Re.Dive タイムコール   作:ぺけすけ

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第3話 魔法とフェレット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーキミは飛行魔法がそんなに得意じゃないんだね。

 

 

そう言って苦笑いした貴女を覚えている。

 

 

ーーあー、そんないじけないでよ。得意じゃないってだけで使えるから。

 

ーーでも……

 

ーーキミにはそのデバイスと"ソレ"があるでしょ?

 

 

彼女が指差したのは俺の手元にある黒色の機械と小さい容器のようなもの。

 

 

ーー俺にはコレの使い方もよくわからないですよ。なんで■■■さんはコレの使い方を知ってるんですか?

 

 

ーーそれはね、キミが——

 

 

 

声が霞む。

 

 

ーーソレはキミを守ってくれる。もしも危なくなったら、ソレの存在を思い出して。

 

 

 

 

身体がゆっくりと浮上する感覚。

やっぱりコレも夢なのかなぁ……

 

 

ーー大丈夫だよ、キミならできる。だって私を助けてくれたのはキミでしょ?■■くん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん」

 

 

ふと瞼が上がる。

ここは……なのはの部屋だっけ。

少し気怠げな体を起こす。

 

部屋の中には人はいない。

さっきまでなのはが座っていた場所にはなのはの代わりに

 

 

「キュー」

 

「………」

 

 

小動物がいた。

えっと、コイツはずっとなのはの肩にいたやつ?だよな。

 

 

「目が覚めたみたいですね」

 

「……………………………お、おう」

 

 

もう……何も驚かないし突っ込まない。

 

例え目の前の小動物が喋り出してもな。

 

 

「その、君は?」

 

「あ、ごめ……すみません。ボクはユーノ・スクライアって言います」

 

「ユウだ、よろしく。……それと、話し辛いなら敬語は要らない」

 

「あ、そう?……なら普通に喋ることにするよ」

 

 

そう言って力を抜き、そばに来る小動物、ユーノ

 

 

「ユーノ、でいいか? どのくらい俺は眠ってた?」

 

「うん、大丈夫だよ。 うーん……5分くらいじゃないかな。今さっきなのはがお茶を取りに行ったばっかりだし」

 

 

そんなに時間は経っていないのか。

 

さっきの夢、なんだっけ。

 

たしか魔法の事だったような、違うような?

 

 

「あのさ、ボク、ユウさんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「あぁ、別に構わないよ。 ……というかさん付けもしなくていいぞ?」

 

「わかった。それじゃあユウに質問」

 

「ああ」

 

「ユウはさ、管理局の人間なの?」

 

「管理局?」

 

なんだろう、知っているような知らないような。

 

……あ、そもそも記憶がないのをなのはやユーノに早めに伝えなければ。

 

 

「すまない、ユーノ。その前に俺の話を聞いてもらっていいか?」

 

「うん、大丈夫だよ。 あ、それってなのはもいたほうがいい?」

 

「出来れば。二度手間になるからな」

 

 

うんうん、そうだよねと頷くユーノ。

 

……冷静に考えると俺、今動物と話してるんだよな。

なんとも言えない感覚だ。

 

ユーノと話しつつ、そんな事を考えていると……

 

 

ガチャ

 

ドアの開く音。

どうやらタイミングよく帰ってきたらしい。

 

 

「よいしょっと、あ! ユウさん目が覚めたんだ。大丈夫?」

 

「おう、ごめんな話の途中で」

 

 

にゃはは、大丈夫ーなんていいながら飲み物とお菓子を運んできたなのは。……なんというか、無防備? 俺は何もするつもりないけど、見ず知らずの他人だぞ、俺。

 

 

「じゃあ、ユウ?」

 

「ああ、なのは俺の話を聞いてもらってもいいか?」

 

「うん、大丈夫だよ。ユーノくんとはもうお話ししたんだね」

 

「それじゃあ、改めて自己紹介と俺の現状について、まずーーー」

 

 

 

そこから俺は自分の名前、気づけばあの場所にいた事、あとなのはにも敬語はいらないと言う事、

 

そして「記憶がない」ことを話した。

 

 

「ーーーって感じかな。質問とかあればどうぞ」

 

「………えっと、はい」

 

「はい、なのは」

 

 

手を上げてきたので指名。

別に挙手制ではないんだけども。

 

 

「ユウさんは名前以外の記憶はないんだよね?」

 

「あー、一応年齢くらいなら覚えてるぞ? 16歳のはずだ。」

 

「え? そうなんだ。……じゃなくて!」

 

 

なのはの急の大声にユーノがビクッとしている。

 

 

「ユウさん、家に帰れるの?」

 

 

………………これは盲点。

 

俺ってどこに住んでたの?

