生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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メニュー69 国王への料理

メニュー69 国王への料理

 

俺はカルネ村で起きた問題……例えば、ニニャとかツアレとか、例えばニニャとツアレとか、村の開拓の事とか、ニニャとツアレの事とか、ペテル達の事とか、ニニャとツアレの事とか、駄犬がやっぱり駄犬だったとか、その他もろもろの問題を全部モモンガさんに押し付けてナザリックへと戻っていた。その理由はランポッサ国王の件があったからだ、無茶振りが過ぎるとか叫んでいたけど……大丈夫、モモンガさんならきっと上手くやってくれると思う。

 

「んーどうすっかなー」

 

食堂の机を1つ占領して、本の山と睨めっこする。薬膳料理と言うのは知らないわけでは無いが、膝が悪いと言うのをピンポイントで治せるかと言うとそれは無理だし、料理魔法による回復はある程度は料理側の力も影響する。ニグンの時は懐かしい料理だったし、カイレはショック療法だったが、今思えばショックで死んでもおかしくなかった。回復と組み合わせても影響の無い物が必要ではあるが、膝とピンポイントで悪い箇所と言うと流石の俺も調べないと料理を手懸ける事が出来ない

 

「うーん……」

 

これが胃が悪いとかならば薬膳料理一択なんだけどなあ……膝となると何が良いのかと頭を悩ませる

 

(膝と言うとなぁ……)

 

膝にはコラーゲンがいいとか聞いた覚えがあるけど……それで実際何処まで効果が出るのかとかは判らないし……料理の本を捲り、とにかくそれっぽい記述を見つけてそこから……

 

「ん?」

 

料理のことを考えていると小さな音を立てて何かが置かれる音がする。読んでいた本から顔を上げるとシホがトレーを胸に抱え込みながら

 

「余り根を詰めていると良いアイデアも浮かばないと思いまして、気分転換にと……」

 

机の上に視線を向けると小さい椀が目に止る。確かにシホの言うとおりで考え続けていてもいい答えは出ないかと思い椀に手を伸ばし……

 

「……シホ。悪い、これはなんだ?」

 

パッと見で何か理解出来なかった。粘り気のある茶色の液体に細かく切られた餅、それと生クリームと苺とバナナ……シホに何を作ったんだ?と尋ねる

 

「えっとですね、お汁粉を洋風にアレンジしてみたのですが……」

 

「お汁粉なのか……」

 

スプーンを手に取り、液体を掬ってみる。粘り気がかなり強い、ムースに仕上げてあるのかと呟きお汁粉を口に運ぶ

 

「……」

 

「お口に合いませんでしょうか?」

 

思わず黙り込んでしまい、シホが心配そうに尋ねてくる。俺はすまんと謝り

 

「いや、美味い。良い味だ」

 

甘味をイメージしていたが、実際は苦味の強いビターな味だ。それにこの味……クックマンの能力で味覚が強化されている俺だから1口で判ったがこれはココアの段階からかなり工夫を加えている

 

「黒豆のココアか」

 

俺の言葉にシホが嬉しそうに笑いながらそうですと返事を返す。ココア単品とは違う豊かな風味、ココアと餅なんてと思ったのだが、口にしてみると思ったよりも合う。なるほど、これは俺には思いつかない料理だな……

 

「ん、今度はシナモンか」

 

半分ほど食べた所で今度はシナモンの風味が加わり、味が大きく変わる。更に中には白玉が入っていて、思わず苦笑する。ここまでよく色んな料理の手法を混ぜて……混ぜて?

