旧・東方神零録   作:異山 糸師

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なんか凄く久しぶりですね。正直、書こう書こう思ってましたが、忘れてました(・ω<)テヘペロ


再び旅へ

 鬼がこの山に住み始めてからはや数年経った。特に何もなかったんだが、強いて言うなれば妹紅を拾ったくらいかな?なんか力の使い方に手を焼いてるようだったから、教えてやることにしたんだ。

 

 あ、言っておくが少し気になったからわざわざ俺から妹紅の所まで行ってやったんだからな。

 妖怪に返り討ちにあっていた所を拾ったってわけ。

 

 まあ、その話は置いておいてだな、今は暮羽の部屋に向かっている。そろそろ旅を再開しようと思ってな。妹紅と三日月でも連れ回してやろうかなぁ、と思って。

 

「ということで、邪魔するぞ~」

「何がということなんですか?零さん。それで、どうなされました?」

「おお、零か。どうしたんだ?」

 

 なんだ、麗鬼も居たのか。仕事をしている暮羽の前で酒を飲んでいた。邪魔してやんなよ、暮羽は真面目なんだから…多分。

 

 それを一瞥しながら暮羽の隣まで歩いていき、座り込んだ。麗鬼に言っておいてなんだが俺も酒飲むぞ。伊吹瓢から星熊盃に酒を注ぎ、飲み干す。あれから喉が乾いたらこの組み合わせで酒を飲むことが多くなり、今では水のように何時でもどこでも飲んでいる。

 

 もう一回注ぎ直してから暮羽に話しかけた。

 

「なぁ暮羽」

「はい?」

「いや、そろそろ旅にでようと思ってな。また此処を任せていいか?」

「もうそんな時期ですか……寂しくなりますね。ええ、分かりました、任せて下さい」

「頼むな。じゃ、またな」

 

 最後に抱きしめながら頭を撫でてやり、部屋を出る。なんかもう娘みたいに思えてきた。俺父親?

 

 ルーミアとアマテラスと三日月と妹紅は俺の部屋にいるので、そこに向かう途中で麗鬼が背後から来る気配を感じ取る。お前暮羽の所で呑気に酒のんでなかったっけ?

 不思議に思い振り返った瞬間、麗鬼に捕獲されて何処かに拉致られた。何?なんなの?

 

 それからどこかの部屋にドナドナされた。連れ去られた仔牛はこう言ってたぞ、「仔牛です。特技は~、食材です!な~んちゃって、モ~」。なんてユーモア溢れる仔牛なんだ。自虐ネタは受けるとわかっていっているな?

 麗鬼に拉致られるそんな仔牛を、俺は後ろからついていきながら見ていた。

 

「モ~(ていうか、なんで自分ここに居るんでしょうかね?)」

「さあ、神隠しされた結果がこれじゃないか?」

「モ~…(さぼってたのがバレちゃったのかな…)」

 

 喰われても文句言えないことしてんなよ。最近の牛ってサボるの?私、気になります!

 

 それから部屋の中に連れ込まれて、俺も中に入ると萃香と勇儀が酒を飲んでいた。そんな二人が麗鬼に連れて来られた仔牛を見て驚き、酒を吹き出した。まぁ、普通はそうだよな。ていうか、何で抱き心地と匂いで気づかんのかね?

 

「……母様、なんで仔牛つれてるのさ……」

「さすがに、予想外というかなんというか……」

「仔牛?………ヘァッ!?」

 

 二人の言うことに疑問を持ったのか、手元を見てみると仔牛が鳴いた…もとい、泣いた。哀れだな。というかその驚き方……いや、なんでもない。

 驚いて手放した麗鬼は海老のように飛び退った。

 

「なっ!?零は……って、何故だ!?」

「質量のある残像」

 

 ニヤリとしながら言い放つ。仔牛をどこから持ってきたのか?知らんな。勝手に持ってきても大丈夫なのか?ふっ……

 

「大丈夫だ、問題ない」

「いや、問題しか無いよね?」

「萃香、それは質量のある残像だ」

「意味が分からないよ……」

 

 安心しろ、俺もだから。

 

「それより麗鬼、何で俺を連れ去ろうと……いや、仔牛を連れ去ろうとした?」

「牛なんて連れ去る気は全くなかったんだがねぇ……」

「だろうな」

 

