Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第24話 黒幕と「約束」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

ふと目が醒める。

 

あれ、俺いつ眠ったんだっけか。

 

 

 

というか……此処はどこだろうか?目を開け顔を動かして見渡すが見覚えない部屋だった。

 

清潔感があり今俺が寝ていたベットも真新しく、棚などには薬や包帯など医療道具が目立つ。

 

自身の身体を見渡してみれば包帯や湿布、そしてコードに繋がれた先には自身の心肺などの数値であろうモノが表示されている機械があった。

 

はて、俺は何故こんな大層な治療を受けていたのだろうか?

 

少し痛む頭を回転させる。

 

最後に覚えてるのは確か………

 

 

 

青ざめた顔でこちらに飛んでくるなのはと苦渋の顔でフェイトを抱え撤退するアルフ、そして泣きながらこちらに手を伸ばすフェイト。

 

 

 

そこで全てを思い出す。

空から降り注ぐ怒りの様な感情を込められた雷。

 

その雷が一直線にフェイトに降り注ぐ瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。

 

あ……そっか俺フェイトを庇って雷に撃たれたんだっけ。

 

そう自覚した瞬間、身体が痛みを訴えてくる。

まだ少しだけしびれが残っているのか上手く腕や足に力が入らないな……。

 

 

「って事はここはアースラの医療室か」

 

 

やっとここが何処かわかり少し安心した。

とは言え俺がどれだけ気を失っていたかやどれ程で復帰できるのかがわからないのが残りの不安である。

 

 

取り敢えず誰か呼んだ方がいいのだろうか?

しかし、俺の体感では眠っていたのは数時間程度の様な気もするし今局員の人たちは忙しいのではないのか?と頭で葛藤する。

 

 

だがここで報告しなければクロノに怒られるのは予想がつく。

取り敢えず念話で目が覚めた事だけ伝えるか……

 

 

(えっとクロノ、聞こえるか?)

 

(……っ!?ユウ!)

 

 

何やら凄く驚いた感じだ。

何となく嫌な予感がする。

 

この手の反応を今の状況の俺にするという事はそれなりに心配をかけてしまったのはまず間違い無くて……

 

 

(今すぐ行くから大人しくしててくれ!)

 

(え、ちょ!)

 

 

そのまま念話が切れる。

あー……ホントに嫌な予感がしてきた。

 

それから5分ほどで扉が開きクロノが部屋に駆け込んで来た。

 

そして俺の顔を見た瞬間に切羽詰まり焦っていた表情から一気に脱力し、溜め息をつくクロノ。

なんか失礼な気がする。

 

 

「俺の顔をみて何故に溜め息を吐く?」

 

「はぁ……そういう所だぞ、全く」

 

 

そう言いつつ横の椅子に座り呆れながらも笑いかけてくれる。

ふむ……やっぱり心配をかけてしまったようだ。

 

 

「君は今の現状は理解できているかい?」

 

「いや全く、自分がどれだけ気を失ってたかすらわからない」

 

「まぁそれが普通か。取り敢えず今の状況を説明するよ」

 

 

そう言ってクロノは現状の説明とあの戦いの後の事後報告をしてくれる。

 

 

「取り敢えず6つ中3つのジュエルシードはこちら側が確保したよ、残りは向こうだ」

 

「あー……悪かったな」

 

「今更だ、それに君たちのする事を認めてしまった僕自身の責任もある。……続けるぞ?」

 

 

そう言って続きを話し始める。

もっと怒られると思ったんだが、意外にもクロノは自分の責任と捉えているようだ。

 

 

「君が目覚めたのが丁度……あの戦いから2日だ。今、リンディ艦長がなのはの家の方にこの約10日間何をしていたかと、君がどうしているかの説明に向かっている所だ」

 

「え、でもあの人たちに魔法の事は」

 

 

士郎さんたちは魔法に関する事は一切知らせていない。

下手なことを言われると色々と誤解を生む可能性を考えつつ冷や汗をかいているとクロノが分かっていると言いつつ続ける。

 

 

