Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第29話 『Full Drive』/ 最後の魔法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傀儡は止む事なく新しい攻撃を新たに現れた敵である俺に仕掛けてくる。

巨大な魔力の塊、砲撃魔法だ。

 

_____けど、それはもう効かない。

 

 

《Reflection Clear》

 

 

迫り来る砲撃を碧色のシールドが搔き消し吸収する。

そのまま吸収した魔力を使い巨大な傀儡兵にバインドをかけ、なのはとフェイトの方に向かう。

 

2人の顔を何処か久しぶり見たよな気がして……何か伝えなければと感じるが今はそれよりもこの崩壊が始まった此処から逃す方が優先だ。

何か俺に話そうとする2人を一旦止め簡潔に伝える。

 

 

「もうすぐここは完全に崩壊して無くなる。それまでにアースラに避難するんだ」

 

 

そう伝えると素直に頷いてくれる2人。

 

 

「なら早く行け、怪我もしてるしもう殆ど魔力も残ってないんだろ?」

 

「……うん、わかった。行こう?」

 

 

そう言ってなのはが俺にも手を伸ばしてくる。

………後ろでギチギチと俺がかけたバインドが悲鳴を上げている。

 

 

「悪い、まだ俺には仕事が残ってるから先に帰って待っててくれ」

 

「え……だ、ダメだよ!!一緒に帰ろうよ!」

 

 

俺のその答えに動揺し声を上げるなのは。

優しい子だからな、こうなる事は予想がついてたけど……今は時間がない。

 

いつ後ろのヤツが暴れ出すかもわからないし正直この力がどこまでのものかもわからない。

 

それなのになのはとフェイトを守りながら戦える自身は俺には無いし、なによりもう崩壊が始まっていつ消滅するかもわからない此処にいさせるわけにもいかないんだ。

 

……少しの罪悪感を押し殺しなのはの首にトンッと当て身をぶつける。

 

 

「っ………?」

 

「ごめんな、すぐ帰るから」

 

 

倒れてくるなのはを受け止め、そう伝える。

聞こえていたかは分からないが別に俺だってここで死ぬつもりもない。

 

何か口を動かし俺に伝えようとしてくれたなのははそのままゆっくりと気を失う。

 

 

 

そのまま黙って俺となのはを見つめていたフェイトに向き直る。

少しの間でこんなにも成長したんだな、この子も。

いくら俺でも前までのフェイトと今のフェイトが違う事には気づく。

 

 

「……よ、話すのは久しぶりだな」

 

「……っ そうだね、ユウ」

 

 

ぐしゃっと泣きそうになるが寸のところで堪えてくれるフェイト。

……ホントに強いな、この子は。

 

 

「だけど今は時間がないんだ、なのはを頼むよ」

 

 

そう言ってなのはの身体をフェイトに預ける。

フェイトは素直に俺の頼みを聞いて抱きとめてくれる。

そして伝えるべき事を簡潔にまとめ、話す。

 

 

「アースラのリンディさんやクロノを頼るだ。きっとあの人たちはフェイトの味方になってくれるはずだから」

 

 

コクコクと頷き俺の言葉を全部飲み込んでいく。

さっきクロノにも頼んでおいたし大丈夫だろう。

 

俺のここですべき事はまずなのはとフェイトを助け、アースラに戻す事。

そして後ろで暴走したこの傀儡兵を倒す事。

 

最後は……

 

 

 

「……ユウは」

 

「ん?」

 

 

フェイトから呼ばれ後ろを振り向くと泣きそうな顔をで此方を見てきた。

どうしたのだろうか?

 

 

「ユウは帰ってくるんだよね?」

 

「……ああ、別に死ぬつもりはないさ、すぐにやる事を終わらせて戻るよ」

 

「なら、約束だよ?絶対に無事で帰ってきて。まだユウと話したい事沢山、あるから」

 

「おう、約束だ。……それじゃまたな、フェイト?」

 

「っ……またね、ユウ」

 

 

 

俺が来た道を辿りアースラへと戻るフェイトとなのはの背中を見つめながら思考する。

 

 

(クロノ、まだ時間は残ってるんだよな?)

