Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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今回はお先に書かせていただきます!
前半は順当なお話ですが後半は一種のIFのようなものと捉えて読んでいただけると幸いです!

少し長いですが何卒最後までよろしくお願いします。


第27話 スターライト・ブレイカー 「IF」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュート!」

 

「っ!」

 

 

 

2つの少女のぶつかり合い。

なのはが放つ高速の射撃魔法をフェイトのバルディッシュが切り裂きまた空に昇る。

 

 

この空の上で激しいぶつかり合いが行われているとは他の誰も想像していないだろう。

 

1人はたった1人の母親の為、どんなに傷つけられようとその絆を信じ戦い続ける。

 

1人は救いたいと、友だちになりたいと願った相手のため、その想いを伝え分かり合うために。

 

 

 

「本当は……」

 

 

アルフが呟く。

 

 

「本当は戦わなくて良いはずなのに……どうしてこんなにも残酷な縁ばかり結んじまうのかね?アタシたちとアンタたちは」

 

 

その問いに対しての答えは残念だけど誰にも分からないと思う。

だけどきっとこの戦いの果てに残るものは決して悲しいものだけじゃないって思える。

 

 

2人の激しい戦いの中アースラはきっとこの戦いを何処から監視している、或いは干渉してくるであろうフェイトの母親、プレシアの行方を探している。

 

そして俺たちはなのはとフェイトの戦いを身守るのみ。

 

 

また空で光が弾ける。

 

桜色の粒子が集まり放つ。

対には金の息吹。

何処かこの戦いを見ていると不思議と幻想的にも思えてしまう。

 

 

 

「はぁ!」

 

 

フェイトが一気に接近しなのはの苦手な近接の範囲に入り一閃。

だがこれまでに戦っていたのとその抜群のセンスでなのはは一気に上に上がり避け切る。

 

 

_____だが、その距離が開いた瞬間フェイトの瞳が変わる。

 

フェイトの持つバルディッシュの形状が変化し、あの射撃魔法を打つためにシフトする。

 

だがなのはもすぐに気づき体制を整えようとするが………

 

 

 

「ッ!」

 

 

なのはの両手両足には既にフェイトからのバインドがかけられていた。

ただ見ていた俺ですら気付かないスピードでの高速魔法なんて正直避けれる気がしない。

 

そしてフェイトの周りには途方もない数の魔力生成弾が集まり、

 

 

「フォトンランサー・ファランクス!!」

 

【Photon Lancer Phalanx Shift】

 

 

なのはへと放たれる。

それはなのはへと真っ直ぐと、まるで元々あった場所に帰るかのように吸い込まれ命中していく。

 

あの攻撃を自分は全部受け切れるかと思考するが同時に無理だと結論付けてしまう程に絶望的な魔力だった。

 

フェイトも決着がついたのだと思ったのだろう。

ゆっくり杖を下ろした瞬間だった。

 

 

「えっ……!?」

 

 

桜色の紐のようなバインド魔法がフェイトの両手両足を一気に縛る。

……煙が晴れた先にはボロボロになっていてもまだ倒れていない、まだ諦めていないなのはが魔力を貯め始めていた。

 

 

「私は耐えたよ……だから次は私の番……!!」

 

 

「っ!」

 

 

ならばとフェイトの方も耐える体制になる。

なのははレイジングハートに溜め込んだ魔力更に圧縮し放つ俺の知っている限り最高の一撃。

 

 

「ディバイン……バスター!!!」

 

【Divine Buster】

 

 

なのはの魔力色である桜色と少しの白色が混ざり合いフェイトを飲み込む。

 

そのままなのはの放ったディバインバスターが少しずつ消え、霧散する。

 

果たしてフェイトは_______

 

 

煙の晴れた先その場所に影が見え、フェイトはたしかに倒れずに耐え切ってみせた。

 

 

「マジか……」

 

 

つい呟いてしまう。

あの射撃魔法はなのはの切り札であれ以上のものはないはず。

そしてフェイトがそれに耐えたということは。

 

 

「ユウ、まだだよ」

 

 

横にいるユーノのが何処か自信満々でまだ決着はついてないと言う。

 

 

「だけどあれ以上の魔法は……」

 

「あ、そっかユウはなのはの測定の時いなかったんだっけ?」

 

 

合点の言ったように納得する様にユーノが俺に悪戯っぽい笑みを向ける。

測定?測定とはあの魔力ランクや希少能力を見分けるものの事だろう……か?

