Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第28話 時空の彼方にて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"自分自身"とは何だろうか?

 

例えばそれは明るい人、暗い人。

気さくな人、難しい人。

 

誰かを見て誰かに印象を持たれそれを自身で噛み砕き消化して出来たものが自分とも言える。

自分自身とは誰かから肯定されたものだ。

 

しかし自分を自分で解析し自分なりに解釈してその通りに振る舞う。

それも自分自身と言う風になるのでは無いのだろうか?

 

誰かから肯定された自分と自分自身が肯定し、作り出した自分。

どちらが正しくてどちらが本物なのか。

 

それはきっと_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ……ピッ……と言う小さな音が聞こえ眼が覚める。

そのまま白く機械的な天井が目に入り起き上がろうとするが上手く力が入らず身体を起こせない。

 

 

「っ………?」

 

 

そして口も上手く動かせず少し息が漏れるだけで声もろくに上げる事が出来ない。

 

それでも自分の状況を確かめようと少し動く手と頭で周りを見回し手探りに何かを探す。

 

横に顔を動かし目に入ったのは何かの数字を表しピッピッと音を立てている機械に点滴の様な物が吊るされそこから伸びたパイプが俺の手についている。

 

そこでここが前自分が倒れた時に使っていたベットでここが医療室だという事に気づく。

 

……なんだか凄く息苦しい。

 

そう思い動く手で口の辺りを確認すると何か付けられていた。

それを力任せにぐっと外し、空気を吸い込むと肺に少し痛みが走る。

 

 

「っ………ぁ」

 

 

だが先ほどまでの息苦しさもなくぼーっとしていた頭に酸素が回り出しぼやけていた視界がクリアに広がる。

 

そのままゆっくりと深呼吸を繰り返していると身体が動くようになってくる。

 

どうやら先ほどまで吸っていた薬のせいか、麻酔のようなものをかけられていたのだろう。

それが抜け少しずつ体が動かせるようになり始めた。

 

10分ほどで体を起き上がらせる事ができ、ぐっと身体を伸ばすとぼきぼきと骨がなる。

 

どうやらそこそこ眠っていたようで少し気怠いが問題ない。

 

そのままベットから立ち上がろうとすると力が入らず膝をついてしまった。

 

 

「……?」

 

 

何故こんなにも疲労しているのだろうか?

 

もう少しだけ休ませてもらおうとベットに座り直し、そういえばと自分のデバイスを開き時間を確認しようとして気づく。

 

 

「……なんだ、この服」

 

 

それは薄緑で生地が薄いドラマや映画で見るような病院服だった。

何でこんなの着てるんだ?

 

それでは俺の服やデバイスはどこにいったのだろうかと思い自然と部屋を見渡すと反対側の簡易テーブルにデバイスと少し破れて焦げた後のある着慣れたジャージが置いてあった。

 

それを見てゾクッと何かが背中に走り、

 

 

 

「っ…………うぇ……」

 

 

少しの吐き気と痛みが後から身体を襲って来た。

 

……思い出した、そっか俺、撃たれたんだっけ。

 

何処か第三者の目線で冷静な思考を持てているが身体は言うことを聞かず始めて味わった死というモノからくる吐き気と恐怖が止まらない。

 

フラッシュバックするのは焦げた自分の肉の匂いとゆっくりと感覚の無くなっていき消えゆく意識。

 

何も出すものもなく近くにあったゴミ箱に胃液だけが流れていく。

 

少しでも落ち着かせようと横に置いてあったペットボトルの水を口に含み吐き出すのを2、3回繰り返しやっと落ち着く。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

まるで今までフルマラソンでもしたかの様に呼吸が荒げ苦しい。

息を落ち着かせる為ゆっくりと深呼吸しながら水を飲む。

 

 

「っはぁ……」

 

 

やっと落ち着き冷静になれる。

 

ゆっくりとツァイトを手に取り時間と日日を確かめるとアレからと3時間と少ししか経っていない事に違和感を覚える。

 

