と言ったところで13話へどうぞ!
「…る君!…きて!」
…誰か自分を呼んでいる声がする。どこか聞き覚えのある女性の声…と次の瞬間カァッ!と眩い光が俺の眠りを妨げた。俺はゆっくりと目を開ける。
美弥「あ!駆君起きた?」
ベッドで寝ている俺の横に美弥の顔が見える。そうか、俺を起こそうとしてくれていたのは美弥だったのか。
いつもははやく起きるはずの俺なのに今日は珍しい。やはり昨日の親睦会での疲れが響いたのか?
と、そんなことよりもまずは彼女にお礼を言わないとな。
駆「あぁ、起きた。起こしてくれてありがとう」
目をこすりながら俺は彼女に礼を言った。
美弥「どういたしまして!」
とニッコリする美弥。どうやら彼女は既に制服に着替えているようだ。
俺は部屋の時計を確認する。いつもの起床時間をとっくに超えてしまっている。これはやく準備をしないと遅刻になってしまう。
駆「美弥さん、別に俺を待つ必要は全く無いぞ?
むしろ、俺を待って君が遅刻になったら不味いだろ?」
美弥「確かに、遅刻は嫌だけど…それでも私は駆君と朝ごはん食べたいの!」
なんだよそれ、ご飯なんてまたいつでも食べれるじゃないか。それで俺を待って遅刻になったら絶対に俺の責任になるんだろう?
…真っ先に彼女を行かせてやりたいが、多分どう言っても彼女は自分の意思を曲げないだろう…なら俺が早く準備するしかないな。
駆「…すぐに準備する。外で待ってろ」
美弥「うん!」
俺は既に身支度を済ませた美弥を外に出させて自分の身支度を開始する。
〜少年、身支度中〜
俺はいつもより急いで支度をした。時間割は昨日行ったから大丈夫なはず…そして俺は部屋の窓の開け閉めを確認し部屋から出た。
駆「すまない、待たせてしまった」
俺は部屋の鍵を閉めた後、廊下の壁にもたれかかっている美弥に謝罪する。
美弥「ううん!そんなことないよ。ほら、行こうよ!」
駆「あぁ、だけど少し急いだ方がいいかもな」
俺と美弥は急ぎ足で食堂に向かった。今日は何を食べようか?時間に余裕がないからカロリーメイトと思ったが美弥にまた釘を打たれそうなので止めておこう。
しばらくの間はカロリーメイトとレッドブルは封印か。これはキツいな…
今日は手頃なサンドイッチを食べることにするか。
昨日の昼食の悲劇を思い出すが、ここのサンドイッチは美味い。それに昨日美弥が食べていたサンドイッチのサイズは俺が知っている従来のものより小さかったはずだ。朝はあまり食べない俺にとってそのサンドイッチはちょうどいいものだ。
食堂に着いた俺と美弥はまっすぐ自動販売機に行き、それぞれ欲しい食べ物の食券を購入する。俺は食堂の自動販売機からサンドイッチの販売券を購入し、食堂の人にそれを渡した。
一方で美弥は焼き魚の定食を選んだようだ。なるほど、いいチョイスだ。なんせ日本の料理は栄養バランスがとても良いと言われているからな。
それにしてもよくその量を食べるな。もしかして、毎朝この量を食べているのか?
疑問に思ったので直接本人に聞いてみることにしよう。
駆「…美弥さんって朝はよく食べる人なんだな。毎朝そんな感じなのか?」
美弥「え?うん、そうだよ。腹が減っては戦は出来ぬ!って言うし、むしろ駆君は全然食べないよね?それでお昼までもつの?」
彼女は突然の俺の質問に戸惑いつつ答え、返しに俺に1つ質問した。
駆「あぁ、俺はこれで大丈夫だ」
なるほど、彼女は毎日その量を食べているのか…実際とても元気なのが何よりもその証拠か。それに比べ俺の食べている量は美弥に比べて少ない。
…俺も食べる量を増やすべきか?