 

まて、希少能力?

そこまで考えて視線をフェイトに戻すとフェイトが少し上の空を何処か呆然と見つめていた。

そして俺の視線も自然にその方向、なのはがいる方に向けて。

 

 

________桜色の星を見た。

 

なんだ?あの魔力の強さは。

俺はあんなにも強いもの見たことがない。

あの巨大な塊が純粋な魔力塊だとでもいうのだろうか?ならばデタラメすぎる。

 

 

「あれはなのはのレアスキル、"魔力収束"だよ」

 

「魔力収束……」

 

 

横にいるアルフも呆然と呟く。

何かユーノとなのはが話していたのは知っていたがここまでのものをなのはが持っているとは、正直思わなかった。

 

魔力収束は名の通り、散らばった魔力を掻き集め更に倍加させる。

ユーノから聞いた説明だけでどれだけのものか、どれだけ汎用的なものかわかる。

今回は放ったディバインバスターの魔力を集め直し更に自分の魔力をそこに追加しているのだろう。

 

あの小惑星のような巨大な魔法。

あれを目の前にしている恐怖は正直味わいたくない。

 

 

「いくよ?フェイトちゃん……受けて見て!私の全力全開!!」

 

 

なのはが大きく振りかぶる。

フェイトもなのはからの言葉でハッとし耐えようとするが……

 

 

「スターライト………」

 

 

それよりも先に巨大な魔力の渦が目の前に迫ってしまう。

 

 

「ブレイカー!!!!!」

 

 

 

 

 

世界から音が消える。

光が満たし視界が真っ白になり………

 

 

 

 

 

次に見たのは直撃し、力なく落ちていくフェイトの姿。

 

そしてそれを受け止めるなのはの姿。

どうやら決着はついたみたいだ。

 

なのはの勝利で落ち着いたのはいいがもしクロノたちの予想通りこの光景をプレシアが監視しているなら………

 

 

《Warning!!》

 

 

俺の胸ポケットのデバイスからの音声、危険を訴える。

やっぱり来たか!

すぐにバリアジャケットにセットアップしようと取り出す。

 

 

瞬間目の前が真っ白になり点滅する。

自己に起きたことが一瞬理解できず自分のデバイスを落としてしまう。

 

 

「ユウ!?」

 

 

目の前でフェイトのバルディッシュが雷に撃たれるのが見えた。

そして俺自身も狙われていたという事だろう。

 

2つの雷が俺とフェイトのデバイスにそれぞれ落ち、フェイトの方はデバイスが砕けてしまい、直撃した俺はジャケットを着ていなかったせいでもう意識を保つのもやっとだった。

 

算段ではプレシアの雷撃を俺が防ぐという予定だったのだが全て予想してたってことか……

 

雷撃が止み膝を落としてしまう。

 

 

「ユウ!しっかりして!」

 

「おい!しっかりしな!!」

 

 

ユーノとアルフの声が少し遠く聞こえ少しずつ身体の感覚が無くなってくる。

 

視界に残ったのはフェイトのバルディッシュから吐き出されたジュエルシードがどこかへと消える光景となのはとフェイトが此方に飛んでくる光景。

ゆっくりとスロー再生の様に見えるこの光景に何処か俺は俯瞰していた。

 

 

そのまま俺の意識は常闇へと沈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラ内部のメインモニターの映像にてなのはとフェイトの戦いに決着が着く。

 

何だかんだと心配していたクロノも気が少し緩むがまだ目的のプレシア・テスタロッサが干渉してこない以上位置の割り出しが出来ない。

 

 

「なのはちゃん、フェイトちゃんを確保。どちらも無事みたいだよ」

 

「そうか……なら次は」

 

 

