こういった日常が数百年は続いた。
えっ?端折りすぎ?いや、別に聞きたく無いでしょ、俺のザ・日常生活譚なんてさ。
しいて言えば、アマテラスはばれていなくて神奈子があのやり取りに入ってきたことくらいかな?
出て行くときなんかは、諏訪子(大人)が大泣きして神奈子が抱きついたまま離してくれなかった。条件付でやっと解放してもらえたけど。
その条件は定期的に帰ってくること。ま、あそこは俺の実家と言っていいから帰るさ。
ちなみに俺は今森の中。
「どこだ?ここは」
迷っちった。
『どこでしょう?』
しょうがない、うろつきますかねぇ……。
と言っても、木以外は何も無いがな。あと妖怪が襲ってくるくらいだ。
昼寝しているときに襲ってきたやつには、体にナイフが刺さるのは限界何本?という実験を笑いながらしていたらしい。らしい、というのは俺が寝ぼけていたからであり、アマテラスが止めるまでしていたからだ。
それを機に【落とし穴を作る程度の能力】を作って、野外で寝るときは周りに落とし穴を作って寝ている。深さ、大きさを決めれるので便利。飛んで出れないように落ちたらすぐに格子状の蓋ができるようにもしておいた。あらゆる落とし穴を作れるからな。
「飽きた。もう夜だから寝てしまおう」
そうして木の下で寝転がり、落とし穴を周りに作り出す。一々起きたくないもん。
「おやすみ~」
『おやすみなさい、零さん』
アマテラスの声を最後に、意識を闇に落とした。
―――ズドォンッ! ガシャンッ!―――
あ、誰かが落ちたな。
◇◇◇
翌朝、朝日が眩しくなってきたから起きる。
「ふぁ~……さて、落ちた獲物は何かねぇ」
『あ、おはようございます、零さん』
「ん、おはよう」
アマテラスも起きていたらしい。床が固いから体が少し痛い。
体を伸ばすとポキポキと骨が鳴る。頭を掻きながら落とし穴を覗くと、
「うぅ……ぐすっ……」
「………何やってんだ?」
穴の底でEXルーミアが膝を抱えて泣いていた。
俺の声を聞き、ルーミアが上を向いた。…なんか体中が土まみれなんだけど。
多分、出ようとしたら格子があったからそのまま激突して再び落ちた時に汚れたのだろう。
「……あなたがこの穴を作った張本人かしら?」
「そうだけど?俺の近くにあるからな。何か用か?」
「あなたを食べようとしたら落ちたのよ……。出してくれない?」
「出したら襲ってくるだろう?」
「勿論よ」
即答か。馬鹿じゃないの?
「なら断る。相手するのがめんどくさい。じゃあな」
顔を上げて落とし穴をから去ろうとする。飢え死にでもしてろ。
『いいのですか?』
「いいのいいの。めんどくさいのは嫌だろう?」
『それもそうですね』
結構アマテラスも俺に毒されてきているよな。考えが似てきた。
「ま、待って!待ちなさい!」
後ろから声が聞こえるが無視。命令とか何様だ。
「待って!……もう、待ってください!お願いします!」
………仕方ない。原作キャラだしな。
渋々落とし穴までもどって穴を覗く。
「何か用かね?」
「何でもするからここから出して!」
「…………」
「出してください!お願いします!」
「……はぁ、襲うなよ?」
「ええ」
「あと、人間を食うな」
「………分かったわ」
これでも一応神様だからな。目の前で罪もない関係のない人が食われるのは見過ごせない。死ぬなら俺の居ない所で死ね。
『零さん…それもどうかと……』
まあまあ。
「ほら、出てこい引きこもり」
格子を無くして出口を作る。この格子は所謂【幻想殺し】みたいな感じだから異能の類は聞かないからどうしようもないのである。耐久も半端ないしな。
「あなたが引きこもらせたのでしょうに……ふぅ、外が久しぶりに思えるわ」
「引きこもり(笑)」
「もう違うわよ!!」
「そーなのかー」
「(イラッ)」
ルーミアのネタでかえしてやった。本人は知らないだろうが。お前もいずれ自分で言うようになるさ。
「まあ落ち着け。そしてさっさと何処かへ行け」
「あら?何もしなくていいの?人間を食べるかもしれないわよ?」
「そうなったらその程度の奴だということだ。そんな奴に何か言うつもりは無い」
「………いいわ。それならあなたの近くにいて食べないことを証明するわ」
「いやいいです。邪魔なんで」
「はっ!?」
ルーミア無視してスタスタ歩く。自由気ままに動きたいのに、ルーミアがいたら一人旅が出来なくなる。アマテラスはいるけど。
「ま、待ちなさいよ!そんな馬鹿にされて私のプライドが許さない!」