だが身体はもう2日は寝てたのでは無いかというくらいには怠く鈍っている。

 

 

もう動かせる身体を起き上がらせ、着ていた服を脱ぎ少しボロくなったジャージに着替える。

そして鏡に映った何時もの自分自身。

 

包帯を頭に巻き、所々何時もとは違うがそれでも顔や身体つきは変わらない。

けど、何処か違和感がある。

 

 

「何か……何か忘れてる気がする」

 

 

鏡に映る自分に問う様に口から言葉を吐き出す。

何だ、何を忘れている?ここで目覚める前に 何か/何処かを 見て何か/暖かさ を感じ、そして思い出した筈なのに。

 

それは手からこぼれ落ちる砂の様に失われていく。

 

何かを感じたという事を忘れ、ナニカを感じた筈なのに思い出せず、気持ちの悪い感触と汗が背中をつたう。

 

何か/誰かに突き動かされるように、何かを求める様に体が、足が動き出す。

 

扉を開き廊下を歩くたびに何処かデジャヴの様なものを覚えながらブリッジへと向かう。

 

ゆっくりとゆっくり一歩ずつ重い足を引きずりながらふと、気づく。

 

 

「人が……いない?」

 

 

何時もならば誰かが1人は通っているであろうこの通路や今通って来た訓練所などから人の気配がしないのだ。

 

……嫌な予感がする。

 

この場所で全ての人が集まる場所は1つでその理由も1つ。

 

それは_____

 

 

ブリッジの扉を開いた瞬間、局員たちオペレーターの叫び声や指示などが阿鼻叫喚の様に飛び交っている。

 

この場所で全ての人員を集めるということは大きい決戦がある時。

つまり今ここは………

 

 

目の前のモニターに出力された場所は異世界。 

 

空中に浮かび怪しげなオーラを放つその庭園にも見える場所では大きな戦いが起きていた。

 

そこに見知ったアースラの人たちが異形の者と戦っている映像がそこかしことモニタリングされていた。

 

そして、その映像の1つになのはとフェイトが大きな傀儡兵(くぐつへい)と戦い、消耗しているのが映されていた。

 

_____気づけばオレの身体は勝手に反転し走り出していた。

 

行かなければ、あの子達を守らなければ俺/オレが"ここ"に来た意味がない!!

 

先ほどまでの身体の痛みは不思議と感じずただひらすらに転送ゲートを目指し走り抜けていく。

 

その時だった。

 

 

「ユウさん?」

 

 

ふわりと肩を掴まれ止められる。

 

焦りと驚きで身体が固まり、人形の様に頭をギギと動かし止めて来た相手の顔を確認すると……あの時の資料室にいた局員だった。

 

だがいつまでも固まっている訳にはいかない。

 

 

「今は急いでるんだ!後にしてくれ!」

 

 

そういうとその人は一瞬キョトンとし、笑い出す。

 

 

「……ホントに、相変わらずですね」

 

 

何だ?何がおかしい?

焦りもあるせいか、いやに苛つく。

 

……何処と無く黒い感情が俺の中に渦巻き出す。

 

ギッと睨むとああ、すみませんと笑みを浮かべたまま手を話してくれる。

 

その対応に少し呆気にとられるがそれどころではないと思考が切り替わり、走り出そうと………

 

 

「だから、待ってください」

 

「ぇぐ!!」

 

 

……首の裾を後ろから引っ張られ首が締まり変な声が出る。

何なのだ一体。

 

少し恨めしい顔をしながら振り向くとまだクスクスと笑っている。

 

 

「そんなに怖い顔をしないでください、私は別に貴方を止める訳じゃないですから」

 

 

そう言って何かを俺に差し出してくる。

その手の平にあったのは……

 

 

「……何だよ、コレ」

 

 

その手の平サイズの機械の様なもの自体には特に見覚えはなかったが一応受け取り見回して見る。すると

 

何かの拡張スロットの様だがその入れ先の部分に見覚えがあった。

コレは、メモリの挿入部?

