旧・東方神零録   作:異山 糸師

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森の中~、ムラサキに~、出会った~

ムラサキさんに見られて一時間。

 

けどま、気にしない。このまま素通りさせてもらう。噂で都に絶世の美女が居るらしいから見に行きますか。

 

「そこの貴方」

 

どうせ輝夜だろうなぁ…。てことは、永琳が月から来るんじゃ?

 

「ちょっと?ねえ?」

 

服の下にマガジンでも隠しておこう。身の危険を感じた。……まさか、未来予知!?

 

「ちょっと!?待って下さらないかしら!?」

 

ああもう、五月蝿いな。せっかく無視していたのに。

 

目の前に目玉だらけのスキマからずるりと出てきたのはやっぱり紫。うっわ、胡散臭い。あ、紫で思い出したけど、髪を紫色に染めるおばさんは気持ち悪いと思うのは俺だけか?キャラなんかの髪の色は素敵なのに。

え?どうでもいい?まあそうだけどさ…赤に染める若者はいいけどおばさんはやっぱり嫌じゃん?それが言いたかっただけ。心底どうでもいいけどな。

 

ゆかりん忘れてた。

 

「ワォ、アンビリバボー」

 

驚いた振りして通り過ぎ……

 

「逃がしませんわッ!!」

 

れなかった。右腕をダイビングキャッチされた。

 

「……なんなんだよ?いい加減にしないとぶち込むぞ?」

 

「なにを?」

 

「お前をブタ箱に」

 

「まさかの牢屋!?……慈悲は?」

 

ふむ…………

 

「ほら、チロ○チョコをやろう」

 

そう言ってどこからともなく、例の小さくて美味しいチョコを掌にチョコンと乗せてあげた。

 

「いらないわよっ!」

 

お前、チョコ馬鹿にすんなよ!この時代にはまだない貴重な一品だぞ!

 

「って、懐に仕舞った!やっぱり欲しいんじゃん」

 

「う、うるさいわね……いいじゃないの」

 

別にいいけど。なんか案外扱いやすそうだ。

 

『零さんなら誰でもこんな感じに出来るじゃないですか』

 

違いない。

 

「ふぅ…じゃあ自己紹介を。私は八雲紫、スキマ妖怪よ」

 

「なんだ?脳みそスキマだらけとかか?」

 

「酷くないかしらッ!?」

 

「まあまあ…じゃあ紫よ、さらばだ」

 

「ええ……って!貴方は名乗らないの!?」

 

「この時代の都は臭いというし、都から離れたところで暮らそう」

 

「聞いちゃいない!?」

 

用事があるときだけ都に入り、輝夜に会うなりしましょうかねぇ。サキ達は来るかな?神様にしてくれてありがとう(怒)。とても便利だよ(激)。って言いたい。

 

「いい加減にしなさい!!」

 

……面倒だ。

 

「要件を三行で説明しろ」

 

「え!?えっと……、たまたま貴方を見つけた。

          神社で神様と居るくらいなら強いはず。

          式にしようと思った。……かしら?」

 

ちっ……こいつ分かってない。普通何かしら要らないことを言う事で四行にする、とかがお約束だろうが。ニャル子さんシリーズ読んでから出直して来い。

 

「不合格」

 

「え……?」

 

何を言われたのかわからないって顔をしている。大体理由もくだらなかったし。俺自身に美人な式いるし、紫如きじゃあ俺を式になんて絶対に出来ない。

 

『そんな…美人なんて……照れるじゃない///』

 

『む~~……』

 

事実だし。

 

「だから、不合格。大体お前如きじゃ俺を式に何て出来やしないさ。出直して来い」

 

「……貴方、誰にものを言っているのか分かっているのかしら?」

 

瞬間、紫がかなりの量の妖力を噴出させた。周りが若干重くなり、妖怪が逃げ出し、鳥が飛び立つ。確かに妖怪としてならこれほどの妖力量なら黙らせられるだろう。

だが、相手が悪い。

 