 

「あの、カワサキ様?」

 

俺の手が止ったのでシホが大丈夫ですか?と問いかけてくる。だが俺はそれ所ではなかった……何かもやもやした物が形になりそうな……パズルのように何かの形になっていく……別の料理の手法を組み合わせて別の料理、新しい料理へと変貌させる……

 

「そうか、そう言う事か」

 

膝に良い食べ物と言うことで迷っていたから答えは出なかった。物事はもっとシンプルだったのだ、残っていたお汁粉をスプーンで掻き込む。今この良いアイデアが浮かんでいる時に立ち止まりたくは無かった。このあやふやな物を確かな形にしたいと思った

 

「シホ、ご馳走様!美味かったぞ!それとお前のおかげで答えが出た!悪いが、後で本を片付けておいてくれ!!」

 

どうしました?と心配そうにしているシホを抱きしめ、感謝の言葉を告げそう叫んで食堂を走って後にする。まずは俺の手持ちで料理を作ってそこからだ、大体は形になっている。問題は、どれをどう使い。味付けをどうするかと言う問題だが、これは実際に作らないと何も言えない。俺は色んな調味料の組み合わせを考えながら自分の厨房へと走るのだった

 

「ピッキーさん!シホさんが立ったまま気絶してます!?しかも物凄い顔でッ!?」

 

「何があったんですか!?いえ、今はとにかくシホさんを控え室へ!それとログハウスのシルキーにも戻ってくるように伝えてください!下拵えが間に合いませんから!」

 

なお、カワサキからの抱擁でオーバーヒートしたシホがダウンしたことで、その日の食堂の運営が厳しくなった事は言うまでも無い……

 

 

 

 

衛兵からカワサキ殿が尋ねて来ていると聞いて私は慌てて城門へと向かった。バルブロ王子や六大貴族の頭領達とも言える、ボウロロープ侯、リットン伯、ブルムラシュー侯の3人が失脚した。それに伴い王城の警備体制も大きく変わって来ている、特に国家転覆を狙っていた3人の配下は全員謹慎処分となっている。非道という批判もあるが、御優しい王がその決断をしなければならなかったことも考えてみろと言いたい

 

「よう、ガゼフさん」

 

荷物の入った鞄の近くで手を上げるカワサキ殿。その仕草は何時も通りで少しだけ安堵した、だが普段共にいるクレマンティーヌ殿の姿が無いことが気になった

 

「ようこそお出でくださいました。どうぞこちらへ」

 

荷物を手にしてカワサキ殿を城の中へと迎え入れ、そのまま応接間へと案内する

 

「カワサキ殿。申し訳ない、まだ八本指の件は着手出来ていないのです」

 

カワサキ殿が訪ねてきた理由をそれだと思い深く頭を下げる。あの時の怒り様を見れば私にはそれしか思いつかなかったからだ

 

「ああ、違う違う。時間が掛かるのは俺だって判ってるよ、今日訪ねて来たのはランポッサ国王の膝を治しに来た」

 

「真ですか!」

 

思わず大声を出してしまい、すいませんと謝りながら身体を小さくする。だがカワサキ殿は不快そうな態度を取らず笑って許してくれた

 

「それで厨房を借りたいのと、ランポッサ国王に伝えてくれると嬉しいんだが」

 

「勿論直ぐにお伝えします」

 

「それなら悪いけど、先に厨房に行っても良いかな?今回は色々と手間な料理を作るから時間が惜しい」

 

本当ならカワサキ殿を王座に案内したかったが、そう仰られるのなら仕方ない。判りましたと返事を返し、カワサキ殿を厨房へと案内する

 

「クレマンティーヌ殿はどうしたのですか?」

 

「ああ、それか。ちょっと離れて行動していた仲間と合流する予定でね、その準備があるから置いて来たんだ」

 

離れていた仲間と合流……それがカワサキ殿達の祖国を滅ぼしたモンスターの情報交換である事が判ったので、王都を離れる事を責めたりはしない。お気をつけてと言うのがやっとだった

 

「ガゼフか、どうした?」

 

執務をこなしている王。その目は強い光を宿し、王としての威厳と迫力に満ちている。その気迫に思わず飲み込まれそうになる、やはり自らの目は間違いではなかったと確信する

 

「カワサキ殿が料理を作りに訪ねて来られました」

 

