魔法使いになりたい。そんな夢を私は大人になるまでずっと抱えたまま生きていた。
子供の夢だ。魔法なんてあるわけがない。フィクションの存在だ。
――そんなことわかっている。それでも私は魔法使いになってみたい。
そんなことを思っているうちに、ある日突然私は死に、そして死ぬ前の記憶を保ったまま、新しく赤ん坊として生まれ変わった。
新しい私の名前は綾瀬夕映。魔法先生ネギま!の登場人物である。
住居は埼玉県麻帆良市。日本屈指の学園都市在住だ。
そう、私は魔法先生ネギま!の世界、すなわち魔法のある世界に生まれたのである。
綾瀬夕映と言えば原作の途中で魔法の存在を知り、魔法使いになる人物だ。つまり私は、このまま綾瀬夕映としての人生を過ごせば、夢である魔法使いになれてしまうのだ。
その事実に、私は高揚したが、すぐ後に失敗は許されないと冷静になった。
原作通りに事を進めなければならない。
原作のタイミングでネギ先生を詰問し魔法の存在を知り、原作のタイミングでエヴァンジェリン亭を訪ねて魔法を教えて貰う必要がある。
なぜなら、ネギま世界には記憶を消す魔法がある。下手に「あなた魔法使いですよね。魔法教えて下さい」なんて言って、魔法の存在を忘れるように記憶処理などされては、困ったことになってしまう。
なので、私は大人しく、待つべきだ。
中学三年生の修学旅行が終わるそのときまで、待つべきなのだ。
そう心に言い聞かせ、原作から外れないよう私は綾瀬夕映として大人しく過ごすことにした。
やがて月日は経ち、とうとうネギ先生が麻帆良にやってくる中学二年生の三学期を迎えた。
◆
私は原作通り2年A組に在籍している。
生徒数は31名。私は出席番号4番。もちろん幽霊の相坂さよ出席番号1番を入れてだ。これも原作通り。
担任は高畑・T・タカミチ先生。いずれネギ先生に代わるだろう。
そんな2年A組だが、少し原作と違うところがある
「おはようございます木乃香お嬢様」
「おはようー! せっちゃん!」
朝の教室での一幕。挨拶をしたのは桜咲刹那で、返したのは近衛木乃香。
そう、まだ三年時の修学旅行が終わっていないというのに、桜咲さんと木乃香さんの距離が近いのだ。
原作本来なら桜咲さんはこの時期、木乃香さんとは距離を取って遠くから護衛を遂行しているはずだ。
もしかしたら私のとった行動が、なにがしらバタフライエフェクトを起こして、二人の仲直り的なイベントへと発展したのかもしれない。
ふむむ、と考えていると、高畑先生の声が教室に響いた。
「ほらー席についてー」
おっと、座らねば。
「それじゃあネギ君自己紹介を」
と、席に着いたところで、高畑先生が隣に小さな男の子を伴っている事に気づいた。
「えーと、あの、その、僕……今日からこのクラスの担任と英語を受け持つことになりました、ネギ・スプリングフィールドです」
ネギ先生じゃん!
そうか、ネギ先生の就任は今日だったのか。いよいよ原作が始まるのか。
私の魔法使いになるための、大切な数ヶ月がいよいよ始まるのか。
改めて記憶を整理し直して、どう行動すべきか再確認しようか。
幸いなことに前世の記憶は一切薄れていない。ネギま三十八巻分全て記憶にあるのだ。マガジン読者だったから雑誌掲載分もね。別マガとかマガスペとかの別冊系は守備範囲外なので、UQ HOLDER!は途中から単行本追いだったけど。
普通なら十数年前に読んだ漫画の記憶なんて、うっすらとしか残らないはずなのに、どういうわけだろうか消えていない。これは前世の記憶は脳にではなく魂に刻まれているからではないかと推測している。
魂などというものがこの世にはあるのか。転生した人間だが魂を実感したことはない。しかし、相坂さよというキャラクターの存在から、この世界には幽霊というものがいることはわかる。だから、脳の無い幽霊が記憶を保てているのと同じように、私の中にある魂が脳に頼ることなく前世の記憶を保持し続けているのではないか、と考えているのだ。
などとぐだぐだ考えていると――
「ふぁっくしょんっ!」
「きゃああああああ!?」
ネギ先生がくしゃみをして、その正面にいた神楽坂アスナの服が突然吹き飛んだ。
パンツ一枚の半裸状態になり、ぷるぷるとふるえるアスナさん。
えええええ!? どういうことなの!?