 

(……ああ、そこが消滅して次元震を起こすまであと10分はある)

 

(一応確認だ、その次元震の被害はどこまで起こるんだ?)

 

(今のままでは分からない……正直に言えばこの規模のロストロギアの暴走だ、何が起こるか誰にも予想もつかない)

 

 

この時空の果て、この時の庭園はそれ自体がロストロギア。

それが今、主人を失いジュエルシードの暴走が引き起こした次元震の影響で共鳴しここ自体が一種の爆弾と化しているのだ。

 

それをほっておけば……

 

 

(時空断裂が起きる可能性がある……だよな?)

 

(……ああ、それを止めるにはその前にこの場所の核となってる場所を叩くしかない)

 

(ああ、了解だ)

 

 

俺の最後のミッションはここの奥深くにある駆動路である核を砕く事。

それが出来なきゃ沢山のものを失う事になる。

 

 

(待て!わかっているのか?核を破壊するという事はそれと同時に……)

 

(でも誰かがやらなきゃいけない事、だろ?)

 

(だが……)

 

 

核を失ったこの場所はただの石の塊と化し、そして虚数空間に飲み込まれる。

虚数空間では魔法は使えず、一度飲み込まれれば二度と出る事は出来ないだろう。

 

まだ今は核が生きているからこの場所は完全に飲み込まれていないがそれが消えればすぐにでも………

 

 

(大丈夫だって、俺はちゃんと帰るよ。それに他の局員の人はみんな戦えないんだろ?)

 

(……しかし!)

 

(クロノ、お前はお前の役目を果たすんだ。それがキミの守るものだったろ?俺は俺の守りたいものの為に戦うよ)

 

 

そう言うと少し間が空き、わかったと言ってくれた。

……後のことはこれで大丈夫だろう。

 

 

(それじゃ、エイミィ?ナビゲーションよろしく頼むよ)

 

(……っ、うん、任せて!)

 

 

 

さて、と。

後ろから放たれる射撃魔法と薙ぎ払いを避けつつ1回転しながら避ける。

俺のバインドを破り完全暴走した核を取り込んだ傀儡兵。

 

前までまでの俺なら手も足も出なかっただろうな、とどこか他人事のように笑ってしまう。

けど、今ならこの思い出したものと力がある俺は負ける気がしない。

 

 

「待たせたな、それじゃ……やろうか?」

 

 

ズンッ!!と巨大な身体がぶれ、拳をこちらにふるってくる。

 

だがそんな遅い攻撃ではまだまだフェイトの足元にも及ばない。迫り来る攻撃を敢えて紙一重を避けつつ一気に腕を伝って飛び抜け、まずはその邪魔な右腕を切断する。

 

 

《sword fragment》

 

 

直径2メートルの光力で出来た一種のレーザーブレードでその肩から腕を下から上に切り上げる。

 

_____思い出すのは剣技を鍛えられ、昇華した日々。

 

それに怒りのような悲鳴をあげるがそれが更に隙になる。

剣を収納し、新たな武装に換装する。

それは初めて手にした、巨大な塔身をもつ超圧縮魔力放出砲撃機。

ガチャンと弾丸を弾き出し、魔力を込める。

 

 

《Excellion Buster・Mode α 》

 

 

 

傀儡の頭部を抉り取るように溜め込んだものを一気に放つ。

桜色の極光の光線は龍の様に食らいつき、その頭を消し去る。

 

残りは胸部のエンジン、核の部分のみ。

 

 

しかし相手もただではやられてくれずそこから魔力の充填が始まっていた。

 

 

「魔力勝負か?付き合ってやる___!!」

 

 

 

エクセリオンバスターを変形させ砲撃モードから超収束砲撃モードに切り替え、残量を確認する。

 

あと7割強、まだ俺は戦える。

 

俺は真似事でしか戦えないが、この技はまだ"今"のなのはには使えないモノ。

 

ここでの戦いの映像は記録として残す事を出来ないのはクロノから聞いている。

ならば安心して使わせてもらおう。

 

 

自身の残り魔力ゲージが一気に消失し、収束砲の銃身に光が、満ちる。

 