私の報告に少しだけ顔色を変える王はそうかと呟き、窓の外を見て

 

「この時間では夕食になるか、どうなるか楽しみにしていよう」

 

穏やかな顔を一瞬見せたが、直ぐに険しい顔つきになる

 

「ガゼフ。意見を聞きたい、八本指をどうやって追い詰めるかだ」

 

3人の失脚、そして八本指の幹部らしき2人の確保。それにより八本指の活動は目に見えて消極的になっている、今この時に完全に叩いてしまいたい。だが今は完全に兵士の中にも、城の警備の中にも八本指の息の掛かった者がいないとも言えないので、私と王の2人だけで話を進めるしかないのだが、やはり2人では意見も大きく広がる事が無く難航する

 

(……レエブン侯がいれば……いや、そうとも言い切れないか)

 

6大貴族のうち3つが潰れた今。それらの領地の事で忙しくしているレエブン侯を八本指の対策にまで駆り出すのは余りに不憫だ……何とか、2人である程度の形にまで持っていかなければ……

 

「帝国への国境の警備は万全となっている。もしも逃げるとすれば法国と思うがどう見る?」

 

「ありえない話では無いかと」

 

八本指と言うのはスレイン法国が信奉する神の1人の特徴であったと聞く。それがどこまで真実かは判らないが、可能性はゼロでは無いだろう。邪推になるが王国と帝国がいがみ合うようにと送り込んで来た集団と言う線もゼロでは無い、そんな相手に協力など頼めるわけが無い

 

「問題は法国とは協力体制に無いことですね」

 

帝国と手を結ぶ事が出来た。だがもとより繋がりも無い法国に犯罪者の引渡しを要求した所で良い返事は返ってこないだろう

 

「賄賂などでなびく事の無い信用出来る兵士を派遣するしかないだろうか」

 

「もしくは王都を出る前に捕らえる事が出来ればベストなのでしょうね」

 

王国の正常化のためにはなんとしても八本指を無力化しなければならない。私と王の話し合いはカワサキ殿が料理が出来たと呼びに来るまで続くのだった……

 

 

 

 

カワサキ殿が料理が出来たと呼びに来た。正直カワサキ殿が訪ねてきたと聞いて、私達の行動の確認に来たのかと焦った物だが……そうではなく、私の頼みを聞きに来てくれたと言うのに感謝した。

 

「お約束通り膝を治す料理を振る舞いには来ました。ですが、最終的には全てはランポッサ国王。貴方の努力次第と言う事を忘れないでください、私はただ手助けをするだけです」

 

魔法でも駄目、薬でも駄目と諦めていた。それでも私の努力次第と言う事ならば私はなんとしても、元通り歩ける足を取り戻す。

 

「こちらでもリハビリのメニューを出しますが、決して無理をしないと約束してください。下手をすれば悪化する結果になりますので」

 

「判った。そちらも約束しよう」

 

私の了承の言葉を聞いてから、カワサキ殿が料理を運ぶワゴンから料理を取り出す。

 

「爽やかな見た目ですな」

 

「アボカドとモッツァレラチーズとトマトのカプレーゼサラダです。アボカドと言う野菜は膝の関節に非常にいい成分を持つとされています」

 

料理の名前と効能を教えてくれる。私はナイフとフォークを手にし、アボカドとチーズとトマトを丁寧に切り分け、3つを重ねて口に運ぶ。チーズのまろやかな味とトマトの酸味、そしてねっとりとした独特の食感のアボカド……それら3つを独特な風味を持つソースが1つに纏めている

 

「とても美味ですが、些か味が薄いように思えますな」

 

美味しいと言うのは間違いが無い。だが全体的に味が薄い様な気がすると告げるとカワサキ殿は笑いながらその理由を教えてくれた。

 

「正直に言いますと膝その物を治す料理と言うのは私も知らないです。ですが引き受けた以上出来ないなんて事は言いません、主に膝に良いとされる物は上質な蛋白とコラーゲンなのですが……それ単品では料理にするのが難しい物なのです」