「分かっているさ。そこまでボケてないぜ?もう一回言おう…出直して来な?お嬢ちゃん?」

 

「………死ね」

 

さらに妖力量が上がり、大量の弾幕が作り出される。それを俺に向けて撃ってくる。

……これぐらいなら避けなくてもいいか。敢えて当たってあげて勝利を勝ち取った風に見せてあげようじゃないか。

俺は大人だから。やっさしー。

 

妖力弾が俺に当たり、爆発と同時に煙で辺りが包まれる。そんな中、紫の声だけが静まり返ったこの場に響いた。

 

「ふん……この程度のようね。期待外れだわ」

 

「おっと…目で見ていないのにその発言は軽率だぞ?」

 

「……な!?」

 

ブンっと、軽く腕を振るい視野を確保する。それだけで暴風が吹き荒れたが。煙が晴れた場所には未だ、紫が信じられないものを見たかのような顔で突っ立っていた。

 

「貴方……なんで生きて……」

 

「足りない」

 

「え…………?」

 

「だから、妖力も威力も全然足りない。だから避けなくても傷一つ付けられないんだ。せめて――――これ位出してくれないとなぁ」

 

そう言って俺は霊力を放出させた。

 

「な……あ……え……?」

 

紫の妖力は一瞬で俺の霊力に塗りつぶされ、あまりの量に俺を中心に土が吹き飛びクレーターを作り上げる。木々は吹き飛び、大気が掻き乱されて荒れ狂う。

 

俺はゆっくり紫に近づいた。さすがだ…気絶はしていない。だが恐怖による、滝のような汗と体の異常な震えはどうにもならなかったらしい。

 

「…ぁ……あぁ………ひぃ……」

 

涙目で濡れた紫可愛いかも。

 

『何言ってるんですか……』

 

いや、ねぇ?こんなの滅多に見られないぞ?

 

すぐさま腕輪からカメラを取り出して激写しておいた。そしてしまう。レアものだぜ。

 

ついでに、世の中にはまだまだ強者が居るという事を教えてあげようじゃないか。

 

人差し指で紫の顎をクイッと持ち上げて、目を合わせる。

 

「さて、実力の差が分かったろう?お嬢ちゃん。まあ安心しろ、チャンスをやろう。これを機に態度を改めなおす、って言うなら、此方も相応に接することくらい吝かじゃないぜ?」

 

目をじっくり見てから離し、霊力も抑える。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

息するのもやっとか。ていうか都と離れていてよかった。

 

ふと、荒い息遣いが聞こえなくなったので振り返ってみると既に紫は居なかった。

 

「ふむ……逃げたか」

 

『当り前よ!!あんなに出されたら怖いに決まってるじゃない!!』

 

『そうですかね?』

 

『……あんたも大分、御主人様に毒されてるわね』

 

『嬉しいことです』

 

アマテラスも俺にすっかり似てきたよな。

 

『でも、また御主人様の事が知れたのは嬉しいわね』

 

お前も何て言うか……良い女だよな~。

 

『…………///』

 

『零さん……』

 

おっと、アマテラスがむくれてるからそろそろ出発しますか。

 

そうだ、ルーミアは出てきてもいいぞ。アマテラスはすまんが、もしかすると紫が覗き見してくるかもしれないから今まで通りで。

 

『はい。慣れてますからいいですよ』

 

『じゃあ、私は出るわね』

 

俺が歩みを進めると、出てきたルーミアが腕を絡めてくる。

 

「久しぶりに触れられるわ。やっぱり良いものね」

 

「そうか?よくわからんが」

 

俺とルーミアはこうしてのんびりと山を越えて都へ向かった。

 

 




最近睡眠している間の時間が勿体無いと思ってきたとです。

でも滅茶苦茶眠いぜ☆

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