更新はこれまでの実績から危ういですが、
暇さえあれば書けるはずなんですよ。暇さえあれば。
まぁ今作は長編の予定はなくところどころ派手に飛ばしていくつもりなので、ポカンとなったら質問してくだしゃい。きっと返答出来ます。きっと。
(俺、なんでこんなことになってるんだっけ?)
眠る前にゲームをしていたのは覚えてる。もともとガキのころからやってたFFシリーズのアクション対戦ゲームだ。ゲーセンでしか展開してなかったそれがとうとう家庭用に展開されたと聞いて(ど田舎のゲーセンは遠く、安定していくことはできない)、狂喜乱舞しながらやり続けてた。おもむろにCPUと組まされたり、おもむろに同じチームの人が回線の問題等でCPUに切り替わったり、アプリケーションエラーで今度は自分がCPUにされたりと…なかなか酷い目にあわせてくれやがったりしたが、それでも楽しくてずっとやってた。まぁ…才能はなかったらしくて、最近はめっきり勝てなくなってたけど。
昨日も負けが込んで嫌になって酒飲んで明日に備えようと思い、得意じゃないのにきついのをガバガバのんで意識を飛ばす様に寝て――気が付けば、
(なんか、声も出せないんだけど…?)
声帯が震えない。元から震わせる機能がなかったのではないかというレベルの硬直ぶり。それどころか、手も足もよく動かせない。視界だって、ぼんやりとしていて全く見えないときた。
これは、つまりそういうことか――!!
(急性アルコール中毒…!!)
きっとそれだ。普段ビール一缶で酔っぱらってしまう俺が、ウィスキーストレートでなんてやっぱ不味かったんだ。つまりここは病院で、目も良く見えないのはその後遺症。運良く誰かがが俺の部屋まで来てくれたところで異常に気付いた。そしてそこから色々あって病院へ搬送されたと…。
(うわぁ…きっと布団とか凄いことになってたんだろうなぁ。悪い事をしてしまった。あと、確か次の日は大事なレビューがあった気がしたり…はぁ)
ここから先のことを思うと気が重い。急性アル中だなんて、死ななかっただけ儲けものとはいえ会社での評価はダダ下がり間違いなし。ただでさえ出来が悪いのに、これじゃクビまったなしだ。再就職も最近は厳しいのに――と、思っていれば、ドアが開く音が。ただしそれは引き戸では無く、明らかにドアノブの音。
(……引き戸じゃない病院ってなんだ? 実はここは病院じゃないのか? いや、仮にそうだったとしても、俺の部屋も引き戸しかなかったはず。じゃあ、ここは一体?)
そんな疑問も、自分より遥かに大きい手が身体の下に差し込まれた瞬間に霧散した。
(お、おお!? でっか!! なんぞこの手?! 俺、身長あんまり高くないっていったって、これでも大人の男やぞ!! バレー選手かな…?)
意味のない疑問が脳内を駆け巡る中、こちらを抱き上げた巨人(?)は、そのまま俺を抱きしめたのだ。
(このまま絞殺されるのか…? いやだったらなんで助けたっていうか、あれ、あったけぇ。なんていうか安心するっていうか、おや、目が開けられそうになってきた――)
「――ふふっ、眠ってるのね。私の可愛い坊や」
(うん? 坊や? あれ、これ俺の手だよな? だとしても、ちっちゃすぎっていうか…)
「はやく大きくなってね、私の可愛い『クラウド』」
(今『クラウド』って言ったー!? く、クラウドだとぉぉ!!??)
あまりの衝撃に、全力で震わせた声帯は声を成した。もちろん、おぎゃあという、アレである。
「あらあら、どうしたのかしら。お腹が空いちゃったのね。それじゃ、ご飯をあげましょうねぇ」
とりだされたのはそう――ビッグなアレで。
(やめろやめろやめてくれそれはこの前上野のお姉ちゃん(tooふくよか)にやって貰ったプレイを思い出すっていうかうわぁぁぁ!!俺の身体よとまってくれぇぇぇぇい!!!!)
成人している意識もなんのその。本能は忠実に必要なことを始める。表層意識など、現時点ではないも同じ。
(クソがぁぁぁ!! テンプレ転生物だったとしても、なんでよりにもよって『クラウド・ストライフ』なんだよぉぉぉ!!!!)
