生きたければ飯を食え   作:混沌の魔法使い

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下拵え ナザリック勢海へ行く その2

 

 

下拵え ナザリック勢海へ行く その2

 

キャンプ中の食事と言うのは凝っていない方が良い。外で食べるのに変に凝った料理を作ってしまうと外で食べる意味が無くなり、そして食欲も出ない。外で食べる食事と言うのは多少大雑把で豪快な物が良いと俺は考えている

 

「良し、ピッキー。上出来だ」

 

「いえ。私だけでは無いですよ、ブレインとハムスケのおかげです」

 

デミウルゴス達との釣りを少し早めに切り上げて、食事の準備を引き受けてくれたピッキーと合流する。すると準備は殆ど完了していてやるじゃないかと言うと、ピッキーは自分だけではなく、ブレインとハムスケのおかげだと言う。横目でそっちを見ると、無理矢理連れ出されたカジットが投げた薪を尾と刀でバラバラにしているブレインとハムスケの姿がある。俺が手を上げると、2人とも頭を下げてくる。

 

「なんであの2人はびしょびしょなんだ?」

 

明らかに汗とは違うレベルでびしょぬれだ。そして何故カジットはあんなに疲れた顔をしているのかが気になる

 

「それは流石に判りません」

 

何故濡れ鼠なのにあんなに生き生きとした表情をしているのかが理解出来ないが、本人(匹)が満足した表情をしているのでそれには触れない方が良いだろう

 

「網の準備も出来ているようですね。タレは大丈夫ですか?」

 

パーカーを羽織っているシホがピッキーにそう尋ねる。まだ釣りをしていても良いと言ったのだが、もう釣りは十分です、と言うので2人で合流しに来たのだ。ちなみにシホは鯵らしき大魚を2匹釣り上げている。NPCは所持していないスキルは難しいとモモンガさんは言っていたが、そこは俺の技術指導でマーレ達も習得出来るのは明らかになった。だがそうなると人化した場合とそうじゃない場合の習得率は変動するのだろうかと言うのがやや気になるところだな。

 

「それも大丈夫です。タレはナザリックで準備してきましたし、網もちゃんと酢を塗ってあります」

 

バーベキューをやる上で一番気をつけないといけないのは、網に肉がくっつく事だ。それは網の加熱が足りないのではなく、熱凝着と言う現象で肉や魚がくっついてしまうためだ。それの解決策は酢や酒を塗る事である。

 

「後は炭の加熱だな、肉と魚の準備もして……シルキー達にも声を掛けておいて欲しい」

 

俺の技術指導には有効範囲がある。その範囲外になると教えても料理が出来ない可能性がある。しかし、この大人数相手では順番で料理を待たせるのも酷だ。それならば有効範囲外にはシルキーを配置して、バーベーキューの監督役にする必要があるかもしれないな。

 

「さてと、じゃあ、俺もちゃっちゃっと準備するか」

 

岩を積み上げて鉄板を置く土台を作り、ブレインとハムスケが用意してくれた薪を入れて火をつける

 

「呼びに行くのでは?」

 

「いや。そんな必要は無いな、と言うか無理だ」

 

遊んでいる時と言うのは中々空腹を覚えない、興奮してるからな。だからこう言う時どうすれば良いか?答えは簡単だ。自分が空腹だと思い出させてやれば良い

 

「ピッキーは肉の準備、シホは釣ってきた魚の下拵えを頼む、鱗を取って内臓を取るだけで良い」

 

三枚下ろしや開きにする必要は無い。塩を振ってバーベーキューの網で焼く、素材が良いのでシンプルな調理でその味を引き立てれば良い

 

「それと昆布で出汁を取ってくれ、ネギもな」

 

「味噌汁ですか?」

 

「いや、マース煮にする」

 

マース煮?と不思議そうな顔をするピッキーとシホを見ながら、豚肉と野菜を食べやすい大きさの乱切りにする。

 

