この名言を知ってまず最初に思ったことは、自分が碌でもないから運命は歪に歪んで決定されそうだな。でした。誰かレミリア連れてきてー!
朝起きてから、俺の知り合いなんかにお別れのあいさつをしてきた。勿論ルーミアもだ。紫は別に言わなくても俺を見ているだろうから大丈夫だし、幽香にも家に行っても居ないから会いたくなれば直接来てくれという旨を伝えておいた。
そして目指すは妖怪の山、少し遠いがまだ危険はなさそうだし、三人でのんびり歩いて行くことにした。左にルーミアで、右にアマテラス。アマテラスには動きやすいように改造した着物をプレゼントした。今までは足が見えないくらい長かったが、ミニスカくらいの長さに調節し、その芸術的なまでに美しい脚は白いニーソに包まれ、膝下まである黒の編み上げブーツを履いている。長い桜色の髪はポニテにして、本格的に動きやすそうにしていた。
「身に付けるものを変えるだけで劇的に変わるものなのね……」
「ああ、そうだな……俺もここまで化けるとは思わなかったぜ。マジで綺麗だ」
「あ、ありがとうございます……///」
顔を真赤にして、長い振り袖から手を出して腕を組んでくる。そのまま顔を俺の腕に押し付けて隠してしまった。
「いいわね……」
「ルーミアにもなんか作ってやるさ」
「本当!?」
「ああ、流石にいつもいつもその黒い服だけじゃ嫌だろう?」
ルーミアにもなにか考えてやらないとな。俺は万年一緒だけど、男は案外服装なんて気にしないだろ?だから何億と同じでも構わないんだよ。
妖怪に絡まれることなく数時間、休憩を挟みながら散歩気分で歩いて行く。以外にも紫が山に入ってから覗き見をしなくなった。なんでだ?ま、べつにどうでもいいが。そして感じるのは膨大な妖気が二つ…暮羽と鬼のものだろう。更に妖力が高まり、それがぶつかりそうになっている気配がする。感じていいるだけでも暮羽のほうが負けていて、これでは確実にやられてしまうのではないだろうか。
「ん~、なんかやばそうだな……助けてやろうかね」
「はい!そうしましょう!」
「そうね。行きましょうか」
それを聞いて三人で走り出す。勿論、二人が着いてこれる速さだが、その速さは優に超音速を超えている。俺達は規格外も裸足で逃げ出すほどの規格外だからな。
瞬時に到着し、暮羽が鬼子母神であろう鬼に潰されそうな所を見て、俺だけ加速して右手で受け止める。
ドパァンッ!と途轍もない音が響き渡り、衝撃で木々が揺れる。それらを無視して暮羽に話しかけた。
「暮羽、大丈夫か?」
「え…?零さん……ですか?」
「なんだ?それ以外に何に見えるんだよ」
取り敢えず掴んでいた拳の持ち主さんを投げ飛ばして、飛び込んできた暮羽をキャッチする。着物も肌もボロボロだし…うん、いい眺めです。
それより周りの奴らだよ、どうしたんだ?鬼も天狗も俺の後ろ見て。振り向いてみると、ルーミアとアマテラスが俺の後ろに居たんだが、どうやらアマテラスを全員が見ているらしい。ああ……いつものことですね、はい。どうせ見惚れてるんでしょうよ。
「なんか皆固まってしまったが、暮羽は無事か?」
「はい!零さんに助けてもらったので大丈夫です!それよりどうされたんですか?」
「ああ、なんか鬼が山に来るって言うのを噂で聞いてな、来てみたら丁度さっきの場面だったってことだ」
「そうですか……ありがとうございます。それにアマテラスさんですが…どうされたんですか?」
「動きやすい格好させたらああなった」
さて、話が進まないから皆を復活させよう。俺は一回だけ手をパン!と叩き、意識を此方に向けさせる。ビクッとした天狗と鬼どもは俺の方を見た。これでいいだろう。未だチラチラとアマテラスを見ている奴らがいるので、アマテラスと触れ合い俺の中に居させることにした。
「さてと…鬼の中で一番偉い奴は誰だ?」
「私だ」
俺がそう聞くと、手を小さく上げながら先ほど俺が投げた女の鬼が出てきた。多分だが、鬼子母神だろうな。桃色の髪を長く伸ばしたとても色っぽい美人さんだ。
コイツだけ保有している妖気の量が桁違いにあり、ルーミアに……遠く及ばないか。比べる相手がおかしかったな。
「ふ~ん…此処へは何をしに来た?」
「此処へは鬼が増えたから他の場所へ移動している最中に、丁度この山を見つけたから此処に住もうと来た」
ふむ…別に悪ささえしなければ、此処で済んでもいいんだが…鬼だからなぁ、面倒くさそうだ。そんなことを考えていたら鬼子母神に話しかけられた。
「大体、なぜ人間ごときがこの山にいて口を出してくる?関係ないだろう?消え去れ」
「関係なくないです!零さんはこの山の、天狗の頭であり、山は零さんの所有物です!ですよね!皆さん!」
「「「「「「「オォォォォォォォォッッ!!!」」」」」」」
………あれ?なんで俺が頭になっていて、なんで山が俺のものになってるんだ?そして何で天狗共はそれに賛同してんの?それでいいのか!?
