小ネタ転生物語   作:政田正彦
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なんで続いちゃったんですか。短編って言ったじゃ無いですか!(困惑)


全部俺で亜人一族に転生した。(2)

 イレス・ルルマ城下町。

 

 人口500万人を超える都市であり、人種を中心に栄える都市。

 栄える理由の一つとして、この都市の南西にある森が上げられる。

 ここには豊富な魔鉄鋼やミスリルといった希少金属が埋蔵された山であったり、植えると地下から水を吸い上げる魔樹、それらの希少なものを含め、豊富な資源がある森を持つためである。

 

 ただしこの森には一つ問題があった。

 

 迷いの境界、という、妖精種の進化種である”妖精王”と呼ばれる個体が20年周期で出す霧だ。

 

 視界を覆い、進行方向を惑わすだけでなく、困惑の効果をもたらし、これになると、初期症状で知らず知らずのうちに、歩みを進める足があらぬ方向へと進む等といった症状が出たり、時間感覚がズレていったりといった症状が出る他、中期で聞こえるはずのない物が聞こえたり、見えるはずのない物が見えるといった幻覚症状、そして、末期になると、自分が何者だったのか、どうして自分がその場所に居るのか、自分の名前さえ思い出せなくなり、最終的に、物言わぬ人形となる。末期症状は治癒の魔法を使っても後遺症が残る。

 

 何度か、優れた魔法使いによる風の魔法によって霧を晴らそうという試みも為されたが、霧自体に魔素を分散させてしまう効果があり、結局は失敗に終わった。

 

 そんな強力な状態異常の中森を突き進んで行きて帰って来た奴は誰一人として居なかった。

 途中で正気を失って死んだか、途中で餓死するか、良くてきょとんとした顔で記憶障害を負って帰って来た幸運な奴も居る。

 

 結局、最も物資が豊富に埋蔵されていると思われる森の最深部に足を踏み入れるのは自殺行為であるという事で、最終的に国から霧が出ている20年は、この森への立ち入りを禁止するという政令が出た。

 

 

 

 

 そして、今日。

 

 計算上、今日この日こそ、かの忌々しい霧が晴れ、最深部への道が開ける。

 この時を待って居た、と、国中から腕の立つ冒険者がこの街へ集い、準備を進めていた。

 「霧が晴れた」という知らせを今か今かと待ちながら。

 

 

 ……そして彼、デイ・ガナードもその一人だった。

 

 

 20年の時を超え、次の20年という期間だけ許された冒険が彼を待って居るのだ。

 

 

 しかしこの時彼はまだ、警戒すべき相手が妖精王だけだと思って居た。

 まさか、正体不明の亜人一族が棲み着いて居るというイレギュラー起こっているなどと、思って見なかった。

 

 人知れず、運命の歯車が狂い出す。

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 迷いの境界を抜けた、と思ったんだが、霧が晴れたってだけで、森を抜けるのはまだ先になりそうだ。

 どうやらあの霧に覆われて居たのはほんの一部分で、この森自体はかなり広いようだ。

 リッタだけだったならともかく、アベルとアデルの足だと、素直に地面を歩いて行くのはあまり効率的ではなかった。

 

 なので、素直に行くのはやめて、木から木へと猛スピードで飛んで行くことにした。

 

 ちなみに、これほど急いで居るのには、理由がある。

 

 

 霧が20年で晴れるという事を知って居たと思われる、人間達が霧があった場所の向こう側へ行こうとして居るのか、森の最深部へと突き進んで居るのだ。格好を見るに、彼らはミアが言っていた”冒険者”という物なのだろう。

 

 彼女曰く、冒険者とは、ダンジョンに潜って戦利品を持ち帰り、それを売ったり、未踏の地を目指して冒険をしたり、人里に降りて来てしまったモンスターなんかを討伐したりといった事を生業としている者達であり、探求欲求と好奇心に満ち溢れて居るという。

 

 それだけなら良かったのだが……彼らの半分は腕っ節だけが自慢で社会に適合できなかったヤクザな連中で、もう半分は遥か昔から伝えられる英雄譚に憧れて冒険者になりたいと望んだ夢見がちな若者、極々少数に、冒険だけが我が人生という者、類い稀な能力を持ち世のため人のためになりたいと望む本物の英雄の卵。

 

 彼らはどっちだろうか。

 

 いや、今となってはどちらかなどどうでも良いかもしれない。

 

 何故かというと、現在進行形で、4人の冒険者VS森で私達のご飯になっていた魔獣熊さんという戦闘が繰り広げられて居るからだ。尚、冒険者劣勢の模様。あの熊さんそんなに強いっけ?

