転生国防軍大佐 戦車道にて、斯く戦えり   作:33シーマ ・ホシー

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皆さん、お久しぶりです!リアルの方で他の趣味に没頭したためあまり手をつけていませんでした。
引き続きお楽しみください!


第十話 白熱、サンダース戦です!

試合が始まるまでの待機時間、サンダース大付属高校側が用意した出店で大洗学園一行は暇を持て余していた。美容室や様々なファストフード店といった出店だけでも一つの商店街ができるんじゃないかという勢いであった。

出店もアメリカの影響を受けたのだろう。ハンバーガーやフライドチキンといった食べ物も完全に向こうのサイズであった。

 

「救護車のほか小規模なシャワー店やヘアサロン店といったものまでありますよ」

 

「本当にリッチな学校なんですね」

 

「これだけで一つの商店街ができそうだね……」

 

弾間とあんこうチーム一行はサンダース側が出した店舗の量に圧倒されていた。すると、ケイがナオミとアリサを連れて大洗学園一行のもとへ向かって来た。

 

「へいっ!アンジー!」

 

「角谷杏だからアンジーなのね」

 

「何かなれなれしいな」

 

「やぁやぁ。ケイお招きどうも」

 

「何でも好きなもの食べていってね。OK?」

 

「OKだよ。おケイだけにっ!」

 

杏がサンダースの隊長であるケイと冗談を交えながら挨拶を交わしている。次にケイは優花里と弾間に目を向けた。

「へいっ!オットボール軍曹」

 

「あ、見つかっちゃった」

 

「この前は大丈夫だった?ケガはない?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「またいつだってうちに遊びに来て。うちはオープンだからねっ!それと、エリソン二等兵は?」

 

ケイは周りを見渡すが、それと思しき女子生徒は見つからなかったので弾間に声を掛ける。

「はーい英二っ!あなたの噂は聞いているわっ!って前にも会った気がするけど……」

 

「それなら気のせいだと思いますよケイさん。今日はよろしくお願いします」

 

「OK!よろしくねっ!」

 

弾間と彼女が挨拶を交わしている傍らで、華のもとへたかしがやって来た。すると、ケイの後ろで控えていたアリサはたかしと目が合うと真っ先に彼のもとへ駆け出して行き、周りの目も気にせず飛びつく。

 

「たかしっ!会いたかったわっ!」

 

「おぉっ!アリサ、元気でよかったよ」

 

彼はアリサの行動に驚きつつ、旧友との再会を喜んでいた。

 

「幼馴染っていいよね」

 

「なんていうか、先輩たち尊いですよ~」

 

「私もあんな彼が欲しいな……」

 

『山郷あゆみ』や優季、『坂口桂利奈』の三人がたかしとアリサに聞こえないように小声でそう呟くが、丸聞こえだったのだろう。彼は苦笑いをしながら聞こえないふりをして「どうして、あまり連絡を取ってくれないの」と言いながら顔を胸に擦りつけているアリサの頭を撫でている。

 

「ちょっと周りの目も気になるからそろそろやめてほしいな……」

 

「えーなんで?幼馴染なんだしいいでしょ?あっ……そろそろ時間だからそうするわ。じゃあね」

 

アリサはそう言いながら手を振ると、ケイの後を追うのだが。後ろを向こうとした際、華と目が合うと少しだけ彼女を睨みつけるのであった。

 

「あの……私は彼女に何かしてしまったのでしょうか」

 

「華さん気にしなくていいよ。あの子には言っておくから」

 

「あの目からして何かの予感がするかも」

 

どこか不安気になっている華に対して、たかしは申し訳なさそうにそう言いながら悲しそうな目でアリサの後姿を見送っており、その傍らでは沙織があながち間違いではない一言を呟いていた。

それからほどなくして試合が始まるのであった。

 

 

 

 

サンダース大付属高校二年生のアリサは大洗学園高校に通う同じく二年生の安川たかしに想いを寄せていた。彼とは、小学校まで一緒で家も近く。よく一緒に遊んでいたため、いわゆる幼馴染という間柄だった。