「いい魚は良い塩で煮るだけで旨いらしいからな。それを試してみようじゃないか」

 

でっぷりと肥えた鯵がいるんだ、それを活かしてみようと思うのは当然の事だ。シホは俺の説明に納得したようで、わかりましたと言って無限の背負い袋から食材を取り出し始める。

 

「牛肉は厚め、豚肉と鶏肉は薄切りで良いですか?」

 

「それで任せる」

 

牛肉は多少生でも大丈夫だが、豚と鶏は完全にアウトだからな。まぁそれらはピッキーに任せると言って豚バラを鉄板の上に並べてヘラで炒める。豚バラから脂が出てきたらキャベツ、人参を加えて更に混ぜ合わせる。豚の脂が野菜に回ってきたら、俺が色々と試行錯誤しながら作っている中華麺50個を解しながら鉄板の上に落とす。

 

「ふんっ!」

 

普通の人間で炒める事が出来る重量では無いが、それをクックマンの腕力で強引に混ぜ合わせる。ヘラがみしみし言っているが、多分折れることは無いだろう……多分。中華麺も解けキャベツと人参がしんなりして来たらもやしを加える。もやしは簡単に火が通るから、仕上げの少し前で十分だ。

 

「良し、こいつで仕上げだ」

 

たっぷりのソースを具材の上にぶちまける、ソースがこげる音と香り、砂浜で遊んでいた面々がこっちを見るのを見て俺はにやりと笑うのだった……

 

 

 

 

シャルティアが良いと言っていた浮き輪は確かに浮く分には非常に優秀だったが、泳ぎを覚えるという面では全く駄目だった。ビート板は掴んで浮くという形で、泳ぎを覚えるという面では極めて優秀だった。

 

「ふう……しかしまぁ、泳ぐと言うのは難しい物だ」

 

砂浜で休憩しながらそう呟く、設定魔のタブラさんと水着などを大量に用意していたペロロンチーノさんは、しっかりとフレーバーテキストに泳ぎを可能とする一文を入れていたのか、2人の泳ぎは実に見事な物だった。美女、美少女なのは間違いないので、水の中で舞う姿は素直に美しかったと思う。

 

「お褒めに預かり光栄ですわ」

 

「頑張りました」

 

やや頬を赤らめる2人。元の性格だと喧嘩ばかりだが、今の性格だとそれなりに友好的な関係を築けているらしい。いや、それとも元々仲は良かったのだろうか?元の性格に戻った後が気になるが、今はその話題に触れない方が良いだろう。

 

「よーいしょっ!」

 

「甘いッ!」

 

「ルプーそっち行ったぁッ!」

 

「だーしゃーっ!ああっ!」

 

「貰ったッ!!」

 

今は休憩を兼ねてユリとナーベラル、それとクレマンティーヌとルプスレギナのバレー対決を見ているのだが、まぁ凄まじい。何が凄まじいってボールの耐久力だ、良くユリ達のスパイクに堪えていると正直感心する。決して、皆が跳躍する度に揺れて暴れまくる胸部に目を惹かれている訳では無い。

 

「アインズ様、アインズ様。見てください、た、沢山採れました」

 

ガチャガチャと何かを揺らしてアウラが駆け寄ってくる。何を持っているのかと思いバケツを覗き込むと大量の貝が詰め込まれている。

 

「あら、アウラ。随分と頑張ったのね」

 

「う、うん。カイレが教えてくれた」

 

カイレ……か、視線を向けるとカイレがぺこりと頭を下げてくる。その近くにエントマとシズの姿があり、2人も一生懸命地面を掘っている。

 

「シャルティア、アルベド、私達もやってみるか?」

 

拳大の貝となると、これはカワサキさんが昼食で何か作ってくれるかもしれないし、リアルでは出来ない体験だ。これは是非俺もやりたい、シャルティアとアルベドもやりますと笑うので、遊び道具置き場に置いてあったバケツと熊手を手にして、海面の近くの砂を掘り起こす。

 