 最初は見るだけに徹してスルーするつもりだったが……あまりの劣勢にちょっとだけ考えを変える。

 

 

 くまさんっょぃ。。。ヵてなぃ。。。もぅまぢ無理。。。ってな状態だ。

 

 

 おっ、なんだアレ。結界、か?なるほど、そういうのもあるのか。

 

 1人の魔法使いっぽい人が熊に対して、正方形の黄色い結界を張る事で、その動きを止めている。

 見た所、彼が動きを止めて居る内に仲間達だけでも逃がそう、という作戦か。

 くっ、泣かせるやんけ。

 だが、無論熊の方も強く抵抗しており、残念だが、見た所長くは持たないだろうし、正直、彼らの足と熊の足との速さの差、結界の強度等を見ても、撤退するだけの時間を稼げるとは思えない。

 

 

 とりあえず、アダムからミアに事情を説明してどういう事だろうか?と聞いてみる事にした。

 「魔獣の熊みたいな奴が俺が知って居る熊よりも若干強くなって居るんだが、心当たりは無いか?」と。

 するとミアは「あっ」と若干気まずそうな顔をした後、おずおずと話し始めた。

 

 

 それは、あの霧が20年という周期で晴れる理由にも繋がって居た。

 

 

 妖精王の持つ物に限らず、魔素という物は、周囲の物に干渉し、様々な現象を引き起こす。

 それは例えばダンジョンの発生であったり、鉄鉱石の魔鉄鋼化、そして最後に、”魔獣の強化及び凶暴化”という無視できない現象が引き起こされる、と。

 

 それを利用して火を起こしたりするのが魔法、という訳だ。

 

 霧が魔素を散らす効果があるとは説明されたが、もしこの効果がなければたちまち境界の内部は魔素が充満し、魔獣が凶暴化し、森に棲む魔獣含む動物達の生態系が崩れ、あっという間に凶暴な魔獣の巣窟になるという。

 

 そして、その魔素を散らす効果にも限度というものがある。

 丁度20年程で、その効果があるのにも関わらず、魔素が充満気味になり、魔獣の凶暴化が起こり始める。

 ので、ミアはあの霧を作り出す際に、事前に20年で一度解けるようにしたのだ。

 

 では今回の、魔獣の熊が凶暴化している原因っていうのは……。

 

 

 「うん、多分、イブちゃんが持ってるかなり膨大な魔素。それが原因じゃないかな、と思う」

 

 

 案の定、というか、イブの持って居る膨大な魔素が少し魔獣の凶暴化を早めてしまったらしい。

 そうして凶暴化した魔獣熊が、霧が無くなって、今までいたテリトリーから外に出て、今に至る訳だ。

 

 なんてこったい。

 

 つまりは、知らなかったとはいえ現状は俺のせいってわけだ。

 流石に責任を感じざるを得ない。

 

 本当は街に着くまでは姿を現すつもりはなく、冒険者になって世界で俺達TUEEEE!!するつもりだっただんが……。

 

 流石に遠因である自分のせいで人が死んでしまうような状況を素通りして夜いい夢が見れるほど出来上がった性格はしていないつもりだ。

 

 

 しゃーない、助けるか……。

 

 

 ってやべえ!!話し過ぎて結界破れそうになってんじゃん!!!のんびり話して居る場合じゃなかった!!