 

___ここより発射されるは未来の一撃。

 

 

《Starlight Breaker ex》

 

 

 

____まるでそれは一つの小惑星。

 

光を超え、音を超えたその一撃はあの傀儡兵の砲撃すら飲み込みその巨体全てを無へと返す。

それは暗きこの場所ですら一瞬の光が満たすほどの力。

放出が終わった先には何もなく傀儡兵は虚無へと消えた。

これで二つ目、次で最後だ。

 

 

「こちらユウ、目標を駆逐完了。時の庭園の核部分へのルートは?」

 

『は、はい!こちらアースラ、ナビゲートを始めます』

 

 

つけたインカムに話しかけ、エイミィにナビゲートを頼む。

流石にここは広く核ともなれば奥深くに隠されている様でナビゲーションなしではつくのも難しい。

 

目の前に表示されたマップとエイミィの言葉を頼りに奥へと進む。

横目にタイムリミットと残り魔力ゲージを確認する。

 

残り3分弱とゲージは5割を切った。

 

 

 

『そこの先を真っ直ぐ行った所にあるはずです』

 

 

「この先か」

 

 

段々と熱を感じる様になる。

あと30メートルほど先に見えてきた5メートル代の黒い球体の様なものが怪しく鼓動していた。

 

 

「コレを壊せばいいんだな?」

 

 

最終確認をする、これでいいんだよな?

 

 

『はい、それで問題……な……です、ただ……の……すぐ……』

 

「?エイミィ、どうした」

 

 

ザザ……と異音が混ざり声が聞こえない。

 

 

『……状態……安定……!』

 

「……ここのせいか?」

 

 

多分だが通信状態が不安定な事を伝えようとしてくれているんだろう。

念話も通じないこの状況ではアースラとの交信は無理か。

 

本来なら最後まで指示を聞いてから動かなきゃいけないが今は時間がない。

 

チャージを開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメです!!通信出来ません!!」

 

「くそ!!繰り返し通信を試すんだ!」

 

 

最後の最後で重要なことをユウに伝えることが出来ず焦る。

あのコアを解析し終えた情報がたった今来たのに、このままもしユウが間違った方法を取れば………

 

その瞬間に、次元震がユウを襲う。

映像も乱れ完全にシャットアウトされてしまった。

 

 

「とにかくどうにかしてユウに伝えなければ……!!」

 

 

今、リンディ艦長は少しでも次元震を止めるべく魔法を行使しているため僕が指揮を取っているが正直この判断が正しかったのかわからない……けどユウに言われた僕の正義を貫く事を選んだ途端、このザマだった。

 

 

「落ち着け……どうすればいい、考えろ」

 

 

あのコアには魔力を撃ち込むとそれを飲み込み吸収する性質があるのだが、今のアレは暴走している上に魔力を一杯一杯まで注ぎ込まれ破裂寸前のホンモノの爆弾だ。

 

もしアレに砲撃系の魔法を放てば、その瞬間時の庭園の範囲全てを搔き消す。

 

逆に斬撃系のものを使えば少しのタイムラグが生まれ、脱出できる可能性が生まれるのだが、最後ユウはあの距離から砲撃するつもりだった。

 

手伝いをしているユーノと共に出した結論は

 

 

「……このままだとユウは100%助からない……」

 

「……ボクも、同じ結論だ」

 

 

重い空気がブリッジ内に広がり出す。

この事は絶対にあの2人には聞かせられない、ユウに最後に頼まれた"後は頼む"という言葉の意味が本当の意味で最後になるかもしれないという事実。

 

タイムリミットはあと2分、絶望的だった。

 

 

ガシャ、とブリッジの扉が開く音がする……。

 

振り返ればなのはとフェイトが何処かに呆然とこちらを見ていた。

 

……聞かれて、しまっていたのか

 

 

「ねぇ、クロノくん、ユーノくん今の話って……どういう事……?」

 

「お、落ち着いてなのは!」

 

 

ユーノが落ち付けようと止めに入るがなのはの顔が歪む。

フェイトは視線を回し縋る様にアルフに話しかける。

 

 

「………アルフ、教えて、何があったの」

 

「それは……その……」

 

 

話すしか、ない。

簡潔に時間が無いため短く結論だけを説明する。

なのはとフェイトの顔がどんどん青くなり歪む。

 

 

「だって……ユウさんはすぐに帰ってくるって……」

 

「そうだよ、ユウは約束、破らないよ…?」

 

 

それに答えれるものはここには誰もいない。

痛い沈黙が、この場を支配する。

 

 

____その時。

 

 

 

『……ラ、……えるか?』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャージを始めようとして気づく、この球体、魔力反射の陣が書かれている?