 

 

「それは必要でしょう?……さ、私の用事はこれだけです。行ってください」

 

 

もう言うことはないといった態度でビシッと転送ゲートの方へGOサインを出す。

 

 

「でも、何でキミがこんなものを……」

 

「良いんですか?なのはさんたち、結構ピンチですよ?」

 

 

何故コレを持っていたか、この人が何者なのかと気になる事は沢山あったがそれでも今は優先すべきことがある。

だけど、せめて名前だけでも……

 

 

「……キミの名前は?」

 

「え、えっと………」

 

 

初めて余裕の表情が消え少し焦り出すその子に何処か見覚えがある様な気もしたが少し何かを考え、

 

 

「今は、言えません!」

 

 

と謝り走り去って行ってしまう。

何なんだよ、一体……。

 

そう考えながら走っていく女性の後ろ姿を見送る。

俺と同い年か一個上くらいだったなぁ……

 

 

……ってこうしてる場合じゃなかった!!

急がなければと走り出しながらあの子に貰った新しいモノを見つめる。

 

どうやって使うんだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウさんが目の前でまたあの雷に撃たれて倒れてしまってから少しだけ記憶がない。

 

ただクロノくんが必死に何かを指示してたのは覚えてて気づいたらフェイトちゃんとアースラの部屋でリンディさんと話していた。

 

リンディさんが必死に私たちを励ましてくれて、それで私もやっと落ち着けて。

 

それからユウさんの手当てが完了して命に別状がないって聞いてから安心して崩れ落ちちゃって。

つい安心してまだ返事は聞けてないけどフェイトちゃんと笑い合っちゃった。

 

でも時間は待ってくれなくて直ぐに割り出せたフェイトちゃんのお母さんのいる場所、時の庭園に乗り込む事になった。

 

ユウさんがいないのは正直不安だったけど、それでも今までの積み重ねて来たものとフェイトちゃんを助けてジュエルシードを取り返すって決めたことを成し遂げたくてグッと拳に力を込める。

 

時の庭園には局員の人たちが突入する算段でフェイトちゃんのお母さんをそのまま逮捕するらしい。

 

手錠をかけられ、自分のお母さんの逮捕を見届けると言うフェイトちゃんとその様子を最後まで見届けるべく私とフェイトちゃん、ユーノくんにアルフさんはブリッジでその映像を見つめる。

 

 

でも、そこで見たモノは私の思ってた結末と全然違ってた。

 

クロノくんたちから聞いていたしフェイトちゃんのお母さんが凄いのは知ってて厳しい戦いになるって言うのは考えていたけど、突入した先を見た時、思考が停止してしまった。

 

そこに映されたのは大きな水槽の様なモノに入れられた6歳くらいのフェイトちゃんそっくりの女の子。

 

つい、横にいるフェイトちゃんに目を向けると私以上に目を見開き、驚いている。

アルフさんも同じ様子でどうやらこの水槽の存在を知らなかった様子だ。

 

 

 

 

ならばコレは何なのだろうか?

 

その疑問がきっとこのアースラ内全員の心の内に思った事だろう。

けどその疑問は直ぐに晴れる事になった。

 

突入していた局員の人たちが蹴散らされ、何処か狂気じみた声を上げながら"アリシア"と言う名前を叫ぶ女性、資料で見たフェイトの母親であるプレシアだった。

 

そこから彼女が語った真実は醜く残酷でフェイトにとっては悲し過ぎるものだった。

 

フェイトはプレシアの本当の娘であるアリシアを元に作ったクローンであり、今までフェイトに集めてさせていたジュエルシードは"アルハザード"というアリシアを蘇らせれる可能性がある場所を目指すためであり、フェイトはただの人形であり道具だと、挙げ句の果てにここまで頑張って来たフェイトに対して"大嫌い"だと……そう言い放った。

 

 

 

 

その言葉に完全に折れてしまい倒れそうになるフェイトちゃんを受け止め、画面に映る狂気的に笑うプレシアを見つめる。

 