中学校からはお互いに違う学校に進学し、頻繁に連絡こそ取っていたもののたかしも他県に引っ越したために会う機会も少なくなり。

第六十三回戦車道大会が始まってからは彼からの連絡の頻度が少なくなり、気になったアリサは長年抱いていた想いの歯車を動かすべく。思い切ってたかしに連絡してみたところどうやら気になる人ができたことが分かったのであった。

彼女はさらに詳しく彼に事情を聞いたところ、同じく大洗学園高校に通う五十鈴華と仲良くなりたいという趣旨が書かれたメッセージが送信されてきたのだ。

 

『どうしてたかしは私じゃなくてあの子と』

 

アリサはたかしが言った仲良くなりたいの意味をはき違えたのだろう。これ以降彼との連絡はこの日まで取ることが無かった。

 

「(たかしが振り向てくれないなら。こうでもしなきゃ意味が無いわよね……)あんた達、あんこうのエンブレムが付いているⅣ号を容赦なく叩き潰しなさいっ!!」

 

「サー・イエスサーッ!!」

 

アリサが搭乗するM5A1の搭乗員とその周りにいた他のM5の搭乗員たちが勢いよく返事をする。

 

「さぁ、覚悟なさい。戦いが甘くないということを教えてあげるわ……」

 

彼女は無線を切ると、今度は無線傍受機を片手にどす黒い笑みを浮かべ、周波数を合わせ始めた。しばらくすると無線を傍受できたのか、こもった声がそこから聞こえ始める。

 

『……ウサギさんチーム及びフェレットさんチーム、キツネさんチームは右方向の偵察をお願いします。アヒルさんチームとアリクイさんチーム、カモさんチームは左方向を。カバさんとレオポンさん、我々あんこうはカメさんを守りつつ前進します』

 

「(そうねぇ。ポルシェティーガーは厄介だから早めに他の戦車を……まずは副隊長の弾間英二を叩こうかしら)隊長、森林帯に向かってください。おそらく向こうは機動性が高い戦車で突破を試みるはずです」

 

「OK!じゃあ、アリサたちは竹林帯に向かってね!」

 

「イエス!マム!」

 

アリサは内心でそう考えながら搭乗員達やケイに指示を出す。それに合わせて隊長車かつフラッグ車であるM4E8とこれを守るシャーマンファイアフライともう四輌のM4A2がV字隊形を組んで広大な森の中へと入っていった。

 

 

 

 

アリサが無線を盗聴し、包囲網を形成しつつあることを知る由が無い梓や弾間、大友が率いる三輌の戦車は間もなく森の中間地点に差し掛かろうとしていた。

ウサギさんチームを先頭にM3Lee、E-25、ケホが縦一列になって走行しながら周囲を見渡している。

 

「全然敵が見当たりませんね。相手は守り重視なのでしょうか?それとも全く違う道を進んでいるのでしょうか?」

 

「いや、どうだろう。相手は装甲や機動性といったところを重視したアメリカ戦車らしく数で押してくる戦法を取るだろうね」

 

「弾間の兄貴。いつでも逃げれるようにするのもいいかと思います。足が速いこの三輌とはいえ、囲まれると蜂の巣にされちゃいますよ」

 

「そうだね。そう言われると、会敵した際は位置を報告しつつ即座に撤収するの方がいいね」

 

三つのチームは相手と遭遇した際の対処法を話し合いつつ、走行していると丘がすぐそばにある地点までやって来た。ただ周りは風によって草木が左右に揺れ、椋鳥や栗鼠といった小動物が木々を飛び移ったり歩き回ったりしているであろう音が微かに響き渡っているだけである。

三人の車長は、戦車から身体を乗り出して音を慎重に聞き分けている。すると、丘の方から三輌ほどの戦車が三人の方に近づいて来たのだろう。エンジン音が聞こえて来た後、三輌のM4A2が姿を現した。

 

「こちら、B805S地点にてシャーマン三輌発見。これから誘き出しますっ!」

 

梓の一言と共に三輌の戦車が行動に移ろうとするが、後方に複数の砲弾が着弾する。突然の出来事に弾間と大友は取り乱しそうになり、ウサギさんチームの面々はパニックになった。

彼女が慌ててキューポラから身体を乗り出して砲弾が放たれた方に目を向けるとフラッグ車であるM4E8ともう二輌のM4A2が後ろからやって来た。

 