 どこか納得行かないような顔で此方を見てくる麗鬼。変わり身の術って知ってるか?牛バージョンだが。

 聞いてみたところ、どうせ旅をしたら長い間会えなくなるのだから最後に一緒に酒でも飲もうと思って連れ去ろうとしたらしい。そんなことしなくても飲むのに。

 

 酒を飲むのにはつまみが必要…なので俺は無情にも仔牛を捌いて焼いて食べることにした。ちなみに美味かったぜ。

 

「もう行くのかい?」

「まぁな。他の奴らも待たせてるし、じゃあな」

「ああ、零。私は何時までもこの山で帰りを待ってるからな。気をつけて行ってこい」

「はいはい」

 

 最後にキスを軽くされ、背を向けて飲み始めた。あとは萃香と勇儀だが、萃香酔いすぎじゃね?

 

「ヒック……零ほど強くていい男は居ないからね~…私も待ってるよ…ほれ」

 

 酒を飲んだかと思った萃香だが、それは違ったらしい。口に含んで口移しするだけだった。麗鬼の真似か?酒はなかったが。

 

「ゴクッ…ふぅ、幼女にされても嬉しくねー」

「む…また幼女って言ったな~!」

「うるせえ……もういいっつーの、じゃあな」

 

 抱え上げて麗鬼の所にボッシュート。萃香を麗鬼のもとにシュート!超エキサイティン!!

 ザマミロwww。麗鬼の酒こぼして怒られてやんの。さて、そろそろ行きますか。次は何処に行こうかな?

 

「ちょっと待ちなよ!?」

「あん?……あぁ、勇儀かどうした?決闘と書いてデュエルと読む勝負ならしないぞ?」

「私もしないが!?じゃなくて、なんで私だけ無視して行こうとするんだい」

「サーセンwww」

「馬鹿にしてないかい……?」

「してないが?」

 

 不満顔で言う勇儀にサラリと嘘をつく。鬼に嘘つけるのなんて俺だけじゃね?どうせバレないし、どんだけ言ってもいいのさ。麗鬼なんて嘘つかれまくってるのに何年も気づいてないぞ。素直って言えば素直なんだが……それでいいのか。

 

 それで勇儀だが、どうやら麗鬼と萃香の真似をしようとして口に酒を含んだはいいが、顔を赤くしたままオドオドしている。恥ずかしいならすんなよ、仕方ないな……

 

「ほれ」

「ン!?……コクン…あ、」

 

 頭を叩いて無理やり飲み込ませてやった。飲んだことに気づいて小さく声を上げたが、普通はそれでいいんだぞ?なんで飲んじゃった、みたいな顔をする?

 

「あのなぁ…別に麗鬼や酔っぱらいの萃香なら心苦しくないが、勇儀はまともなんだからそういうのは好きな人ができた時にしなさい」

「………馬鹿」

 

 俺にしてはまともなこと言ったと思ったんだけど、なんか言ったら勇儀が不貞腐れて麗鬼達と飲み始めた。なんで麗鬼と萃香は勇儀を慰めてるんだ?

 まあいいや、行きますかね。

 

 部屋を出て自室に向かって四人を回収する。それから天狗の里…もとい、妖怪の山を出たんだが、行く宛もないのでふらふら彷徨ってるだけだ。アマテラスは俺の中にいるのが慣れてしまったため、入っているらしい。ルーミアは俺の隣でくっついて歩いていて、三日月は猫状態で頭に乗って寝ている。

 

 妹紅も隣にいるぞ。結局、妹紅は不老不死になって彷徨っているところを拾ってやったことになっている。まぁ、俺の言うことはちゃんと聞くし、まだ言葉使いが荒れていないので敬語だし、いいんじゃない?

 

「ということで、妹紅よ、どこに行きたい?」

「何がということなんですか……それにこの服装は何ですか?」

「ん?気に入らない?」

「いえ、零さんがくれた服なのでそんなことはないですが……」

 

 そういいながら、妹紅は自分の着ている服の裾を掴んで改めて見ている。俺があげた服装は所謂アレだ、黒のパンツスーツだ。だってさ、似合ってない?想像してみ?妹紅のスーツ姿……更にはタバコでも吸わせたらイケメンじゃん。

 

 いや、今の妹紅は普通に可愛いけど。勿論、タバコなんて吸わせない。それにだな、伸縮性抜群で耐熱防刃なんかで破れない燃えない強さ。性能も抜群なんだ。

 

「似合ってるぞ?」

「そ、そうですか…?えへへ……///」

 

 俺がそう言うと、少し嬉しそうに頬を染めながら俺のコートの袖を掴んできた。

 

 …………何この可愛い生き物。お持ち帰りしていい?