 

カワサキ殿の話は余り理解出来ないが、今回の料理はかなり苦労されたといっているのは判る。

 

「そしてコラーゲンを使う料理となると必然的に味が濃い物となるので、可能な限りの薄味にしております。味の濃い料理と言うのは身体に良くない物が多いのでどこか薄味になるものもあるとご理解していただければ幸いです」

 

私の無理な頼みゆえの薄味と判り、謝罪と共に感謝の言葉を口にする

 

「次の料理は北京ダックと言う料理になります」

 

「……なんとも凄い料理ですな」

 

ワゴンにかけられた布を外すと巨大な鳥の丸焼きがあり、思わずそう呟く。だがカワサキ殿は小さく笑いながら

 

「この料理は本来ならばコース料理としてお出しするのですが、流石に1匹をお召し上がるのは無理ですので、皮と少しの肉を楽しんでいただこうと思います。残りの分はガゼフさんへとお出しする予定です」

 

私の膝の為の料理であり、ガゼフの口には合わないと聞いていた。カワサキ殿の料理は絶品なので1人で味わうことに申し訳ない気分だったが、カワサキ殿の言葉に少し安堵する

 

「こちらはこの餅(ピン)と言う生地に巻いて食べていただきます」

 

カワサキ殿は大きなナイフとフォークを使い鶏肉を器用に解体する。飴色に輝くその鶏肉は甘い独特な香りを放っていて、目を引かれる。カワサキ殿は丸い生地に黒いタレを塗り、鶏肉と野菜を乗せて筒状に丸めて私の前へと置く

 

「北京ダックになります。鳥の皮はコラーゲンをたっぷりと含んでおり、膝に良い料理となっております」

 

皿の上には4つの北京ダック。些か少ないと思うが、まだ料理が出てくると思えば丁度いい量なのかも知れない、フォークでは形が崩れると進言され、王族として相応しくないと思ったが手掴みで北京ダックを手にして口に運ぶ

 

「これは……なんとも言えない美味」

 

「喜んで貰えて何よりです」

 

にこりとカワサキ殿が微笑む。生地はパリパリとしているのに中は焼きたてのパンのようにモッチリとしている、噛み締めているとパリっと焼かれた皮の食感とジューシーに焼き上げられた肉の旨味が口一杯に広がる。

 

(この野菜も完璧だ)

 

肉と皮はかなり脂が乗っていて濃い味なのだが、それをさっぱりとさせる新鮮な野菜の味わい。甘くて辛いソースがたっぷりと生地に塗られているのだが、その甘辛い味が癖になる

 

「カワサキ殿、膝にいい料理とお聞きしたが、直ぐに効果が出るものなのだろうか?」

 

「そうですね、本来ならばそれなりの時間が掛かりますが、今回は私の生まれつきの異能【タレント】で強化しているので近いうちに効果が出ると思います」

 

寒い時期になると立ち上がるのも億劫になるほどに膝が痛くなる。それが無くなるだけでも……いや、そうではない。私の目的は歩けるようになるまで回復することだ。この美味な料理が私の膝を治す手伝いになってくれれば、これほどの幸福は無いだろう。

 

「おお……これは」

 

次に差し出されたスープは私が海の食材を食べてアレルギーと言う病気を発症した時に振舞ってくれたスープ。また食べたいと思っていたので思わず声が出る

 

「今回は鶏皮と手羽先で作っていますから、前よりも熱いので気をつけてくださいね」

 

「うむ」

 

木のサジを手にして掬う。白くトロリとしたスープに思わず笑みを浮かべる、よく息を吹きかけてから口に運ぶ。身体の中に染み渡っていく熱が心地いい……濃厚な鶏の旨味を持ちながらも爽やかな後味

 

「……美味い」

 