と思い最後の一つを口に入れる。ふむ、これはハム、レタス、卵、マヨネーズのサンドイッチ。昨日のトラウマを思い出してしまうのだが、美味い。また明日も頂くとするか?いや、他のメニューに目を通すのもまたいいかもしれない。そこは明日の俺の気分次第だな。
俺が最後のサンドイッチを食べ終わると同時に目の前の美弥も焼き魚の定食を完食したようだ。圧倒的に量が違う上に俺の方はそれが少ない。本来なら俺が先に食べ終わるのに何故同時に食べ終わったのだろうか?
その理由は簡単。美弥の食べるスピードが早いのと俺がこのような無駄な考え事をしながらサンドイッチを食べていたからだ。
美弥「駆君、ご飯食べ終わったみたいだね。一緒にいこ!」
駆「あぁ」
俺は美弥と皿の乗ったトレイを返した後、また急ぎ足で教室に向かった。
俺達が教室に入ったのはマギサ先生が教室に入り、SHRを始める3分前だった。
その頃には霊夢や魔理沙、ほとんどの生徒が教室に入っている。
途中から廊下を走って教室に入った。全力疾走したにも関わらず、美弥はピンピンしているのに対し俺は息を切らしている。それを見た弾や、霊夢達は笑い始め、魔理沙は俺に「なんだよ駆、お前体力無いのかよ!?」と言われた。少し馬鹿にされたと思い、何か言い返そうとしたのだが俺に体力が無いのは自覚していたので否定も言い返すことも出来ず、素直にコックリと首を縦に振り肯定の意を示した。とりあえず遅刻を無事に回避することが出来たので一安心といったところか。
マギサ「おはよう!皆席に着いて、出席をとるわよ」
教室に入ってきたマギサ先生の一声で席を立ち何気ない会話で盛り上がっていたクラスのみんなは静かになり自分の席に戻る。
その一方でマギサ先生は次々に生徒の名前を言い、欠席かどうかを調べている。
マギサ「天童駆君!」
駆「あ、はい…」
咄嗟に名前を呼ばれたので少し驚きながら返事をした。
マギサ「元気が無さそうだけど、大丈夫?保健室に行く?」
マギサ先生は俺の体調を気にして心配をしてくれているようだ。
む?普通に挨拶したのになんでそんなことを言うのだろうか…
あ、そうか。
駆「いえ、自分は元からこんな感じなのでよく間違えられるんですよ。
本当に体調が悪い時は先生に言いますので気にしないでください」
俺の普通の基準は皆とは違う。皆の言う普通の挨拶というのは俺よりも元気に挨拶をするものだろう。だからさっきの俺の挨拶を聞いてひょっとしたら体調が悪いのかもと捉えたのだ。
マギサ「そ、そうなのね。体調が悪い時は遠慮なく私に伝えるのよ?」
駆「はい」
マギサ「じゃあSHRを始めるわ」
とマギサ先生はすぐにSHRに話題を切り替えた。まぁSHRの次は授業があるからな。
急がなければいけない。
と言わんばかりに皆に伝わるように且つ迅速にSHRを進めていく。
マギサ「あ、そうそう6限目の学活なんだけどね、さっき部活動の冊子を配ったでしょ?その中から見学したい部活をピックアップしておいてね☆
アンケートをとるから」
「「「はーーい!」」」
マギサ「じゃあ私は行くわ。授業頑張ってね!」
クラスへの応援を最後にマギサ先生は教室を去っていく。
それにしても部活動か、入るつもりは無いので見学はしたくなかったところだが、先生は強制だと言っていたので仕方ない。さて、この学校にはどんな部活動があるのだろうか?俺はペラペラペラ〜っと渡された冊子をめくっていく。そこには、この学園の部活動の全てが簡潔にわかりやすくまとめられていた。
サッカーやバスケットボールに野球部などのスポーツ系統の部活や文芸や美術部などの文化系の部活に加え、ネトゲ部や幽霊研究部、それに愉悦部などのちょっと?いや、かなり特殊な部活もある。
