Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第11話 異世界で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーまた、夢を見ている。

 

 

 

俺が昔の記憶を夢に見る時は決まってこの”感覚”を味わうことになるせいか、直ぐに”ああ、またか”と頭の隅にその思考が並ぶ。

 

夢から醒めて起きてしまうと忘れてしまうのだが、今だけは様々な事が思い出せる。

 

 

 

目の前に広がるのは大きなビル街。

天気は晴れで休日だからか様々な人がショッピングモールや飲食店を忙しなく動き回っている。

そんな家族連れや恋人、友人たちと過ごす人々を片目にふと、空を見上げて思い出す。

 

 

ーー俺何でここにいるんだっけ?

 

 

ああ、そうだ確か今日は■■■■さんと買い物にきてたんだっけ。

あの人は容姿を含めて目立つから直ぐに見つかると思ったんだけど中々見つからない。

さてどうしたもんかな?

と考えていると

 

 

ーーユウ!

 

 

どうやらあちらの方が先に俺の事を見つけてくれたみたいだ。

振り向くとこちらに手を振りながら笑顔の女性が俺の方に小走りで駆けて来る。

彼女の長い金色の髪が太陽の光を反射して煌びやかに写る。

相変わらず綺麗な髪をしているなぁ■■■■さんなんて思いながら手を振り返す。

 

さて、今日は良い休日になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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………何だ?凄い、眩しい……それと蒸し暑い。

 

ここ最近では味わった事がない暑さで、不快感から意識が覚醒し、ゆっくりと瞼を開けて見る。

 

 

「ぅ……?」

 

気だるげな体を起こしながら周りを見渡す。

 

ここは……どこだ?

 

まず目に入ったのは太陽、そして体を起こして最初に目に入ったのは海?

 

そして自分が今いる場所が海岸のような場所だと言う事、そして後ろには森があった。

はて?俺は何でこんな所で寝ていたのだろうか。

ツァイトで時間を確認する。

 

 

91:61

 

 

「何だこれ…」

 

 

故障でもしたのだろうか時計の表示がバグっている。

うーんどうしたものか……

この後の行動をどうするべきか考えながらふと隣から感じる気配。

目を横に向けると

 

金色の髪を黒いリボンでツインテールでまとめ、黒いTシャツにスカートの女の子が寝息をたてていた。

 

 

 

ーー思い出した。

俺とこの子は戦ってる最中に急に光出したジュエルシードに呑まれて……

そこまで思い出してふと考える。

 

 

「ツァイト俺がここに来てどのくらいだ?」

 

 

《………》

 

 

「おーい?」

 

 

ダメだ反応しない。

と言うことは魔法も使えないと言う事………ってあれ?俺って今ものすごくピンチなのでは?

 

試したがなのはやユーノにすら念話も届かない。

そして横には先ほどまで戦っていた敵であろう少女。

 

非常にマズイ、この少女が眠っているうちにここから早く離れなければ。

 

 

そっと少女の顔を見る。

敵な以上、顔は覚えておき直ぐに逃げよう。

今ツァイトが使えないと言うことは抵抗すら出来ずジュエルシードを奪われてしまう。

さて、パパッと確認だけして逃げますか。

 

 

「ん……?」

 

 

この子……何と言うか苦しそう?

汗もかいてるし……ってそうかこんな日差しが強い上にこの湿度だと体を壊してしまうかもしれない。

 

早く違う場所に移してあげなければ……

だがしかしこの子は仮にも敵だ、連れて行くと言うことは、背負うくらいしかない訳で、無防備な背中を開けるということになってしまう。

 

それは……マズイよな。

ここは心を鬼にして最初のプラン通りに逃げ……

 

 

「うぅ……ん……」

 

 

暑いのか苦しそうに唸る少女。

 

そんな名も知れぬ()と自身の良心を天秤に掛けた結果。

 

 

「………………………はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……よいしょっと」

 

 

まだ眠っている女の子を背負う。

 

随分と軽い、この体で先ほどのような戦いを俺としたと言うのだからあらためて驚かさせられる。

 

こうやってこの子を背負うと少し温度が高いのがわかる。

何だろうか、風邪でも引いてしまったのかな。

 

 

「バレたらユーノには怒られるだろうなぁ……俺」

 

 

冷静に敵の女の子を心配して、ここまで背負って来た時点でお察しなのだが……さてこの後どうなるのやら。

 

この子が目覚めた瞬間に俺のことを襲うかも知れないし何かの間違えで協力してくれるかも知れない。

どの道、もう俺の中では多少なりとも情が移ってしまったこの子を見捨てると言うことは無いが。

 

 

「できれば、後者がいいなぁ……」

 

 

 

 

______________________________

 

 

 

 

さて、少し森の中を歩いたけど特に目に当たるものもない。

背負っている子があまり負担にならないように日陰を歩いているつもりだが大丈夫だろうか?

