これが、数多くある内の一つの思い出だ。毎日こんな馬鹿なことばっかりしていたからな。そのせいで月はいい所になったらしいし、馬鹿も役に立つものだ。
「ふぅ……これが後に『ガンタム暴走事件~ゲンの貞操危ないよ~』と呼ばれるものだ」
ちなみにゲンは本当に掘られたらしい。翌日、泣いていた。
「アハハハ!永琳達ってそんなことしてたのね!私も仲間に入ってそんなことしたかったわ」
笑っている輝夜だが、まさか三馬鹿が偉くなっていて月人から人気なんてな。ゲンが結婚、シュウが愛人、サキが独り身。知らなかった…ゲンって結婚したのか。シュウは…まあ、アレじゃね?うん。
唯一独り身のサキがこれまた美人で明るい性格のため、言い寄ってくる奴が後を絶たないらしい。永琳は俺がいるって周知の事実だからなんともないって。
『楽しそうな生活送ってたんですね』
『しかももう一人女が居たなんてね……』
あ、そう言えば中の二人も聞いていたんだったな。
「確かに私が居た頃も四人は馬鹿ばっかりやってたわね。ゲンがいつも弄られてるのよ。もう可笑しくって」
「あいつは弄ってナンボだからな」
別に怒らないし、あいつ自身楽しんでいる節がある。Mじゃなと願いたい…いや、思いたい。
最後の酒を飲み干して立ち上がる。そろそろ時間だ。
「さて、そろそろ帰るか。どうだった?」
「ええ、最高だったわ。また来てね」
「ああ。じゃあな」
空間の距離を消して一瞬で家に着く。今日はよく話した。話の中の主人公たちにはもう時期直ぐに会える。どんな感じに変わったか、俺が居ない間にあったことは何か…早く逢いたいものだ。
俺が能力でも使えば今直ぐにでも逢える。だが、それは面白くないし、味気ないだろう?年を経て、歳を得た果ての再会というモノも中々どうして甘美なものじゃないか。
だから、今は大人しく寝ていよう……おやすみ~。
◇◇◇
あの初めて話した時からしばらく経った。その間、色んな事を輝夜に話した。一夜に一話みたいにな。
今日は永琳が月からやってくる夜。俺の予想だとあの三人も来るだろう。それも行ってみれば分かる話。輝夜に言われた時間はとっくに過ぎている。幽香と紫と過ごしていたら過ぎてた。
ま、しょうがないよね?過ぎてるものはしょーがないって。
「さて、行きますかね」
『はい。一体どんな人達なんでしょう?私、気になります』
『そうね。御主人様の大切な人なのでしょう?』
まあそうだな。ていうかアマテラス、そのセリフはやめとけって。
いつも通りの昔からの真っ黒装備で、いつも通り自由気ままに、気楽に行く。いつも通りの行き方で輝夜のもとに行けば、ほら、そこにはシュウがガチでムチな方といちゃいちゃ…ちゃ……ンン?
「……失礼しました。どうぞ、続きを続けてください」
空間を閉めて、ひと息つく。
「ふぅ……二人共、俺は…おかしくなったのか?」
『いえ、私にも見えましたよ……男の方が二人でいちゃ……』
『世の中には…色んな恋愛があるのね、御主人様……。私は御主人様を愛せて、幸せだわ……』
そうか、二人も見たか……ありがとう、ルーミア。俺もお前が好きだよ。だからもう一度逝ってみよう!
「さあ、行くぞ!シュウがアレなのは分かり切っているからな!」
『そうですね!行きましょう、零さん!』
『頑張るのよ、御主人様!気をしっかり!』
よし、行くぞ!なんで再会にこんな気合が必要かは知らないが、ゲイの道には行かない!
再び空間を繋ぎ、一歩踏み出す。
「たのもー!!道場破り…もといゲイカップル破りに来た!いざ尋常に…くたばれ!」
勢いに任せて回し蹴りをした……ゲンに。
「尋常じゃないし、何故俺…ゲフォァッ!!?」
勢い良く吹き飛び、庭先の池に突っ込んでいった。ゲンの傍らに居た女の子が呆然としている。世間一般から言ったら女性なんだろうけど、可愛い系で童顔だし、俺から見れば女の子でOK。
これがゲンのお嫁さんとやらだろう。いい子っぽいな。よかったよかった。
当たりを見渡すと、皆こちらを見てシーンとしている。あれ?どうした?取り敢えず、永琳と抱き合っていた輝夜を手招きでこっちに呼ぶ。
輝夜は永琳から離れて近づいてきた。
「なあ、皆どうしたんだ?」
「零があんな登場するからよ」
俺のせい?なんかあんだけ言ってた感動の再会とやらもおじゃんになったな。
「でもな、当たり構わずイチャイチャしてるとムカつかない?それと気持ち悪いし怖かった」
「いや、まあ、そうね……あの二人だものね……しょうがないわ」
「だろう?」
「でも、なんでゲンを蹴ったの?いや、理由は大体想像つくけど……」
「多分、想像通りでいいさ。間違ってない」
ゲンは弄ってこそゲンである。理不尽にも対応するのがゲンである。
それよりシュウだよ。
「シュウ……久し振りだな。すっかり大人になって……色々と……」
「零さん…お久しぶりです。やはり生きていらしたのですね、嬉しい限りです。頑張って崇め奉っただけありました」
「そうですねー」
「あ、紹介します!僕の彼氏の雅致武致 慶夢(がちむち げいむ)です」
「シュウに紹介された、慶夢だ。よろしくな!」
ニカッっと挨拶してきたムキムキの人間であろう何かはシュウを抱き寄せた。シュウは嬉しそうである……。気持ち悪くなってきた。
しかも慶夢…ゲイ夢だぞ!夢に出てくる~!アッーーーーーー!!!
「よ、よろしく……」
後ずさり、頬を引き攣らせる。全然感動しない…。オレハ、ナニモミテイナイ………
『零さん!しっかりしてください!』
『御主人様!しっかりして!目から光が消えてるわよ!』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!?」
し、死んでた?俺死んでたよね!?いくら最強でも怖いものはあるんだよ!
「……アマテラス、ルーミア……」
小さな声で呟く。
今夜は、一緒に………………
『はい!一緒に寝ましょう!』
『ええ!いつまでも付き合ってあげるから!』
俺の自称最強の精神はどうにかなりそうだった。これで大丈夫…なはず。
「輝夜はなんで平気なんだ?」
「慣れたのよ。そして意識をソコから外すの。私も、初めて見た時は吐いたわ」
「そうか…やってみるか」
そうして意図的に意識を外す。これなら何とかなりそうだ。さて、ようやく二人の所に行ける。ゲン?知らないね。
まぁ…否定はしませんよ、うん。
私は愛に性別は関係ないと思うデスヨ?