 

『確かに可愛らしいですが、持ち帰りも何も連れ歩いてるんですから』

 

 それもそうだな。いや、お持ち帰りぃぃぃぃ、って言ってみたかった。

 それよりもだ、かわいい妹紅を引き連れてそろそろ村に向かおうと思うんだよ。

 

『ちゃっかり妹紅さんと手を繋いでますね』

 

 大丈夫、気分は父親で行こうと思ってる。いや、そんなことより村だよ。俺の暇潰s……ゲフンゲフン、食料とか見つけなくちゃいけないからな。

 

『暇潰しを見つけるんですか?』

「そう、暇潰しだ」

「声に出てるわよ?御主人様」

 

 イインダヨ。さて、そんなこんなで村につきましたが家がない。だから都みたいに離れている所にある古い家を使おうと思ったが、入ってみると先客が居た。

 しかも、その人物はでかい角生やした少女であり、慧音に似てるような………あ、今日満月だわ。まあいいか。

 

「じゃあ、今日はここで夜を過ごすか」

「そうね、そうしましょう」

「いいですね、夜の外は危ないですし」

「にゃぁ~」

 

 驚く少女慧音を無視してずかずかと家に上がり込んで、妹紅に火のついていない囲炉裏に火をつけさせる。妖怪に囲まれて過ごしてたんだからこういった術の扱いも自然と上手くなるのだ。しかも俺が色々と使い方を教えたからな。

 

「ありがと、妹紅」

「いえいえ」

 

 火によって部屋が明るくなり、全貌があらわになる。部屋の隅にボロボロの棚があり、それ以外はなにもないのだが、ゴミや埃なんかはないようにこまめに掃除してあるということが、床を見て分かった。こんなボロボロの小屋に住んでるのに掃除はするんだな。一回壊して立て直したほうが良くないか?

 

 そんなことを考えながらも、収納の腕輪からいろんな食材を取り出して鍋にする。その周りに魚を差して焼くことにした。三日月が魚好きだから少し多めに。

 鍋がぐつぐつという音と、魚から滴り落ちる油が火に当たりジュウジュウと音を立てている。既に良い匂いを出しており、部屋全体に充満している。それとアマテラスも既に出て俺の隣に座っているぞ。

 

「それにしても、この家ボロすぎないか?一回壊してしまおうか」

「それはいいわね」

「え?此処に住むんですか?」

「いや、住まないけど?」

「「え?」」

 

 アマテラスが疑問に思うのと驚くのは分かるんだが、なぜ慧音まで?

 あ、いやそうか、さすがに自分の家が壊されると言われたらそう思うよな。知ったこっちゃないが。

 

「では…何故壊すのですか?」

「それはまあ……こんなボロ屋に住んでいるであろう、貧乏で惨めな奴に更なる追い打ちをかけようと思ってだな」

「ちょっとまて鬼畜すぎるだろう!というか人の家を壊すな!」

「え、お前誰?人の家で何してんの?」

「私の家だが!?勝手に入ってきたのはお前たちだぞ!」

 

 わはは、何言ってんの。お前のものは俺のもの。俺のものは誰にも渡すわけないから勿論、俺のもの。ジャイアニズムっていい言葉だよな。素直にジャイアンに尊敬する今日此の頃。

 おっと、そろそろ鍋も出来たみたいだし、魚もいい感じだ。それぞれの皿に入れて渡していく。ついでに魚もな。三日月の前にだけ魚が三匹いるけど、猫だもん、しょうがない。

 

「おっと、仲間外れのぼっちは嫌だもんな。お前にも分けてやるよ」

「言うことが一々心に来るが……ありがとう」

「え、罵倒に対して礼言ってんの?( ´Д`)キモッ」

「違うわ!と言うかやはり罵倒だったのだな!?」

 

 ぎゃーぎゃー騒ぐ慧音を落ち着かせて、その手に魚を持たせる。さすがに食べ物を粗末にしたくないのか、直ぐに大人しくなった。なんだ、こいつもチョロイのか。

 