次はプレシアからの攻撃をユウが止めると言う算段だ。

そこから奴の居所を掴む。

少しの緊張が走り画面に注目した瞬間ーー

 

 

「来ました、次元魔法です!!」

 

 

局員の1人が声を上げる。

そこからそれぞれが一気に割り出しへと乗り出す。

画面でもセットアップしようとするユウが映り全て順調のはずだ。

 

はず、だった。

 

 

「え……2つの次元魔法を探知……?」

 

 

エイミィの報告に一瞬頭が真っ白になる。

そして_____

 

 

ジャケットを着ていない無防備なユウに巨大な魔力の雷が突き刺さる。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

迂闊だった……。

前回の戦いからユウを同時に排除するかもしれない……その可能性を見逃してしまっていた……!

 

生身であんな攻撃を受けてしまえばそれは死という結果に繋がってしまう可能性すらある。

 

………落ち着け、冷静に対処するんだ。

 

 

「すぐに応援を!

そこのキミたちは医療室ですぐにでも治療を行えるように準備するんだ!エイミィは引き続き割り出しに掛かってくれ!」

 

 

すぐに皆が指示に従い行動を始める。

頼む間に合ってくれ……

 

画面に映るユウに必死に回復魔法をかけるユーノとアルフ、そして真っ青なまま必死に叫ぶなのはとフェイト。

 

それぞれを早急に対処すべくクロノ冷静に行動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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__________?

 

 

 

 

___________________?

 

 

 

 

………………………………………?

 

 

 

 

 

 

 

深い、深い所から意識が覚醒する。

 

 

ふと、顔を上げると見たことのない景色。

 

壊れかけのビルにヒビの入った道路。

 

そしてあらゆる場所に落ちている故意に壊された様なロボットの様なもの。

 

まるで何処かの戦場かそれもモチーフにした訓練場の様にも思える。

 

何か大事な事を忘れている気がする。

 

ゆっくりとこの壊れかけた道を歩き始め辺りを見回し散策していく。

 

 

人影は特になく伽藍としたまるで無人の世界にも思える程にここは静かである意味、何もない。

 

崩れかけのビルの横を通るとガラスに反射し自分の姿が映る。

 

……?何か違和感。

 

鏡に写る自分自信の姿、いや格好に何処か不自然な感覚を覚え立ち止まる。

 

もちろん他の顔や身体つき、視力などは特に違和感もなくいつもの俺だと胸を張って言えるが今着ているこの服は…………

 

 

「どう見ても管理局の制服……だよな?」

 

 

くるっと回りながら後ろ姿も確認するがクロノたちが着ていた服に酷似している。

 

何なんだこれは。

 

何処と無く嫌なものが、苦手な感覚が体を支配していく。

 

 

(もうユウ!訓練中よ!?)

 

「っ!?」

 

 

突然誰かの声が聞こえて動揺する。

 

今のは……?

 

俺の記憶にある限り聞いたことのない声だった。

 

 

(何驚いてるのよ、とりあえず終わったみたいだし戻ってくれば?)

 

(え?あ、ああ)

 

 

何処か有無を言わさない感じの声音につい返事をしてしまうが戻るとは一体どう言うことなのだろうか?

 

この空間から出ようにも見渡す限り屋外にしか見えずどうしたらいいのかわからない。

 

 

(もう、ホントに何してるの?)

 

(えと、ごめん……出るってどうすればいいんだ?)

 

 

ここは素直に謝り聞くのが一番と判断して行動したが明らかに呆れた感じの声が帰ってくる。

 

 

(はぁ……ホントにもう、そこの場所から転移させるわよ?バリアジャケットも脱いでるし……)

 

 

何やらぶつぶつと言われているがどうやらここから出る事が出来るみたいだ。

 

助かった………。

 

次の瞬間、ふわっとした感覚と共に辺りの風景が変わる。

 

 

ここは……?