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 「お前達だけでも逃げろ!」

 

 

 彼の名はカイリ=リッドマルタ。カイリと呼ばれる冒険者の男であり、防御、そして中距離攻撃の魔法を収める中級魔法使いである。

 

 そんな彼は、いや、彼と彼の仲間達は今、窮地に立たされていた。

 

 「そんな事出来る訳ないだろ!」

 

 デイ・ガナードという彼の仲間が、悲壮に塗りつぶされた顔でそう叫ぶ。

 だが彼も心のどこかでは分かって居る。

 彼を置いて撤退し、街から応援を呼ぶのが、一番被害が少なく、一番効率的な判断であると。

 

 「ワガママを言うな!!……ぐっ、早く行け!そう長くは持たん!!」

 

 「カイリ!!嫌ぁ!!」

 

 「そんな、どうしてこんな事に……」

 

 早く行け、というカイリの言葉に、拒絶で応えるのは、弓使い、ユーリ=アルベッタという赤髪で軽装装備の女性であり、腕に怪我を負いながらも、弓に矢をつがえようとしているが、痛みと恐怖が邪魔をしてどうしても手がガタガタと震えてしまって居る。

 そして、本来ならここまで強力かつ凶暴な存在ではないはずの魔獣の熊を目の前に困惑の声を漏らすのが、僧侶のモーラ=エイリスという女性は、既に回復に使う為の魔素を使い果たし、魔素枯渇によって青い顔でそれを見て居ることしかできない。

 

 「グォォオオオオオオ!!!」

 

 そして、彼らが決断をするよりもあまりにも早く、熊がより一層強く結界に抵抗、前足を、パンチでも放つかのように結界に叩きつける。たったそれだけで、結界はバキリと音を立て、結界から熊の前足が突き出る形となってしまい、形がどんどん歪になっていく。

 

 「そ、そんな馬鹿な……こうも容易く破られる等……!!足止めすら、出来ないのか!?」

 

 正に、絶体絶命。

 

 「逃げー……」

 

 ろ、という前に、突き出た前足が、結界を引き裂くように振り抜かれる。

 そうして、結界が完全に破壊され、ガラスの破片のような物がパラパラと散っていく。

 

 

 「グォアァァアアアアアアア!!!」

 

 「クソ!!!」

 

 「いやあああああああ!!!」

 

 

 ここで、終わってしまうのか。

 

 その場の誰もがそう思った。

 

 

 

 そんな刹那……”それ”は現れた。

 

 

 

 「ーーーなっ!?」

 

 

 今まで、聞いたことがないほどに鈍く、重く、そしてよく響く音が熊の頭部から鳴り響く。

 

 あまりの速さ、あまりに一瞬の出来事に、よもや瞬間移動でもしたのかと錯覚する程に早く振り抜かれた”小さな人影”の拳は、それを否定するかのように、それが驚異的なスピードで放たれた物であると証明するかの如く……信じられない事に、殴られた熊の頭部が地面に深く突き刺さり蜘蛛の巣状にひび割れを起こし、今まで斬ろうが殴ろうがビクともしなかった巨体が、僅かに浮き上がったかのようにすら見えた。

 

 思わず、目を疑う。

 

 自分の、あまりの窮地に絶望を受け入れたくないがために見せた、有り得ない、都合のいい幻覚だと。

 

 

 しかし、呆けている彼らを、それは待ってくれなかった。

 

 

 頭に突如致命的なダメージを叩きつけられた熊が地面に叩きつけられているその隙を見逃すものか、と、どこからか、光そのものを凝固して槍の形を形どったかのような物が飛来し、生物の急所である、心臓部分に深く突き刺さり、そして、役割を終えたかと言うように、光の粒子となって空気に溶けて消える。

 

 熊は、絶命の悲鳴を上げる事すらなく、数秒痙攣を繰り返した後、ぐたりと力尽きた。

 

 

 唖然。

 

 

 何がどうなったのか、その一瞬で理解しろ、というのは、彼らにとって余りにも酷な話であった。

 今まさに死闘を繰り広げ、殺されると思った強敵が、瞬きする間に絶命した。

 

 暫くポカンとした顔で立ち尽くしていた4人だったが、森の奥から発せられた気配に、ハッと我に帰る。

 

 そうしてようやく、”今自身が戦っていた強敵を一瞬で沈める事が出来る存在が、ここに居る”という事実を認識し、心臓が止まるような錯覚に陥る。

 