クラウド・ストライフ。
FF7の主人公で、俺がよく好んで使っていたキャラ。クラウド使いは地雷が多いと言われようがなんだろうが、キャラとして好きになれなかろうが――大剣アクション超格好良いと、たったそれだけの思いで使い続けた、不運につぐ不運を背負った男の子。
ソルジャーになりたくて上京して、夢破れて一般兵。揚句長期間の人体改造に晒され、廃人につぐ廃人を経たりする冗談抜きのハードライフ。
一つだけ言いたいのは――なんでやねん、それに尽きた。
追伸:周りがいうより悪い物じゃなかったし、個人的には好きな味でした。
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はっきりいって、ここニブルヘイム村はもう存在自体がヤバい。
初めて魔晄炉を作ったが故に神羅から受ける恩恵も割と大きめで生活は豊かだが、険しい山々が近くに存在するためか出現するモンスターは割と物騒なのが多いし、数年に1回は子供が帰らぬ人となったりする。
神羅屋敷なんて近付いただけで寿命が縮む気がするし、魔晄炉なんてお前、クラウドの死地やぞ?
とにかく俺は、原作クラウド君の道のりを歩きたくない。
生まれ変わりとはいえ、両親には死んでほしくないし、未来では巨乳美女のティファちゃんにも生きていて欲しい。というかそもそもぼーっとしてたら星ごと滅ぼされてエンド。
そうかといって、セフィロス君そもそも一強過ぎて誰も勝てないし、唯一勝てる可能性があるとすれば、改造人間クラウド君ただ一人。まぁパンピー時代にあの英雄セフィロスに不意打ちとはいえ、近接武器で致命傷をおわせていたところを見れば、実は肉体スペックはそもそもクッソ高かったと思われはするけれども。
そんなわけで、ありとあらゆるところにところせましと張り巡らされる死亡フラグに対し、考えに考え抜いた俺が出したルート。ある程度大きくなった俺が、そのための一手として最初に起こしたアクションは――両親の説得。
「いいか、親父にお袋。耳かっぽじって良く聞け。こんなやべーところからは、早くおさらばするんだ。出来ればご近所のロックハートさん達…とかと一緒に。ハリーアップ」
足のつかない椅子で足をぶらつかせながら、ゲンドウスタイルで説得を試みる僕ちん。それに対して、両親の表情はあまり良いものとは言えない。両親としてはヤバい理由を山岳地帯に囲まれているだけ、なんて軽い理由で捉えているせいか、
「はりーあっぷ? そりゃどういう意味だか知らねーけどよぉ…お前は他の子達と違って頭の出来がちげぇから、わかってるもんだと思ってたが、そりゃできねぇ」
「そうよクラウド。引っ越しだって、タダじゃできないの。それに、引っ越したって、どうやって生きていくの。そういうことを考えると、他所に行くっていうのは簡単じゃないのよ。わかるわね?」
完全に子供に言い聞かせるようなその言葉にぷっつんしかけたが、ここは冷静に説得を続けた。だが健闘むなしくげんこつEND。子供に対する威力じゃなかった気がするのは、本人達も願っていることだったからだろうか。
それはそうと、原作では一切露出しなかった、故人であるとしか言われなかったクラウド君の父親。まさか、金髪ってだけであとはクラウドとは似ても似つかない強面の髭親父だったとは、誰が思おう。そして母親は、明確に顔出ししていなかったと記憶しているが、これがクラウド君にクリソツ。もっと女性的で丸み(色んな意味で)を帯びた感じだが、良かったなクラウド君。母親似で本当に良かった(良かった)。あと母親の口調が女性的なのはきっと、まだ親父が生きているからだと思う。
閑話休題。
とにもかくにも、夕飯時におもむろに始めてみた説得フェーズは大失敗。ただそれはまぁ、所詮は去年の出来事。現状肉体年齢6しゃい(流石クラウド、子供時代も可愛い)の俺は今――、
「うおぉぉぉぉ?! ここでお前が出てくるのは卑怯だろぉぉぉぉぉ!!!!」
ニブル山の西側。そこの山道で今――ドラゴンに追われていた。
