旧・東方神零録   作:異山 糸師

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天城家(?)の朝

縁側で料理をつまみながら月見酒。俺は月神なので月を美しく輝かせることなぞ、造作でもない。

 

暫く飲んでいると、暗闇から人の気配がした。

 

「誰だ、出て来い。大人しくするなら殺さないでやろう」

 

「は、はい!すみません!!」

 

暗闇から出てきたのはアマテラスだった。

 

「どうしてここに居る?」

 

「あ、はい。えっと、家出?してきました」

 

………は?

 

「今回のことでトヨウケビメとは考えが合わないと思い、愛想をつかせてでてきました」

 

「いいのか…?」

 

「はい!こっそり出てきたので大丈夫です!」

 

そういう問題じゃない気がする。

 

「後ろの二人には言わないでください。何かの拍子でバレたらいけませんから」

 

なんかこいつ楽しんでないか?初めてのお遣いならぬ、初めての家出?

 

「それで…アマギ様にお願いがありまして……」

 

「なんだ?」

 

「はい。私をあなた様の護り神にしてくださいませんか?」

 

「いや、俺が神だから」

 

何を言っているのだろうか。

 

「な、なら!従者でいいですから!!」

 

アマテラスが必死にそう言ってくる。……なるほど、家出したから行く場所がなくて、

 

「責任をとると言いました。何でも言うことを聞くと言いました。それならあなた様の近くに居たほうがいいと思いまして!」

 

と言うことか。でもこれは本気だと分かるし、俺の近くに居たいと分かる。

 

「私達太陽神はあなた様のものなんですよね?好きにしていいですから!そばに居させてください!!」

 

「はあ~、わかったわかった。上とか下とか関係なく親しくしよう。それでいいならいいぞ」

 

「はい!!」

 

しかし、こいつは周りにばれたくは無いのだろう?それなら俺の中に精神世界を作ってそこに住めるようにしておくか。

 

「よし、アマテラス。俺の中に精神世界を作ったから俺に触れながら入りたいとでも思ってくれ」

 

「わ、わかりました…!し、失礼します…///」

 

何故か顔を赤くしながら俺にそっと触れる。すると、アマテラスは少し光った後、消えた。

 

「どうだ?」

 

『凄いです!外の事も分かりますし、快適です!』

 

「出たいと思えば出られるぞ」

 

今度は消えたときと同じように光り、姿が現れた。

 

「これからよろしくお願い致します、零様」

 

「様無し。よろしく」

 

「なら零さん、と。では早速ですが、頑張りますね!」

 

「ん?何を……ってうわっ!!」

 

そのまま押し倒され、服を脱がされ………

 

「初めてですが、一生懸命しますから!」

 

襲われた。アマテラスはどうやら空回りをしているそうです。

 

 

◇◇◇

 

 

おはよう、皆。

 

昨日の夜テンションがおかしかったアマテラスに襲われた零です。

 

初めてとか言ってたくせに物凄く激しかった。

 

終わったあと、ちゃんと叱っておいた。そしたら「反省はしてますけど後悔はしてません」とかいってた。もう放っておくことにした。

 

ま、怖がっていないどころか懐いている?のでいいか。どうせこれから一緒に過ごして行く中でこんなこともあるだろうし。

 

今俺は昨日の片付けをしてから朝食を作っている。

 

「次の旅まではいろいろ我慢してくれ。俺は精神世界に入れるからいつでも会えるし」

 

『はい。大丈夫です』

 

今更だが、アマテラスの容姿は、着ている着物から零れ落ちそうなくらい豊かな胸を持ち、桜色の髪を背中まで伸ばした十人中十五人が振り返るとてつもない美人だ。

 

オーバーしてるって?例えだよ。それくらいなんだ。あらゆるゲームや漫画を制覇した俺があらゆるキャラの中でトップクラスだと宣言しよう。

 

男女関係無く何時までも見惚れているくらい。俺は大丈夫だが。

 

こんな奴が居るとは思わなかった。

 

おっと、諏訪子たちが起きてきた。

 

「レイ、おはよ~……あ~う~、頭痛いよ~」

 

「おはようさん。まあ、あれだけ飲めばなぁ……」

 

「零、諏訪子、おはよう……頭痛い……どうにかしてくれ」

 

「自業自得さ。ほら、顔洗って来い。飯にするぞ」

 

「「はぁ~い」」

 

二人を見送ってから机に並べていく。

 

『ふふっ…お母さんみたいですね』

 

「手のかかる子供だよ」

 

少しは大人しくして欲しいね。

 

お、戻ってきたか。

 

「じゃ、食べますか」

 

「うん」

 

「「「いただきます」」」

 