 

 

「確かこれって……ベルカ式の……」

 

 

その特徴的な三角形の魔法陣に文字。

あの資料に書いてあった魔法陣にそっくりなそれは確か範囲内の魔法無効化と吸収だったか?

 

 

「確か、ベルカ式の魔法なら反射しないんだっけか?」

 

 

ツァイトを起動し、このバリアジャケットの特殊なアビリティ「アナリシスモード」を起動する。

 

 

《Mode・Analysis》

 

 

自身の目にこの魔法の原点から使用用途、その過程を読み取り紐解く。

目の前に広がる、俺の目に写るソレを全て理解し疑問を解決する。

 

そして、回答を得られた時もはやこの魔法陣に意味はなく、ただそこにあるだけのモノと化す。

 

 

「___Release analyze」

 

 

自然と言葉が浮かびソレを紡ぎ口に出す。

瞬間、目の前の魔法陣から色が消え、重かった空気が少し軽くなっ気がする。

 

すると、今まで雑音しかしなかったインカムから音声が、人の声が聞こえてくる。

 

何やらもめている様なそれでいて緊迫しているものを感じ、そのまま声をかけてみた。

 

 

『ユウ聞こえるか!?』

 

「おう、クロノか?いつ切れるかわからないがとりあえず通信は復旧したぞ」

 

『なら手短に伝える!絶対に砲撃系でそのコアを破壊するな!何がで切り裂くんだ!』

 

 

 

……どうやら危なかったようだ、あのまま魔法陣に気づかず砲撃していたら何かしらあったみたいだ。

 

 

「了解、すぐに片付ける」

 

 

そう言って切ろうとした時、

 

 

『ちゃんと!無事で帰ってきて、約束!』

 

 

と聞こえた。

なら答えるべきは、

 

 

「すぐに帰る!」

 

 

プツンと通信が切れる。

こりゃ、ちゃんと帰らなきゃいけなくなっちまったなぁ………。

 

正直に言えばもうここで心中してしまうのもしょうがないと諦めかけていた自分がいたのも……また事実だ。

 

しかし最後のあの子の、なのはの声で気が変わった。

全力で生き残ってみせよう。

 

 

クロノに言われた通り武装を換装し使い慣れたライザーを取り出す。

残りリミットは1分を切り、もうここまで崩壊が始まっていた。

 

 

「全力の一撃で決めるぞ?」

 

《All right.master》

 

 

今まで付き合ってくれた相棒に声をかけると無機質な声の筈なのに何処か楽しそうな声音な気がして最後まで付き合うぞと励まされたような気がした。

その声に少し気が紛れ深呼吸し、最後の力を振り絞る。

 

 

魔力充填完了、一撃を放つ_____!!!

 

 

 

《Cradle Striker》

 

 

 

三角形の魔法陣と丸い魔法陣が交差しそのまま剣に固定し、一気に上から下へと刃を通す。

 

 

コア部分のど真ん中を切り裂く。

瞬間あたりから熱が消え始め、魔力も霧散し出す。

 

ミッション完了、あとは脱出するだけだ。

ガラガラと加速していく崩壊、このまま上から脱出するのが一番か?

 

 

______っ?

 

 

「えっ……?」

 

 

今、確かに………確かに誰かに呼ばれたような?

 

崩壊していく庭園の中、誰かの声が俺の耳に届いた。

 

しかしデバイスで確認しても生命反応も見れず、誰もいないことは明らかだ。

 

だけど、俺の中の何かがそこに行けと。

急げと言っている気がして。

 

 

 

(ユウ!何をしてる!早く脱出しろ!!)