「無論、全てを話す訳ではないから安心してくれ。……辻褄合わせのために少し勘違いしてしまうような事を話すかもだが」

 

 

要は嘘を吐く、って事か。

少し心が痛むが話せないことがある以上しょうがないかな……

 

 

「そしてここからが重要な話になる。今回の事件、ジュエルシード事件の黒幕に当たる人物が特定できた」

 

 

そう言ってクロノはデバイス操作し3Dモデルのようなモノを表して俺に見せてくる。

空中に浮かぶ文字と人物写真、そして経歴に目を通す。

 

 

 

「"プレシア・テスタロッサ"それが容疑者の名前だ」

 

「この人が……」

 

「ああ、出身はミッドチルダ……僕たちの世界だ。かつては僕たちの世界での学者で次元航行エネルギーについて研究していた強力な魔導師だ」

 

 

成る程、あの魔力攻撃はこの人からの攻撃だったのか。

 

それだけ凄い魔導師の攻撃ならあの感じた事がない程の痛みや衝撃も納得できる。

 

……俺がポンコツなだけかもしれないけど

 

 

「あれ、コレって………」

 

 

プレシアの経歴に引っかかるものがあった。

違法実験による事故により足取りが掴めなくなっていた?

そしてその実験内容や家族構成などが書かれている。

 

 

そしてその娘に当たる人物の名前"アリシア"当時の5、6歳程度だろうか?その子の姿がやけにフェイトと重なる。

 

よく見てみればプレシアの顔にフェイトの面影や似ているところがあるし多分親子なのだろう。

 

そう考えるとフェイトがジュエルシードを集めていた理由も母親の為という事で納得がいく。

 

………しかし、俺が引っかかり嫌なものが残った理由は。

 

 

「なぁクロノ、プレシアに他に子どもはいないのか?」

 

「ああ、記録に残っているのはそのアリシアという子だけだ」

 

「……そっか」

 

 

この記録によるならばこの時点でフェイトの記録がここに載っていないのはおかしい。

今のフェイトはなのはと同い年くらいだ。

 

つまりこの4、5年ほど前の物にプレシアの子どもとして情報が一切乗っておらず、代わりにアリシアという女の子が載っているという事は……今俺が無い頭で考えられるのは2つ。

 

1つはフェイト自身の本当の名前がアリシアで俺たちに偽名を名乗ったという可能性。

 

そしてもう1つはつい先日、このアースラで偶々俺が興味を惹かれ見ていた"クローン"の技術に関する事件記録。

けどそれは……

 

 

ここまで考え頭を振りリセットする。

あくまで憶測でありこれ以上考えるのは良くない。

 

 

 

「さてユウはこの後身体チェックに入ってくれ。もし問題ないようならこの後なのはたちと合流してもらって構わない」

 

「いいのか?」

 

「ああ、君のことを一番心配していたのは間違いなくあの子だからな。その間抜けな顔を早く見せて安心させてやれ」

 

「はは……そっか。ありがとな」

 

 

そういうとあまり無茶はしすぎるなよ?と言って部屋を出て行くクロノ。

それに入れ替わり検査を担当してくれるであろう人たちが入ってきた。

 

久しぶりに士郎さんたちに報告も兼ねて会えるのは俺自身とても嬉しい。

早く済ませて行くとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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転送ポートから公園に転送してもらう。

身体の方は特に問題なく、あまり無茶しなければ魔法も使用できるみたいだ。

 

リンディさんからは少しのお説教を頂く事になるとクロノに言われ少し億劫気味になりながらも此処に帰ってこれた。

 

時間を確認すると10時過ぎ。

なのは達は先に高町家にいるだろうし俺もすぐに帰りたいが先に寄らなければいけない所がある。

 

この公園から近いし先に会っておこう。

 

 

 

 

前までは3日に一度は来るくらいには入り浸っていた家が目の前に迫る。

ほんの数日、10日ぶりに来たこの場所はなんだが久しぶりに感じてしまう。

それだけ此処に通っている頻度が高いという事だろう。

 

インターホンを鳴らすと直ぐに家の中から"はーい"という声が聞こえる。

 

いやー……全く連絡してなかったのもあるんだが、何よりもこっちに戻って来たときにみたメールの量と不在着信で少し……いや、かなりドキドキしている。

 

そんな事を考えているうちにガチャと扉が開き………

 

 

「はーい、どちら様……?」

 

「えっと、こんにちは?」

 

 

ぽかーんとこちらを見たまま固まっているはやてに挨拶する。

………あれ?まだ復活しない?