 

何処かの部屋のようだが明らかに俺の知っているものではない。

 

鉄の自動ドアに複数のモニター、更には宙に浮かんでいる謎の機械の数々に翻弄される。

 

そしてその空間の中でジト目かつ呆れた様な口調でその子は俺に話しかける。

 

 

「ホントになんでステージから出ることも出来ないのよ……はぁ……」

 

 

先が思いやられるわと呟きながら端末を操作する。

 

その2つに結ばれたオレンジ色のツインテールを揺らすこの子は……どなた?

 

 

「えっと……君は?」

 

「何?また何かのおふざけ?」

 

 

カタカタと端末を操作しながらまたため息をつかれる。

 

この子はどうやら俺のことを知ってるみたいだけど……俺には全く記憶にない。

 

そのままどうしていいか分からず黙っていると呆れながらも此方に振り向いてくれる。

 

 

「そもそも名前なんて尋ねなくてもココに書いてあるでしょうが……」

 

 

と自分の胸部のあたりを指す。

 

そこに書いてある文字は

 

 

「ティアナ・ランスター……?」

 

「ん、もういいでしょ。そろそろ報告してきたら?」

 

 

多分食堂にいると思うわよ、言ってそのまま俺は扉の外へ押し出される。

 

外に出るとアースラの様な廊下が広がりやはり見覚えは無い………無いと思う。

 

だけど、何処か懐かしいと胸の内側で逆巻く物がある。

 

 

そのまま真っ直ぐ進んでいると今度はピンク色の髪の少女が前を歩いて来た。

 

 

「あ、ユウさん!お疲れ様ですー」

 

「えっと、お疲れ様」

 

 

とりあえずと胸の名前のところを見る。

キャロ・ル・ルシエ?でいいのかな。

 

 

「訓練してたんですよね、副隊長と隊長たちなら食堂に集まってましたよ」

 

「そっか、ありがとう。行ってくるよ」

 

 

とりあえず無難な挨拶を返してみる。

多分おかしな事は言ってないと思うけど……

 

と思っていたのだがキャロが何処か不思議そうな目でを俺見つめていた。

 

 

「ど、どうした?」

 

「えっと……何処か雰囲気が違うような?」

 

「そんな事ないと思うけど……」

 

「うーん、なんか声音が優しいというか……?」

 

 

ヤバイなんか疑われてる。

 

何も悪い事はしていないはずだが、何処か焦ってしまう。

 

 

「ご、ごめん!とりあえず報告だけ先に行ってくる!」

 

「あ!」

 

 

横を小走りで通り抜ける。

 

流石に追いかけては来ないがどうやら今の俺に何か違和感感じているのは間違いないようだった。

 

再びこの機械チックな廊下を歩きながら思考を深める。

 

ここまでの事を整理しよう。

 

1つ、俺は気づいたら知らないところに突っ立ていてはたまた知らない場所に転移した。

 

2つ、俺には覚えのない子たちが何故か俺の事を知っている。

 

3つ、俺の着ている服装だ。コレはやはりどこからどう見ても時空管理のもので間違いないと思う。

 

 

そして……この名前のバッチの様なもの。

 

そしてポケットに入っていた身分証の様なものにバリバリ時空管理局第6課空戦陸士と書かれている。

 

というか陸? 空? 所属とかもよくわからないのに、これだけではなにも情報を得られない。

 

 

そのまま歩いていると隊長なる人たちがいるであろう食堂の前に着く。

 

 

………少し緊張してきた。

 

もしかしてまた記憶でもなくしたのか俺?

そんなぽいぽい記憶喪失ってなるもんなのかな………

 

少しでも緊張を解そうとそのまま思いっきり深呼吸をしようと空気を吸い込む。

 

 

「すぅ………」

 

 

ガラッ

 

 

「何やってんだ、オマエ」

 

「はぁ!?」

 

「あ?」

 

 

息を吐いた瞬間に扉が開き赤髪のおさげを下げた少女に怪訝そうな顔をされてしまう。

というか言葉遣い悪いな、おい。

 

 

「まぁいいか……で、終わったのか?」

 

「え?」

 

「訓練だよ、訓練。報告書貰いに来たんじゃないのか?」

 

 

あ、そっか報告しに来たんだっけ。

すっかり忘れていた。

 

 

「ああ、報告書を貰いに来たよ」

 

「今ならアイツならいるしとっとと報告書貰ってきちまえ」

 

グイッと親指で中を指しながらじゃあなと去ろうとする。

えっと名前名前……っと

 

 

「ああ、ありがとうヴィータ」

 

「っ……お、おう、またあとでな」

 

 

そう言って去っていく。

 

………一瞬、一瞬だが確かに俺が彼女の名前を呼んだ時目を見開いた気がした。

 

もしかして呼び方ミスった?