 

 

俺が立ち止まっているのをモニターしていたであろうクロノから念話が飛ぶ。

けど……

 

 

(すまん!少し寄る場所がある!)

 

(何を言ってるんだ!?もうそこは完全に消え去るんだぞ!)

 

 

そう言われるがもう俺はそこに向かって、何処かの一室に向かって飛び抜けていた。

 

そのままの勢いで部屋の扉を切り裂き中に転がりながら入る。

そこは何かの研究室のような場所だった。

 

ベットがあるところをみるに研究室兼自室で多分だがプレシアの部屋だろう。

 

その部屋の机の上に雑に置かれた二冊の仄かに魔力を感じる本に目が行く。

 

___何故かわからないがコレを持っていかなければ!!

 

すぐにストレージにしまい、上に抜ける。

がしゃんと天井をそのまま突き破り空に出ると………

 

俺が脱出したと同時にその部屋すら崩れ出し、時の庭園が2つに割かれた。

 

本当に危機一髪とはこういう事を言うのだろうと冷や汗が止まらない。

 

……魔力もほぼゼロ。

何もできない、アースラに早く戻ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁ………」

 

 

少し大きな溜め息をつきながらアースラへと帰還する。

 

転送用のゲートから中に入りその場でペタンと座り込む。

 

 

「マジで……死ぬかと思った……」

 

 

後になって変な汗が一気に流れ、自分がどれだけ危ないことをしたかを感じる。

 

とりあえず報告だけでもして来ようと立ち上がりブリッジに向かう。

汗が垂れ、鼓動はまだ早く何処かパニクっているのは実感しているが歩きながら深呼吸を繰り返し、生の実感を得ようとする。

 

疲労感と胸の鼓動が落ち着き、やっと安心できる。

 

 

「生きてるんだよ、なぁ……」

 

《Cheers for good work》

 

「……おう、お前もな」

 

 

さて、これからクロノの説教と考えると少し億劫になるがそれでも心配をかけたんだ。

それは甘んじて受けるしかない。

 

それでもチキンな俺はどんな様子か気になりブリッジ内の様子をそろー……と確認してみることにした。

 

ゆっくりと間から見てみるとブリッジ内の空気は………

 

 

 

「……お葬式?」

 

 

どんよりとした空気に暗い感じ。

俺の予想では作戦がうまくいったことを喜ぶ人や俺に怒ってるクロノなんかを予想していたばっかりに驚いてしまう。

 

中の局員の人たちは泣いてしまったり、身を寄せ合っていたりクロノなんて"すまない……"と呟いてグッと目を閉じて手を胸に置いて俗に言う黙祷をしていた。

横には泣いたエイミィとその2人を慰めるリンディさん。

 

なのはやフェイトも泣きじゃくっておりその2人を慰めるユーノとアルフ。

……フェイトが泣いてる理由はお母さんのことだと思うがなのははどうして……?

 

このタイミングで俺が入っていいのだろうか……うーん……

 

 

《Go.master?》

 

「行くしかないよなぁ……取り敢えず近くにいる人に何があったか聞くのがいいか?」

 

《nice.idea》

 

「おし、それで行こう」

 

 

 

とプランが決まりいざブリッジ内にコソコソと入り、一番近くにいたよく訓練をしたことがある局員さんに話しかける。

 

その人も随分と男泣きしていて軽く背中をさすりながらどうしたか聞いてみる。

 

 

「どうしたんだ……?なにがあった?」

 

「うぐっ……何言ってんだ……死んじまったんだよ……目の前のモニターみりゃわかんだろう……チクショウ!!」

 

 

どうやら誰か他の局員の方が無くなってしまったらしく、この状況らしい。

聞いていた話によれば俺があの巨大な傀儡兵と戦っている時点で"俺以外の全員が脱出して無事"とクロノから聞いていたのだが……それはとても悲しい。

 

せめてだれが死んだかだけでも聞かなければとまだ泣いてるこの人にその名前を聞く。

 

 

「すまない、不躾かも知れないけどその人の名前は……?」

 

「何いってんだよ!!アイツに……決まって……??」

 

「?」

 

 

少し怒り俺の方を振り向いた途端、その人は目を見開き口をあんぐりと開ける。

え?どうしたんだ。

 

 

「えっと?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!???」

 

 

うぉ!?今度は叫んだ!?