いつの間にか天狗の中で不動の地位を築いていた件について、誰か助けてください。口々に「兄ちゃんは最強だもんな!」「兄貴!頑張ってください!」「ご主人様ー!抱いてー!」「頭ァ!やっちまってくだせぇ!」「久し振りに帰ってきたのですから、私達と一緒に遊びましょー!」などと言ってくる。ていうか誰だ、ご主人様なんて言ったやつ!ルーミア一人で十分だわ!
「…………らしいが?」
「そのようだな……人間、名前は?」
「天城零だ。零でいいぞ」
「そうか、私は鬼子母神の麗鬼。零の山に入ったことについては謝罪しよう。だが、この山を受け渡してもらおうか」
「却下…と言いたいが、無理だろう?なら簡単に俺らに勝ったらやるよ。負けたら俺の言いなりな」
「それでいいさ」
そう言ってニヤリを笑ってくるが、その前にやることがある。後ろの鬼どもにも力の差を分からせてやろうじゃないか、やるなら徹底的に反抗できない程にな。
そのことを本音を端折りながら麗鬼に言ってみると、了承したのでルーミアに任せて他の所で戦ってもらう。
「ルーミア、殺さずに、徹底的に、反抗できないほどに……傷めつけてやれ。遠慮はいらん、潰せ」
「御意に……」
頷いてから鬼を引き連れ、どこかへ行ったが、麗鬼の後ろには二人だけ残っていた。ん?あれは…伊吹萃香と星熊勇儀じゃないか?向こうに行かなかったのか。
「いいのかい?あの子一人に任せて」
「構わんよ、あの程度の妖怪なら瞬殺だ。それより、後ろの二人は何だ?」
「ああ、この子たちはアンタと戦いたいらしいねぇ。三人になるが、構わないか?」
「お前ら程度なら何人居ようが変わらないからな、別にいいさ」
「舐めやがって……後悔しても知らないからな。萃香」
「はいよ」
まず初めに出てきたのは萃香か…どうやら一人ずつするらしいな。まとめてかかってきてもいいんだが、向こうがそれでいいならいいか。暮羽を後ろに下がらせ、俺は一歩だけ前に出た。萃香だが、能力が面倒くさいので瞬殺しようかと思ってる。霧みたいなのになられたら面倒くさいじゃん?
「随分と舐められたもんだね、人間のくせに言うじゃないか」
「それは悪かったな、おチビちゃん。一瞬で終わらせてやろう」
「……殺す。鬼の四天王が一人、伊吹萃香…死ね!人間!」
「お前が俺を人間だと思い込んでる時点で、お前の負けは決まってるぜ?」
地面を強く踏み込み、俺に向かってきた萃香の一撃を躱して片方の角を右手で掴む。左手は指輪してるからな、これからは右手と脚しか使わないことにした。捕まえた萃香を突っ込んできた勢いを利用して、遠心力と俺の筋力も合わせて左上方に振り回し、そのまま俺ごと一回転して地面に叩き付けた。
途轍もない轟音と山を震わせる程の衝撃、土を大量に消し飛ばして隕石が衝突したかのようなクレーターを作り上げた。深さは五メートル程で大きさは十メートルくらいかな?死なないように萃香には、叩きつける瞬間に霊力で薄い膜を張ってやったが、意味あったかな?
クレーターの中心には俺と、身体を半分以上土に沈めて白目で気絶している萃香がいる。心音を聞くからに死んでいないようだ。
「れ、零さ~ん…死んでませんよね~?」
「ああ、生きてるよ。よいしょっと……」
再び角を掴んで引っ張りだすと、片方の角が折れていた。まあ、あれだけの衝撃なんだ…折れても仕方ないよな?
引きずりながらクレーターを登ると、麗鬼も勇儀も目を見開いて固まっていた。ただ、天狗だけは驚かずに、そうなるよね~、みたいな感じで頷きながら見ていた。俺のことをよくわかっているようで。
「はい、鬼一人目討ち取ったり~」
近くにあった木に角を深くぶっ刺し、ブランブランと吊るす。一応折れた角も掘り出してきたが…くっつけとくか。収納の腕輪から瞬間接着剤を取り出してむにゅ~っと、折れた場所に付ける。ピトッとくっつければ、あら不思議!折れたって全く分からない!欲しい方は是非月までお越しくださいな。ついでにカシャッと一枚記念写真。
うむ、と満足してクレーターを消し、再び今度は勇儀の前に戻ってくる。勇儀は純粋に殴り合いでいいか。
『零さん、下手すると山が噴火してしまうので地面に衝撃はもう少し……』
あぁ~…なるほど、アマテラスの言う通りかもな。次はもう少し手加減して今度は空中にしよう。
前書きの続きですが、みなさんはポジティブに生きてくださいね!
私(作者)との約束だぞ☆