 先ほどの熊とは比べ物にならない程に離れた実力の差。

 

 熊を殴り倒して地面に頭を叩きつける程の力と、それを一切視認出来ない程の素早さ、そして、そこにすかさず刺されたトドメに使われた、明らかに自分たちが使用するよりも数段殺傷力のある、初めて見る魔法。

 

 「だ、誰だ……!?そこに、誰かいるのか!?」

 

 そして、恐るべき事に、気配は一つではなかった。

 彼らの感覚が確かならば、二人、いや、三人は居る。

 

 その気配はしばらく、じっとこちらを窺うようにしていたが、しばらくすると、何故だかすっと森の奥へと消えていった。

 

 

 「た、助かった……の……?」

 

 「あ、あぁ……た、助かった……生きてるんだ、俺達」

 

 

 彼らは、ひとしきり自身の生存を喜び合った後、熊の死体をどうするかについて話し合った。

 

 明らかに、桁違いの相手が仕留めた獲物である。

 持っていってしまうのは如何なものか。

 命が助かっただけで儲けもの、と考えるべきでは、という考えもあったが……忘れてはならない点は、彼らが冒険者である、と言う事だ。

 

 未知の相手、未知の魔法、未知の実力。

 それがなんなのか、どういう魔法だったのか。

 傷跡から、何かわかるかもしれない。

 

 そう考えた彼らは、ひとまず、その場で熊を解体し、驚異的な力で殴られたと思われる頭部と、未知の魔法が突き刺さり絶命に陥られた胸部を持ち帰り、残りの全てと、心ばかりのお礼に、調味用の貴重な塩を、葉で作った皿の上に並べ、彼らに捧げる事とした。

 

 その後も、彼らは何かに見守られて居るような気がしながらも、情報を持ち帰るため、住み慣れた拠点のある街へと帰還していったのだった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 うーん、やはり早まったことをしただろうか、と思いつつ、しかしやらなければ後悔が残った、だからやるべきだった、と、三人で冒険者たちに隠れて着いて行きながらそんなことを考えていた。

 

 裏ではアダムとイブで、凶暴化した魔獣だけを選別して、来週あたりの晩御飯になってもらいながら。

 

 それに、助けた冒険者がお礼に置いていった小さな小瓶の中を鑑定して見ると、なんとそれは塩だった。

 今まで味付けは香草と肉とか骨から出る出汁だけだったからなぁ……とてもありがたい、ありがたく頂いておく。

 

 隠れながら冒険者に着いて行ったその先には、思惑通り街があった。

 この為にわざわざ着いていったのだ。

 ついでに冒険者ギルドとかあるようだったらそこにも案内してもらいたい。

 

 でもまぁわざわざ三人でついてくこともないので、街に(こっそり)入ってからは、リッタだけで冒険者四人組をストーキングして、アベルとアデルでこの街を散策する事にした。

 

 まずは、お金を作らないとな。

 

 冒険者になる、とはいっても、登録料とかあったら一文無しじゃ困るしな。

 

 

 そんなことをやっていたら、【追跡+】が手に入った。

 流石に認識阻害の魔法とかどうやればいいのか分からなかったので気合いで隠れてたんだが、これで少し気配が薄める事が出来るようになった……と思う。

 とはいえ、強い奴なら余裕で視線に気付くだろうな。

 あの四人組も「何か何かに見られてる感じがする」程度の事は感じて居るかもしれない。

 

 

 まぁ、それはさておき……なるほどなるほど、あれが冒険者ギルドかな?