何なんだよ、一体?

っていうかそんな大声出したら!!

 

と、ここであらゆる場所から視線を感じる。

あーあ……遅かった……。

 

絶対に冷たい目やこんな時に不謹慎なみたいな顔してるんだろうなぁ……と振り向くと……

 

あれ?何でみんなして口開けてて目を見開いてるんだ?

え、えと……とりあえず報告か?

 

 

「えっと、ただいま戻りました……?」

 

 

そう言うと真っ先にクロノが俺の方に走ってきて……

 

 

「この!!!馬鹿野郎ぉぉぉ!!!!」

 

 

クロノから始めて飛び膝蹴りを腹に受けた。

むちゃくちゃ痛かったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで……こそこそブリッジに入ってきた、と?」

 

「え、えーと、その……おっしゃる通りです」

 

 

あれからぶち転がされた俺はそのままユーノとアルフにバインドをかけられブリッジの真ん中で正座させられクロノから事情聴取、その後ろのリンディさんは笑っているが目が座っており激おこなのがヒシヒシと伝わってくる。

 

なのはとフェイトも最初は俺を助けてくれていたのだが俺の言い分を聞けば聞くほど、なのはは目が座り、いつぞやの士郎さんから出ていた黒いオーラのようなものが現れ始め、フェイトはフェイトで怒っているのはわかるのだがぷくーっと頬を膨らませていてどちらかと言うと可愛らしい。

 

……という現実逃避をするくらいには俺は今の現状が理解できていなかった。

そうしていると後ろのユーノとアルフの会話に、エイミィたちの声が聞こえる。

 

"全く……死んだかと思ったら……"

 

"ホントにユウはいっつもいっつも…"

 

"でもまぁ……無事だったわけだし許してあげても……"

 

 

 

ここまで来てもしかしてという俺の中で1つの答えが生まれる。

 

誰かが死んだという話、しかしクロノは全員無事だと言っていた。

そして俺を見た瞬間の局員さんの反応にこのなのはやフェイトの対応………

 

ドッと冷や汗や脂汗が背中やらオデコから流れる。

 

 

「あ、あのクロノさん……」

 

「………」

 

 

グイッと顎だけで言ってみろという節を伝えてくる。

 

 

「あの、何方か亡くなったみたいな事を聞いたんですけど……もしかしてそれって……」

 

 

……最後にあの場所を脱出する時、魔力反応はなく俺が最後でクロノからの通信をインカムを落とした事で切ってしまった。

そして魔力も空っぽになり、念話もできない状態で俺はゲートのところで少し休んでいた。

 

つまり……みんなが死んだと悲しんでいた相手は………

 

 

 

「もしかして、俺が死んだと思ってあの空気になってたの?」

 

 

「「「その通りだよ!!このアホ!!!」

 

 

クロノ、ユーノ、アルフに前から左右から一斉に一喝される。

 

ですよねー………

 

その後はまずクロノ、アルフ、ユーノからこってり絞られ、それ相応の罰とリンディさんからは思い出したくもないお説教。

普段怒らない人が怒った時の怖さたるやヤバすぎた。

 

そしてみんなに早くなのはとフェイトに謝りに行けと言われる。

 

ユーノがコソッと"メチャクチャ怒ってるからキチンと誠意を見せなきゃダメだよ"と言われ、いざ………なのはに話しける。

 

 

「えっと……なのはさん?」

 

「何?」

 

 

その声音と短い返答にビクビクする。

 

こんなにも低い声出るの?なのはって。

 

けどここで逃げるわけにはいかない、しっかりと誠意を見せて頭を思い切り下げる。

 

 

「えっと……すいませんでした……」

 

「……うん、それで?」

 

 

え?そ、それでってなんだろうか?