「六輌に包囲されましたっ!これよりフェレットさんとキツネさんと一緒に脱出しますっ!」

 

「こちらあんこう。そちらに向かいますっ!フェレットさんはあんこうに代わってカメさんを護衛してください」

 

「ありがとうございますっ!後で合流しましょうっ!」

 

ウサギさんチームのM3を守るようにケホが蛇行運転をしながら相手の射線を妨害し、E25は主砲を相手に向けて威嚇しながら数百メートル先の相手を除けて退路を確保する。

それでもなお、相手は史実のアメリカが物量と緻密な連携力を頼りに西部戦線でドイツ軍を圧倒したように退きつつも再び束になって執拗に攻撃を加えてくる。

 

「大友ちゃん、梓ちゃんを連れて先に逃げてくれないか?」

 

「了解しました。弾間の兄貴、気をつけてください」

 

「ありがとうございます。弾間先輩っ!」

 

弾間は先に大友と梓を逃がすと、単独で相手を引き離す行動に打って出た。相手も副隊長車が気でも狂ったと思ったのだろう。ケイが乗っているM4E8と二輌の計三輌がケホを追いかけ始めた。

 

「三輌は引きつけは成功か……ひとまずは追いかけっこか。麻里奈ちゃん、そのまま最高速度でまいてそのままレオポンさんとカメさんに合流して」

 

「はーい。リミッター解除入るねー」

 

彼女が待ってましたと言わんばかりにアクセルペダルをべた踏みすると、エンジンに後付けしたターボチャージャーが効果を発揮したのだろう。ケホは過給機特有の排気音をあげながら一気に相手を引き離していった。

 

「逃がさないわーっ!エイジッ!」

 

「逃げなかったら撃たれるので逃げまーすっ!」

 

キューポラから身体を乗り出していた弾間はケイとそんなやり取りをしながら計三輌の戦車から放たれてくる砲弾を躱しながら逃げ切ったのであった。

 

 

 

包囲網を脱出することに成功した梓と大友はみほ達と合流し、小さい雑木林の中で息を潜め。相手が急に現れた理由について考えていた。

 

「隊長、相手はまるで私たちの行動を見通していたかのようでした。あんなところで急に見つかる要素も無かったのに……」

 

「そうだね。どうしてなんだろう?」

 

梓とみほの二人は腕を組んで唸っていると、ウサギさんチームの装填手である沙希がみほのタンクジャケットの袖を引っ張りながら晴れ渡った空を指さす。

 

「……西住先輩、気球」

 

「気球?……あれはっ?!」

 

みほは双眼鏡を手に取って打ち上げられた気球を見つめるとあることに気づく。その気球は魚の形をしていたが、よく見ると、そこから三本のアンテナが立っていた。

 

「通信傍受機が打ち上げてある……」

 

「そ、そんなことをしちゃ?!」

 

彼女の言った一言に対して、ウサギさんチームの面々は思わず声をあげて驚いたが。大友達キツネさんチームはそれに対して声を荒げた。

 

「は?通信傍受……よくもそんなことぬけぬけとやりやがって。きっちりケジメをつけてもらおうかっ!!でも、あのケイさんがこんなことをするはずないから、いったい誰が」

 

「そうですね。怪しいとすれば、副隊長のアリサって人が率いる軽戦車小隊といったところかな。へへっ……あたしも姉貴も戦車道を侮辱することをやる輩は嫌いだから……どう落とし前つけてやりますか?みほさん」

 

「みほさん。とりあえず、通信傍受をしている奴を見つけ次第。集中砲火にしましょうよ」

 

「どんな競技でもスポーツマンシップに反すること駄目だからね。ここはぎゃふんと言わせないと。でも、あの子がそんなことをするはずは……」

 

「あ……えっとそうだね。怒るのは分かるけど、ここは次の打開策を考えないと……」

 

「おっと失礼しました。志乃、早苗、安川の兄貴。みほさんが作戦を考え始めたからあたしたちもなんかいい作戦がないか考えるわよ」

 

みほは今にも誰かに殴り掛かりそうな勢いで怒りを露わにする大友達を制止すると、打開策を考え始めた。こちら側の無線が傍受されている以上、そのまま下手に動き回るわけにはいかない。