「俺が許そう」
「意味わかんないから!無理やりにでも着いていくから!」
そうしてルーミアが隣に来た。結局旅仲間が増えるのだった。
「ていうか、いいのか?人喰い妖怪だから人食べなくなったら消滅するんじゃ……」
「うっ!?」
……今更気づいたのか。でも食べない宣言したばっかりだからな。
「はぁー…しょうがない、俺の式になるか?」
「……え?」
「俺の式になれば食べなくて済む。それ程に力が増すからな」
「………分かったわ。お願い」
「あいよ。ついでに襲ってくる馬鹿(妖怪)共を始末してくれ」
「了解よ。御主人様?」
諏訪子のところにいた時に知り合った陰陽師に貰った札だ。適当にルーミアの体にペイっと貼り付ける。
「適当ね……」
「気にスンナ。俺は天城零な」
「私はルーミアよ。よろしくお願いするわ、御主人様?」
クスクスと笑うルーミア。手綱を握られて喜ぶとか、マゾか。
「マゾじゃないわよ」
「読心術?」
「声に出てたわよ」
「さいですか」
それからは歩きながら食べられるようにおにぎりを腕輪から出して食べながらぶらつく。ルーミアにもあげた。初めて俺の作ったものを食べたときの人が必ずする反応をしたよ。ごちそうさま。
「けれど……物凄く力が増えてるわ…大妖怪なんて軽く超えてるわね」
「ま、俺ですから」
最強の神だからな。そんな奴の力が行くんだろう?そりゃあ、やばいって。
負けなしになるぜ。
「御主人様に戦いを挑まなくてよかったわ」
「……なあ、その御主人様っていうの止めないか?」
なんかむず痒いんだが…。様付けは普通にあったが。
「いいじゃない。私が零様って言うの…何か変じゃない?」
「ん~~~………」
確かに、こいつには合わないような。
「なら呼び捨てでいいだろうに」
「それは主従関係にならないじゃない」
「え~」
ああ言えばこういう……俺みたいだな。
『自覚あったんですね』
まあな。諏訪子とのやり取りで見つけたんだよ。
もうめんどくさいから呼び方など放っておくことにした。取りあえずこのでかい山から抜ける。
そろそろ麓だ、と思ったとき………
「そこの人間、止まれ!!」
鴉…じゃない、天狗がやってきた。団体で。
「…なんなんだよ」
「天狗ね。ここは縄張りだったのね」
上を見上げるルーミアを見て、俺もつられて見上げる。
「なんか多くないか……?」
ひぃ、ふぅ、みぃ………大体二十くらいか?
そのうちの一人が目の前に降りてきた。
「なんだ?トイレなら向こうだぞ」
そう言って一本の木の下の根元を指差す。
「貴様ァ………!!」
「おいおい、あまり怒るな。素敵な鳥顔が台無しだぞ?」
「クスッ……」
隣でルーミアが笑っている。目の前の鴉は顔をクシャクシャにしているが。
「頭から湯気が出てるぞ。今なら頭で湯が沸かせるんじゃないか?焼き鳥に……いや、茹で鳥?になるぞ~」
もわもわ~。あ、刀抜いた。
「殺せッッ!!!!」
この一声で鴉どもが突っ込んできた。ルーミアを見て戦力の差が分からないのか?
「やれやれ…ルーミアよろしく」
「クスクス………もう、しょうがないわね」
笑うのを止めて、ルーミアは背中の黒剣を手に取り鴉を一振りで大量に吹き飛ばす。
「おぉ~、凄い凄い」
力が増したからか顔が生き生きしてる気がする。あと、俺の背後に誰か居る気がする。敵意は無いが。
放って置いたら、いきなり背中から羽交い絞めをされて体が宙を舞う。
どうやら拉致られたらしい。
「今のうちに貴方を天魔様の下へ連行させて貰います」
「あ~れ~た~す~け~て~」
『完璧に遊んでますね……』
いいじゃないか。木以外のものが見えるんだぞ?
『それもそうですけど……』
「ちょっと、御主人様!?」
「そいつら片付けたらルーミアもゆっくり来いよ~」
俺を見て驚くルーミアを最後に、空を飛んでいった。
「ていうか、誰?」
「射命丸文と言います。どう見てもお二人には勝てないと見たので戦う事は止めました」
お~文じゃないか。少し幼いけど。敬語だし。
「特にあの妖怪はおかしいですよ。大妖怪以上の強さなんて」
「だろう?ま、それより安全運転で頼む」
「勿論です」
「あと、胸が押し付けられてるぞ」
結構大きいのな。
「ノーコメントで……///」
チラッと振り向くと、顔を真っ赤にしていた。案外初心だねぇ。
落とし穴……それは男の子なら誰もが一度は作りたくなるもの…
完璧な落とし穴って作れませんよね~。
作れた試しがありませんもの(笑)