何を求められているのか分からず混乱してしまう。

 

 

(ユウ、誠意を誠意を見せるんだ)

 

(お、おう、わかった)

 

 

すかさずユーノからの念話で落ち着き、何とかしなければと頭を回す。

……というか横にいるユーノすら少し怯えているくらいには今のなのはから来る凄みがやばい。

 

 

「えっと……どうすれば、よろしいでしょうか……」

 

「ふーん……ユウさんは"それ"を私に考えされるんだ?」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!!ちょっと待って!!」

 

 

どうする?マジでどうするんだ、俺。

 

今度は横にいるフェイトもなのはを見てプルプル震えて涙目じゃないか……?

その後ろにいたエイミィも怖かったのかフェイトを抱えてるし……

 

 

「何処、見てるのかな?……ユウさん?」

 

 

サッとなのはの方に目を合わせる。

考えろ、考えるんだ俺…………

そして結論を、出す。

 

……なのははきっと俺がいるだけでこんなにふうになるということはそれだけ嫌われてしまったということ、だろう。

 

ならば俺ができるのは……1つだけ。

 

 

「……すまない、本当に心配かけた。今回の件を含めていっつも心配ばかりさせちゃってるよな」

 

「……うん」

 

 

やっとなのはの声がいつも通りのトーンに戻りだす。

ならキチンと聞いてこれでおわらせよう。

 

 

「なのはは俺にどうして欲しいんだ?もちろん嫌われたのはわかってるからもう顔も見たくないっていうなら………」

 

「……へ?ちょ、ちょっとまって!」

 

「ああ、分かってるよ。もちろん家からもすぐに出るし……」

 

と言い切る前になのはがトンっと俺の胸に飛び込んでくる。

 

 

「……なのは?」

 

「もう……そうやってすぐ勘違いする所、嫌い」

 

 

おぅ……分かっていたとは言え直接言われると破壊力が段違いで少し泣きそうになる……

だがそれは仕方ないことなのだ、俺が悪いんだし……ん、勘違い?

 

 

「えっと……勘違いって……」

 

「……バカアホキライ……ユウさんなんて毎日タンスの角に小指をぶつければいいんだ」

 

 

そういいながらぐりぐりと俺の胸に頭を擦りながらぎゅっと抱きついてくる。

言われてることとやられてる事の違いに困惑しながらも取り敢えず"いつものように"頭を撫でる。

 

 

「……今度」

 

「?」

 

「今度、何処かいっしょに遊びに行ってくれるなら……許してあげる」

 

「……ん、わかった。約束だ」

 

 

うん、と頷きそのまま頭を胸に埋めてくる。

 

なんかなのはを抱きしめるのも久しぶりな気がして、俺も少し甘くしてしまう。

 

………何やら視線が?

 

周りを見回せばユーノとアルフがジト目、クロノは"そういう趣向か……"と呟き、リンディさんとエイミィから鬱陶しいほどのニヤニヤ顔、周りの局員もみんな腹立たしい笑みを浮かべておりとてもいずらい。

 

冷静にここ、アースラのど真ん中なんだよなぁ……どんどん顔が熱くなるのを感じ、これが照れるというものだと自覚する。

 

 

「むぅ……」

 

 

フェイトはまたぷくーと頬を膨らませ、少し睨んでくる。

何故にまたご機嫌斜めに?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、私は先に医務室に行ってるよ」

 

「ああ、ちゃんと治療してもらえよ」

 

 

うん!と言って笑顔でブリッジから出て行くなのは。

先ほどまでの雰囲気は全くなく凄くご機嫌だった。

さて、次は……

 

「……ふん」

 

「あー、フェイト?」

 

 

なのはがご機嫌に成れば成る程、下斜めに下がっていったフェイトに話しかけるとそっぽを向かれてしまう。

 

えぇ……何で?