前進して反撃に出るにしろ後退しつつ防御重視の戦法を取るにしてもすぐに相手が反撃をしてくるだろう。だが、ここでみほの脳裏に一か八かの思いつきが転がり込むのであった。

 

 

 

 

サンダース大付属高校戦車道チーム隊長。ケイは次の目標がいないかアリサの『女の勘』を聞きながら戦車を進めていた。

彼女は人望が厚く、寛仁大度な性格であり。また、フェアプレイといった正々堂々とした勝負を好むといった人物像である。なので、アリサやナオミといった副官の意見も積極的に取り入れる大雑把な言い方をすれば、理想の上司といったタイプである。

 

『囮を北上させて本隊はその左右から包囲させてください』

 

「OK!でも、何でそんなことが分かっちゃうわけ?」

 

『女の勘ですよ。隊長が先ほど言われたように、今日は冴えていますので……』

 

「それは頼もしいわっ!」

 

ケイは一度怪しんだものの、無線ではアリサの表情や声のトーンでどのようなことを考えているのかすら分からなかった。変に疑いをかけるのもどうかと思い。彼女はノリよくそれを快諾するのであった。

しかし、それが災いしたというべきだろうか。みほ達大洗学園側がアリサによる無線傍受を逆手に取り、罠を張り巡らしているということを知らないまま、三輌のM4A2が丘を越えて平原に出た途端。

待ち伏せしていたM3Lee、三突、Ⅳ号戦車によって各個撃破されたのであった。

 

『すみません、三輌撃破されてしまいましたっ!!』

 

「ホワイッ?!」

 

ケイは唐突な見方の撃破報告に動揺を隠せなかった。何せ、こちらの動きを手に取るようにして誘い込み、撃破したとしか思えなかったからだ。

しかし、すぐにいつもの調子を取り戻したが。この時の彼女はどこか熱くなり。テンションが高まりつつあった。

 

「Oh!相手もやるわね……これは面白くなりそうだわっ!」

 

彼女が乗るM4E8を先頭に残ったM4A2が続き、横隊隊形になって広大な緑の平野を進んでいくのであった。三輌の仲間が撃破されてもなお、サンダース大付属高校戦車道チームの隊列に乱れはなく。その姿は鉄の統制とも言うべきであろう。

 

 

 

アリサはまだ自身が行っている無線傍受が逆手に取られているということに気づいておらず。どこか焦燥感に駆られており、周波数を調整しながら相手の無線内容をあぶりだそうとしていた。

 

「いい気になるなよ……痛い目に遭わせてやるんだから」

 

彼女はそう呟きながら調節レバーを回していると、相手の無線内容が聞こえてきた。

 

『全車、一二八高地に集合してください。ファイアフライがいる限り相手のフラッグ車を狙うことは出来ません。一か八かですが。一二八高地に陣取り、そこから一気に方をつけます』

 

「くっくっく……捨て身の作戦に出たわねぇっ!!丘に上がったらいい標的になるだけよ……隊長、一二八高地に向かってください」

 

アリサはどす黒い笑みを浮かべて陰湿な感じの笑い方で静かに笑うと、隊長であるケイに次の指示を出すのであった。

 

「ちょっとアリサ、それ本当?どうして分かっちゃうわけ?」

 

「私の勘は冴えています。そして、それは的確ですっ!!」

 

「OK!全車、Go!Ahead!」

 

彼女が自信満々気に答えたため、ケイは少し驚いたが。それでも信頼できる後輩であり、自身の副官であるためにあまり疑いをかけず。アリサの指示を快諾するのであった。

しかし、その指示通りに一二八高地に向かってみると、敵戦車の姿はおろか人の気配すら無く。ただそこには緑のなだらかな丘とおまけ程度に生えた小さな木があるだけであった。

 

「何にもないよ~っ!!」

 

ケイが困惑する声がアリサが搭乗するM5A1の車内にこだまするのであった。

今度はうまくいくと考えたのだろう。彼女もまたしてやられるとまでは考えておらず同じように困惑し、慌てふためいていた。

それに止めを刺すかのように、アリサが率いる軽戦車小隊の傍にあった竹垣が突然倒れると、そこから八九式中戦車と一式軽戦車・ケホと九八式中戦車・チヌの日本戦車トリオがそこから現れたのであった。

