、俺が人間に頭を下げるのを嫌ってもおかしくは無い。

 

「そうか、それなら仕方ない。シャルティアも馬鹿じゃない、騒動を起こすことは無いだろう。それとヘッケラン、待たせたな。アルシェの妹を助け出すための話をしようか」

 

「は、はい!」

 

緊張した面持ちのヘッケラン達に声をかけ、俺が考えたヘッケラン達が無事に帝国を脱出し、毒親達からも縁を切る方法として考えていたことを口にした。これはジルクニフとの話し合いの中で思いついたことだ

 

「俺が亜人の姿でアルシェの家を襲い、妹達を飲み込む。ああ……っと言っても食べるわけじゃない、俺の持ってるアイテムを口の中に仕込んで、その中に2人を入れる。ヘッケラン達はそのタイミングで突入し、俺を追いかけて行くって訳だ」

 

ジルクニフに話した、俺達の国を滅ぼした魔物。それに俺がなってやろうじゃないかと言う計画だった。ゲートで逃げれば姿は消せる、モンスターを追っていけばヘッケラン達は返り討ちになったと姿を消せる。エントマとクレマンティーヌからの反対はあったが、強引に話を通し、俺はモモンガさんにメッセージでその内容を伝えた

 

『何やってるんですか!?』

 

「人助け兼カルネ村の復興兼漆黒の剣士モモンの名前を売る計画だ。とりあえず、カルネ村で詳しく話し合おう」

 

幸いモモンガさんも依頼でカルネ村に向かっているとの事、丁度明後日の昼に到着するそうなので、俺達もその日のうちにカルネ村につくので、そのときに話し合おうと強引にメッセージを切り、俺はベッドに寝転がり、モモンガさんと合流した時どうやって言い訳するかと自分でハードルを上げたアルシェの妹救出作戦を必死に考えるのだった……

 

 

 

 

 

カワサキがモモンガへの言い訳とアルシェの妹達救出に頭を抱えてくる頃、散歩に出たシャルティアはと言うと……

 

「くそが!くそが!!なんでカワサキ様が人間なんかに頭を!!くそっ!くそっ!!!」

 

敬愛する御方の1人が人間に頭を下げる。その事に対しての怒りを発散させるかのように森の中で暴れていた、これがユリやセバスなら問題はないが、シャルティアはまだその精神が幼かった。激しい怒りを律する事が出来なかったのだ

 

「はーっ……はーっ……」

 

怒りで肩で大きく息を整える。それでもまだ怒りは収まらない、収まるわけが無い。だがヘタに暴れすぎてもいけない、だがこの怒りをどうすれば、自分の中で燃えている怒りをどうすれば良いのか判らず、闇雲に暴れるシャルティアの背後で音がする。

 

「お前……何者だ」

 

「こっちこそ君が何者かって聞きたいんだけど」

 

そこにいたのは白金の鎧……だが真祖の吸血鬼のシャルティアは一目で理解していた。中身が無いと……怒りを上回る、警戒心に一気に頭が冷えていく、お互いにいつでも攻撃を繰り出せる体勢を取りながら相手の動きを一瞬でも見逃すまいと集中力を高める

 

「君は従属神か?」

 

「……お前はプレイヤーか」

 

先に言葉を発し、その異様な雰囲気を払拭したのは鎧の方だった。従属神かと尋ねられ、シャルティアは真紅の全身鎧とスポイトランスを手にし、その切っ先を鎧に向ける

 

「僕はぷれいやーじゃない、でもぷれいやーと一緒に旅をしていた。13英雄は知ってるかい?」

 

八欲王のいわれなら殺すと決めていたシャルティアだが、13英雄の名を聞いて、少しだけ殺気を収める。それは優先的に情報を集めろと言われてたことだから

 

「君は従属神だと思うけど、ぷれいやーはいるのかい?」

 

「いたとして名前も名乗らない相手に返事をする理由はありんせん」

 

シモベとして御方を護る。それがシャルティアの思考の根底にあった。相手の正体も何も判らない段階で、返事をする理由は無いと睨みつけながら言う

 

「それは失礼、僕はツァインドルクス=ヴァイシオン……ツアーと親しい友人に呼ばれているよ」

 

「……シャルティア・ブラッドフォールン」

 

警戒心むき出しのシャルティアとフレンドリーなツアー、その温度差は言うまでも無い

 

「百年の揺り返しの時期だ。僕は知りたい、君達の神が愚かな八欲王「てめえ!御方をあんな奴らと一緒にするな!!」

 

ツアーの言葉にシャルティアの怒りが爆発する。ツアーはそれを見てすまないと頭を下げる

 

「僕は君達の神と話をしたい」

 

シャルティアは悩んだ、御方と会わせて良い物かと、この場で排除するべきかと悩むのと同時に、自分はアルベドやパンドラズアクターのように賢くないと言う事を秤に掛けアルベドにメッセージで助けを求めた

 

【アルベド、緊急事態でありんす】

 

【カワサキ様に何かあったの!?】

 

【違うでありんす、ツァインドルクス=ヴァイシオンと名乗る、プレイヤーを知る何かに遭遇中でありんす。向こうは交渉を求めていましんすが……どうすれば良いなんし】

 

シャルティアの言葉にアルベドもまた考える。モモンガとカワサキの2人に害を為すかもしれない相手をどうするのかと悩む

 

「僕は昔八欲王とも戦ったよ」

 

【八欲王と戦ったと言ってるでありんす】

 

【……良いわ、交渉に乗ると返事を返して。ただしカルネ村を指定して、ナザリックに近いからいくらでも準備は出来るから】

 

アルベドの言葉に頷きシャルティアはカルネ村なら話し合いの場を設けると返事を返した

 

「カルネ村か……わかった。場所は君達に任せよう、だけど日時はこっちが決める。3日後の深夜だ」

 

場所を指定されたことにツアーは文句を言わず、その代わりに日時を指定した。これでイーブンだといわんばかりの態度である

 

【向こうが時間を指定したでありんす。3日後の深夜】

 

自分では決めれないと即座にアルベドにメッセージを飛ばす

 

【良いわ……それで飲んで。アインズ様には私も一緒に話をしてあげるから】

 

【お願いするでありんす】

 

自分では決めきれないが、こんな大事なことをシモベの意見で決めてしまった。その事に激しい後悔を抱きながら、シャルティアはツアーの言葉に頷くのだった……

 

 

賄い5 カワサキの完璧なプラン(笑)/フォーサイトカルネ村へ移住する/モモンガとカワサキ、シャルティアとアルベドの報告を聞くへ続く

 

 




帝国への橋渡しも成功しましたが、ここであたしい火種を用意しておきました。それとホニョペニョコはカワサキ様が行いますので、シャルティアVSアインズのイベントはバッサリカットしますのであしからず、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

  • 間違っている
  • 間違っていない

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