 

 

「あっ……そういや食堂にいるのって隊長と副隊長の人たちだけってキャロが言ってた様な……」

 

 

少し嫌な汗が垂れる。

 

どう考えても下っ端の俺が上司を呼び捨てにした挙句タメ口……

 

 

「はぁ……後で謝ろ……」

 

 

なんか気分が萎えた……

とりあえず報告とやらだけしに行かなきゃなぁ………

 

 

そのまま扉を開け食堂に入る。

 

中は清潔感があり広く20人程度なら簡単に収まるほどの大きさで、テーブルも6つもある大きい施設だ。

流石だな管理局の施設は。

 

 

「_______♪」

 

そしてそのテーブルの1つで少し頭を揺らしながら何処か聴いたことのある鼻歌を歌っているサイドテールの女性が1人。

 

どう見ても俺より年上だし管理局の制服も着ている。

彼女が隊長とやらで間違いなさそうだ。

 

そのままその人に向かって歩いていく。

 

ふと、何処かこの人の後ろ姿を見た事があるような……と考えた所でつい、口が滑る。

 

 

「………なのは?」

 

 

「_______っ?」

 

 

 

 

その人がゆっくり此方に振り向く。

 

ああ、やっぱりなのはそっくりだ。

何処か桃子さんの雰囲気もあるがもしなのはが10年くらいしたらこの人の様になるだろうと予想がつく。

 

だけどどうして先ほどから固まって何処か揺れるような眼差しで俺の事を見つめているのだろうか?

 

 

「あの……?」

 

 

そのまま立ち上がりゆっくり俺の方に警戒しながら歩み寄ってくる。

 

何故に無言なのか。

 

 

「今、ユウくん私のこと……」

 

「はい?どうしました隊長」

 

 

とりあえず敬語の方が良いだろうと判断し直ぐに切り替える。

 

するとこの隊長さんはまたえっ?えっ?と何やら焦っていた。

 

面白い人だな、ホントになのはの大人版みたいだ。

 

 

「………気のせい?」

 

「えっと、よく分かりませんけど訓練の報告に来ました」

 

「あ、うん。それじゃコレに記入しておいて」

 

 

そのまま紙を渡される。

ふむ、管理局と言えどまだ書類は紙のままなのか。

 

てっきり全部電子化してるのかと少し胸を躍らせてしまった。

 

 

「明日まででいいからキチンと書いといてね?ユウくん何時も適当に書くんだから」

 

 

パシンッと軽くおデコを小突かれる。

 

……少しドキッとした。

 

大人っぽい人なのに随分と子供っぽい仕草というか俺の方が少し身長が高いのもあり上目遣いなっているのも効いてる。

 

と言うか俺ってそんなに適当な奴って認識なのか此処では。

 

 

「ん、どうかした?」

 

「あ!や!何でもないです!」

 

 

落ち着け、落ち着け。

 

とりあえず今するべき事を確認するんだ、ここはどこなのかを確かめるのが一番優先度の高い事だ。

 

……なのだが、まだ目の前の女性がジーッと俺の目を見たまま何かを確かめる様に近づいてくる。

 

 

「あ、あの?」

 

「んー……」

 

 

そしてコテンっと頭を傾げ"やっぱり気のせいだったかなー?"なんて言っている。

 

 

「まぁいいや。ユウくん今日はもう上がりだよね?」

 

「え、えと……はい」

 

 

とりあえず話を合わせろと俺の第六感も言っている。

 

 

「うん、ならちょっと私とお出掛けしない?」

 

「へ?」

 

 

お出掛け?