三人で挨拶してから食べ始める。うん、今日もいい出来だな。サケの焼き加減がパーフェクト。

 

「う~ん、相変わらず美味しいね」

 

「……なんだこれは!凄く美味しいじゃないか!って、痛たた……」

 

神奈子が頭を押さえて顔をしかめた。

 

「大声だすからだ」

 

「うう…そうだな」

 

やれやれ、こいつもか。

 

「レイ、あ~ん」

 

「ん?なにしてるんだ?諏訪子」

 

「なにって…あ~ん」

 

振り向くと諏訪子が玉子焼きを箸で口元に差し出していた。食べるけど。

 

「むぐ」

 

「美味しい?」

 

「ごくっ……そりゃあ、俺が作ったからな。当たり前だ」

 

「そういう意味じゃないのに~」

 

なんかふてくされた。意味が分からん。

 

「ていうか、元の姿に戻らないのか?」

 

諏訪子は未だに大人バージョンのまま。そろそろ戻ってくれないと諏訪子好きの読者の方々に怒られる。

 

「幼女言わない?」

 

「言わない言わない」

 

「ん~、じゃあ、はい」

 

ポンッ、という音を立てて小さな諏訪子になった。

 

それを見て俺は、

 

「幼女(笑)」

 

笑ってやった。

 

「あ~!嘘つき!!やっぱり言ったじゃん!!やっぱり戻らない!!どっちも私だし!」

 

ポンッ、とまた大きくなった。

 

いかんいかん、小さい諏訪子を見るとからかいたくなってしまう。

 

俺が旅に出れば戻るでしょう、きっと。

 

「なあ、零。何時もこんな感じなのか?」

 

神奈子がサケをつつきながら聞き、俺は諏訪子(大人)にあ~んされながら答えた。

 

「もぐっ………そうだが、騒がしいか?嫌なら静かにさせるが」

 

「それって私のこと?」

 

「そうだ。大きくなっても中身は子供じゃないか」

 

「むっ!体は立派になったからそれはからかわれないもん!」

 

「ほんとにな。体だけは立派に育ちやがって」

 

「ふふん…ほれほれ、柔らかいでしょ?」

 

「やめんか、痴女が」

 

「言うに事欠いてそれ!?あんまりだよ!」

 

「大人(笑)」

 

「またか!!またこれか!!」

 

「大人www」

 

「ムキィーーーーーーーー!!!」

 

こいつは変わらないなぁ。だから安心するんだけどな。

 

「クククッ」

 

「ん?」

 

なんか神奈子に笑われていた。

 

「どうした?」

 

「そうだよ。笑うならレイを笑ってやりなよ!!」

 

「諏訪子の馬鹿めー」

 

「棒読みムカつく!!」

 

「あははっ」

 

また笑われた。なんなんだ。

 

「いや、悪い悪い…ククッ…こんなに楽しい朝は初めてでな」

 

ん~…まあ、あそこは楽しみが無さそうだしな。

 

「よく分からないけど、毎日がこの調子だぞ?」

 

「そうか、楽しみだな」

 

そう言って神奈子はにっこり笑った。

 

『こんな笑顔の神奈子は初めて見ました』

 

そうなのか?

 

『はい。本当に楽しそうです。零さんたちのおかげですね』

 

そうか……

 

「何時も通りなんだけどな……」

 

「ん?なんか言った?レイ」

 

「いや、そろそろ諏訪子に酒飲ませるのはやめようと思ってな」

 

「えっ!?な、なんで!?」

 

「昨日俺にしたことを思い出せ」

 

「………覚えてない」

 

「じゃあだめだな」

 

「え~!!レイの意地悪っ!鬼!悪魔!ドS!変態!」

 

「なんだと!?変態はお前だ!毎晩のように一緒に寝ているが、お前先月の夜なにしてた?」

 

「えっ!?い、いや、なにも~?」

 

「嘘つけ。俺もお前も裸だったんだが?濡れてたし」

 

「ぴふ~、ぴふ~……」

 

明後日の方向を向き、下手糞な口笛を吹いている。

 

このやろう……知らない間に襲われてるとか最悪だろうが。

 

「いいか?この小説はそういう要素はいりません。いくら変態だからといっても容易にそのような行為を主人公にするのは止めてください」

 

「え…?レイ、何言ってるの……?」

 

『またメタな発言を……』

 

「分からないならいいが、頭の隅においておけ」

 

「う、うん……」

 

「やれやれ、これなら楽しく暮らせそうだよ」

 

最後にポツリと神奈子が呟いた。

 

「しかし…そういった行為はありなのか」

 

ねえよ。あっても書かないよ、書かせないよ。

 

 




ああ…眠たいな…

ちなみに作者も口笛は苦手です(笑)

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