「アインズ様、アルベド様、シャルティア様。何も無いところを掘っても駄目ですよ?」

 

シズに手を引かれ、歩いてきたカイレが貝の掘り方を教えてくれる。

 

「この細かい穴が空いている所を掘りますと、この通りです」

 

「「「おおっ……」」」

 

カイレの手にギリギリ収まるという大きさの巨大な貝。それをいとも容易く掘り出すカイレに思わず歓声が出る、カイレはそれを自分の隣のバケツに入れた。

 

「ではまず穴を見てみると良いですよ、やや水に近いほうが居るかもしれません」

 

そう笑って再びシズと一緒に潮干狩りを始める。なんと言うか祖母と孫と言う感じだな。

 

「見て、取れたぁ大きい」

 

「おお、やりましたね。エントマ様」

 

カイレに頭を撫でられ目を細めているエントマ、もしかするとカイレは子供に好かれる性質があるのかもしれないな。

 

「あ、見つけました」

 

「私もです」

 

え!?嘘!もうシャルティアとアルベドが貝を発見している、これは俺も負けていられないと思い熊手を握り締めたのだが……

 

「ぐううおおおおおッ!!!!」

 

「「「「「パンドラズ・アクターッ!?!?」」」」

 

海面が割れ巨大な何かに噛まれているパンドラズ・アクターの絶叫が響き、思わずその名前を叫ぶ。良く見ると4m近い怪魚の口に咥えられている。そう言えばこの海の深い所にはパンドラが相打ちになりかけたデカイ蛸が潜んでいると聞いていたので沖合いに行くなと言ったのに、アイツは何をしているんだ。

 

「ぬんッ!ぬんっ!!!」

 

「キシャアアアーーッ!!!」

 

なんであんな馬鹿でかいモンスターと銛一本で戦っているんだ。しかも上半身裸だし……喰われ掛けてるし……

 

「パンドラズ・アクター殿ッ!今応援に行きます!」

 

「もう何やってるのかしら!」

 

恐怖公と多分ニューロニストが銛を手に巨大な魚の身体を駆け上がっていく。3人で奮闘しているのを見て、思わず遠くを見つめながら、

 

「もう少し離れた所で探そうか」

 

「「はい」」

 

このままここに居ては大変なことになる。そう判断し撤退する事にしたのだが、丁度そのタイミングでセーフハウスの方から香ばしい香りが漂って来た。

 

「ふむ、先に昼食にしよう」

 

カワサキさんが食事の準備をしていると言う事は、間違いなく昼時だ。それなら潮干狩りはお昼の後にしようと言って、私達はセーフハウスの方に足を向けるのだった。今もなお海中で怪魚と戦っているパンドラたちから逃げるように……

 

 

 

 

簡易的な椅子の上に座って、目の前で肉が焼けるのを待つ。肉の脂が溶け出して、音を立てるのを聞くと堪らなくなってくる。だけど私達の料理を見ているリリオットがまだと言う限りは箸を伸ばしてはいけない、絶対怒るし。

 

「いやあーそれにしても楽しかったっすねー♪」

 

「そうですねー」

 

誘われてビーチバレーをしたけど、本当に楽しかった。身体を動かすのは好きなので、ああいうのは私好みのスポーツだ。

 

「まだ決着も着いていませんし、お昼の後に続きをやりますか?」

 

「……いや無理無理」

 

食べてすぐ動き回るなんて自殺行為なのでナーベラル様の言葉に無理と手を振る。するとナーベラル様は冗談ですと笑う。

 

「こうしてみるとナーベラルとクレマンティーヌは仲が良いのね」

 

「……そ、そうですねー」

 

あんまり接点の無いソリュシャン様は少し苦手なので、やや目を逸らしながら返事を返す。

 

「……苛めたら駄目。クレマンティーヌは優しい」

 

「そうですよ。ソリュシャン」

 

シズ様達が庇ってくれて思わず泣きそうになった。最初のことを考えると良くここまで仲良くなれたと思う

 