それ自体は別に拒否する理由はないのだがこれ以上一緒にいたらボロが出そうで少しヒヤヒヤし出していたり……

 

 

「ダメ、かな?」

 

「……いえ、お供します」

 

 

だからその仕草はズルいって……

 

 

「やった!なら……」

 

 

と行き先を話そうとしたのだろうけど此処で食堂の扉が開き別の人が入ってくる。

その人は……

 

 

「あ、ユウお疲れ様。訓練終わったの?」

 

「え………?」

 

 

その人は綺麗な金髪を下ろし優しい笑顔と赤い瞳で俺を見つめていた。

____その顔がフェイトと重なる。

 

そしてまたもう1人後ろから入ってくる女性。

 

 

「あ、ユウくんお疲れやね。ティアナから聞いたで?また出られなくなったんやろ?」

 

 

ザザッ……とその人の笑顔が車椅子の優しい少女と重なる。

 

何だ……コレは?

 

頭の中で更に混乱していく。

 

俺の知っている少女たちに似ている、いや似過ぎている。

 

だけど、まだわからない、この人たちはまだ名乗って居ないんだ。

 

もしかしたら赤の他人の空似で違う人の可能性も……

 

 

「 フェイトちゃんもはやてちゃんもお疲れ様 」

 

 

 

_____ああ、やっぱりそう言う事なのか?

 

この2人がフェイトとはやてなら、今後ろから俺の肩に垂れているこの人は

 

 

 

「うん、なのはもお疲れ様」

 

「なのはちゃんもお疲れやね」

 

 

高町なのは、本人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……何だかなぁ……

 

 

もしかしてとは思ってはいたがどうやら此処はミッドチルダと言う場所らしい。

 

クロノから聞いた彼らアースラの人たちの故郷だ。

 

そっと横でまだ談笑してる3人を見る。

 

大人になっても子供らしく無邪気にそれでいて綺麗になったなのは。

 

年相応に成長し、それでいて俺が見た事のない穏やかな笑みを浮かべるフェイト。

 

いつも何処か寂しげに笑っていたはずなのにそれは一切見せず太陽のような笑みのはやて。

 

 

俺は夢でも見ているのだろうか?

 

はたまたコレは現実で今俺の頭に入っている小さな頃のなのはたちが偽物だったのだろうか?

 

ーーきっとどちらも本物だと、根拠もなく思ってしまうのはいけない事だろうか?

 

 

そんな事を考えていると何やら3人から視線が来る。

 

 

「どないしたんや?今日はやけに静かやな」

 

「大丈夫?体調悪いの?」

 

「あ、えっと……なんでない、です」

 

 

はやてとフェイトの2人がホントに心配そうに聞いてくる。

参ったな、考え事をしていて話を聞いてなかったなんて言えない……。

 

ならええけどなーなんていいながらコーヒーを飲んでいるはやて。

 

そしてフェイトはあっ、と何かを思い出したように俺に詰め寄って来る。

だから近いって!!

 

 

「ユウは今日もう上がりだよね?」

 

「えっと、はい」

 

 

フェイトに敬語とか慣れなさ過ぎて少し話し辛いがそれ以上に距離感が……

 

そんな俺の気持ちに気付くはずもなく俺の返事になら!と更にずいっと近づいて来る。

 

 

「ならこの後遊びに行かない?私、ユウと行きたい所があって……」

 

「ちょっとまって!」

 

「せや!ちょい待ち!」

 

 

なのはとはやてがフェイトにストップをかける。

 

……今更だけどなのはとフェイトが仲が良さそうなのはまだ予想していたけどはやてとも仲良くなれたんだな。

 

そんな3人を傍観していると最初は誰と誰が遊びに行くと大人っぽい話し合いをしていたが気付けば"私が最初だもん!"とか"私もユウと行きたいとこが……" やら "今日は一緒に食事するって約束が……"と少しずつヒートアップしていく3人。

 

そして最終的に

 

 

「ユウは!」

 

「誰と!」

 

「遊びに行くの!?」

 

 

フェイト、はやて、なのはの順にずいっと顔を近づけられ責められる。

えっと……選べと?