 

 

「おーいはやてー?」

 

「…………ユウさん?」

 

「おう、久しぶり」

 

 

どうやら正気に戻ったようでこちらにやっと目を向けてくれる。

そしてとてもいい笑顔を見せてこう言われる。

 

 

「詳しく、話してもらおか?」

 

「ですよねー」

 

 

このはやての怒った顔を見るのは2度目だがやっぱり怖い。

前回は俺がはやてと戯れていた時に調子に乗り過ぎ怒られたが今回はその時よりも何倍も黒いのがはやての背後から出ている気がする。

 

そのまま久しぶりの八神家にお邪魔してリビングまで通され(連行され)る。

そして"っん!"と両手をこちらに伸ばして来るはやて。

 

はいはい……怒ってても俺が抱っこするのは変わらないのね。

 

そのまま車椅子からはやてを抱き上げ、ソファーの上に移動させる。

俺は対面に座ろうとしたがはやてのご指名により今は椅子と化しています、はい。

 

 

「……で?」

 

「え?」

 

「で、弁明は何かあるん?」

 

「いや……その……」

 

 

はやてからなんとも言えない凄みを感じる……これは言い訳は聞くけど許さんという不屈の意志が込められているように感じる。

 

 

「メールに返事もなし、電話は折り返してこーへん、それが10日間」

 

「えっとですね……一応、連絡は最初の方に……」

 

 

そういうとジト目をこちらに向けて余計に機嫌が悪くなる。

これは……薮蛇ったか?

 

 

「ふーん……10日前になんて送ってきたか、ちゃんと覚えてるん?」

 

「え?……えっと確か、"これから少しの間会えなくなる"みたいな?」

 

 

ふむ、確かそんな感じにメールを打った気がする。

そういうとはやての表情が笑顔になる。

……しかしその笑顔には怒りマークのおまけ付き。

 

 

「"しばらく会えない。多分連絡もつかないと思うから"って来たんよ?」

 

「ああ……そうだっけ」

 

 

確か転送直前とかで焦って打ったからそんな内容にもなるか……

というかその文体をいきなり送られてきたら……なんというか、勘違いしそうだよな。

 

所で急に静かになったな?と気になりふと顔を上げはやての顔を見ると目の前のはやてが段々と涙目になり嗚咽を漏らしていた。

 

 

「……急にいなくなるって言われてそっから連絡もつかんし」

 

「えっ……ちょ!」

 

「私が寂しかったら直ぐに駆けつけてくれるゆーたのに……」

 

「ごめん!ごめんなさい!!」

 

 

グスグスと泣き出してしまう。

俺の想像以上にはやては寂しかったみたいで俺の胸に顔を押し付けてギュッと服を掴んでくる。

なんとかあやそうと頭を撫でつつ謝るがあまり効果なし。

 

……ヤバイ、俺こういうの1番弱いのに。

こういう時どうしてやるのが1番正しくて、はやてへの謝罪になるかわかない。

 

 

「……急に居なくなったりしない?」

 

「え?」

 

「急に!あんな風に居なくなったり連絡しなかったり……そういうの私、寂しい」

 

「……悪い、もうしないよ」

 

 

このことは完全に俺が悪い。

そもそもはやてが1人で寂しいならと俺が自分からそばにいると言ったのに……

反省しなければ。

 

 

「なら、許す」

 

 

そう言って俺のTシャツで思い切り鼻をかむはやて。

……まぁ、これで許してもらえるんだ。

そのまま1時間ほどはやてと今まで何をしていたか(魔法の事は別の事に置き換えつつ)を話しまた後日、ちゃんと遊びに来る事を約束する。

 

 

「そろそろ俺は行くよ」

 

「むー……」

 

「いや、そんなむくれて抗議されてもな……」

 

 

俺の膝の上に張り付き両手で必死に留めようと俺の胸を握るはやて。

多分本人は力を入れてるつもりなんだろうけど俺からすれば可愛らしいくらいの力で押しのける事は簡単だが、その……出来ない。

 

俺の知っているはやては甘えてはくるがまだ何処か一線引きつつ俺と接していたはずだが、今目の前のはやてはその一線が切れて甘えてくる。

これがアースラでエイミィから教えてもらった"ギャップ萌え"なるものなのだろうか?