 盾に羽が交差したような特徴的なシンボルの看板がついた、大きな建物。

 

 彼らが入ってすぐ、中からは、彼らが生きて帰ってきた事に対するものなのか、おお、という歓声が聞こえ出した。

 中には結構な数の冒険者がいるみたいだ。

 

 

 さて、盛り上がっている空気に乗じて、お邪魔しますよ、と。

 

 俺は、興奮する胸を抑えながら、ゆっくりとその中に入っていった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 「お前ら、よく生きて帰ってこれたな!もう帰ってこないかもしれねえって話してたんだよ」

 

 帰ってきて早々、彼らは同業の冒険者にそんな事を言われた。

 今回の件はかなりイレギュラーな要素があり、普段は大きな音だけで驚いて逃げてしまうような魔獣が、やたらと強力で凶暴だった、というような事を話したら、どうも彼らが帰って来る前に被害に遭い、帰還の魔道具によって命からがら逃げ戻った冒険者によって、かの森で異常な事態が起こっている、という事が冒険者ギルドに伝わっていたのだ。

 

 いつの間にか、そのギルドの長である、アーノルドまで加わって彼らの帰還を歓迎した。

 

 「お前ら、本当によく生きて帰ってこれたな……いや、というか、どうやって逃げてこれたんだ?」

 

 斬っても殴ってもビクともしないし、走っても逃げ切れないほど素早く、一撃一撃が致命的なダメージに繋がるほどに強力。

 聞けば聞くほど彼らが四人全員で生き残った事の方に疑問を持ったギルド長のアーノルドがそう問いただしたので、彼らは「いや、それが……」と、信じてもらえないかもしれないが、と言葉を加えた上で、魔獣を仕留めた小さな人影達の事について話す事にし、そして、証拠として、魔導袋の中から熊の頭部と胸部を出して見せた。

 

 

 「これは……凄まじいな」

 

 アーノルドは元冒険者であり、こういった死骸も何度も見てきたが、今回はその中でも特殊。

 頭に叩き込まれたと思われる一撃は、思ったより直径が小さかった。

 だが、その一撃が持つ力は魔獣の頭蓋を呆気なく突き破り、脳の深部にまで到達しており、これだけで命を刈りとるのに十分な威力であると見て取れた。

 

 そして、その後に放たれた、魔獣への駄目押しのトドメとなった未知の光の魔法。

 これに至っては、貫かれている、というより、心臓に至るまでの部分を、丸くくり抜かれたかのように消滅しており、心臓は綺麗さっぱり消え去っていた。

 

 傷口はあまりに綺麗な円柱のようで、槍で突いたようにはとても見えないし、やろうと思っても出来ることではないという。

 

 もっと言えば、そこに到達するまでには骨もあるにも関わらずそれなので、この魔法に”硬度など関係無い”のだろうと思われる。

 

 それに加え、彼らの証言では、目にも止まらぬ速さであり、貫いた後は綺麗さっぱり消え去ったという。

 

 不可視、回避不可、防御不可の絶対的な、反則的な攻撃魔法。

 

 歴史を省みても、そんな魔法が使われているという文献は見た事がない。

 

 

 

 だが、もし、もしそんなものが使える存在が、あの場所にいるとすれば……。

 

 

 

 

 

 「妖精王……だろうな」

 

 「ああ、しかし、人影は一つじゃなかった……妖精王は一人じゃなく、複数居るのか!?」

 

 「分からん。だが……もし、妖精王がこの20年で、繁殖するなりなんなりで増えたとするならば……この状況にも納得ができるというものだ。それだけ多くの魔素が充満した霧の内部で、魔素によって魔獣が凶暴化していたとしても何ら不思議はない」

 

 「確かに、辻褄が合うな……だが、ならば何故、妖精王は俺達を助けてくれたんだ?」

 

 「妖精王は基本、凶暴化した魔獣を放置する事を良しとしない。森が荒れるからな。恐らく、お前達を助ける、というつもりではなく、単に、凶暴化した魔獣を駆除する為に現れただけだったのかもしれん」

 

 「運が良かった、という事でしょうか……」

 

 

 あまり釈然としないが、そうなると辻褄が合う。

 だが、カイリはそれを聞きながら、あの小さな人影を思い出していた。

 

 

 「なぁ……妖精王って、普通の妖精よりも結構大きかったりするのか……?」

 

 「いや、そんな事はないと思うが……妖精王も妖精も、手のひらに乗っても余裕がある程に小さく、可愛らしい見た目をしている、と文献にはあるが」

 

 「……さっき言った小さな人影だが、あれは……妖精、と呼ぶにはあまりに大きかったと思う。それこそ、人間の子供位のサイズだったぞ」

 