 

 

 

 

弾間は、みほの指示を受けてアヒルさんチームとアリクイさんチームと共に竹林の中を前進し、通信傍受の元凶ともいえるアリサを探していた。

入ってしばらく進むと、彼女の予想通り相手の軽戦車小隊とその小隊長のアリサが無線傍受機の子機を片手に持ってM5A1戦車から身を乗り出していた。

会敵した瞬間、撃ち合いが始まるわけもなく。五秒間黙ってお互いを見つめ合ってしまった。

そして、弾間が声を張り上げる。

 

「撃てぇ!そのまま南進っ!!」

 

彼がそう言った途端、三輌の日本戦車から砲弾が放たれ、アリサのM5A1を守るようにして停まっていたもう三輌のM5を撃破し、二輌を残して弾間達はその場から去っていくのであった。

 

「きぃーっ!九八式や一式よりも古い八九式のくせにっ!!今すぐ後を追うわよっ!」

 

「で、でも。隊長に報告しなくていいのですか?」

 

「そんなこと二の次よっ!相手の三輌は装甲が薄いんだから装填の速さと37mmの砲があるんだから十分よっ!」

 

年式的に最も古い八九式中戦車に仲間の一輌が撃破されたことに腹が立ったのだろう。アリサの怒りのボルテージが暴発し、自らの手でこの三輌を葬らんともう一輌のM5と共に後を追い始めるのであった。

すぐに相手に追いつき、あてずっぽうに主砲を乱射し始めるが、走行しながらで当たるわけもなく。相手に距離を開けられるばかりである。

さらに、八九式中戦車に乗る典子から投げつけられた煙幕弾によって二輌の戦車は視界を遮られ、さらなるパニックに見舞われることになる。

 

「こちらフェレット、これよりアリクイさんとアヒルさんと共に”サイン会場”に誘導します。レオポンさん及びキツネさん、カモさんは準備してください」

 

『はいよー。こちらレオポン、取り締まりの準備はおっけーだよ』

 

『こちらカモさん、いつでもどうぞ』

 

『こちらキツネさん、獲物が待ちきれません』

 

二輌のM5A1を覆っていた煙幕はようやく晴れ、外の様子が分かろうとしていたアリサは外の違和感に気づくのであった。

 

「何よ?この嫌な予感は?」

 

彼女はキューポラから身体を乗り出して外を見ると、固唾をのみこんだ。数百メートル先には先程の日本戦車トリオとポルシェティーガーが主砲をこちらに向けて鎮座していたのであった。

 

「ポ、ポ、ポルシェティーガーが前方にいるわっ!!急いでそこの交差点を右折なさいっ!!」

 

二輌のM5には間髪を入れず、前方で陣取っていた四輌から砲撃が加えられる。高火力なチヌとポルシェティーガーはこの二輌の搭乗員を十分な恐怖に陥れる存在であった。

それが災いしてか左右の安全確認もせず右折して坂道を下ると、その先にはE-25とルノーB1bisが陣取っていた。

 

「ストップッ!ストップッ!ストーップッ!!」

 

前門の虎後門の狼というべきだろう。下って来た坂道の上にはポルシェティーガーと日本戦車トリオが主砲を向けて停車していた。前方に目を向けると大友がニヤニヤし、そど子が校則違反者を取り締まるときに見せる厳しい目をしてアリサを見つめていた。

 

「……あっ……あっ……」

 

「規則違反は許さないんだからっ!!」

 

「ドッヂボールやろっか」

 

大友がそう言ったと同時に前と後ろにいた六輌から砲弾が放たれ、避ける余地がなかったアリサたちは集中砲火に遭い、土煙が晴れて後には残った二輌とも白旗を上げて戦闘不能になっているというものであった。

 

『もしもし?!撃破ってどういうことよアリサッ!』

 

アリサは弾間達を追いかけるのに夢中で隊長からの無線に気づかず。撃破された今になってようやく気づいたのであった。彼女はここで己の行いをケイに打ち明けたのであった。

 