「そうですよぉ。このお肉は良いお肉です」

 

ただ……エントマ様は私をフォローしてくれているのか今一良く分からないのが怖い。お肉扱いから何時脱することが出来るのだろう?私はそんなことを考えながら、肉が焼けるまでの間と言って配られた焼きそばと言う麺を啜る。

 

(あ、美味しい)

 

コロッケとかに使うソースで炒めていると聞いたけど、歯応えの良い麺とソースの香りは実に食欲をそそる。豚肉も野菜も普段のカワサキの料理と違って、ざくぎりだけど、その荒々しい感じが外で食べるには丁度良いと思う。

 

「クレマンティーヌはシズとナーベのフォローを頑張ってくれてるのよ、あんまり苛めたら駄目よ。ソリュシャン」

 

「……ふふ。そうね、気をつけるわ。ユリ姉さん」

 

そう笑うソリュシャン様だけど、目がぜんぜん笑ってない。表面上は笑っているけど、観察する仕草をやめないルプスレギナ様と同じ位怖い……。やっぱり誘われたから着いて来たけど、失敗だったかもしれない。

 

「うん、そろそろお肉も良いですよー」

 

リリオットのGOサインが出たので、箸で肉を取皿に取る。少し焦げているが、それも香ばしいと思える程度だ。

 

「ん、美味し……このタレがいいですね」

 

「そうね、うんうん、美味しいわ」

 

「いやいや、そんな勢いで食べたらみんなの分が無くなるっすからね?」

 

「……はむはむ」

 

「お肉美味しいですぅ」

 

わいわいと楽しい雰囲気なのはいいんだけどなあ……。海でレジャーで遊ぶって言うのも本当に良いんだけど、あんまり接点の無いソリュシャン様が怖いなあ。

 

「あ、ソリュシャン様、これどうぞ。美味しい所ですよ」

 

「あら、ありがとう。リリオット」

 

……リリオットがナザリックに来て活き活きしてる。元々司書で無理矢理漆黒聖典入りしていたことを考えると、活き活きと過ごせるこの環境はリリオットに最適なのかもしれない。私は牛肉を頬張る。その噛み応えと噛む毎に溢れた肉汁がタレと混じりあい絶品だ。

 

「お昼からは釣りをしてみませんか?」

 

「……釣り……そうですね。前に教えてもらいましたが、面白かったです。私は賛成です」

 

「……面白そうだから、私も行く」

 

「む、シズが行くなら、私もぉ……」

 

予想通りと言うかやっぱりと言う4人は私の案に乗ってくれた。決着をつけるのも大事だけど、ご飯を食べてすぐは動けないし。

 

「そうね、やったことの無いことをやるのは面白そうだから私も行くわ」

 

「……じゃあ私も」

 

「んーあたしは泳ぐからパスっす!」

 

……とりあえず怖いから距離を取るって言うのもありだと思うんだけど、やっぱり顔を見合わせる機会も多いから歩み寄ろう。特に顔を見合わせる機会が少なくて、まだ品定めをするような視線のソリュシャン様だけでも着いて来てくれると言った事に内心安堵した。

 

「今度は鶏肉を焼くねー、これはタレじゃなくて、塩胡椒で食べると美味しいと思うよ~」

 

ちょっと緊迫感のある空気なのに、マイペースなリリオットに脱力したが、それがかえってありがたいと思うのだった。なおソリュシャンがクレマンティーヌを観察していたのは、カワサキ付と言う名誉を持つ人間と言う事と、カワサキの好みを知るための物であり、ソリュシャン自身もそれなりにクレマンティーヌと仲良くしようと思っていたりするのだが、クレマンティーヌがそれに気付くことは無かった……

 

 

 

 

 

網の上でアウラが拾ってきた貝とマーレが釣った魚が焼かれている。魚は塩を振っただけ、貝は口が開いたら醤油を入れるようにとカワサキさんから言われているが、肉も一緒に焼かれているし、焼きそばにも目を惹かれるので中々見ているだけと言うのも難しい。