くしゃみでネギ先生の魔法が暴走して
でもそれってネギま第一話じゃ教室のシーンじゃなくて、登校途中のシーンだったはずだよね。
くしゃみなんて予期せず起こることだ。でも、ネギ先生の場合、このようにそれがひとイベント引き起こすきっかけになりうる。私も気がついていない、ちょっとした行動がバタフライエフェクトになって、今回のごとく原作とのずれが生じてしまう可能性はある。
もしかしたら原作通りに出来事を進めるのって、難しいことなのかもしれない。
「なにやってくれてんのよおおおおおっっ!」
叫ぶアスナさんを見て、改めて気を引き締めると共に、ネギ先生の正面に立つのは控えようと気をつけることにしたのだった。公衆の面前でいきなり下着一枚は、現実になると絵面がやべー。
◆
翌日のこと。
ドラキュラに襲われたと朝からクラスメイトが騒いでいた。
おそらく吸血鬼であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが、来年度の大停電の日に向けて魔力の補充を始めたのだろうと推測できる。切っ掛けはネギ先生の麻帆良来訪だ。ネギ先生から血を吸って登校地獄の呪いを解呪するのが、彼女の最終目的だからね。
桜通りの吸血鬼編までまだ数ヶ月。このままいくと魔力のために血を吸われる犠牲者は増え続けるだろうが、原作通りに進めたい私としては、何も手を出すことはできない。最終的に親友の宮崎のどかが襲われることになってしまうが、何もできない。
まあ血を吸われると言っても、死ぬわけでも吸血鬼に感染するというわけでもないので、知っていても見て見ぬ振りをする罪悪感は特にない。
そもそもまだ魔法使いになっていない今の私では、手を出そうとしても何もできないけれども。
まあ朝そんなことがあって、一日が進む。ネギ先生の英語の授業も、どんなものかと期待していたが特にこれと言って変わった指導方法はなかった。
まあ中学二年程度の簡単な英語じゃ、そう画期的な授業ってわけにもいかないからね。
ちなみに私の成績は悪い。
頭が悪いわけじゃない。原作で綾瀬夕映はバカレンジャー入りしていたから、あえてテストの答えを間違えているのだ。
指導方法は特異なものではなかったが、ネギ先生が生徒の顔と名前をまだ覚えていないと言うことが、名前の呼び間違えで判明した。
雪広あやかの名前を雪平、雪城と二回も呼び間違えて、生徒達に自分の名前を覚えているのかと、詰め寄られたのだ。
そんなことがあったためか、放課後、私とのどかと早乙女ハルナは、木乃香さんと桜咲さんにある提案を受けていた。いつもの図書館探検部メンバーの四人+1である。桜咲さんって原作と違って木乃香さんと距離が近いのに、なんで図書館探検部に入って護衛しないんだろうね。
「クラスの写真入り名簿を作るですか」
写真入り名簿。それはネギま第一話を象徴する見開きページである。
クラスメイト全員の顔写真と名前と所属部活が載せられており、さらには高畑先生のメモが書き加えられているもの。
その見開きページのインパクトは、これら生徒一人一人に細かい設定がされているのだなと感じ取らせ、これからの学園ラブコメに期待を持たせる結果となっている。
その名簿を木乃香さんは作ろうというのだ。ネギま第一話が終わった今日になってだ。
「出席簿にすでに名簿はないです?」
「ネギくんから借りてきた出席簿があるんやけどー」
黒い板が表紙になったおなじみの出席簿をどこからと出してくる木乃香さん。そう、それそれ。
「生徒の名前しか載って無くて写真はないようやねー」
ええ、どういうこと。
英語教師の高畑先生から引き継いだそれを開いて、「げっ……い、いっぱい……」と写真名簿を眺めるシーンが昨日実は繰り広げられていなかったというのか。
うーん、何かしらのバタフライエフェクト(またこれか)で、第一話以前に高畑先生が名簿を作らなかったのか。確認するわけにもいかないから、真相は闇の中だ。
「ど、どうやって作るの?」
そうのどかが聞いてくる。
クラス全員の写真か。
「一人ひとりまわって写真撮らせて貰う? 私が似顔絵描いても良いけどー」
そうペンを握りながら言うのはハルナだ。
「それどっちもすごい時間かかりそうやなー。できれば明日には用意してあげたいんやけど」
ふむ。写真名簿。あれと同じものを作るとなると、全員正面の制服姿の写真を用意する必要がある。普通に写真を撮ってまわったのでは、ポーズを取ったりであれのようなものができあがるとは思えない。どうせなら、原作に似せて作りたい。となると。
「生徒手帳の写真を使うですよ。みんなから手帳を借りてスキャナで取り込んで、パソコンで編集してプリントアウトするです」
「おっ、いいねぇ。それなら寮でやれば今日中に終わりそうね!」
「そうだね……」
「じゃあ、寮に帰ったらウチの部屋集合なー」
そういうわけで名簿を作ることになった。
◆
「夕映、夕映」
ゆさりゆさり。
「んあー」
むにゃむにゃ、あれ、寝てた?