 「何……??そんなまさか。人間の子供程の大きさで、妖精王のような魔法と、凶暴化した魔獣を一撃で仕留める程の怪力と、目にも止まらぬ程の速さを持つ者だと……?そんな種族聞いたこともないぞ」

 

 「だ、だが、確かに見たんだ、確かにそれは子供サイズの人影だった!」

 

 「私も、ほんの一瞬、あの一撃の瞬間、何か小さい人影を見てました!」

 

 「お、俺もだ!」

 

 「私も、確かに見たわ! 」

 

 

 信じられない、しかし、嘘を言うような男達でもない。

 アーノルドは頭を抱えながら、その小さな人影について考えるも、やはりそんな種族は聞いた事がない。

 新しい種族なのか……?歴史にも文献にも残っていない、全く新しい……。

 

 

 「ぎ、ぎ、ギルド長!!」

 

 「どうした」

 

 それは、解剖等を担当して居るギルドの職員に頼んだ魔獣の頭の傷の解析結果を伝えにきた、普段受付嬢をしている女性。

 

 「れ、例の、魔獣の頭部の傷の解析結果、なんですが、その……」

 

 「落ち着け、どうしたと言うんだ」

 

 

 青い顔をしながら、息も絶え絶えにアーノルドとカイリ達の話していた部屋に飛び込んだ彼女は、そう言われて少し我に返ったのか、息を整え、しかし、青い顔をしながら、こう言った。

 

 「例の魔獣の頭部の傷なんですが、解剖して、凹んでしまった骨を取り出し、もう一度組み上げて見た所…………に、人間の、子供位の握りこぶしが、殴ったような痕がある事が……明らかになりました」

 

 

 

 聞いて、アーノルドはまさか、と思いつつ、しかしそうなるとカイリ達の言って居る事に信憑性が出てくる。

 

 

 

 「……喜べお前達、人間の子供程の大きさで、妖精王のような魔法と、凶暴化した魔獣を一撃で仕留める程の怪力と、目にも止まらぬ程の速さを持つ……そんな新種族の発見だ。……全職員及び冒険者に指令!これよりB級以下の冒険者は、事が終わるまであの森への接触を禁止する!B級以上の冒険者には、凶暴化した魔獣の対処と、この新種族についての情報を急募する!有用な情報には、報酬を出す!!」

 

 

 

 この日、歴史に新たな1ページが刻まれた。

 

 強力な魔法と身体能力を持つ、人間の子供サイズの新しい種族が居る、という事実の発見。

 まさかそんなものが居るのか、仮に居たとして、敵対してしまったらどうする?結局あいつらはなんで助けられたんだと様々な議論を呼ぶ大騒動へと転じていく。

 

 

 

 尚、当の本人(本種族?)はというと……

 

 

ーーーー

 

 

 

 リッタで冒険者ギルド受付にて冒険者になる手続きをしていたら、十六歳以上の成人した者しか冒険者になれないと知って「え、じゃあアデルとアベル無理じゃん」と一人で冒険者になる事が決定して微妙に落ち込んでいるなう。

 

 その裏でアデルとアベルは市街地で迷子と間違われて、傭兵さんのお世話になってた。

 とりあえず、持ってた売る用の武器とか売りに行こうかなと、「武器屋までおつかいしなきゃいけないの」とミアとのやりとりで得た渾身の演技力で傭兵に道案内させて居た。

 

 さらにその裏ではイブとアダムはリッタから介してギルド長から上記の指令が出された事を聞き人知れずまじかコイツらと冷や汗をかいて居た。

 

 えぇ……新種族ておまえ、いやまあ確かに新種族なのか……???