 

 

「……あと少しだけだぞ?」

 

「うんっ」

 

 

久しぶりのユウさんやー、なんていいながら甘えてくる子を無下にする事は俺には……出来ないッ!!!

 

甘すぎる自分に少し嫌気がさすがはやての顔を見ていると幸せになれるあたり俺も結構ちょろいんだろうな。

 

そうしてここから追加で1時間ほど過ごす事になるのだが、こんな事前にもあったような?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、時間は12時過ぎ。

あれから少し歩き目の前の高町家の前まで来た訳なのだが。

 

 

「少し……緊張するな」

 

 

今日は翠屋も休みで士郎さんと桃子さんは多分家にいるよなぁ……。

 

別に悪い事をした訳ではないのだが何となく入りづらい。

しかしいつまでも此処で地団駄を踏んでいてもしょうがないと鍵を開け、扉を開く。

 

 

「えっと……ただいま戻りました」

 

 

そのままリビングに入ると士郎さんと桃子さんにリンディさん、なのはとユーノが居た。

どうやら丁度いいタイミングだったらしくリンディさんが打ち解け桃子さんと談笑している最中のようだ。

 

俺が扉を開けるとまずなのはとユーノがびっくりした顔をしてそのまま固まる。

多分だがリンディさんに念話で落ち着け的な事を言われたのだろう。

俺が帰ってくる事はクロノ経由でリンディさんに伝わってるはずだし特に問題ないはず……だよな?

 

 

「あれ、おかえりユウくん。早かったね」

 

「おかえりなさい、ユウくん」

 

 

そう言って労ってくれる2人。

桃子さんは俺の分のお茶を入れに言ってくれた。

とりあえずは報告とこれからについて軽くではあるが話していく。

 

 

「明日1日は家にいるんだろう?このままゆっくりしてていいよ」

 

「すいません、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

「うん、僕としても少し休んで欲しいしね。リンディさんから聴いたよ?かなり無茶してるみたいだね」

 

「えっと……そんな事はない……はず?」

 

 

言い切る前になのはとユーノ、リンディさんからそれぞれ呆れや少しの怒りを感じ黙る。

そんなに無茶な事してないと思うんだけどなぁ……。

 

 

「どうやらなのははそうは思ってなかったみたいだね?休息も大事な事だよ、ユウくん」

 

「はい、ゆっくりさせてもらいます」

 

「うん、色々話を聞かせてくれると嬉しい。

………そろそろもう少し砕けた喋り方でもいいんだよ?」

 

 

そう言って少し寂しそうに俺に言ってくるが……割と砕けた口調で話していると思うんだが……

横で桃子さんもうんうんと頷いているのを見るとそうは思われていないという事だろう。

 

 

「えっと、努力します」

 

 

今の俺の返事はこれで精一杯だ。

その後、軽く世間話をして俺は部屋に戻らせてもらった。

久しぶりの自分の部屋に少し考え深いものを感じる。

 

最初は居候させて貰う部屋だったのもあり愛着のようなものもなかったのだが、それなりにここで過ごし久しぶりに帰ってきてみるとそれも変わったみたいだ。

 

 

さて、まだ14時だし本でも読もうかな?