まぁ、ネトゲや幽霊研究部はそれなりに想像はできるが愉悦部って何をする部活動なんだ?全く想像できない。
美弥「ねぇ駆君、部活どこ見学するか決まった?」
冊子を見ていた俺に美弥が唐突に話しかけてきた。
駆「いや、まだ目星の部活は見つかってないな。というか、さっき冊子を渡されたばかりだから決まってないのは想像できるだろ?まぁそんなことはどうでもいい、じっくり考えながら決めることにする。
そういう美弥さんは目星のものが見つかったのか?」
美弥「うん、この詩姫部っていうのがきになってね!見学に行きたいと思うんだ」
詩姫部?なんだそれ、何ページにあるんだ?目次目次っと…ふむ、9ページに説明があるのか。見てみよう。
…なるほど、さらっと見たものを簡単に説明すると校内の文化祭や人里などでライブを行い、それに向けてダンスのレッスンや発声の練習を行う部活動、要はスクールアイドルだな。
そして部活の入部条件として1つ女性である必要がある…か。なら男性である俺は当然入部不可能だ。
他のを探すとするか。
キーンコーンカーンコーン
と思っていたところに1限目始まりの鈴が鳴った。
1限目は数学か…かなり重要な科目を朝っぱらからするのか。これは少々気合を入れて取り組まなければな。俺は鞄からその教科書とノート、文房具の入った筆箱を取り出し机に置く。準備は万端である。
そして1年の数学を担当する先生が教室に入り授業が始まる。
〜少年、少女授業中〜
俺は先生のわかりやすい説明を聞き、黒板に書かれた因数分解の公式をノートに書き写しているところだ。
今のところ分からない部分は無い、順調なスタートをきっている。
その一方で美弥は額からダラダラと汗を垂らしている。どうやら因数分解の内容が分からない様子だ。
この時点で分からないのはかなり不味い。下手をすると留年の危険性があるので授業が終わり次第、救いの手を差し伸べるとするか。
と考えた俺は先生の指示に従い教科書ページ4にある問2の問題に手をつける。この問題はさっきノートに書き写した公式を使えば簡単に解ける。5問程あるがぱぱっと終わらせよう。
キーンコーンカーンコーン
…問2の答え合わせが終わったところで1限目終了の鈴が鳴った。
内容は理解していたので、全問正解。その一方で美弥は机に突っ伏して頭から煙を出している。
安否を確かめるために声を掛けてみよう。俺は美弥の突っ伏している席に近づき声を掛ける。
駆「美弥さん、大丈夫か?授業内容が分からず、オーバーヒートして頭から煙が出ている様に見えるんだが…」
そう言うと机に突っ伏していた美弥がガバッと顔を上げ涙目で俺を見つめる。
美弥「大丈夫じゃないよぉぉ!わかんないよぉぉ!」
駆「そ、そうだったのか。なら俺が今夜寮で教えてあげようか?」
美弥の悲痛の叫びに若干圧倒された俺は1つの提案を出す。
美弥「お願いぃぃ!教えて駆くぅぅん!」
その提案に彼女は乗った。授業序盤の内容が分からないのは相当不味いことだということを彼女は知っているからだ。
駆「わかった。途中で寝るなよ?」
美弥「うん!」
俺の忠告に彼女は元気よく返事をする。それくらい元気だったら今夜の勉強会も熱心に取り組んでくれるだろう。
俺はそんなことを思いつつ2限目の準備を行う。
そんなこんなで昼休憩。俺の座る席の前に左から霊夢、魔理沙、早苗が座っており俺の左隣には大好物のカレーに豚カツを乗っけた、いわゆるカツカレーに夢中な弾、右隣には脳のキャパシティがオーバーしてアハハハと乾いた笑いをしながらオムライスに手をつける美弥が座っている。
霊夢「ねぇ、美弥あんた大丈夫?」
