死の支配者と星の御子   作:識神
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第1章:異世界転移
第1話:Prologue


 DMMORPG『ユグドラシル』

 

 此処には現実の世界(リアル)では手に入れることができない物が存在していた。

 

 自然、住居、食べ物、調度品、嗜好品……。この世界(ユグドラシル)で手に入る素材、通貨、時には現実の資産をつぎ込めば、望むものほぼ全てを再現する事ができた。

 

 無論、それらがまがい物である事を殆どのプレイヤーが十全に理解していた。

 

 だが、それでも自らの儘ならぬ欲をほんの少しでも満たしてくれるこの素晴らしき世界を、プレイヤー達は愛していた。

 

 そして『エン・シルキティアス・ギルバーティス』もまた、この世界に魅了され、この世界を愛し続けたプレイヤーの1人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー……。終わっちゃうんだなー……」

 

 時刻は23時30分。

 

 精霊系の種族が多く集まる村、その外れにある、村を一望できる丘の上で、朝からやっていた作業の後始末をつけながら感慨深く呟いた。

 

 基本的にソロで行動していた自分には、物や人などのしがらみが比較的少ないのだが、それでも約10年の積み重ねは伊達ではなかった。

 

 最も時間が掛かったのは世話になったプレイヤー仲間への挨拶だったが、それはなんとか終わらせた。

 

 最終日だけあって、大概は早いうちからログインしていて捕まえるのに苦労がなかったが、それでも2、30人連絡がつかない奴らはいた。だがまぁ、それも仕方がないだろう。

 

 あれ程この世界で自然の再現に心血を注いでいたあのブルー・プラネット氏ですら、だいぶ前に引退していたのだから。

 

(そういえば、彼が作った夜空を模した天井…結局見ずに終わってしまうなぁ……)

 

 昔、見にこないかと誘われた事があったが、かの悪名高いアインズ・ウール・ゴウンの拠点にお呼ばれするのは中々に畏れ多く、また自分は割りかしと人間種とも友好的にやり取りしていた為、他のプレイヤーに妙な勘繰りをされるのも面倒だと、機会を先延ばしにしていたのだった。

 

 結局、一度もお邪魔する事なく終わりを迎えてしまった事に、誘ってくれた自然愛好仲間やギルド長さんに対する申し訳なさを感じてしまう。

 

 

 

 挨拶と同時進行で進めていたのは、所持アイテムの目録作りだ。

 

 まぁ、やっぱりこれだけのめり込んだゲームの証を残しておきたいという、タラタラな未練を少しでも慰める為に、画像データに残そうと思った訳だ。

 

 自分はアイテムボックスを課金で限界まで拡張しており、加えて《インフィニティ・ハヴァザック/無限の背負い袋》を重ね履きする手法ーーどこに何が入っているか判り難くなる為、上級者ほどやらないーーにより、相当数のアイテムを所持していた為、これまたかなりの時間を費やす事になった。

 

 もっとも、元々几帳面に整理整頓を心掛けていた為、目的のものを探す事よりも、いちいち取り出したアイテムに対する感傷に浸っていた事が時間浪費の主な原因なのだが。

 

 取り出していたアイテムの片付けを終えて時計を確認すると、残り時間は10分を切っていた。

 

 

 

「さて……と、あとやり残した事は……」

 

 指折り数えながら確認をし、最後にやると決めていた事以外を無事に済ませた事が分かると、《フライ/飛行》の呪文を唱えて大空に舞い上がる。

 

 グングンと高度を上げる。この世界が定める限界まで飛び上がると世界を見渡す。

 

 最期は憧れて止まなかった星空で…と決めていた。

 

「この星空も見納めか……。昔資料で見たやつに比べて、かなり適当なんだけど、それでも最初は感激したっけな……」

 

 様々な資料である程度本物の星空の知識を蓄えた今にしてみれば、お世辞にも素晴らしいとは言えない星空のエフェクトを見ながら、この世界にやってきた時の事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 23時58分

 

 

「楽しかったなぁ……」

 

 

  呟いた言葉は静かに空に溶け込んでゆく。

 

 

  「ふふ……。これから先、ここまでのめり込む事は無くなるんだろうなぁ」

 

 

 自分はいい歳の大人だ。ここまで何かに夢中になる事も、無くなっていくだろう。

 

(さぁ、この世界の最期を感謝の気持ちで迎えよう)

 

 目を閉じてサービス終了による強制ログアウトを待つ。

 

 

 

 

 

 23:59:56、57、58、59

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 00:00:00、01、02、03……

 

(ん……? ログアウトのアナウンスが流れない……?)

 

 本来なら流れるずのアナウンスが流れてこない事に違和感を覚える。

 

 最後の最後にケチがついたような気がしたが、あの運営ならやりかねないと、なんとも締まらない気持ちで仕方なしに目を開く。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 目の前に広がるのは規則的に並ぶアプリケーションのタイトルなどではなく、満天の星であった。




始めてしまいました。

エタらぬ様に続けたいところです。

※オリ主情報を前に差し込めたので、次回投稿は第2話ですね。



スペッキオ様、誤字報告有難うございました。







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