「すみません……無線傍受機を逆手に取られた上、強襲と相手の罠に遭遇しました……」

 

『バッカモーーンッ!!戦いはいつもフェアプレイとスポーツマンシップの精神を大事にっていつも言ってるでしょ?!……まぁ、いいわ。仇をとってあげるから』

 

ケイはこの一言を最後にアリサとの通信を終えるとファイアフライのナオミと合流し、どこかワクワクした表情で防御を固めて再び隊列を整えて緑の平野を進んで行くのであった。

 

 

 

大洗学園側は全車輌が合流し、突撃隊形を組んで平坦かつ障害物が無い道を進んでいると片方がかなり大きな起伏になっている場所にやって来た。ここで、みほは思いもよらない提案をチームに持ち掛けた。

 

「もうすぐサンダースはここにやって来るはずです。私たちあんこう、フェレットさん、ウサギさんは起伏の大きな丘から一気に下って相手と決着をつけます。他の皆さんはカメさんを守りながらここの稜線でいつでも撃てるようにしていてください。私たち三輌がやられても後の皆さんなら必ず勝てるはずです」

 

『『了解っ!!』』

 

「それでは、『びっくり作戦』発動ですっ!」

 

みほがこの『びっくり作戦』を短期で思いついたのには理由があった。

無線傍受を逆手にとって今まで行って来た隠れつつ相手を撃破するというやり方でやって来たが、ここは敢えてケイが戦車道で最も重視するフェアプレイに則って隊長である彼女自身と副隊長の弾間、無限の可能性を秘め、将来有望ともいえる梓たちの三輌で決戦に臨むことが理由であった。

 

「西住殿、何だか燃えて来たでありますっ!」

 

「みぽりんのそう言うところ好きだよっ!」

 

「私の腕の見せ所ですわ。みほさん、指示を待っていますよ」

 

「ちょっと無茶な運転をするぞ西住さん。今日の私は眼が冴えているからどんな運転もできそうだ」

 

『僕たちフェレットさんチームも燃えて来たよっ!さぁ、思いっきりやっちゃおうか』

 

『西住隊長、私達ウサギさんチーム一同は貴女の戦車道に対する情熱を見させていただきますっ!!』

 

「英二くん、澤さん……他の皆さんありがとうございますっ!」

 

あんこうチームのメンバーや二人の車長に励まし言葉を掛けられたみほは今、己の才能のリミッターが完全に外れ、それを開花させんとしていた。

そして、時は満ちたというべきだろう。丘の丁度上に差し掛かった瞬間、坂の下に八輌のサンダース戦車を視界に入れた。

 

「決着をつけますっ!麻子さん前へっ!!」

 

「ファイアフライを抑えるよ、前進っ!!」

 

「あゆみ、あや。M4A2の動きを封じてっ!!」

 

サンダース側は隊長車と副隊長車が自ら現れたことでパニックになりかけたが、チームワークの強さが勝ったのか、ケイとナオミを守るべく。

M4E8の後ろから来ていたM4A2が二輌の前へ出て盾になろうとするが、高低差を活かして稜線射撃を図ったM3Leeによって装甲が最も薄い後部装甲上部に撃ち込まれていき、次々と白旗を上げていく。

弾間は、ケホの軽快さを活かしてウサギさんチームのM3Leeを狙おうとしていたファイアフライの側部の回り込んで撃破しようとするが、ファイアフライもそれに気づいて主砲をケホに向けながら素早く車体を旋回しつつ回り込ませないようにする。

しかし、フラッグ車狙いであったと思い込んでいたⅣ号によって撃破されてしまう。その隙にケホは、Ⅳ号の装填時間を見計らって後部装甲に狙いを定めていたM4E8の注意を引く。

装填が完了したⅣ号は一気に加速し、ドリフトターンでE8の後部に回り込んで砲撃を浴びせた。この時、M4E8は主砲を後ろに回り込んだⅣ号に向けて照準を重ねた上で刺し違えようとしたため、同時に砲撃を放つ。

間もなく。この二輌を覆っていた土煙が晴れて分かった光景は、Ⅳ号戦車の砲塔側面装甲が大きくかすれた傷跡を残して堂々とした風格で主砲から煙を上げ、対するM4E8はエンジンから黒煙を上げて砲塔から白い旗を上げて鎮座していた。