何故、こんなにも酷い事が出来るのだろうか?只々、悲しい気持ちが胸に残る。

 

 

崩れ落ちてしまったフェイトちゃんを休ませるべく医務室のベットに向かいそのまま寝かせる。

 

私はあの人を、プレシアさんを捕まえに行かなければ。

フェイトちゃんの側にはアルフさんがついていてくれる。

 

私はユーノくんにクロノくんと一緒に時の庭園に乗り込んだ。

でもタダでは通してくれるはずもなく凄い数の傀儡兵が私たちの前に現れちゃった。

 

正直、苦戦だったけどそんな時に上から一撃の射撃魔法が飛んできて目の前の傀儡兵を一発で倒しちゃった。

 

静かに私たちの前に降り立ったフェイトちゃんは何処か憑き物が取れたような気がして。

 

そこから現れた巨大な傀儡兵を一緒に倒そうって言ってくれて、初めて仲間として戦えた。

 

2人で全力全開の砲撃魔法を放ちそのまま倒しきった。

 

……そして私はこの時の庭園の駆動炉に向かって、フェイトちゃんとアルフさんはその想いを伝える為にプレシアさんの元に向かう。

 

その後私は駆動炉を壊してフェイトちゃんの元に向かった。

 

ディバインバスターで壁を破壊して下に落ちかけていたフェイトちゃんに呼びかけ、手を伸ばす。

 

一瞬迷ったようなそぶりを見せたけど、私の手をフェイトちゃんは取ってくれた。

それだけでとても嬉しくて、心にあったかいものが溢れた。

 

後はここを脱出するという所で……それは起きてしまった。

 

 

もう一つの巨大な傀儡兵、駆動炉を直接中に入れているせいで止めることが出来ていないと言う最悪の敵だった。

 

私もフェイトちゃんも魔力はもう殆ど残っていない。

でも……それでも、戦う。

 

 

目の前に迫り来る攻撃を上に飛び避ける。

 

この巨大な腕の攻撃に擦りでもすればそれだけで私たちには大きなダメージになってしまうのは分かりきっている。

 

 

「フェイトちゃん!」

 

「うん!」

 

 

グイッと反転しフェイトちゃんのいる方に腕を振るう巨大な傀儡兵。

 

それを持ち前のスピードで紙一重に避け、さらに斬りつける姿にやっぱりすごいなぁ何て思えるあたり私も油断していたのだろう。

 

 

「っ!? 後ろ!」

 

「えっ?」

 

 

後ろを向いた私の方に迫るのは砲撃魔法。

 

___油断してしまった、あの傀儡兵からの反射攻撃に気づかなかった。

 

避けようとするが思った以上に身体は限界だったようで上手く動かない。

 

世界がゆっくりになる。

目の前に迫る非殺傷設定ではない魔法。

 

私はグッと目を閉じ来るであろう衝撃に怯える。

 

 

 

……………………

 

………………………………?

 

 

だが何時までもその攻撃が来る事は無く、うっすらと目を開けると______

 

 

白い装甲に青い特殊なウェットスーツ、そしてそのバリアジャケット全身に通った血管の様な桜色の線。

 

その見慣れた/見たかった背中は………

いつも、いつでも私を助けてくれるその人が目の前で迫っていた攻撃を防いでくれていた。

 

その人は振り向き、少しバツが悪そうな、それでいて何処かホッとしたような顔をしながら私に_____

 

 

 

「ごめん、遅くなった」

 

 

そう、いってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

あの子に、"なのは"に声をかけられ来ていた攻撃を何とか躱し、一撃を与える。

 

けど、それも微々たるものですぐに再生が始まってしまう。

残りの魔力は僅かでもう限界が近い事もわかってる。

 

やっと、気づけたのに。

何が大切でどれだけ私のことをこの子が想ってくれていたか。

 

やっとユウの言っていたことが分かったのに、その事すら伝えられずこのまま終わるのだけは絶対に、絶対にイヤだ!!

