目の前に現れたそれは女性の形をしていた。しかし。
「妖糸の分析だと生命反応は無し。ロボットか?」
「あれはマリアージュですね。戦闘用に産み出された屍兵器です。」
「何だそれ?」
会話の合間にもマリアージュからの攻撃がやってくるが、それを妖糸で逸らしながら問いかける。
「冥王イクスヴェリアが産み出すことができる戦術兵器です。」
なるほど、ならば。
「斬っても問題ないな。」
「…あ。機能が停止すると自爆します。」
「そう言うことは先に言え!」
慌てて妖糸で切り裂いたマリアージュを巻き取ると遠くに放り出す。
「伏せろ!!」
人形娘の頭を押さえつけて床に伏せる。
ズゴゥウウウン!
爆音と爆風が通り過ぎる。
「っ痛え…!」
「御主人様。今ので他のマリアージュが寄ってくると思います。」
「あんなのがまだいるのか?」
「知識が確かなら後40体ほど。イクスヴェリアならさらに追加もできます。」
「どうするのがベストだ?」
「イクスヴェリアを見つければマリアージュを制御できます。」
「ならば、探すしかないか。お前、この遺跡の地図データはあるか?」
「残念ながら。」
「いい、やりようはある。」
俺はそう言うと妖糸を遺跡中に跳ばした。
(ここか?)
何か棺のようなものが設置されている部屋がある。他にはめぼしいものはない。
「行くぞ、つかまれ。」
そう言って人形娘を背中に掴まらせると、俺は|空中を飛んだ≪・・・・・・≫。
「御主人様は飛行魔法をデバイス無しで使えるのですか?」
背中から人形娘が声をかけてくる。
「いいや、単なるワイヤーアクションだよ。」
そう、これは妖糸を使った移動だ。天井近くに張り巡らした妖糸に別の妖糸を通してぶら下がっているのだ。
走るのより速いので急ぐときには重宝する。
途中で出くわしそうなマリアージュも妖糸で拘束しながら目的の部屋にたどり着いた。
「ビンゴ!」
部屋には何かを封印しているような装置が中央に置かれていた。
その横にはパスワードを打ち込むような装置がある。
「パスワードは知っているのか?」
「はい、古代ベルカ語ですので、私の言うとおりに打ち込んでください。」
人形娘に言われたとおりパスワードを打ち込むと封印が開いた。
そしてその中から身を起こしたのは。
俺と同い年ぐらいのブラウンヘアの少女だった。
「え?」
「ああ…また目覚めさせてしまうのですね。」
「えっと…。」
「貴方が新しい操主様ですか?」
「…多分、そうだと思う、が…。」
俺は人形娘の方を見る。
「これが?」
「はい。冥王イクスヴェリアです。」
俺は頭を抱えたくなった。
何で冥王なんて大層な名前を持つ存在が幼女なんだ?
「古代ベルカってバカばっかりか?」
「あの…操主様?」
「ああ、ごめん。それで君はマリアージュを制御できる?」
「できません。私はマリアージュを産み出すのみです。」
「おい、話が違うぞ?」
人形娘の方を睨む。
「制御は操主様の役割です。」
そこにイクスヴェリアから思わぬ声がかかる。
「俺?」
「はい。」
「どうやって?」
「特殊術式の念話で行います。」
また判らん単語が出てきたぞ。念話って何だ?
「通常の念話さえできれば簡単なアレンジで済みます。後は操主としての認識コードがあれば…。」
説明を始めたイクスヴェリアの言葉を俺は遮る。
「悪い。無理だわ。」
「は?」
「俺、念話って何かわかんないし。」
「え?え?」
さすがに驚いた表情を見せるイクスヴェリア。
「で、御主人様。どうされますか?」
「ま、こいつ連れて力押しで脱出、て事になるな。面倒くさいけど。」
「了解しました。」
「え?えっと…」
「というわけでお前も一緒に来い。ちなみに拒否権はない。」
「あの…。」
文句を言わせず、背中に人形娘、前にイクスヴェリアをお姫様だっこで最初の部屋まで連れて行く。 マリアージュはもちろん、途中で全て無力化していく。
俺たちの通り過ぎた後で、次々と爆発が起こる。
この遺跡大丈夫か?さっきから嫌な揺れ方してるんだが。
後書きらしきもの
調べても、マリアージュの制御法が判らなかったので、ここでは特殊な念話による、とさせていただきました。
今までデバイスに縁がなかった亜門君がもちろん魔法を使えるわけもないですね。だから念話も無理。
ちなみに魔力Dなのでユーノの声も聞こえなかった、というわけです。