 

「アインズ様、それほど真剣に見なくても大丈夫と言われていたではありませんか」

 

大丈夫ですよと笑い肉を引っくり返すアルベド、水着の上にパーカーとラフな服装なのだが、シャルティアと違い前を閉じているので、どうしても膨らんでいる胸元に目が吸い寄せられる。

 

(いやいや、俺ってこんなに性欲強かったか)

 

もっとこう俺は理知的?うん、理知的だったと思うんだけど……

 

「あちっ!跳ねましたッ!?」

 

シャルティアの熱いと言う言葉に我に帰る。網の上を見ると貝の口が開き、ぐつぐつと煮えているのがよく判る。

 

「どれ、ここで醤油だな」

 

小さい醤油挿しを手にして、貝の中に醤油を注ぐ。バチバチとこげる音と香ばしい香りが広がる。

 

「「うわあ」」

 

アウラとマーレがほにゃっとした顔で笑う。なんだろうな……リアルでもこの世界でも感じたことの無い充実感がある

 

(そうか、これがキャンプか……)

 

家族とか仲間の触れあい、ブループラネットさんが素晴らしいと熱弁していた理由が判る。

 

「「「捕ったどーッ!!!」」」

 

本当にあいつらは何をしてるんだ?打ち倒した怪魚の回りで互いの健闘を称え合っている馬鹿3人に俺はどんな顔をすればいいのか判らなかった。

 

「む、出来たな。ほら、アウラ」

 

魚と貝が焼きあがったのでアウラとマーレに渡す。自分で取ってきた物だから一番最初に2人が食べるべきだと思ったのだが……

 

「あ、アインズ様がさ、先に食べてください」

 

「僕も、お姉ちゃんも頑張りました」

 

皿を渡されどうしようと思ったが、キラキラした目で見てくるので断る事も出来ず。皿を受け取り貝と魚を見て、少し悩んでから食べた事の無い貝に箸を伸ばす。

 

「あふっ、あつ……うんうん」

 

かなり大振りな貝だが、噛み応えがありそれにたっぷりと出汁が出ていて、少し醤油を入れただけなのに信じられないほどに美味だ。少しじゃりっとした食感もあるが、それもまた貝が新鮮な証拠だと思う。

 

「うん、旨い。ありがとうアウラ」

 

「え、えへへ……はい!」

 

物凄く嬉しそうなアウラの頭を撫でる。なんだろうな、お腹が満たされるだけじゃなくて、別の何かも満たされる様な気がする。

 

「うおっ、美味いな、塩だけなのにめちゃくちゃ美味い」

 

「うむ、うむ、焼きたての貝もまた美味い」

 

「ほれ。ハムスケ、野菜を貰ってきてやったぞ」

 

「やったでござるう」

 

「あーん、美味しいー♪」

 

「本当ねー」

 

「あーそれ私のーッ!」

 

「ぼやぼやしてるのが悪いんだよーッ!」

 

風に乗って聞こえてくる皆の楽しそうな声。それだけでも自分も楽しくなってくるな……。多少準備不足は否めないが、今回のキャンプは大成功だったと思う。そんなことを考えながら塩焼きを口に運ぶ。

 

「……うん。これも美味いな」

 

ぱぁっと華の咲くような顔で笑うマーレ。カワサキさんが良く出してくれる魚よりも大振りだし、皮の下には白雪のような身が敷き詰められている。食べると口の中で脂と共に溶けていく、これも間違いなく絶品だ。

 

「む、むむう……お昼からは私もアインズ様に献上できるように頑張ります!」

 

「はいはい、頑張るのは良いけど、その前に食事にしなさい。アインズ様、お肉が焼けましたよ」

 

アルベドが全員の皿に肉を取り分けてくれる。なんと言うか、とても穏やかで微笑ましい気持ちになってくるな。俺はそんなことを考えながら、アルベドが差し出してくれた焼肉を受け取る。