これは誰か一人に絞ると何となくめんどくさい気がする……

 

と言うかこんな場面の話を士郎さんと恭也から聞いていたせいでそれは間違った選択肢だと俺は知っている。

 

確かこう言う時は……

 

 

「えっとみんなで……」

 

「ユウ?」

 

「ユウくん?」

 

「ユーウーくーん?」

 

 

圧、圧がすっごいよこれ。

えっとえっと……どうすればいいんだろ……

 

もはや助けはないとどうにか自身の知識でこの場面を切り抜けようとしていた時ガシャッと扉が開く。

 

 

「お、報告書貰ったか?」

 

 

それは俺にとってこの場ではまるで天使のような声だった。

 

 

「あ、ヴィータ!」

 

「え……?」

 

「ヴィータの事……名前で……」

 

 

あ、やべ……またやっちまった。

 

だけどどこかヴィータが嬉しそうにドヤ顔しているのは何故なんだろうか?

 

 

「?……ああ、なるほどな。おい、ユウ。さっきの約束したヤツいこーぜ」

 

「あ、ああ」

 

「それじゃユウは借りてくぞー」

 

 

とそのままヴィータに引っ張られて行く。

 

あれ、やけにあっさりと逃してくれるような……と3人を見ると何処か羨ましそうに、寂しそうに俺のことを見つめていた。

 

その表情がやけに俺の胸に残る。

何か、何か言わなきゃと思うが思いつかなくて、つい____

 

 

「ま、また今度な!なのは、フェイト、はやて」

 

 

つい、名前を呼んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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むぅ……せっかくユウくんを誘ったのにまさか2人に見つかるなんて……

 

でもここは絶対負けられないの!久しぶりに重なった休みだし偶にはユウくんと2人で"あの時"みたいに遊びたい!

 

だけどその気持ちはフェイトちゃんもはやてちゃんも一緒みたいでなかなか折れてくれない……

こうなったら!

 

3人とも思いついた事は一緒でユウくんに迫る。

 

それに困ったように目を泳がせながら必死考えるユウくん。

 

……どうも先ほどからのこの仕草が気になる。何となく何時ものユウくんと違うようでそれでいて何処か……"ユウさん"に重なる。

 

でもそれは有り得ないよね、まだこのユウくんは“15歳”で私があの時出会ったユウさんは16歳。

 

ならまだ昔の私と出会っているはずがないんだ。

 

だから私たちと話す時も何時も敬語で、何処か他人行儀でそれでもう名前も呼んでくれない。

 

……こんなに近くにいるのにそれは凄く切なくて悲しい。

だけどそれでも私はユウくんと一緒過ごしたいって思うから。

だからちょっとだけワガママになっちゃう。

 

そうして少し困ったユウくんを見て少し楽しくなってきてた時、食堂のドアが開いた。

そこから入って来たのはヴィータちゃんだった。

ヴィータちゃんはすぐにユウくんを見つけると

 

 

「お、報告書貰ったか?」

 

 

と気軽にユウくんに話しかけるヴィータちゃん。

それに私は少しびっくり。

ヴィータちゃんは普段からユウくんに少し厳しいからユウくん自身が少し苦手がっていた。

それでいてヴィータちゃんもヴィータちゃんで今のユウくんに何処かぶつかっちゃってた。

 

だから今回もユウくんは直ぐにいつもみたいに苦笑いしながら"すみません、副隊長"って意味もなく謝っちゃって怒られるんだと思ってた。

 

だけどユウくんはヴィータちゃんを見た瞬間、

 

 

「あ、ヴィータ!」

 

「えっ……」

 

 

名前を、呼んだ。

 

何処か嬉しそうに、親しい友人のように。

それは私にとってとても衝撃的で、それは私にとって何処かショックで、それでいて期待してしまうものだった。

 

フェイトちゃんとはやてちゃんも凄く驚いてた。

そりゃそうだよね、だってもしかしたら

 

 

 

 

 

 

 

____________きっと、未来で_________

 

 

 

 

 

 

 

 

"また会えた"って思っちゃうよね。

 

でもきっとそれは勘違い。

 

あの時お別れしたユウさんはもういなくて、それでヴィータちゃんの名前を呼んだのは他の理由があって。

 

だから変な期待はしないって、そう心に言い聞かせようとしてるのに……

 

つい甘えてユウくんを見つめてしまう。

 

ヴィータちゃんに引っ張られてるユウくんは私たちを見てまた困った顔をしている。

 

 

そりゃそうだよね、だってコレは私たちの勝手な思い込みで押しつけだ。

 

だからもう_____

 

 

 

「ま、また!」

 

 

え?