 

そう気張り一旦距離を置くとなのはの方に傀儡兵が何かを行う。

するとなのはの後ろに反射した物が見え気づく。

その巨大な砲撃になのはは気づかない。

 

 

「後ろ!!」

 

 

そう伝えたが、遅かった。

 

彼女が振り向いた瞬間、白い巨大な魔力の渦はその命を刈り取ろうと少女を飲み込む。

その光景がスローに見える。

 

まだ、伝えてない。

 

まだ、その子に伝えていないのだ。

 

だから、だから_______

 

 

 

助けてっ……ユウ!!

 

 

 

 

 

 

 

なのはにその砲撃がぶつかる瞬間……私の横に風が走る。

 

何かが高速で走り抜けたような、そんな風圧が私の頬を撫でた。

 

その風を感じハッと目を開けると……

 

 

なのはに迫り来る砲撃を目の前で反射させながら受け止める白と青のバリアジャケット姿を見る。

 

その姿を見た瞬間、泣きそうになってしまう。

だって当たり前じゃないか、私がピンチになったり助けて欲しいって言葉じゃ無く思うだけで貴方はいつもまるで物語のヒーローの様に……私を助けてくれるんだから。

 

 

 

______その人は、なのはの方に振り返り何かを言った後、私の方を見て

 

 

 

「フェイトも、遅くなってごめんな!」

 

 

そう笑いかけてくれる。

 

 

やっぱりズルいよ、ユウは。

 

そんな事ばっかりされたら私は……また___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時の庭園に降りた俺は焦りまくっていた。

 

 

「ちょ、何だこれ!?」

 

 

何時もの様にセットアップしようとしていたのだがメモリが反応せずツァイトの画面もエラーのみが表示される。

 

何回もそれぞれのメモリを入れ替えしてセットアップを試して見たがエラーしか表示されずその都度、このカバーをつけた時にインストールされたモノが表示される。

 

 

【Extension Standby】

 

 

この表示がされメモリが弾かれてしまうのだ。

このケースが悪いのかと思い外そうとしたが外れず正直、お手上げだった。

 

 

まるで最初のセットアップの時の様だ。

あの時もバリアジャケットを纏うことが出来ず気分が落ちたっけ。

 

あの時はなのはがメモリを挿し込むということを思いつき、それで初めて魔導師としての自分になれた。

 

 

…………ちょっと待て、何かを挿し込む?

 

ふとポケットに雑に入れたモノを取り出す。

それはあの局員から手渡されたメモリの挿入口そっくりのもの。

 

まさかと思いその挿入口とは反対の部分をデバイスにスライドする形で挿し込んで見ると………

 

 

《complete.standby ready?》

 

 

「……やっぱり」

 

 

最初このケースが壊れているのだと思い込んでいたがそうではなかったのだ。

このケースだけでは1ピース足りなかったのだ。

 

 

そのまま新しくなった挿入口にメモリを差し込むと新しい表示が出る。

 

 

【 Awakening・mode formula 】

 

《Are You Ready?》

 

 

 

「すぅ……はぁ……」

 

 

少しの緊張と期待を落ち着かせる為に深呼吸をする。

今は何故このアイテムをあの人が持ってたとかは考えずこの新しい力を落ち着いて受け止める。

 

心拍数が安定し、言い放つ。

 

 

 

「セットアップ!!」

 

《set up ・ Full Drive》

 

 

 

_______力が、身体に満ちてくる。

 

感覚はあのオーバードライブに酷似しているがアレとは違い痛みや不快感、何か自分の中のモノを砕き混ぜ合わせる感じもない。

それどころか自分の物を、リンカーコア暖かく包む様な抱きしめられる様な感覚に陥る。

それは決して不快ではなく、むしろ心地よさのようなものもあった。

 

その一瞬のような果てしなく長い刻を刻んだよな瞬間から意識が戻る。

 

自分の姿を見回すと今までのノヴァのバリアジャケットからかなり変わっていた。

 

……だが見覚えもある。

この姿は俺がオーバードライブを使った時のスライドし拡張され黒く濁ったバリアジャケットのシルエットそっくりだった。

 

だけど黒く濁っていた場所は純真な白で赤く赤く血の色様だった全身を通う線は綺麗な桜色に。

そして身体に活力が回ってくる。

 

 

「……凄い、力が溢れて壊れそうだ……」

 

 

これなら、いける。

そう確信し飛行をしようとした時だった。

 

 

(ユウ!!!)