 それはさておき、食事をしながら慧音に何でこんな所に住んでいるのか聞いてみた。ちなみに俺が聞いたんじゃない。アマテラスと妹紅が聞いたんだ。俺は十分コミュニケーションを取ったからな、若いものに譲るのさ。え?何ルーミア、アマテラスも十分年取ってるじゃないかって?いやいや、こんなのまだまだ若いほうさ。俺にとってはだけど。というかそのこと絶対にアマテラスに言うなよ。不貞腐れるから。

 

 それで、慧音のことなんだが、なんかその満月の日に出る角を見られて以来虐げられているそうだ。石ぶつけられるのは当たり前で、食材なんかも売ってもらえないから自給自足生活。何それ逞しい。

 

 呪われてるだ、妖怪だ、化物だ……色々言われて遠ざけられているが、一部の強い男や陰陽師が慧音の身体目当てで襲ってくるそうな……確かにナイスバディだもんな。それも何とか逃げ切って今に至ると。そろそろ本気でこの村から討伐されそうというわけだ。まあ、この時代の人間は思い込みが激しいからな、勘違い野郎もゴキブリ並みに居るんだろうさ。

 

「酷いですよ、そんなのって…」

「そんな妹紅に質問。どの辺がどう酷いんだい?」

「えっとですね、自給自足をするにしては此処ら辺の山ではキツイです。もっと自然豊かで綺麗な川が流れているとこでしないと、体に悪いですね」

「そういうと思ったよ」

「期待した私が馬鹿だったよ……」

 

 あらあら、落ち込んじゃった。妹紅も俺が色々仕込んだせいか、考え方も変わっちゃったんだよね。貴族であった頃の妹紅なんて何処にもいない。輝夜への復讐?そんなものとうの昔に置いてきたらしい。具体的には腐りかけの漬物と一緒に壺の中に。腐ったんだね、輝夜への復讐。

 

 よく考えれば、お父様の人生はお父様のもの、私がどうこう言っていいものじゃなかったとかなんとか……最初から気づいてろよ馬鹿がって話だよな。それを言ったら涙目だったけど。ちゃんと藤原不比等の亡骸は埋葬してきたぞ。妹紅と一緒にアーメンハレルヤピーナツバターって言いながらだけど。

 

「まあそれはいいとして」

「良くないけどな」

「いいとして。これからどうするんだ?死ぬの?“ピーーッ”されるの?」

「表現が生々しいぞ!?やめてくれ!」

「だが断る」

 

 “ピーーッ”の部分は各自想像してくれ。慧音好きの人が好きに想像すればいいと思う。ただ、同意やらなんやらを求めて来ないでくれ。対応に困るから。いやマジで。

 

 んなことはいいとして、結局俺たちの旅に誘うことにした。慧音も了承したし、妹紅のいい友達になってくれればと思うぜ。取り敢えず俺達の名前も教えといて、構成メンバーが神と妖怪だということを伝えたら、パタリと倒れて動かなくなった。何処に驚く要素があったのだろうか……神か?妖怪か?それとも実力のことか?

 

 それからすることもないので寝ることになったのだが、慧音を横たわらせても、あと二人ほどしか寝転がれない。座っていてギリギリだったもんな、寝るのはさすがに無理か。空間を広げてもいいが面倒くさいので、ルーミアとアマテラスは俺の中で寝てもらうことにした。後は三日月が猫になれば大丈夫だ、問題ない。

 

 囲炉裏を囲むような感じの部屋なので、『コ』の字で寝ることにした。上から慧音俺妹紅って感じ?

 うん?もう一箇所寝れるとこがあるじゃないかって?そこは棚が置いてあるし、寝ている二人の足で端っこが埋まるから無理だ。

 

「さて、寝ますか」

「はい。おやすみなさい」

「にゃ~……」

 

 俺の呟きに妹紅が小さく答え、三日月が俺の胸元で丸くなった。俺の顔の横に慧音の頭があるが、なんかいい匂いがする。この時代に風呂は出回ってないし、石鹸なんかもないから……フェロモン?いや、どうでもいいか。三日月を抱きまくらにおやすみだ。

 

 




妹紅がぁ~……劇的ビフォーアフター! 考え方がおかしくなってるwww

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