とはやてから借りた本とイヤホンを取り出しツァイトに差し込み音楽を聴きつつ読書に入る。

 

因みにこのイヤホンは管理局員の方から貰ったもので時折、時間があれば使っている。

 

そもそも音楽を聴く機能がデバイスにある時点で色々突っ込みたいとクロノに言われたが便利だしいいと思うけど。

 

 

「〜〜〜♪」

 

 

少し鼻歌を歌いながら本を読み進める。

いろんな人と交流する時間は貴重で楽しいけれど俺はこういう1人でゆっくりとする時間も嫌いではない。

 

 

思えば最近は必ずと言っていいほど誰かが隣に居てくれたおかげで不安もなく尚且つ寂しさも無かったが久しぶりに1人になると少し考えてしまう事も出てくる。

 

 

例えばフェイトの事。

 

アレからあの子はどうなったのだろうか。

最後に見たあの泣きそうな顔とフェイトに放たれたであろう悪意のある攻撃。

 

多分フェイトはあの攻撃を放ったであろうプレシアの元に帰ったのだろうが……

 

 

マイナスな事を考えてしまう頭を振り思考を切り替える。

 

そこからはこれからの事、ジュエルシードの事を考えている家に時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?」

 

 

コンコン、と言う扉をノックする音で思考が中断されイヤホンを外し本に栞をかける。

 

 

「ユウさん、今いいかな?」

 

「なのは?大丈夫だよ」

 

 

扉がそっと開きなのはが入ってくる。

ああ、そう言えばまだ2日前から話してないんだっけか。

 

 

「とりあえず座れば?」

 

「あ、うん。……よいしょ」

 

 

そう言って俺が座っているベットの上に乗るなのは。

俺からすれば最後に見たのはあの海の上で目が覚めたのもさっきだからそんなに時間は経って感じないが、なのはからすれば俺と会話をするのが2日ぶりになるのか?

 

 

「身体、だいじょうぶ?」

 

 

俺の横で体育座りをしつつ顔だけこちらに向けて上目遣いで不安そうに聞いてくる。

クロノの言ってた1番心配してくれてた子に精一杯の元気アピールをする。

 

 

「ああ、めちゃくちゃ休ませて貰ったからな。もうぴんぴんしてるよ」

 

「そっか、なら良かった」

 

 

そう言ってクスっと笑うなのは。

やっと笑ってくれた。

 

 

「ユウさんはそういう人だってわかってるからあんまり言わないけど、あんまり無茶な事はしちゃダメだよ?」

 

「ん、悪い。心配かけたな」

 

「本当にもう……」

 

 

そこで会話が途切れる。

正確には俺がなのはに向き直り話しかけようとした時に見た顔からつーっと一粒の涙が流れているのを見てしまったから。

 

 

「……っ」

 

 

ぐしぐしと溢れてる涙を手で拭き取るが次々と流れる物は止まらず、泣き出してしまった。

………クロノの言っていた言葉が蘇る。

 

"キミの1番近くに居てくれる子の事をもっと理解して上げたほうがいい。いくら強いと言っても本当の心中まではその本人にしかわからないのだから"

 

 

「なのは」

 

「っ!なんでも、ないから」

 

 

やっぱり強がってしまう。

……本当に心配してくれていたんだな。

少し悪い事かもしれないがここまで心配してくれていたなのはの姿をみて申し訳ないと思う気持ちと罪悪感、そしてちょっぴりと心が温かくなる感覚。

 

俺はここまで誰かに大切に思われていたと感じたのは始めの気がする。

 

 

「なのは、ごめんな」

 

「なんで、謝るの?私は大丈夫だから」

 

 

そう言って顔を反対に向け、俺から逃げる様に後ろを向く。

ここで俺が一歩踏み出さなければきっとなのはは俺にも本心を言ってくれなくなる、そんな気がして。

 

 

「なのは、本当にごめんな」

 

「っ!」

 

 

俺の出来る限りで優しくハッキリとつげる。

そしてなのはを後ろからぎゅっと抱きしめる。

自分の存在を証明する、俺は生きている、元気だ、ごめんねの気持ちを伝える為に。

 

少ししてなのはがポツリ、ポツリと小さいがハッキリと言葉を発し始める。

 

 

「……しんぱい、したんだよ」

 

「ごめん」

 

「ユウさんが、しんじゃったかとおもって……っ」

 

「本当にごめん」

 

 