 

(!?ク、クロノか?)

 

 

念話ですら伝わる怒気が思わず俺の足を止める。

そういえば目が覚めてからあの人以外に見つからず抜け出してきたんだっけ……

 

そこからクロノからお説教を食らう。

何故抜け出したのか、起きたならすぐに報告するべきだろう、何処にいるのかと。

 

 

(……で、大丈夫なのか?)

 

(ああ、心配かけた。エイミィとリンディさんにも後で謝ってくるよ)

 

(当たり前だ、馬鹿者。……それでキミは飛び出して今はなのはたちの方に向かっている最中なんだな?)

 

 

そこからクロノから何があったかの説明をしてもらう。

今クロノは倒れたアルフとユーノを連れアースラの医療室にいるらしい。

……だから俺がいない事に気づいたのか。

 

俺が眠っている間に様々な事が起こっていたのは取り敢えずは把握したが、フェイトについてかなり動揺してしまった。

しかしなのはを助けるために2人で協力した事を聞いた時は暖かいものが広がった。

 

ーー頑張ったな、フェイト。そう言って慰めてやりたいが今はこの件を片付けるのが先だろう。

 

 

(それでこの馬鹿でかい魔力反応、まさかとは思うが……使ったのか?)

 

 

少し緊張気味にクロノが訪ねてくる。

オーバードライブのことを言っているのだろうがそれは勘違いだ。

 

 

(使ってない、昨日のあの新しい奴だ)

 

(っ……全く……ホントに次から次へと……)

 

(今回ばっかりは俺もビックリしてるよ。それで俺は……)

 

 

と続けようとした時だった。

 

巨大な魔力の反応とともになのはたちがいる場所から爆発音。

 

 

(………悪い、話はここまでだ。また後で)

 

(!?ま、待てキミ1人では!)

 

(大丈夫だ、何とかする!)

 

 

そのまま念話を切り、さらにスピードを上げる。

もうブレイズの最高スピードを超えているあたりかなり後での反動もデカそうだと覚悟する。

壊れた通路を一気に駆け抜け、先ほどの爆心地へと向かう。

 

 

ーー見えた!!

 

 

目の前で巨大な傀儡兵と戦う2人。

 

そしてなのはに迫ろうとしている砲撃。

 

今のままでは間に合わない____!!!

 

 

 

 

《delta access》

 

 

 

グイッと身体が押され、途方も無いGが身体にかかる。

身体が千切れるような錯覚を覚えるが、次の瞬間

 

______気づけばなのはの目の前、そして俺の前には砲撃が迫ってきていた。

 

 

そして身体が勝手に動き、

 

 

《Reflection》

 

 

青色のシールドが巨大な魔力の砲撃を受け止めてくれていた。

……受け止めるというより反射させ、弾いているというのがしっくりくる。

 

そしてまだ目を瞑ってるなのはをチラリと見て少し罪悪感。

クロノに聞く限りまた心配させてしまったらしいし何よりまた泣かせてしまった。

 

……更にこんな危ない所だったのだ。もう少し俺が遅ければもしかしたら……

 

 

そしてなのはを助ける時に抜けていった横にいたフェイトにももちろん罪悪感がある。

俺のせいで泣かせてしまった上に母親から否定されてしまったと聞いた時は胸が張り裂けでいっぱいだった。

 

だからこそ最初の一言目は2人に謝ろう。

 

 

「ごめん、遅くなった」

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお疲れ様です。

評価、ご感想お待ちしております!

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