そう、セフィロスツエー!のために用意された当て馬と名高い、あのドラゴン君だ。実際はあんなにポンポン出て来るような生き物ではなく、出会うのはかなりレアい山の主的存在なのだが、現在6しゃいであるところの俺は、猛烈な勢いで追いかけ回されている。
そもそもことの発端は、『(ゲームとまでいかないまでも)モンスターを倒して成長すると仮定すれば、今の内から戦っておけば素のままでセフィ君いてこませるんとちゃう?』という、安易な発想から始まった。子供らしい遊びとして誤解してもらえるよう、木刀振り回して遊んでいるとみせて練習し、外ではモノホン使ってモンスターを殺してまわろうという、現代日本であったならサイコパス待ったなしの生存戦略第二弾を実施していたことに起因する。
結果からいえば、別にモンスターを殺したからといって強くなることはなかった。所詮は子供に過ぎない我が身では、罠を張ってそれに嵌ったモンスターをやるくらいしか出来なかった(グロ耐性ってスキルはついたと思う。どんな生物でもモツはグロ)が、別に目に見えて成長したかと言われればそんなことはなかった。恐らく明確に成果だといえるのは、日々遊びの延長に過ぎないと思ってた剣の練習が、とうとう木刀じゃ軽すぎると思うようになっていたことだろうか。まだたった6しゃいだよ、6しゃい。身長だって周りと比べて小さいくらいなのに、もう鉄パイプくらい軽々振り回せそうになっている。実際、スモールソード(ショートソードより更に短い剣のこと)程度なら訳ない。つまり何が言いたいかといえば、クラウド君はもともとクッソ才能があって、単純に魔晄に適応出来なかったところ以外は問題なかったということだ。
そんな結果を知ったらそりゃお前、多少は調子に乗っちゃうよね。完全に罠頼りから、それっぽいだけチャンバラが有効そうと気付いちゃったら、そりゃ使いたくもなるやん。
村の本当に周辺に限定して、はぐれて弱っていて、なおかつ元々弱い種族がいたら挑んでみようとか考えて、実際かなーり弱ってた子供のニブルウルフがいたから戦って、本当にギリギリかつ運よく勝ったところで――上空に見えるはドラゴンさんよ。
どうやら俺と同じ獲物を狙ってた様だったので、倒したウルフをそっと近付けてみれば、一飲み。咀嚼もしないんだなぁ、ってぼけーっとみてれば――次は俺だと言わんばかりの眼光。わー、一石二鳥だーと、一瞬考えて末に反転して大爆走。そうして、今のくっそ情けない逃亡シーンに至る。
『たかだか6才の子供が、ドラゴンから逃げ切れるわけねーだろww』と皆思うことだろう。俺もそう思う。確かに村周辺で、完全に童心にかえった俺が大人の知識で作りだした様々な道具があるとはいえ、あちらさんが本気を出せば一瞬で終わるはずだ。ふっ、と一息で一瞬よ。それをしないのは単に、
(――嘘、もしかして私、トカゲに遊ばれてる?)
火炎なんて吹こうものなら炭も残らないだろうし、全力で追いかけても力加減を間違えてもプチっと逝く。食料とするには追いかけまわして疲れさせる、というのがあちらさんの作戦なんだろう。村周辺から徐々に離されるように追い回されているのが良い証拠だ。頭の良い蜥蜴め。
ただ――それに対する策がないなどと、誰がいったのか。
木々の間を駆けまわりながら、ズボンの後ろポケットに差していたグローブを取り出し、手に装着する。堅い感触のそれには、"緑色に光る球体"が輝いている。そう、みんな大好きなマテリアさんだ。
きっとどこかで元気に生きているだろう未来のマテリアハンターなどという小娘とは、マテリアに対する想いが違うね。ただただ生存のためと必死こいて探して2年がかり(一人で外出を許されてからすぐやったんやて。サボってたわけちゃう)集めた総数――たったの"2個"。
それも正直本命には絶対通じなさそうなのが一つと、もう一つはどっちかっていうとあとナンバリングが3つは先の主人公がメインで使ってそうなヤツで正直ガッカリだったが、今を生き抜くにはこの上ない天の采配――!!