 

 

「ユウ?」

 

「あー……どうしよう、なんも考えてないや」

 

「やっぱり……ユウさん、携帯電話とかお財布とかもないの?」

 

「なんもない……いや、確か…」

 

ポケットに入れたままだったよな?

右ポケットから謎の機械を取り出す。

 

「それさっきの……あ、だから自分のかわからなかったんだね」

 

おっしゃる通りです。

 

「……ユウ、それみせてもらってもいい?」

 

「ん、別に大丈夫だぞ。ほれ」

 

「ありがとう」

 

 

おお、小さい体で器用に受け取るな。

 

ふむふむ、やっぱり……なんて呟いてるユーノ。

 

 

「それ、なんだか分かるのか?」

 

「うん、多分だけどコレはデバイスだよ」

 

「え!デバイス? レイジングハートと同じ?」

 

 

デバイス?レイジングハート? なんの話なんだろうか。

 

 

「えっとね、デバイスって言うのは」

 

 

………なのはとユーノからの説明によるとデバイスって言うのは魔法使い=魔導師が魔法を使用するための補助的なモノらしい。

 

簡単に言うなら杖みたいなもの、とのこと。

なのはが持っているデバイスが「レイジングハート」と言う名前らしい。

 

デバイスにも種類があり、レイジングハートはインテリジェントデバイスと言うものだとか。

 

 

そう言えば、そんな事を誰かに教えてもらったような……?

 

 

「でもこのデバイス……見たことない素材やデザインだなぁ……」

 

「そうなのか?」

 

ユーノが物珍しそうに眺めている。

 

「うん、コレ起動できる? 正直、種類すらわからないんだ。横のスイッチが起動用のものかと思ったけど、起動しないし……」

 

 

「少しいじってみるか、貸してくれ」

 

はい、とユーノが渡してくる。

なのはも興味があるのか俺の手元のデバイスに釘付けになっている。

 

 

「うーん……」

 

「やっぱり、起動しない?」

 

「ああ、横のスイッチ以外押すところもないしなぁ……」

 

 

横のスイッチはユーノが押してダメだったみたいたが一応押してみる。

 

PiPi PiPi………

 

「ん?」

 

「あ!」

 

「え」

 

 

……画面に何か表示された?

 

System = Zeit・Aufstieg

 

なんだコレ システム=ツァイト・ライゼ?

 

この機械の名前か?

 

 

「それ、このデバイスの名前?」

 

「わからないけど、ツァイト……ライゼ…しっくりくるんだよなぁ…」

 

「あれ?その下……」

 

なのはに言われたままその下を見ると

 

4/100%

 

と表示させている。

どうやら起動までもう少しかかるみたいだ。

 

 

「こんな風に表示されるのもボク、初めて見たよ」

 

目を輝かせるユーノ。

もしかしてこういうの好きなのか?

 

さてとりあえずデバイスは置いていて……

 

 

「まずは住む場所と働き口か……」

 

はぁ……そもそも自己証明できるものが何もない俺に住むところどころか働き口なんて見つかるのだろうか……

 

 

「ねぇ、ユウさん?」

 

 

軽く絶望している中、なのはに呼ばれる

 

 

「もしかしたら、働ける場所に心当たりがあったり、なかったり……」

 

 

マジで?

 

 

 

 

 

 

9/100% Load……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「うん、構わないよ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ああ、なんなら直ぐにでも働いてもらっても構わないよ」

 

 

今俺はとんでもない聖人を目の前にしてるのではないのか?

