血染めの少女のヒーローアカデミア   作:舞われ回れ

1 / 4
夜に思い付いので、忘れない内に書いてみました。
評判がよければ、続くかも。


少女のユメ

桜が見頃を迎えた春の季節。

時刻は深夜2時。

とある街の、とある裏道。

周囲に幾つかある街灯は壊れ、雲空から覗く月明りが照らすばかりの路地の隅。

善良な市民達は決して近付かず、善良でない市民達は真実を知るが故に近付かない。

そんな人気の全くない場所に少女(ヒーロー)(ヴィラン)は居た。

 

少女が身に纏う衣装は、薄手のワンピースだ。

春の肌寒い深夜にだというのに、白い肌を惜しげもなく晒している。

それを補うつもりか、スカートから覗く太ももを黒いニーソックスで隠しているが、かえってその薄布はしなやかな肢体の輪郭線を強調し、その姿に扇情的な印象を与えている。

 

「どうしました。それでもヴィラン?ヴィランならヴィランらしく戦いなさい。欲望のままに、罪なき市民の大切なモノを奪い殺し犯しなさい。目的の為なら手段を選ばない狡猾で極悪非道な戦いを演じろなさい。正義のヒーローに敗れても、最後まで醜くあがきなさい」

 

 

少女の親切な助言(・・)に対して、足元で地に伏せている彼は返事どころか見動き一つしない。

顔を蹴り飛ばして見るが反応は鈍く、呼吸音が聞こえるばかりだ。

靴に血が付いた見返りが、コレだけとは、と少女は悲しくなった。人の話はしっかり聞きましょうと学ばなかったのか。

予行練習の為わざわざ来たというのに、こんなのしか見つからないとは、とんだ無駄足だった。

 

さっさと終わらせて家に帰ろう。

少女がそう思っていると、彼に意識がある事に気付いた。

 

唾液を呑み込んでいる。

 

この行為は意識が無いとできない。寝ているときに、ヨダレが垂れる事があるのはこの為だ。

逆転を狙って、気絶したフリをしていたのなら、彼の評価を改めなければならない。

そして、気を引き締めなければならないだろう。

 

 

敬意を評して少女は彼の手足を切断した。

 

 

「ねぇ、私はね。正義のヒーローになりたいのです。

勿論知ってますよね。ヒーロー、ヒーローです。

国家資格が必要な職業であなたの様な犯罪者、ヴィランと戦って、お金も地位も名声も手に入る職業です。

子供がなりたい職業、不動のNo.1。

けど私はお金とかには興味はないんです。全部お父様の跡を継げば、いえお父様の子供に生まれた時点で持ってますからね。

なら何故ヒーローになりたいか?、ですか。

そんなの決まってるじゃないですか、貴方が分からないなんて少し不思議ですね。

だってヴィラン(人間)を殺す事が出来るのですよ。

合法的に、罪に問われることも無く。素晴らしいと思いませんか?日常的に直接人間を殺して、社会から称賛される職業なんて他にありません。

これは、目指すしかないでしょう!?

実は私、明日から雄英高校のヒーロー科に入学するんです。試験では失敗してしまったから、不合格だとばかり思っていたのだけど、合格してました。吃驚仰天、狂喜乱舞です。

けれど、恐らくはギリギリの補欠合格でしょうから、授業についていけるか不安も感じてます。

だからこうして(・・・・)予行練習、自主トレーニングに励んでいるのですよ。

あれ、ちゃんと聞いてますか?」

 

「………」

 

「返事が無い。ただの屍の様だ。てね。

これは出血死ですかね?手脚を切ったのは、失敗でしたね。反省しなければなりません。しかし、彼もだらし無いですね?ヴィランを名乗るのなら、もう少し強くなくては困るのですが…」

 

少女はいつも通り、彼の処分を始める。

最初に取り掛かるのは、身体を小分けにする事だ。

手脚をそれぞれ3等分程度に切り落とし、胴体に取り掛かる。

首を切断。胸を切断。腰を切断。太ももを切断。

上から順番に横切りにしていく。

これが終わるとに次は縦切りだ。

まずは身体の中心線を。さらにそこから左右に均等な感覚を保って切っていく。

ある程度の大きさになったら、最後の工程だ。

彼の身体を乱雑に切断する。食材を微塵切りにするのと似ているだろう。

それを数秒で、しかも一切手を触れる事なく行った。

 

「処分先はいつもの場所でいいでしょう」

 

水溜りで遊ぶ子供の様に、少女は足元の血溜まりを弄ぶ。すると路地を真っ赤に染めた、彼の肉片は消え受せ、元凶たる少女も姿を消した。

 

 

 

 

 

「人間の武器は、戦いは、進化しました。サーベルからマスケット銃、マスケット銃からライフル、ライフルからマシンガン、そして現代では『個性』へと。そしてそのたびに人間は新しい武器を見て嘆きました。

「なんと醜く、無惨なものを」とね。そして、誰もが馴れましたとさ。めでたしめでたし」

 

少女は手すりに寄りかかり夜の街を見下す。深夜でも絶えず光輝く街から生汚れた大気が暖かい風となって吹き付け、長い髪を靡かせる。

 

ビルの屋上(・・・・・)に移動したのは失敗ですね)

 

「ヴィランは超人社会に必要なのです。敵がいなければかえって危ない。ヴィランが死滅すればヒーローも絶滅する。うまい具合にバランスが取れていなければならない。だからヴィランとヒーローの戦いは、バランスを、保ちながら永遠に続くのです」

 

少女は部屋(・・)に着くと、血に塗れたワンピースを彼と同じ場所に処分し、すぐにお風呂へ向かう。

匂いを早く落とさなければならない。今はまだ気付かれては駄目だ。

自身の小さな身体を隅々まで洗い、湯船に浸かる。

 

 

「『正義のヒーローは傷つく覚悟をしなければならない』とはいえ、身体に傷は作りたくないですね」

 

明日からの新生活に期待を膨らませて、少女はお風呂を楽しんだ。

 

 




『少女』
個性「????」

長い青髪に小さな身体の夢見る女の子。
人間を殺す事と正義の味方が大好き。
その小さな身体には、とてもつもないパワーが…秘められていない。
枝の様に細く、陶器の様に美しい手脚。
後ろ姿は度々小学生に間違われる身体。
身体能力は男子小学生に負けるほどだ。

しかし、内に秘めた意志では敵無しだ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。