乃木若葉は新婚である   作:夏目ユウリ

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後の展開だけがどんどん脳内で浮かんでは修正を繰り返して半ばパンク状態っす。もっと丁寧に書いて行きたい。一話一話を。


春の芽吹きと……

「にしても相変わらずスヤスヤ眠っちゃってまぁまぁ」

 

「あぁ、こうやってみているととても三年もの間眠り続けているようには見えないな」

 

真鈴と若葉は揃って目の前のベッドに横たわるやせ細った青年を見つめる。

 

お世辞にも身長は大きいとは言えない。だいたい日本人男性の平均身長が170ちょっとぐらいなのに対してこの少年はせいぜい165ちょっとぐらいしかない。

 

「桜綺麗だね〜」

 

「この病室からだと庭の桜がよく見えるな。うん、綺麗だ」

 

桜をみていると綺麗だと思うのと同時にまたこうして新しい春を迎えることができたことへの喜びを感じる。ひなたや真鈴とまたお花見ができると。

 

「でも乃木ちゃんの家にもあんぐらい立派な桜あるし見慣れてるもんなんじゃないの?」

 

「自分の家の庭にあるものとそうでないものでは大きな違いがあるんだ。なんとなくだけどな」

 

「へぇ〜〜〜というか上里ちゃんと話しした?」

 

「話というのは……例のあの件か…?」

 

「そそ」

 

真鈴は話をよくぶっ込んでくる。そこに遠慮やら配慮やらは見受けられない。……いや、私のことやひなたのことをよく考えてくれているのはまぁわかるのだが。(普段のからかい癖で帳消し)

 

「それだったらひなたから言われた。一度忘れてくれと」

 

「そか、まぁいいんじゃない?うん、そんなもんだよ」

 

「そうなもん…そんなもんか」

 

「特にその点のことには一切合切耐性というか経験というかそんなんが皆無の乃木ちゃんじゃあ難しいってもんよ」

 

真鈴がニヤッと嫌な笑いをする。くっ!真鈴め!また私をからかう気だな⁈

 

「そ、そうは言うがな……私だってこれでももういい歳なんだ。これでも前と比べたら少しは成長もしている……………………筈だ」

 

「最後すっごい小声だったけど」

 

地獄耳め!ある意味ひなた以上に厄介なところがある気がするぞ。

 

「ふーん。成長ねぇ?」

 

「なんだ……疑ってるのか?」

 

「うん」

 

「即答だな…」

 

私はそこまでなのか…………

 

「じゃあ聞くけど乃木ちゃんキスしたことある?」

 

「へぇ?き…キス……?」

 

「そんな間抜けな声の乃木ちゃんがみれるのはこの話題だけだねぇ。いやしたことないのは知ってるから言わなくてもいいよ」

 

「ぅ………ひ…ひなたとならあるぞ!」

 

どうだ!これぞまさに起死回生の一手!

 

「いやぁ上里ちゃんは家族枠みたいなもんだからノーカンだよ」

 

「な⁈だ…ダメなのか…」

 

「それにほっぺとかそんなんでしょ?」

 

「ほっぺでもキスはキスだろう⁈」

 

私は思わず立ち上がって言う。その反動で座っていた椅子が高めの音を立てて倒れる。

 

「こーら、病院では静かに」

 

「ぅ…すまん…………でも今のは真鈴が悪いと思うぞ…」

 

「ごめん、ごめん。悪かったからそういじけないでよ?ね?ほらお団子でも食べて」

 

そう言って真鈴は自らが買ってきた三食団子を手渡してくる。

 

「ふん…私はそんな団子ごときには釣られないぞ」

 

「じゃあこの新作のうどん出汁味の団子もいらないかな」

 

なっ⁈うどん出汁…味………!だと……!

 

「貰っておこう」

 

「うん、貰うというか今明らかに奪っていったよね。目にも留まらぬ速さで。というか三食団子の方も奪っていったよね」

 

「これは……食べたことのない味ではあるが、悪くないな…!」

 

「聞いてないねぇ。ま、いいけど。…………あんまり美味しくない………」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、私はそろそろ大赦の方に戻らないといけないから帰るけど…乃木ちゃんはどうする?」

 

それからも真鈴と雑談を交わしながら時間を過ごしていると思っていたよりも時間が過ぎていた。

 

「そうだな………これ以上長居しても仕方がないし私も帰ることにする」

 

「そか。んじゃあ今日もお別れだ。青年。いや古木君か」

 

真鈴が青年の方を見て別れの挨拶を告げる。

 

「またくる。…………またな。古木さん」

 

かろうじてわかっているのはそれだけ。あの日あの時あの瞬間、残り火が消えてなくなるほんの少しの間に伝えられた彼の情報はその名だけ。

 

いや

 

違うか。

 

これは伝えられたことではないし、もちろんのこと彼の口から聞いたわけではない。

 

 

でもこの四国に彼がこんな風にボロボロになり三年もの間目を覚まさない状態になりながらも、それでも生きていたのは

 