 

ニコニコとしている男性ーーーなのはの父親をみながら思わず、そう考えてしまう。

 

 

 

少し時を遡る。

 

 

 

 

 

「ちょっと待っててね、ユウさん」

 

「え、あ、はい」

 

 

思わず黙ってしまう。 それもそうだろう?

 

死活問題のバイト先に心当たりがあるのが、出会ってまだ1時間くらいの少女だと言うのだから。

 

………部屋に上がり込んでいる時点で何かおかしい気がしないでもないが。

 

 

〜〜〜10分後〜〜〜

 

 

「ユウさーん!ちょっときてー」

 

 

なのはの声に思わずビクッとしてしまう。

 

さて、さてどうなるやら……

 

 

「……なんか緊張してきた」

 

 

「はは、頑張ってユウ」

 

 

「ん、行ってくるよ」

 

 

ユーノの声援を受けながらなのはの元に。

そもそも、一体なんのバイトなんだろうか?

 

そんな事を考えながら一階に降り、玄関の方にいるなのはの元へ。

 

 

「それじゃ、行こっか」

 

 

「おう、じゃなくてさ。俺はなんのバイトを紹介してもらえるんだ? 」

 

 

「あ、言ってなかったけど私の家、喫茶店やってるんだー」

 

 

何という幸運。なのはのご両親は喫茶店をやってるのか。

 

それならこの歳の女の子がバイトを紹介できる理由も納得できる。

だが、問題はまだ…ある。

 

 

「それはありがたいけど……俺、身分証とかないぞ?」

 

 

「あ、そっか。でも大丈夫だよ?お父さん少しくらいの事情がある人には優しいから」

 

 

いやいやいや。

 

記憶なくて、身分なくて、魔法使いかもしれないような得体の知れない奴だぞ。

 

普通に断るだろう。

 

 

と思っていた。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、こういう時は助け合いだよ!助け合い」

 

こんな事を平然と言ってのける、なのはの父ーーー士郎さん。

 

一体なのはは俺のことをなんて説明したのだろうか?

 

そう思いながらなのはに目を向ける。

 

 

(どうしたの?)

 

 

!!??

 

脳内に響くなのはの声?

 

なんだコレ、また魔法か何か?

 

 

(あ、そっか。ユウさん、コレは念話だよ)

 

念話?

 

 

(とりあえず、私のことをイメージしながら声に出さないで話しかけてみて)

 

 

言ってること無茶苦茶じゃないか?

 

 

(こんな感じか?)

 

 

(うん!聞こえてるよ)

 

 

あれ、出来た。

 

なんだろう、言われてることは滅茶苦茶だけど、一番「俺」にとってわかりやすい説明だったような……?

 

 

(それで、どうしたの?)

 

 

ああ、そうだった。

 

 

(俺のことを、士郎さんになんて説明したんだ?流石にここまで初対面の相手に良くしてくれるとは思わなかったんだが……)

 

 

(えっとね……記憶が無くて帰る場所もわからない人がいるんだけど、助けられないかな?って)

 

 

それ、別の意味で誤解するよね?

 

 

「さて、ユウくんだったかな?」

 

「あ、えっと……はい」

 

士郎さんの言葉で混乱していた頭を整える。

 

 

「なのはから話は聞いてるよ。歳はいくつだい?」

 

「16歳です」

 

「うんうん……それじゃーーーー」

 

 

 

そこからは面接みたいな感じだった。

 

年齢から始まり、どこまで覚えてるか、ここら辺の街に見覚えがあるか、接客は出来そうかなど。

 

というか……警察だとか家出だとか何か不穏なことも聞こえたけど、とりあえずスルー。

 

俺はなのはに言われた通り魔法に関すること以外は出来るだけ正直に、丁寧に答えた。

 

 

「ーーーうん、それじゃあ明日から早速働いてみるかい?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

まさかの働き口、ゲット。

身分証明出来なくても働けるのか。

 

 

「さて、ユウくんは住む場所はどうするんだい?」

 

 

 

これまた問題が。

正直、住むところよりお金、働く場所をどうするかに必死すぎて何も考えずに、ここまで話を進めてしまった。

 

 

「あー、大丈夫です。なんとかしますよ」

 

 

まぁ、さっきの公園はベンチもあったし今晩はあそこかな。

 

野宿か……なんとも……。

 

 

「ふむ、提案というかお願いみたいな形になるんだけどね?」

 

「はい?」

 

「最近、人手が足りなくてね。もしユウくんさえ良ければ、泊まり込みで働いてみないかい?」

 

「はい??」

 

 

え、え? どういうこと?