「夕映! 木乃香は?」
「みんなの飲み物買いに行ったデス……」
んー、と、ああそうだ、写真入り名簿が完成して、そしてみんなでジュースでも飲もうと木乃香を見送って、そしてそのまま寝入ってしまったのだ。
部屋を見渡すと、のどかもハルナも桜咲さんも制服姿のまま眠っている。
そしてアスナさんとネギ先生が部屋にやってきていて(木乃香さんが言うには、原作通り二人とも木乃香さんの部屋に住んでいるようだ)完成した写真入り名簿を眺めている。
「こ……これで名前はバッチリです!」
感動したように名簿を持つネギ先生の手がふるえている。
「良かったです。作ったかいがあったです」
「みなさん……僕……あせらずにひとつひとつ前に進んでいきますね!」
「まずは名前を覚えて、それから少しずつ交流を深めるです」
「ありがとうございます」
よかったよかった。
しかし木乃香さん戻ってくるの遅いな。
と、そんなことを思っていると、突然。
「きゃああああ!」
女の悲鳴が寮の外から聞こえてきた。
「この声は……!?」
これは……!
「木乃香さんの声デス!」
「木乃香!? まさかヴァンパイアに!?」
吸血鬼! まさか夜出歩いたせいで、エヴァンジェリンさんの吸血の餌食になったの!?
私とアスナさんとネギ先生の三人は、寮の部屋から飛び出し、廊下をひた走る。
「購買に行ったですからおそらく外です!」
「二人はここで待っていてください! 僕が木乃香さんを迎えに行きます!」
そう言ってネギ先生は、十歳の少年には出せないような速度で、寮の入口まで走り去っていった。
速い! これが魔法の力か!
「……行ってしまったです」
「ど、どうしよう」
「どうしましょうか」
所在なげに寮の廊下で立ち尽くす私とアスナさん。とりあえず……。
「見にいくだけ見にいくです?」
「そ、そうよね。子供一人に木乃香を任せるなんてどうかしてたわ!」
見にいくことを選択してしまった。
原作に描かれていない空白の期間、私が何をするべきか指標が何もない。アドリブでこなしていかなければならないのだが、今のはしくじったかもしれない。もしこんな時期にエヴァンジェリンさんと会ってしまったら。
寮の入口に向けて走り出すアスナさんを追って、わずかな後悔を胸に抱きながら私も駆ける。
そして寮の扉を開け、外に飛び出したところ。
「ネギ!? 何あれ! 飛んでるの?」
杖に乗って空を飛ぶネギ先生が視界の上方に映った。
「あいついったい何者!?」
謎の飛行少年に、アスナさんは混乱するばかりだ。
もしかしてあれか? 原作第一話のアスナさんへの魔法バレが昨日起こってなかったのか?
原作からずれまくってるじゃないか!
「夕映! 今の見た!?」
「え、ええ、ネギ先生飛んでいたですね」
ずれている。致命的かどうかはわからないけどずれている。
どうすべきか。こういうときは……前例にならえ。
「それより追わないデス?」
見にいくだけ見にいこう。一体何が起きているのか、見届けるために。
「そうね! 行きましょう!」
「はい!」
視界の端に木乃香さんを抱え、四人の生徒達に身体を捕らえられいる高畑先生が映ったが、優先するべきはネギ先生と決め、夜の道を駆け出す私達だった。デスメガネなら木乃香さんを任せても安心できる。
◆
「居た! あそこ!」
ネギ先生がいたのは、湖のある公園。そこでは、メイド服を着た緑髪の女性(茶々丸さんだ!)にネギ先生が捕らえられ、金髪の大人の女性に今にも噛みつかれようとしていた。全て空の上での出来事だ。
「こんのー!」
そのネギ先生のピンチをアスナさんも見て取ったのか、とっさに靴を脱いで金髪の女性に向けて投げつけた。
命中。
さらにもう片方の靴を脱ぎ、投げる。
命中。
こちらを振り向いたところ見事顔に直撃だ
「か、顔はやめんかーっ!」
それでは収まらないアスナさん。なんと湖の岸辺にとめられていたスワンボートを両手で持ち上げだした。どんな筋力してるのこのアスナ姫は!?