 一応、亜人らしいしな。

 耳はとんがってないし、角とかうさみみとかもないけど。

 

 強いて言えば褐色肌と赤い目と黒髪?が共通点みたいなとこあるけど、ぶっちゃけ、あの冒険者の中に居た僧侶さんよか全然目立たない格好だと思うし、なんなら黒髪とか普通に居るし。

 

 なんなんピンク色の髪て……誰も疑問に思ってる節も無いから多分普通なんだろうなあ……。

 魔法使いのねーちゃんに至っては目が真っ黄色だったし。

 

 褐色で赤目で黒髪なんて珍しくもなんともねーだろ、うん。

 

 

 

 

 ……とか思ってたけど現地の人にはわかるみたいで「異国の方ですか?」とか言われちゃったよね。

 

 「最近ここに出稼ぎに来たばかりなんですが何かおかしいですかね?」

 

 「いえ、まぁ……なんと言ったらいいのか。変とかいう事は無いんですけどね、雰囲気が違うとでも言えばいいのでしょうか?もしお気に障ったなら申し訳ありません」

 

 「いえいえ、お気になさらず」

 

 と、まぁこんなやりとりがあったので、アデルとアベルが迷子に間違われたのはこういうのも関係してたんだろうな。

 異国の子が異国の地で二人ふらふらきょろきょろ。

 そりゃまあ傭兵さんの目にもつきますわ。

 

 ただブスって思われては無いみたい。

 美的感覚は多分俺とそう変わらないんじゃ無いかな?

 リッタとか俺からみてもナルシストみたいな意味でなく普通に美人だと思うし、なんならギルド内で何回か男からチラ見されたりしてたしね!へへっ、全然嬉しく無え!!

 

 まぁ、そんな些細な問題(解決する気も起きない)が一点。

 

 もう一つの問題は、件の指令だよなあ……やっぱり助けない方がよかったか……??いや、これを機に「ぼくたち、あぶなくなーい」「ぷるぷる、わるいしゅぞくじゃないよ」っていう所を見せた方がいいのかな。

 まぁ危害を加えられるようならイブでガチ殲滅魔法とか放っちゃうけどね。

 それは最終手段で。

 俺もそうそう人を殺したく無いし。

 

 

 ……それはまあ、そん時になったら考えよう!

 あとは、この街での拠点はどうしようかな、という点だ。

 

 まぁここは正直にわかんねーっつって受付嬢のお姉さんに教えてもらおうっと。

 

 

 「すみません、もう一つよろしいでしょうか?」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「先ほども言った通り、この街に来たばかりで……どこか良いお宿があれば教えてくれませんか?」

 

 「あぁ、それなら、この隣は冒険者ギルド直轄の冒険者用ホテルになっておりますので、そこを拠点にする事をお勧めします。見た所お一人様のようですし、そこで他の冒険者と交流をお持ちになって、パーティーを組んだりする事をお勧めします」

 

 「それは、えっと……実は私、下に双子の妹と弟が居て、その子達も一緒に養わないといけないんですが、その子達も一緒に泊まる事って出来るんでしょうか?」

 

 「えっ……あ、は、はい。大丈夫ですよ」

 

 

 おっけ。これで寝床に困らなくて済みそうだ。

 アデルとアベルが丁度武器屋で武器を売り払う事に成功したみたいだし。

 ……ん?なんで涙目になってんのこの子?まあいいか。

 

 「ではホテルに行ってみます、これからよろしくお願いします」

 

 「はい。あのっ、が、頑張ってくださいね!」

 

 「は、はい」

 

 とりあえず手続きは済んだし、一旦アベルとアデルとも合流して、宿屋……いやホテルって言ってたっけ、隣みたいだし、ちょっと他の人とかと話して待ってようかね。さっきの四人組居ねえかな?

 

 

 「うっ、先輩、見ましたか今の……」

 

 「見てたわ……なにか事情があるんでしょうね……」

 

 「近頃じゃ、ああいう娘もいるのね……」

 

 

 

 

 「聞いたか今の」

 

 「ああ……小さい弟と妹の面倒を見る為に冒険者に……」

 

 「なんて健気なんだ……」

 

 「俺らで、見守ってやろうぜ……」

 

 「おう」

 

 

 

 ……なんだろう、背後からすげえ生暖かい目線を感じる。

 こういうのって普通「お前みたいなやつが冒険者だあ?ナメてんじゃねーぞ!とっとと故郷に帰りな!」とか言われるのがテンプレなんじゃないのか……?







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