 

「うん、美味い。」

 

ちょっぴり辛くて甘いタレにつけて頬張る、美味しいだけじゃなくて楽しい。やっぱり今回の事は大成功だった、俺はそう思うのだった……

 

 

 

モモンガがキャンプの充実感を感じている頃。デミウルゴスとセバス、そしてコキュートス、ニグンはと言うと、自分達が釣り上げた魚を刺身にし、一杯やっていた

 

「ふー。いやあ、美味い。新鮮な魚だから実に美味い」

 

「本当ですね。デミウルゴス様、グラスを」

 

ニグンがデミウルゴスのグラスに酒を注ぎ、その後自分のグラスにも注ぐ、その姿を見て刺身を口に運んでいたセバスが机の上に皿を置いて

 

「休暇ですが、あまり羽目を外すのは如何な物かと」

 

「ふふふ、セバス。君は判っていないな、これはあくまで刺身と合わせる為に飲んでいるだけで、酔うほど飲むつもりは無い。ただ、そう……気持ちよく眠るためとでも言っておこうか」

 

気持ちよく眠る?デミウルゴスの言葉にセバスとコキュートスが首を傾げる。だがデミウルゴスはその問いに答えることは無く、マース煮を口に運び、

 

「素晴らしい、塩だけでこの味……やはりカワサキ様の料理は素晴らしい」

 

堅物のデミウルゴスが休暇を満喫している。それは御方の思惑通りと言えばそうなのだが、セバスもコキュートスも本当にデミウルゴスかと怪訝そうな顔をする。

 

「コキュートス。これはカワサキ様とアインズ様がご計画になられた物だ、余り難しい顔をしていると失敗したかとお思いになるでしょう、ならば存分に楽しむ事がなによりもお2人への忠誠の現れとなるのです」

 

そう言われるとセバスもコキュートスもこれ以上デミウルゴスに何も言う事が出来ず、机の上に広がっている魚料理に箸を伸ばす事しか出来なかった。

 

「美味い、自分で釣ったからか、余計にそう思う」

 

「そうですね、とても楽しかったです」

 

魚影が濃く、入れ食いとなるこの海は素人でも魚が釣れ、コキュートスもセバスも満足げだ。

 

「確かに良いポイントです、小魚も多く、それを狙う大型魚もいる。本当に良い環境です、岩場もありますし、海草が茂っている部分もありますし、セバス様とコキュートス様もまだお釣りになるのならば、今度は海草のポイントが良いかと思います」

 

ニグンも刺身を口にしながら、このポイントの解説を始める。デミウルゴスはその話を聞きながら木陰に寝転がり、帽子を顔に載せる。

 

「お眠りになるのですか?」

 

「ちょっと休憩ですよ。夕マヅメに大型魚が寄ってくるでしょうからね。ニグン、悪いですが、昼から釣りをすると言う人がいたら教えてあげてください」

 

デミウルゴスはそういうと寝息を立て始める。セバスとコキュートスは顔を見合わせ。

 

「このキャンプを今一番楽しんでいるのは、どうもデミウルゴス様のようですね」

 

「そうみたいだな」

 

普段のデミウルゴスと違い生き生きしてる姿を見て、セバスとコキュートスは苦笑し、ニグンは火を起こしてそれで魚を軽く炙り。

 

「少し焼いてみました。これも美味しいと思いますよ」

 

「どれ、頂きましょうか」

 

「ああ、頂こう」

 

デミウルゴスだけではなく、セバス、コキュートス、ニグンもまた海と言う環境を満喫しているのだった……

 

 

 

下拵え ナザリック勢海へ行く その3へ続く

 

 




今回はレクリエーションがメインなので、食事もあっさり風味です。そして今一番海を満喫しているのは間違いなくデミウルゴスってはっきり判りますね。次回は釣りフェイズから入っていこうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

やはりカワサキさんがオラリオにいるのは……

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