カワサキ殿が振舞ってくれる料理はどれも絶品だ。だがその中でもこのスープには思い入れが強い、サジで簡単に骨から外れる鶏肉には中までしっかり味が染みていて、白く濁ったスープには野菜の旨味と鶏の味が染み出している。カワサキ殿の言うとおり非常に熱いが、その熱さえも美味いと思わせてくれる。本当に素晴らしい料理だ、ゆっくりと具材を噛み締めスープを楽しむ

 

「ふう、美味しかった」

 

空になった椀を前に深く溜息を吐く、食べるのが惜しいと思いつつも食べる手を止める事が出来ない。まさかこの齢になって美食に目覚めるとは思っても見なかったな。

 

「では最後の料理になります、これは私達の国でも大変珍しい品になります」

 

そう前置きをされて出されたのは鮮やかな茶色のタレと、その中に沈められた三日月状の……恐らく何かの動物の身体の一部。

 

「カワサキ殿。これは一体?」

 

「フカヒレと言います。鮫と言う生き物の鰭です、栄養価が非常に高い食材になります」

 

このような生き物は見た事がないが、一体どんな生き物なのだろうかと疑問に思いながらフォークを刺す。見た目は1つだが小さく切られているのか思ったよりも小さく見える

 

「……これは……また凄い」

 

噛み締めると歯を跳ね返す弾力と思った次の瞬間には口の中で溶ける。そして濃厚な旨味を伴ったタレと共に身体の中に吸収されるかのように消えていく

 

「まるで食べるそばから身体に吸収されていくようだ」

 

飲み込むのが惜しいと思うほどの味なのに簡単に身体の中に吸収される。その味は間違いなく至高の品、タレもフカヒレも驚くほどに味わい深い……美味しいや美味いと言う言葉を告げるのも惜しいと思うほどだ。夢中で食べ、気がついたら皿にはフカヒレもタレも姿も無く、カワサキ殿のお気に召した様で何よりですの言葉が聞こえるまで殆ど何も考える事が出来なかった

 

「とても美味だった。カワサキ殿はやはり素晴らしい料理人だ」

 

私の賛辞の言葉に光栄ですと笑うカワサキ殿は皿をワゴンの上に乗せ

 

「ガゼフさんにリハビリの内容を伝えておきます。それと疲れが溜まっているように見えるので少し休むことを勧めますよ」

 

カワサキ殿の私を心配する言葉に感謝の言葉を告げる。ガゼフに少し横になると伝えて欲しいと頼み、私はベッドに身体を預けるのだった……八本指、リハビリの事、帝国との同盟の事……考える事は山ほどあるが、今は駄目だ。何も頭が動かない、満腹になった事で襲ってくる睡魔に抗う事が出来ず。私の意識は深い闇の中へと沈んでいくのだった……

 

 

 

カワサキさんの提案で海……この世界の海は真水らしいが、それでも海水性の生き物が生息しているので海で良いとカワサキさんが言っていた。レクリエーションの一角として海でのキャンプに行くのだが……

 

「これか、後は……えーっと」

 

カワサキさんのアイテムの倉庫を引っくり返す。カワサキさんの頼みで海で使うレジャーグッズの捜索をしていた、カルネ村の開拓の話とニニャとツアレの話まで俺に押し付け、更にアイテムも探せとかどんな鬼畜だと思いながらもアルベド達では無理なので、俺がこうして探している

 

「あ、あったあった。浮き輪とビーチパラソルと……後は……水中眼鏡か」

 

倉庫からどんどんアイテムを引っ張り出すのだが、稀にAとかS級のアイテムが乱雑に突っ込まれているのを見るととても悲しい気持ちになる

 

「流石に流れ星の指輪は無いか」

 

前に何個か発見したが、流石にもう無いなと苦笑していると木の棒がいくつか落ちてくる

 

「げえ!?なんでこれが……」

 

登録してある装備を即座に召喚できるアイテムが山のように落ちてくる。課金アイテムガチャでは中の上と言うランクだが、これも勿論稀少な品だ。必要なアイテムは持って行って良いと聞いているので、即座に俺のアイテムボックスに格納する