 

 

「ホラ、頑張りなよユウ。フェイトにもキチンと誠意みせな」

 

 

アルフに軽く横腹を殴られる。

何故ユーノとアルフはまだジト目なんだ?ホントに訳がわからない。

 

そして向こうではエイミィがリンディさんとクロノに何かを話している。

 

 

「ユウくんはなのはちゃんとフェイトちゃんを完全に子どもとして見ちゃってますねー」

 

「ええ、ちょっと不憫だけどユウくんはそういう趣味じゃないみたいで良かったわ」

 

「ああ、唐変木で馬鹿ってだけでも考え物なのに挙句にソッチの趣味があったら僕が全力でその根性を鍛えていた所だ」

 

 

よくわからないけど凄く失礼な事を言われているという事だけはわかった。

 

まぁ……今はそれより

 

 

「なぁ、機嫌直してくれよー……」

 

 

少し情けなくはあるがフェイトに対して少し甘えるような形で頼んでみる。

 

……うーん、顔すら見てくれないし、少し強引にするか?

 

「ふん!………えっ、わ」

 

 

そっぽを向くフェイトを後ろから抱き上げそのまま座り俺の上に乗せる。

 

あの島でよく2人で話す時にしていた格好だ。

 

 

「なぁ、なんで急に機嫌悪くなったんだ?」

 

「え、あぅ……」

 

 

ありゃ、今度は赤くなってしまった。

 

そのまま、あわあわしているフェイトが可愛くて、つい調子に乗ってフェイトを抱きしめたまま、なでてみる。

 

……自分でも意地悪なのは分かっているがフェイトが困ってる姿が何だかとても可愛く見えてしまうのだ。

それでふとフェイトが静かになっている事に気づきはて?と顔を見ると………

 

 

「ん……ユウ……」

 

 

 

ん?んん??

 

何処か顔を赤くして少し涙目に切なげに俺を見つめ熱い吐息を吐いていた。

何だがいけないことをしてるみたいで、何となく背徳感と目があったままフェイトの方から視線を外せない。

 

そのままゆっくりとフェイトが俺の顔に近づいて来て………

 

 

「ストップ!!それはマズイって!!」

 

「「!?」」

 

 

……アルフが止めに入ってくれた。

今、俺は何を……??

 

 

「やっぱり叩き直すべきか……?」

 

「うーん……そっちのけもありそうだねぇ……」

 

「あら、おしかったわねー」

 

 

また何か言われているがそれよりもまたヘンな事をしでかす前にフェイトから少し離れる、離れようとした。

 

 

「っ……」

 

「……フェイト?」

 

 

けど、フェイトがそのままギュッと俺の服を掴んで離さない。

 

 

「もうすこし、このままがいい」

 

「うっ……」

 

 

これは破壊力が……でもリンディさんたちから一応"重要参考人だからあまり長く話せない"という節を伝えられていたのでどうしよかと目でリンディさんに訴えると、

 

 

「ならそのまま事情聴取しましょうか?ユウくんにも聞きたいことがあるしフェイトさんもユウくんがいた方が安心でしょう」

 

 

それでいいのか管理局。

 

 

「まぁ、いいだろう。ほら行くぞ」

 

 

ホントにそれでいいのか管理局員!?

そう突っ込もうとしたが腕の中のフェイトが心配だったのは本当だし、嬉しそうに笑うこの子を見たらもう、それでいいか……と思ってしまう辺り俺も相当バカなのだろう。

 

でも何か忘れてるような……?

 

 

 

そしてフェイトの軽い事情聴取の後、俺が実は大怪我していることがバレ、何故早く言わないとクロノにまたキレられ治療室に連行されそこで同じく治療を受けていたなのはに怒られるのはまた別の機会に話すとしよう。

 

……というか君たち、結構俺に乱暴なことしたよね?とは思ったが黙って治療は受けた。

 

 

………自分の怪我を忘れてるとかいよいよ記憶が飛び始めたかなぁ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお疲れ様でした。
いやぁ……ついに後、数話で無印が終了となります。
ここまで続けられたのも一概に読んでくださるユーザー様と暖かい感想をたくさん頂けたおかけです(๑>◡<๑)
いつも本当にありがとうございます!!

それではここからは少しこの後の展開についてです。
この後の流れは無印の後日談と数話のエピローグのようなものの後にAs編に入る予定です。

As編の最初のタイトルは「6月3日の私」です。
それでは次回もよろしくお願いします!!


評価とご感想お待ちしております!!

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