 

そっと女の子の顔を見る。

 

先程よりは顔色が良くなっており可愛らしい寝顔を浮かべている。

何と言うかなのはみたいだな、何んて考えながら歩く。

この子もこうして大人しければただの子どもなのだがさっきの戦闘のせいで眠れる獅子を背負っているみたいだ。

 

 

「ん……?」

 

 

この音、水の流れる音?

 

近くに川でもあるのか?さっきの海から歩いて1時間くらいだが割と近場に水があったのは助かるな。

俺も少し休みたいし、水の音の方に歩いて見るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ぷはぁ!」

 

 

飲めるみたいだなよし、とりあえずはここでいいか?

 

休める場所を見つけふぅ……と一息つく。

この子もまだ少し暑いし冷やしてしてあげたいのだがどうしたものか。

 

何かないかとポケットを探す。

あ、ハンカチか。これなら水に浸しておでこにでも乗せておけばマシにはなるか?

 

 

 

もう一度少女を背負い木陰に移動する。

 

枕の代わりになりそうなものは流石にないか。

うーん、少し申し訳ないが俺の膝で勘弁してもらうか。

かけるものも俺のジャージの上着しかないが許してくれ。

 

 

「んっ……」

 

 

冷やしたハンカチを当てると少し驚いたのかビクッとする。

だが気持ちよかったのか少し呼吸が安定して来た。

 

うーん……ホントに寝てるだけなら可愛い子どもなんだけど。

 

「………」

 

少しだけ、と自分に言い聞かせつつ頭を撫でる。

 

なのはやはやて、アリサとすずか達と接してわかったのだが俺はどうやら子どもが好きみたいだ。

 

一緒に過ごすのはもちろん遊んだりこうして撫でたりしていると何とも言えない幸福感が心に満ちてくる。

頭を撫でていると

 

 

「ん……」

 

 

 

 

「……ふぁ……?」

 

 

大きなあくびとともに赤い目が俺の目と合う。

 

 

「えっと起こしちゃったか?」

 

 

「え?えっと貴方は……」

 

 

 

そう言って頭にハテナを浮かべていたが

 

 

「!?」

 

 

ばっと起き上がろうとする動作を見るに、どうやら先程までの事を思い出したらしいが。

 

 

「おっと」

 

「あぅ……」

 

 

まだうまく力が入らない様で、俺の膝にまた戻ってくる。

どうやら頑張って起きようとしてるけど、上手くいかずばたばたと余計な体力を使ってしまっている。

 

………とりあえず休戦提案くらいはしていいよね、うん。

 

「あのさ、とりあえず敵意は無いから今は俺の話から聞いてほしんだけど……いいかな?」

 

 

俺の方に戦意が無いのと、いまの自身の状況を考えてか、少女は少し黙った後

 

 

「……わかりました」

 

 

と言ってくれた。

 

 

「ありがとうな、ならまずは状況の確認だけど……」

 

 

 

取り敢えずいま俺の分かる事を少女に話していく。

ここには気づいたらいた事、最初いた場所から少し離れた所まできた事。

 

少し迷ったけど、話も通じる様子だし素直に魔法が使えなくなっている事も話した。

 

 

「私も」

 

「?」

 

「私も魔法が使えなくなってる……」

 

 

この子も使えなくなってるのか。

何と言うか少し安心。

いまの俺はいつボコボコにされてもおかしくなかったからな。

 

 

「取り敢えずなんだが少しの間、休戦にしないか?」

 

 

そう提案してみる。

流石にこの状況になってまで戦うつもりはないのか少女も頷いてくれる。

 

 

 

「それじゃここを脱出するまでは共闘だな。俺はユウだ、よろしくな?」

 

 

君は?と聞いてみる。

目の前の女の子は少し呆気に取られたような表情をした後

 

 

「…フェイト」

 

 

と名前を教えてくれた。

 

どうやら部の悪い賭けには勝てたみたいだ。

 

 

「取り敢えずこのまま休んでていいぞ。もう少し俺も休んだらまたフェイトの事おぶって移動するから」

 

 

「えっ……?私のことおぶってきたの?」

 

「ああ、それ以外に連れて来る手段がおもいつかなくてな」

 

 

何やら少しあわてているフェイト。

どうしたんだ?

 

 

「それよりもう少し休んでおけよ?まだ身体きついだろ?」

 

 

「……うん」

 

 

何と言うか思ったより素直?

 

さて、これからどうしようか、そう考えつつ少し俺も休む。

自然とフェイトの事を見るとまだ辛かったのかもう眠っている。

 

フェイトの頭を撫でながら俺も少しだけ意識を手放す。

 

 

まぁフェイトとは何となくうまくやっていけそうだな、なんて考えながら。

 

 

 

 




ここまでお疲れ様です。
次回からはフェイトちゃんとのお話になります。


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