 

「……まだまだありそうだな」

 

木の棒が落ちてきた辺りをさぐると出るわ出るわ、明らかにカワサキさんが必要としないはずの課金アイテムの数々

 

「……結構やってたんだな」

 

カワサキさんは料理系のアイテムを求めていたが、ユグドラシルではクックマンは選択プレイヤーが極端に少ないので何かのアイテムと抱き合わせでガチャに追加された事が多かった。多分これらのアイテムも間違いなく、そういう経緯で入手された物だろう

 

「おっ、ラッキー。これ貰っておこう」

 

超位魔法の詠唱時間をキャンセルする砂時計。これは必須なので確保しておこう、更に第3位階に制限されるが魔法をノーキャストで発動出来る腕輪などもあるのでそれも片っ端からアイテムボックスに入れていく

 

「あったあった」

 

水中ゴーグルやシュノーケルのセットを引っ張り出して、リストと確認しているとカワサキさんが戻ってくる

 

「あった?」

 

「はい、色々ありましたよ」

 

山のようになっているアイテムの確認中ですと言うとカワサキさんは頭をかきながら

 

「こりゃ出発は明日の朝になりそうだな」

 

戻り次第出発しようと言う話だったが、時間は夕暮れ。今から出発するのは些か危険だろう

 

「連絡ってもう入れた?」

 

「いえ、まだです。カワサキさんが戻ってから伝えようと思っていて」

 

本音を言うとカワサキさんの倉庫で課金アイテムを探すのが忙しくて、連絡を忘れていたんだけど……そう言う事にしておこう。カワサキさんはそれなら良かったと笑い

 

「王国の方はけりをつけてきた。とりあえず回復バフをモリモリにしておいたから大丈夫だと思うし」

 

「思うしなんですね。大丈夫ですか?」

 

元気になりすぎるとかは大丈夫ですか?と尋ねるとカワサキさんは明後日の方向を見て

 

「効果には個人差があるからな」

 

「判りました。細かいことは考えてないってことですね」

 

まぁランポッサが元気になれば、それなりの後盾が出来るから問題ないのでこの件はとりあえず+と言う方向でいいだろう

 

「じゃあ夕食の時でも連絡しましょうか」

 

「いやそれだと準備が慌しくなるから、今からにしないか?」

 

確かに転移魔法で移動するがかなりの大所帯になる。連絡は早いほうがいいか……

 

「判りました。では伝えてきます」

 

「いってらー、俺は道具の確認をしておくわ」

 

手にしていたリストをカワサキさんに渡して、俺はNPC達に6階層に集合するように通達を出し、レクリエーションで海へ行くと言う発表をしたのだが、そこからナザリックは上から下からとんでもない大騒ぎになっていた

 

「服ぅ!水着は何処ですか!?」

 

「時間!時間が無いぃ……」

 

「浮き輪!浮き輪ってあったよね!?お姉ちゃん!」

 

「あ、あったと思うけど何処だったかなあ……」

 

「おや、デミウルゴス。何をしているのですか?」

 

「何と言われましても釣りの準備ですよ。セバスもやりますか?」

 

「お誘いしていただけるのならば、付き合いましょう」

 

「……海って凄いモンスターいるけど大丈夫かな?」

 

「大丈夫なんじゃない?カワサキ達いるし、それより水着だって、見に行こうよリリオット」

 

「お弁当の準備と下拵えを!時間がありませんよ」

 

「判ってます!判ってますよ」

 

俺とカワサキさんはその大騒ぎを聞きながら、今度こういう計画を立てる時は事前通達を大事にしようと思ったのは言うまでも無い……

 

 

 

下拵え ナザリック勢海へ行くへ続く

 

 




これがゲヘナに入る前に最後のイベントになります。そこからは物語を動かしていく予定なので料理回は少し少なくなると思います、また次の場所で落ち着いたら料理を続けていく予定ですので、暫くはそれでよろしくお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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