 

 

「また今度な!なのは、フェイト、はやて!」

 

 

 

久しぶりに彼の声音で聞いた私の名前は、酷く懐かしくて。

その表情を見た瞬間また私は……

 

 

「期待、しちゃうよ……もぅ」

 

 

また貴方に甘えたくなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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まぐまぐとアイスクリームをひたすら食べているヴィータを横目に自分の財布を見て少しため息。 

 

いや、助けてもらったから文句はいえないけどさ……どんだけ食べるんだよ………

 

 

「しゃあ!次はいちごな!」

 

「まぁ……いいけどさ」

 

 

一応助けられたしアイスならいくらでも奢ると豪語した手間引けないというのも正直あるが……

 

それよりも

 

「うまうま〜♪」

 

 

必死にアイスを口に運び少し汚してしまっても気にせず食べる姿に思わず笑みが溢れる。

 

この子の笑顔はまた癒される。

なのはやフェイト、はやてともまた違った感じだなぁ……まぁ上司だけど。

 

そんなことを考えて癒されていると視線が合う。

 

 

「なぁ、ユウ」

 

「ん?」

 

「何でさっきからじーっと見てくんだ?食いづらいんだよ」

 

 

ぶすぅっと不機嫌になるヴィータ。

そりゃ失礼しましたと言いつつそっぽを向く。

 

 

「む、それはそれでムカつくな……」

 

「どうしろっていうんだ……」

 

「それはお前が考えろ」

 

 

うーむこの子は随分とその……

 

 

「女の子らしくないなぁ……」

 

「あん?」

 

 

おっと。

 

なんかこの世界に来てから妙に口が軽くなったというか……なんか俺が俺じゃないみたいというか。

 

 

「ふぁ……」

 

「ん?眠いのか?」

 

 

むぐむぐと口を動かしながら気遣ってくれるのは嬉しいのだが、飛んでる、いちごのアイスクリームが飛んでくるから飲み込んでから話して。

 

 

「まぁ今日もお前は朝早かったしな」

 

「ん、そうだっけ?」

 

「何言ってんだよ、いっつも口癖のように言ってんじゃねえか。"俺は才能が無い分人一倍訓練したいんだ"って」

 

 

"この俺"はそんな奴なのか?

なんだかあまり想像がつかないなぁ……

 

 

「まぁここもしばらく空いてるし仮眠しちまえばいいんじゃねえか?」

 

「ふぁ……ん、そうしよかな」

 

 

やばいな、どんどん眠気が強くなってくる。

少しフラッとしたぞ今。

 

 

「フラッフラじゃねぇか、ほれとっとと寝ちまえ」

 

 

そう言ってヴィータが俺の手を引く。

ってこれだと……

 

 

「いや、流石に……」

 

「ん?別に気にしねーよ」

 

 

そのまま倒れた俺はヴィータの小さな膝の上に倒れこむ形に。

なんか、危なくない?コレ。

 

何が楽しいのか少しご機嫌そうに俺の頭を撫でてくれるヴィータ。

 

む、悔しいがかなり心地よくどんどん睡魔が………

誰かに頭を撫でられたのは初めてかもしれないがこんなに気持ちがいいとは知らなかった。

 

そのままゆっくりと瞼が落ちてくる。

 

 

「お休みな、ユウ」

 

「ん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお疲れ様でした!
お分かりかもしれませんが一応書いておくとここから少しづつstsのキャラクターも出てくるお話があります。

それでは評価、ご感想お待ちしております!

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