「うちの同居人に何すんのよー!」
「よせ! そんなもの普通の人間が放り投げるなーっ!」
そう金髪の女性が叫ぶが止まることなく、勢いよくスワンボートが射出され、轟音と共に見事命中した。
「あれ重さ何百キロあったですかね……」
ネギま特有のギャグ漫画時空なのか、黄昏の姫御子としての咸卦法の力なのか、私には判別がつかない……!
「な……なんて馬鹿力……!」
スワンボートの直撃を受けた金髪の女性は一瞬煙に包まれ、そして女性の姿は消え、代わりに金髪の十歳ほどの女の子が姿を現わした。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの真の姿である。
その変化を見て、アスナさんが驚いた顔をする。
「どこのナイスバディな吸血鬼かと思ったらエヴァンジェリンだったの?」
「実際の姿だと凄みに欠けるからだそうです」
茶々丸さんの拘束から抜け出したネギ先生が、こちらへと逃げてきていた。
「ネギ先生、無事でよかったです」
「そうよネギ、怪我はない?」
「は、はい。ありがとうございます」
血を吸われることはなかったようで、ぴんぴんしていた。まあエヴァンジェリンさんなら血を吸っても死ぬまではやらないだろうから無事だっただろうけど。
あ、でも登校地獄の呪いを解くためなら、必要な犠牲として死ぬまで吸う可能性もあり得るかもしれない。彼女の悪度は正直どこまでなのか判断が難しい。
「で、質問なんだけどさ」
唐突にアスナさんがネギ先生に何かを問いかける。
「あんたって魔法使いなの?」
ええ、それこのタイミングで聞いちゃいます? まずは吸血鬼をどうにかするんじゃないの。
「し、しまった! どうしようばれちゃったばれちゃったよ!」
アスナさんの質問に、うわああああと叫びながら頭を抱えるネギ先生
「やっぱりね」
「僕魔法使いだってばれたら罰として動物にされちゃうんですよー」
何気に怖いよねオコジョ刑。
「こうなったら仕方ありません。アスナさんの記憶、消させていただきます!」
ぎゃー! 恐怖の記憶消去魔法ー! 私も対象に入ってるのこれ!?
もしかしたら私の存在気づかれてない? 逃げるなら今のうちなのか!
「それよりネギ、あっちあっち、エヴァちゃん気にしたら?」
おお、アスナさん見事な誘導だ。
意識を向けられたエヴァンジェリンさんは、スワンボートをぶつけたアスナさんも血を吸い尽くしてやると宣言し、魔法の詠唱を開始した。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック」
うおおお!? 生攻撃魔法が見られるのか!? 憧れに憧れた魔法使いの魔法がとうとう私の目に!
「来たれ氷精 大気に満ちよ 白夜の国の 凍土と氷河を」
うおー、この詠唱はあのこおる大地!
……えっ、こおる大地!?