美弥「大丈夫だよ霊夢ちゃん。決して授業の内容が頭に入らないとかじゃないから〜」
美弥を心配し声を掛ける霊夢に対し美弥は大丈夫と言う。絶対に大丈夫じゃない。
魔理沙「そんなこと言っても説得力無いんだよな」
と鋭いツッコミを魔理沙が入れる。多分それはこの席に座っている、美弥以外がそう思っただろう。
ダン「これは(´〜`)モグモグ重症だな(´〜`)モグモグ…」
駆「弾君、君はまず、口の中にあるカレーを飲み込んでから発言をするべきだ」
俺は隣でカレーを頬張る弾に注意する。注意された弾は即座に口に含んだカレーを飲み込み、コップの水を一気に飲み干す。
ダン「ぷはぁ……さて、美弥の問題だけど駆は手を打っているのか?」
駆「フォローはしているのだが危なっかしい。今週の休みの日を1日彼女に空けてもらい勉強会を行おうと思っているのだが…」
「「「それだ!」」」
勉強会にピンときたのだろう。弾、霊夢、魔理沙、早苗が俺に向かって指を指す。
俺はいきなりの事なのでびっくりしてしまった。
それはいいのだが、ワンツーマンで教えるには色々と苦しいので追加で助けが欲しい。誰か参加する人は居ないのか?
早苗「私はその案いいと思います!あ、私も参加していいですか?」
とここで困っていた俺に救いの手を出す早苗。ならば俺の答えは1つ。
駆「あぁ、俺は構わない。むしろ教える側が増えて助かる」
俺は早苗の参加を承諾した。その後弾、霊夢、魔理沙が参加を希望。
まぁ5人で美弥を指導すれば何とかなるだろう。ふぅ…と俺は安堵のため息をついた。
そして時間が経って6限目の学活の時間。
頭を抱える美弥をフォローするのに必死で放課後に見学する部活動を決めていなかった俺は今割とガチで焦っている。
…猶予はあった。そう、決める猶予は沢山あったのに決まっていないのだ。ダメだ、先生に決まっていないなんて口が裂けても言えない。なので早く決めないといけないのだが、ここは焦ってはいけない。
…そうだ。素数を数えて落ち着くんだ。素数は1より大きい自然数で1と自分自身で割り切れない数のことだ。
2、3、5、7、11、13……
美弥「駆君!一緒に詩姫部って所に見学に行かない?」
駆「( 'ω')ファッ!?び、びっくりた…っていうかどうして女子しか入れない部活動の見学に男子である俺を誘うんだ?」
美弥「え?入部条件は女子だけど、見学は男子でもできるよね?それに駆君まだ見学する部活決まってなさそうだし、1つ提案としてどうかなぁ〜って思ったんだ!」
なるほど、確かに入部条件だけは女子と書いていたので見学は可能か…
彼女の提案は最終の案にして時間ギリギリまで考えよう。その前に提案をくれた彼女にお礼を言わないとな。
駆「ありがとう、そこに見学するかは分からないが参考になった」
ありがとうとお礼を言われた美弥はえへへーと照れていた。
…あのあと真剣に考えたものの、結局は見学したい部活が見つからず、美弥の提案に乗ることにした。
自分の部活動見学希望シートには詩姫部と書かれており、それがマギサ先生に渡される。もしかしたらこの部活の見学を希望した男子が俺だけかもしれないという不安が脳裏をよぎる。
男子で誰か希望はしていないのだろうか?
ピーンポーンパーンポーン
顔を真っ青にしている俺の耳に6限目終了の鈴が鳴り響いた。
To be continued…
次回予告
俺の想像をはるかに超えたこの世界。そんな中で日常を繰り返していれば、いつかは慣れてしまうのだろうか?
次はどんな有り得ないものがあって俺を驚かせてくれるのだろう?
色んな期待を胸に抱きつつ部活見学先に向かった俺が見たものは…
次回、バトルスピリッツ 欠落
Turn-14 運命のイタズラエンジェル