 

 

 

無事に三回戦も大洗学園の勝利に終わり、大洗学園のメンバーはいつも以上に勝利の喜びに入り浸っていた。今回に関しては、全員生存といった結果で幕を閉じたからだった。

カバさんチームの面々は相変わらずのように戦いの様子を歴史上の出来事に例えて盛り上がっており、ウサギさんチームは車長の梓を胴上げして勝利の喜びに入り浸っていた。

そんな場面に、一緒にいたみほと弾間の二人に手を振りながら満足な顔をしたケイがどんよりと雰囲気をまとったアリサと同じく満足な顔をしたナオミを連れてやって来た。

 

「貴女がキャプテンとエイジが副キャプテンだったかしら?」

 

「えっと……そうです」

 

「そうですが。どうされました?」

 

ケイは二人に確認を終えると、ニコッとしながら二人を同時に抱きしめた。

 

「Exciting!こんな試合ができるなんて思わなかったわっ!」

 

「「こ、こちらこそ色々学ばせていただきました」」

 

「それと、盗聴なんてして悪かったわ」

 

「いいえ。こんなこともあるんだと良い経験になりました」

 

「でも、それを切り抜けて貴女たちは勝利したんだから」

 

「あ、ありがとうございますっ!」

 

ケイはそう言いながら自身の両手でみほの手を優しく握った。次に弾間に目を向けると、再び彼を抱きしめた。

 

「ケ、ケイさん?!」

 

「エイジ、貴方が自らの身を顧みずに後輩たちを逃がしたところカッコよかったわ。あと、エイジいやエリソン二等兵、また遊びにおいでね。今度はステーキでも食べながらゆっくりお話でもしましょ」

 

「は、はい」

 

彼女は最初から弾間を見抜いており、今日の試合のこともあるのだろう。要するに彼女のお気に入りとなった。いや、なっちゃったのだ。対する弾間は顔を真っ赤にしにて今にも白煙が上がって来そうな感じである。

それを煽るかのように周りのメンバーは羨望の目を弾間に向けていた。

そんな空気を引き裂くように、ケイの後ろの方で一人どんよりと雰囲気を纏ったアリサのもとへたかしが駆け寄るのであった。

 

「……たかし?私のことなんか嫌いになったよね……」

 

「アリサ…………こっちも君の気持に気づかなくてごめんね。確かにやったことはアレだけど。そうだ。今度はそっちに遊びにでも行っていいかな?今度は遊びながらゆっくり話そうよ」

 

「え?許してくれるの?こんなひどいことをしたのにっ?!」

 

「許すも何も、幼馴染なんだしこの辺りはお互いに理解し合わないとね」

 

「じゃあ。私の気持ちを分かってくれるの?」

 

「勿論さ。これからはその……幼馴染兼恋人としての関係で行こうよ。なんか、都合のいいことばっか言ってるけど」

 

「たかし……」

 

彼は自身の鈍感さを自嘲しながらアリサを本心から慰めるのであった。

そんなたかしの反省ぶりにアリサも心を打たれたのだろう。彼女もまた思わず彼に抱きつく。その傍らでは沙織と大友が納得のいく表情で頷いていた。

 

「アリサ」

 

「は、はいっ?!」

 

「反省会するから……と言いたかったけどタカシに免じて見逃してあげるわ。その代わり、二人でいつまでも仲良くしなさい」

 

「イエス!マム!」

 

アリサはケイの慈しみの深さに参ったのだろう。涙を流して喜んでいる。溢れる涙で濡れた彼女の両目をたかしは優しく拭うのであった。

こうして大洗学園対サンダース大付属高校との試合は幕を閉じたのであった。後にたかしとアリサのこのやり取りは今後の戦車道史に、戦車道は恋心をも育むと記載されるほどだったそうだ。

 




ありがとうございました!次回は第十一話を投稿する予定ですっ!
今回はたかしとアリサの恋愛要素を取り入れてみました。こういった描写を書くのは初めてだったのですが。これからもこういった物の研究を進めたいと思います。
最後になりますが。お気に入りへの登録や作品の評価、ご感想などお待ちしております!!

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