「
目の前が真っ白になった。
◆
麻帆良学園都市には電力を用いた大結界が張られているはずで、高位の妖魔を封じる効果がある。原作の麻帆良祭編で判明した詳細設定だ。
それのせいでエヴァンジェリンさんは、全盛期の力を麻帆良の地で発揮することはできないはずである。その本気の力の発揮には、結界が止まる大停電の日を待つ必要があった。原作三巻、中学三年生の春の出来事になるはずだった。
だが、実際には、エヴァンジェリンさんは満月の夜に、乙女の血を吸うことで、あれほどの魔法を使うだけの力を取り戻すことができるらしい。
魔法で氷漬けになった私が魔法先生達の手で助け出されてから、高畑先生にそう教えて貰った。
エヴァンジェリンさんはアスナさんのことは目に入っていたが、私の事は眼中に無かったようで、思わず魔法を直撃させてしまったらしい。茶々丸さんから謝られた。いや、本人が謝るんじゃないのか。気軽に謝るエヴァンジェリンさんなんて見たくないけど。
そも氷漬けになっても生きて生還できたのは、そういうふうにエヴァンジェリンさんが手加減していたらしいから、そこらへん色々さすがだ。
ちなみに私が氷漬けになったあとは、ネギ先生とアスナさんは
まだ先生就任二日目だっていうのに、もう契約妖精のカモ君がいるんだなぁ。
原作どこに行ってしまったの。
そして、その後も原作とはズレの生じた出来事が続く。
麻帆良祭前じゃないというのに、相坂さよさんがクラスメイト達に存在を認知されたり(ひとりぼっちは可哀想なので良いことだ)。
何故かアーニャさん(ネギ先生の幼馴染みで魔法学校時代の同期)が、三年になった新年度に転校生としてやってきたり。
京都に修学旅行に行っていないのに、犬上小太郎(ネギ先生のライバル)が麻帆良までやってきたり。
フェイト・フィディウス・アーウェルンクスと名乗るオスティア国の王子が、アスナさんに求婚しに来たり(ツッコミ所が多すぎてもう何が何だか)。
原作どこに行ってしまったの?
まあでも、原作沿いにこだわる必要はない。なぜならば。
「プラクテ・ビギ・ナル
「わー、夕映すごーい!」
私の披露した魔法に、のどかが拍手してくれる。
そう、私は魔法使いになれたのだ。エヴァンジェリンさんの魔法から救助された私は、魔法先生達に記憶消去の処置を受けそうになった。だがしかし、必死で魔法使いにならせて下さい、と頼み込むことで消去をまぬがれ、新たな魔法生徒となることができた。
今ではこうやってエヴァンジェリンさんの別荘にやってきて、ネギ先生に魔法の監修をしてもらったりする立場なわけだ。
うふふふ、魔法使いって素晴らしい。
「後でネギ先生にも見て貰うです」
「そうだねー……」
ネギ先生の名前を出すと、わずかに表情が曇るのどか。
「のどか、まだ吹っ切れてないですか……」
「えっ、な、なんのことかなー……」
原作との差異がまだ一つある。それは、のどかが振られたことだ。
いや、振られたと言っても告白してごめんなさいされたわけじゃない。のどかが告白して返事が保留になって、その後ネギ先生が別の人に告白を行ったのだ。
ネギ先生が告白。そう聞いて思い浮かべるのは、UQ HOLDER!で描かれたある一幕。ネギ先生が長谷川千雨に告白するシーンだ。
だが、現実は違った。オスティア国の王子(フェイトって名前だけど見た目青年)がやってきた事件の末に、ネギ先生が告白したのは、長谷川千雨ではなく、神楽坂アスナだったのだ。
なぜこうなったのか。ネギ先生が好きなのは長谷川さんじゃない理由は分かる。
原作で先生と長谷川さんが仲を深めるのは夏休みの魔法界編だが、現在はまだ一学期で麻帆良祭すら始まっていない。だから、先生と長谷川さんの間には恋愛感情どころか接点すら存在しないのだ。
ちなみにアスナさんは黄昏の姫御子なんてたいそうな前歴なんて持ってなかった。オスティア国の普通のお姫さまで、オスティア国で戦争起きたから、記憶を消して魔法世界から人間界に避難しにきただけなんだって。
その紅き翼の高畑先生も、魔法が使えない特殊体質なんかじゃなくて、普通の魔法も使えるんだよなぁ……。
どうやら原作と違う世界線に迷い込んじゃったみたいです。実は見たことの無いドラマ版の世界だったりするのかな。
まあでもいいよね。こうして魔法使いになれたんだから、原作と違ったって。目的さえ果たせたんだから、世界の謎なんて気にすることないよね。
本作品は、魔法先生ネギま!の二次創作に見せかけたネギま!?neoの二次創作です。
原作と物語の流れが違うという状況を読者の人にも味わっていただきたくて、あえて原作:ネギま!?neoとしていません。
※ネギま!?neoはコミックボンボンおよびマガジンSPECIALにて連載されていた魔法先生ネギま!の外伝作品です。
※妖魔を封じる麻帆良の結界ですが、小太郎曰くネギま!?neo世界でも麻帆良には結界があり、技が制限されてしまったりするそうです。(neo4巻参照)