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!俺、自分で言うのも何ですけど、怪しさ満点な奴ですよ!?そんな奴を泊まり込みでって……」

 

 

「はは、だって君はこのままだと泊まる場所すらないだろう?それに僕は人を見る目だけは自信があってね。

なのはからのお願いって言うのも正直あるけど、それ以上に話してみて僕は君の事を気に入ったから。そんな理由じゃダメかな?」

 

 

惚れてまうやろ。

 

イケメン過ぎないか。

 

 

「でも、士郎さんにも家族がいるでしょう?

その人たちになんて言われるかわかりませんよ?」

 

 

「ああ、それなら大丈夫だよ。

ーーそこでずっと見てるし」

 

 

「え?」

 

 

思わず後ろを振り返ると、そこには、笑顔でこちらを見ている女性が1人。

 

ああ、見た目がなのはそっくりだ。 歳も若いしお姉さんか?

 

 

「あ、お母さん」

 

 

お母さんだったらしい。若すぎないか?

 

とりあえず、頭を下げておく。

 

 

「さて、紹介するよ。僕の嫁で桃子だ」

 

 

「こんにちは、ユウくんよね?高町桃子です。これからよろしくね」

 

 

「…ユウです、よろしくお願いします」

 

 

 

そんなこんなでバイト先と住む場所すら確保できてしまった。

 

なのはを見ていた時から思うのだが、この家の人たちは優しすぎないか?

へんなところに騙されないか心配すぎる。

 

 

「あとは、なのは以外にも子どもはいるんだが、帰ってきたら紹介するよ」

 

 

「恭也と美由希って言ってね、ユウくんより2つ上と1つ上なの。仲良くしてあげてね」

 

 

「は、はい」

 

 

 

恭也さんに美由希さんか。

どんな人なんだろうか。

 

 

「それじゃあ、なのは、家に案内してあげて?

部屋は二階のなのはの隣が空いてるからそこを使ってね」

 

 

「はーい、それじゃユウさん行こう」

 

 

「あ、ああ」

 

 

なんでこんなにあっさり受け入れられるのだろうか?

本当に不思議だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「なぁ、なのは」

 

「なぁに?」

 

 

翠屋からなのはの家まで約5分程度。

その道を歩きながらなのはに自分の疑問点を聞いていく。

 

 

「本当に良かったのか?

俺みたいな奴と一緒に住む事になるんだぞ?」

 

「平気だよ?ユウさん悪い人じゃないし、それに困ってたらお互い様だよ!」

 

 

あの親あってこの子あり。

なのはには、このまま綺麗に育ってほしいものだ。

 

 

「まぁ、いいなら俺からは感謝しかないんだけどな。

本当に助かる、ありがとう」

 

 

「にゃはは、どういたしまして!」

 

 

さて、住む場所、お金の問題が解決したなら次は……

 

 

「魔法について、か」

 

 

ふとポケットに入れっぱなしのデバイスを見てみる。

 

29/100%

 

 

着実に起動は進んでいるようだ。

……少しながい気もするが。

 

 

「ユウさん、今日の夜時間ある?」

 

 

「ああ、何もする予定はないよ」

 

 

別段、魔法の使い方でもなのはかユーノに聞こうとしていたくらいだ。

 

 

「私、魔法の特訓をしてるんだけど一緒に行かない?」

 

「ああ、それなら俺の方から頼むよ。

魔法の魔の字もしらないからな」

 

 

さて、これからどうなっていくのか。

 

俺の今の目標というかするべき事は、記憶を取り戻すのと、魔法の使い方、それとーー

 

 

 

「ふふんふーん♪」

 

 

 

愉快に鼻歌を歌っているこの少女を助ける事かな。

 

 




少し長くなりすぎました……。
申し訳ありません。
次回からやっと魔法がつかえるかな?

ここまでお疲れ様でした。
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