 

その身に宿る勇者の力に他ならないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんね…………………ごめんね』

 

 

 

『ありがと……ね……ぅん………だいすき』

 

 

 

違う

 

 

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

 

 

こんな、こんな、こんな。俺は何のために、俺は…俺は何で。

 

 

そんな言葉を聞くために、俺はお前たちと…………生きてきたわけじゃない。

 

 

俺は

 

 

俺はお前らが

 

 

お前らがいたから、いてくれたから

 

 

なのに

 

 

何も、何も残らない。

 

 

意味はなく。希望はなく。夢はない。

 

 

なのになぜーーーーーー

 

 

俺はーーーーーー

 

 

どうしてーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「乃木ちゃん」

 

「ん、なんだ?」

 

場所は乃木邸。の食堂。夕飯を取っているのは家主である若葉とその友人である真鈴。

 

「ぅんまい」

 

「そうか、うん。ぅんまいな」

 

「お、乃木ちゃん乗ってくるね〜」

 

「伊達に長めの付き合いじゃないからな」

 

「上里ちゃんには負けるけどね〜」

 

「ひなたは例外だ」

 

「ですよね〜あ、これもぅんまい」

 

 

〜〜〜

 

 

夕飯後

 

「さて、では本日の大本命と行きますか」

 

「大本命って…普通にお風呂に入るだけだろ?」

 

「ははっ、わかっていないな。乃木ちゃん」

 

「?」

 

「ま、いいからいいから。そそスパッと服を脱いでお風呂に入りましょー」

 

「わかった!わかったから押すなって!」

 

乃木邸。大浴場。

 

「乃木ちゃんの髪はツヤツヤですべすべだねぇ。触りがいがあるよ」

 

「私はどうだか知らないが、それをいうなら真鈴だってそうだろう?」

 

「おぉ嬉しいことを言ってくれるじゃない。ごしごし〜」

 

「わっ⁈く、くすぐったい……!ゃやめ…」

 

「あ、なんかエロい。乃木ちゃんエッチだなぁ〜」

 

「エッチじゃない………こ……これは…………不可抗力で…ぁぁぁぁぁ〜〜〜どっどこ触って、こら。やめ…」

 

「あー目覚めそう」

 

何にとは言わないが。

 

「何で……お風呂に入っているだけでこんなに疲れるんだ…お風呂というのは本来疲れを取る場所のはず…」

 

「あはっは。すまんの我慢できんかった」

 

「いっいいのかっ⁈『攻撃されたら報復を』それが乃木の流儀であり教えだぞ!」

 

「ふむ、つまり?」

 

「私もやり返すということだ!」

 

「お、いいね〜いいね〜オッケーバッチカモン。ヘイ!」

 

「ぇ、ほ…本気で言ってるのか…?」

 

「本気かどうかというか、私は普通に乃木ちゃんのこと好きだから別に何をどうこうされたとしてもそれはそれで責任取ってもらうだけだし」

 

「責任って…一体何を言って…」

 

「さてそろそろ湯船に浸かろうかね」

 

「…そうだな」

 

若葉は真鈴とのやりとりをかれこれ三年続けて学んでいる。彼女には敵わないと。(ひなたに敵わないというのはもっと小さい頃から学んでいる)

 

まぁこんな風に接してくれる友人が二人もいるのは本当に有難いことなのだがな。

 

 

 

 

「「あ〜〜〜〜〜」」

 

二人で揃って湯船に浸かる。乃木邸の浴槽は若葉と真鈴が二人揃って浸かっていてもまだ場所が余る程度には広い。まぁ広い。

 

「乃木ちゃん〜親父くさいぞ〜」

 

「真鈴こそ〜」

 

お湯に浸かっているせいか二人の語尾が変に伸びる。

 

そもそも日本のようにこうして浴槽がある程度の大きさでじっくり湯に浸かるというのは世界にはなかなか見られない風習なのだ。

 

最も今世界というのはこの日本の四国のみなのだが。

 

しかし日本人は古来より浴槽の湯に浸かることを至福の時として過ごしてきた。

 

要するにお風呂最高。ついでに檜風呂はもっと最高ということ。

 

「ところでさー」

 

「ん〜なんだぁ〜」

 

「乃木ちゃん育ったー?」

 

「何がだぁ〜?」

 

「おっぱい〜」

 

「対して変わっていな…………いこともないかもしれないこともなくないかもしれない」

 

「どっちかよくわかんないねぇー」

 

「というかだな。真鈴よ」

 

「んー?」

 

ここで若葉が唐突に真剣な顔をしてトロンとした顔をしている真鈴の目を見つめて話す。

 

「胸のサイズってそんなに大事なもの………なんだろうか…?」

 

「乃木ちゃん…………それはね…」

 

「ぁ、あぁ」

 

「分からん」

 

今宵も夜は更けていく。二人の少女を湯気に包んで。




シリアスとそうじゃないやつの温度差がひどい。てかお風呂会多くね?(自分で嬉々として書いときながら)

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