少しずつ嗚咽を含みながら隠していたであろうなのはの本音がポロリ、ポロリと出てくる。

俺が心配をかけたから、俺がなのはを悲しましてしまったから。

ゆっくりとゆっくりとなのはからの言葉を聞く。

 

そして、やっとこちらを振り向き見せてくれた顔は涙を沢山流し、顔が真っ赤になっていた。

 

そのままぎゅっと俺の胸に飛び込み声を上げて泣き出す。

今まで俺に言えず我慢していた事を一身に俺に浴びせてくれる。

 

そして少しの時間が経ちなのはの嗚咽が止まり始める。

 

 

「よしよし……もう大丈夫か?」

 

「……だいじょぶじゃない」

 

 

呂律が回らない口でそう言ってまたぎゅっとしがみついてくる。

コレはしばらくこのままかな?と考えていると何やら視線を感じ扉の方に目を向けると士郎さんたちがこっそりと俺となのはの様子を伺っていた。

 

俺が声をかけようとした瞬間に口に人差し指を指してそのままごゆっくり、と手振りで伝えてくる。

 

……気を使ってくれたのかな?

ならその気遣いを有り難く受け取り、このままなのはと過ごす時間を貰おう。

なのはに話しかけながら時間が流れて行く。

30分ぐらいしてふと思いつく。

 

 

「今日は時間もあるし何処か遊びに行くか?」

 

「……どこでもいい?」

 

「ああ、なのはの行きたいところに行こう」

 

 

そう言うとうーん……と考え始めるなのは。

泣き止んでもう平気そうかな。

そう考えていると決まったのかなのはが俺に目を合わせてくる。

 

 

「決まったか?」

 

「うん、今日はここでユウさんとお話したいな」

 

 

なのははこのまま俺の部屋で過ごしたいという事。

 

 

「なら、そうしようか」

 

 

そこからは何気ない、でも久しぶりに魔法関係抜きの話をした。

不思議となのはと2人で会話をするのが久しぶりな気がして俺としても楽しい時間が流れていく。

 

ふと時間を見ればもうすぐ日が落ちる。

そろそろ夕食の時間だ。

 

 

「ねぇ、ユウさん」

 

「なんだ?」

 

 

先ほどまでの表情から少し真剣な口調も顔になる。

 

 

「もう、本当に危ない事はしないでね?」

 

「ああ、するつもりはないよ」

 

 

そう言うとむぅ……と言った表情になる。

何故?

 

 

「その返事だとまたユウさん"体が勝手に動いたー"とか言うでしょ」

 

「うぐ、それは……その」

 

 

そう言われてもホントに身体が勝手に動いてしまう事があるのだが……

そう考えているとしょうがないなぁ……という顔をしながらなのはにこう言われてる。

 

 

「ならユウさん?あの時の約束使うよ。何でも私の言うこと、聞いてくれるんだよね?」

 

 

ここでそれを使うか……

 

 

「出来る限り危ない事と無茶な事をしない!約束、してくれる?」

 

 

少し上目遣いで懇願する様に、ぎゅっと俺の裾を掴みながら言ってくるなのは。

……出来る限り、努力はしてみるか。

 

 

「わかったよ、出来る限り無茶な事はもうしない。それでいいか?」

 

「うん、約束」

 

「ああ、約束だ」

 

 

そう言ってやっと笑顔を見せてくれる。

………まぁ俺も死にたくはないし、なのはの言ってる事は正しい。

正直、思い返して見れば最近は無茶な事をし過ぎた様な気もする。

 

 

 

「なら全部許してあげる」

 

「ああ、ありがとう」

 

「うん、そろそろ下に行こ?お腹すいちゃった」

 

 

そう言って俺の手を引いて急かしてくるなのはに先ほどまでの涙はなく、今は笑顔のみ。

 

 

「ああ、行くか」

 

 

 

今はこの束の間の休息を有り難く過ごさせて貰おう。

だがまだ俺の胸に残っているのは最後に見たあの子の泣きそうな顔。

 

 

あの子は今、どうしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。
ミスがあり遅れてしまい申し訳ありません。


感想、評価の方お待ちしております。

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