レベルアップがない以上、MPの総数を上げる方法は身体的成長と鍛錬のみ。毎日吐く程食ってれば、昨日のアタシよりも一個多くのおにぎりが食える理論で気絶するまでMPを消費して容量を増やした結果、なんとか最大で3回くらいは、意識を失わずに魔法が使える程度までに鍛えることができた。
モンスターが隠し持ってた千切れかけで(恐らく)血のシミが付いたレザーグローブにマテリア穴が一つ、武器屋の親父に無理言って内緒で譲ってもらった、マテリア穴が一つあいたさっきの戦闘で若干欠けたスモールソード。こいつらに、俺の命をかける。
木々の間を駆けながら、一瞬だけ身体が隠れる程度の場所に辿りつき、全加速を両の手で木を掴むことでゼロにする。そこから一瞬で抜けだすだろうと軽く考えていた(であろう)空飛ぶ蜥蜴ちゃんは一瞬こっちを見失い――その一瞬でもって、この魔法を完成させる。
ゲームとは違い、やはり魔法は発動までに時間がかかる。他の作品の様に詠唱したり魔力をどうこうだなんてのはマテリアさんが代行するが、それでも近接職的に考えれば致命的な隙だろう。そりゃ魔法主体の戦闘職なんて流行らないはずだ。
木々の隙間から見えたであろう魔法の発動光に気付き、謀られたことに腹を立てたドラゴンさんは俺をエサではなく、敵と認識したようだ。口内に強烈な熱量が発生するのが遠目にすらわかるほどだが、俺の方が早い――!
決まってくれと心底祈りながら、グローブにつけたマテリアにて、一発目の魔法を起動する。
「――『コンフュ』っ!」
今世で一番最初に手に入れたのがこのマテリア"まどわす"。あまりにも俺の現状やクラウド君の運命を言い当てている様でつい深読みし過ぎてしまう出会いだったが、今だけはそのことを忘れる。
コンフュは耐性を持つ持たないの他、そもそも確率で混乱するかしないかという仕様だったと記憶している。原作通りならば完全に運ゲーだったが、現実には違うのではないかと推測した。催眠なんてのは、意識が安定している時には本来効果がない。つまり、安定していない意識の隙間をついて、魔法という異物を差し込むことでこんらん状態を作りだすのだと。
魔法を発動した直後に全速力でその場を離れれば、直後大地を襲う高火力のブレス。まるでボールのように吹き飛ばされるマイボディだが、今こそスモールソードにはめた"まどわす"なんぞよりも遥かに優秀なマテリアを使う時だ。
「『ヘイスト』っ!」
空中で発動したそれは効果を遺憾なく発揮し、周囲の光景をスローモーションに変える。ゆっくりと、それでいて明確に近付く樹木への突撃も、高速化したこの状態なら上手くサバける。グローブをはめた左手で、木に打ち付けない様に触れ、そのまま横合いへと身体を投げる。隣の樹木にスモールソードを突き刺して着木(?)し、火炎放射の主を見てみれば――作戦成功の光景が広がっていた。空中でわけもわからず自分の尾を攻撃したり、それを敵からの攻撃と勘違いして火炎を振り回しているのだ。間違いなくコンフュが上手く決まったのだろう。
これ幸いと、さっきまで子供っぽく手加減してた状態とは違って、ヘイスト状態の本気走りでドラゴン君より上手く逃走せしめた。
まぁ結局、村に着くころにはもう外は真っ暗で、今すぐにでも俺を捜索しようとしていた親父に子(故)ウルフ君の血で染まったスモールソードと、服の焼け焦げた痕を見られたという大失態を犯した訳だが。しばらく家に完全な軟禁状態だったのは言うまでもない。マテリアだけは死守するも、僕の大事なスモールソード君とはお別れと相成った。あもりにもかなしすぐるでしょう?(悲しみのあまり言語野に致命的なダメージ)
まぁ比較的村の近くでドラゴンがブンブン飛び回って、エライ勢いでブレス吐く音がしたと思って構えていれば、ひょっこり帰ってきた息子が若干焦げてただなんて、事情を一瞬で察せられてちゃうのも仕方ないよね…?
――が、この事態はあまりにも多くのことに影響を与えることになった。
誰が思うだろうか。これより先、あのドラゴン君とは長い付き合いになるなどと。
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今日、ニブルヘイム村は大騒ぎだった。
数年に1回くらいニブル山で人がいなくなることがあるらしいのだけど、今日いなくなったって思われてたのは私と歳の変わらない、小さな男の子だという。
その子のことを私はよく知らない。村に住む子供はそんなに多くなくて、大体みんなと遊んでるんだけど、あの子だけは一緒に遊んだことがなかったからだ。いっつも見かける度に木で出来た剣をヘトヘトになるまで振り回したり、周囲をきょろきょろした後、影に隠れてみてる私に気付かないで格好良いポーズの練習をしてニヤニヤしてたりと、誰とも遊ばないで一人でいる男の子、ってイメージ。変な子だなって見かける度に思ってた。
いっつも変なことばっかりしてるから気になっちゃって、最近ではどこにいるんだろって自然と探しちゃったりもしてた。
村の子達は早くから外に出てもいい、って言われたけど、彼は変な子だからか、村の外に出ても良いって言われるのが遅かったみたい。いつだったか覚えてないけど広場で友達と遊んでたら、ドアから凄い勢いで『YaHoooooooooooooo!!!!』って村の外に飛び出していった日がきっと初めてだったんだと思う。
うっすらと、もう村の中で遊んでる姿を見ることは出来ないんだなって、ちょっとだけ残念に思ったのを覚えてる。
そんなこともしばらく経てば忘れちゃっていたのだけど、ちょっと目を離した隙にこれだ。村の近くをおっきなモンスターが飛んでて、神羅の人に助けてもらおうってお話してたと思えば、あの子が帰ってこない。これはもう食べられちゃったかなって思っていれば、凄い大きな爆発音が村まで響いて。もう駄目だって、あの子のお父さんもお母さんも泣いていると――門の外からひょっこりと、あの子が帰ってきて。私はずっと門の外を見てたからすぐに気付いたけど…確かまてりあ?っていうのを、手に持った剣とグローブから外してポケットに突っ込んだのを見た。
もうそこからは大騒ぎ。よく見れば剣には血が付いてて、子供なのにモンスターと戦ってたのは間違いなくて、服の背中が焦げてるのは間違いなくあのおっきなモンスターにやられたからだって、みんながみんな気付いてて。
あの子の両親は近寄るなり抱きしめるかと思えば、思いっきり拳骨してたのを見た。もう目を瞑っちゃうくらいすごい拳骨で、見てるだけの私が泣いちゃいそうだ。
「――ッ、いっってぇぇぇぇ!!!! 親父てめぇ、今のは子供にやっていい威力の拳骨じゃねぇだろっ!?」
泣きもしないで、頭をさすりながら自分のお父さんに食ってかかってる。
「やっかましぃこの大馬鹿息子がっ!!」
お父さんはお父さんで、さっきまで泣きはらしてたのに今では顔を真っ赤にして怒ってる。
「ちょっと村の近くふらついてたらドラゴンに絡まれただけだろ!? 俺氏、無罪を主張します!!」
嘘、怖い。村の外でブラブラしてるだけであんなに絡まれるの…?
「嘘つけクソガキ。じゃあ、お前の剣についた血は一体何の血だ? ドラゴンとでも言うつもりか? えぇ?」
「そりゃお前…アレだよ、アレ」
「俺にはウルフの血に見えるんだがな」
えっ。
あの子、モンスター倒しちゃったってこと…?
「……やだ、ウチの父親ったらモンスターに詳しすぎ?」
「ウルフが出るほど奥に行ってんじゃねぇか!! こっち来い、お前の尻を風船みたいにしてやる!!」
「えっ、まさかここで!? 止めろぉぉ! 見てる、みんな見てるから!! ぼくちんの可愛らしいお尻をそんな風に乱暴にってあっ――いってぇぇぇぇ!!!!」
それを最後に、お尻を叩かれるたびに酷い声で叫ぶあの子に、淡々と叩きながらも安心したのかちょっとだけ涙目のあの子のお父さん。ちょっとだけウチのお父さんとお母さんはウルっとしながらも、私の手を引いてウチへと帰り始めた。ちょうど、みんなも帰り始めてたところで、あの子のお母さんだけは集まってくれた人達全員にあやまったりお礼を言っていたりした。
その背後で、ひたすらにあの子がお尻を叩かれ続けてる光景はなんともいえなかった。だけど、
「この異常性欲者めぇぇぇ! 加虐趣味だのなんだのなんて、俺のいないとこで母さんにでもぶつけてろよっ!!」
「誰が変態だ誰がっ! それに――言われるまでもねぇぇぇぇぇっ!!」
「――あ、アナタッ!?」
あの子と一緒に遊んでみたいなって、そんな風に思った日でした。
超どうでもいい話ですが、主人公は巨乳好きです。