バトルスピリッツ 欠落   作:えむ〜ん

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ども!蛇マグナ卿です。
え〜初の年末投稿という事で第36話をバチコリ投稿して優勝たいと思います。

今回は過去最多文字です!!覚悟の準備をしておいて下さい!いいですねッ!!!!


Turn-36 あなたを想うように

魔理沙「さぁ!早速始めようぜ、美弥!」

 

バトルステージの真ん中、私の向かいにいる魔理沙ちゃんはニカッと明るく微笑む。

 

美弥「う、うん…!よろしくね、魔理沙ちゃん」

 

先生の丁寧な説明が終わってすぐ、私は魔理沙ちゃんに連れられバトルステージに立った。

されるがままに魔理沙ちゃんとバトルする流れになっちゃたけど、あそこまで強引で積極的な魔理沙ちゃんを見たのは初めてなのかもしれない……

 

魔理沙「バトルアーマー、オン!」

 

そんな魔理沙ちゃんに驚く間も無く彼女は右手のソウルコアを強く握り、その拳を私の方に向けてそう叫んだ。

直後、彼女の姿は眩い光に包まれる。バトルアーマーを装着する時に発せられる光だ。

 

魔理沙「よし、こちらも装着完了だぜ!!」

 

瞬時にバトルアーマーを装着した魔理沙ちゃん。白と黒のドレス様な服装の上に白を基調とした黒いラインの入った装甲を胸、手、足につけている。そして自分は如何にも魔法使いですと主張する様な、帽子を被り、右手には魔法使いの必需品の箒を握っている。

個人的な価値観になるけど、ガッチリした装甲と綺麗な服の見た目の相性にやや違和感を感じてしまう。でも、これがいつもの魔理沙ちゃんのバトルアーマーだ。

 

魔理沙「………美弥、お前今、私のバトルアーマーを見てこの姿に違和感を感じたろ?」

 

美弥「え、えぇ!?!?」

 

唐突に私の考えていた事を的確に当ててきた魔理沙ちゃんに私は驚いた。

いや、待って!そんなにジロジロ見ていた訳でも無いのになんで分かったの!?

 

魔理沙「おま……その反応は図星だなぁ?全く〜!!そんなこと言ったら駆だって違和感マシマシだぞ!?1回想像してみてくれ。あんなガチガチのバトルアーマーを着てカード握ってるあの極めてシュールな姿を!」

 

魔理沙ちゃんにそう言われて手札を持ってカードをプレイする駆君のバトルアーマー姿を想像するが、特に違和感を感じることは無かった。

普通にかっこいいし、似合うと私は思う。

これは多分、私と魔理沙ちゃんの美学的センスの違いなんだと感じた。

というか自分のバトルアーマーの違和感については否定しないんだね……魔理沙ちゃん。自覚あったのかな?

 

美弥「ま、まぁまぁそれはそれとして……私もバトルアーマー、オン!」

 

無理やり今の話題をぶった切って私は制服のポケットからソウルコアを取り出し、それを強く握り、叫ぶ。

瞬く間に赤、紫、緑、白、黄、青の6色に光り輝くソウルコアのまるで生命力を感じさせる様な暖かな光が握った指と指の隙間から溢れ、先程の魔理沙ちゃんと同じ様に私の全身を包み込んでいく。あまりにも眩い光が一気に視界に入ってきた為、私は反射的に目をつぶった。

バトルアーマーを着けて、スピリット達と肩を並べて戦えるのは昔からの憧れだったし、今それが目の前で自分ができるようになった事は、とても嬉しいことなんだけど、この眩しすぎる光は何とかならないのかなぁ……

ソウルコアから発せられる光に文句を垂らしながら早く終われと念じる私。

 

 

 

やがて光が弱くなっていくのを感じた私は少しずつ目を開いた。この時には既に私の全身にバトルアーマーが装着されていて、右隣には浮遊するスケボーが現れていた。もう見慣れた、着慣れたバトルアーマー。最初の頃は恥ずかしくて、対戦相手の前で照れることもあったけど、回数を重ねていくごとにその恥ずかしさも自然に無くなっていた。

 

美弥「こっちも装着したよ。さぁ、早く始めようよ」

 

私も彼女に準備が出来たことを伝える。

 

魔理沙「…………OKなんだぜ!」

 

そう返事した魔理沙ちゃんの表情は強引に話題をぶった切られて腑に落ちないといった表情をしていた。

私と魔理沙ちゃんの意見は真逆。価値観の違いで面倒な話になりたくは無いから塩対応になっちゃった事に私は申し訳なく思った。

そんな事を思っている間にバトルアーマーを纏った魔理沙ちゃんは右手の箒に跨り宙に浮いていく。その姿はまさに、前の世界で見た絵本やアニメに登場する魔法使いそのものだった。見慣れた姿ではあるけど、小さい頃の憧れだったという思い出もあって、つい目の前の本物をじっくりと見てしまう。

 

魔理沙「おーい、何ボーッとしてんだ?お前も来いよ」

 

美弥「あ、ごめん。すぐ行くね」

 

魔法の箒を乗りこなす魔理沙ちゃんに見とれていたら、本人に注意されてしまった。

私も急いで隣にあるスケボーに乗って彼女と同じ高度まで上昇していく。

 

レイ「2人とも頑張ってね!!」

 

ダン「お互い、いいバトルを!」

 

私の背後、ステージ外の観客席の方を振り返って見ると私と魔理沙ちゃんに声援を送るレイちゃんと弾君、静かに私達を見る霊夢ちゃんと早苗ちゃんが座っていた。

 

魔理沙「ありがとうな!頑張ってくるぜ!」

 

美弥「あ、ありがとう…!弾君、レイちゃん」

 

魔理沙ちゃんに続いて私も向けられた声援に答える。

やっぱり、応援されると嬉しいし頑張ろうって気持ちになるなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな考え、おこがましいかもしれないけど……もし、もし駆君がこの場に居たら私になんて声、かけてくれたのかな……?

 

 

 

いや、今の関係だったら…………それは多分…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「全力で行くぜ…美弥!」

 

美弥「………あ、う、うん!」

 

余計な考えに浸っていたからか、ぎこちない答え方をしてしまった。

 

美弥 魔理沙「「ゲートオープン、界放!!」」

 

私と魔理沙ちゃんが同時にそう叫ぶ。すると、お互いのバトルアーマーがそれぞれ光を発生。それらは徐々に広がっていき、バトルステージ全体にクリアなドーム状のバトルフィールドを生成する。

 

 

 

side change

 

 

 

ダン「……始まったな」

 

バトルフィールドの形成を確認した俺はこれから対戦を始めようとしている美弥と魔理沙の2人に注目する。

 

早苗「お互いにどんなデッキを、どんな戦法を使うのか…気になりますね」

 

そう呟いたのは俺の左隣に座っている早苗。緊張感走るような表情でバトルフィールドを見ている。

あの2人は使うデッキが1つのみなのでそこまで注目するところなのか?と疑問に思ったが、その考えは一瞬で消えた。

何故ならこの世界のバトルスピリッツは自分達が生きる為の手段となる代物だからだ。そう考えた俺は周りにいる生徒、駆や美弥、霊夢達は友達であり、[ライバル]であることを強く意識し、早苗の行動と言動に納得した。観戦というものは相手のデッキを知るまたと無いチャンス。同じデッキであったとしても、ちょっとした変化が見られるかもしれないし、今まで同じデッキを握ってはいるが駆の様に実は他のデッキを持っていてそれを今回引っ張り出して来た可能性もある。それらの情報を観戦にて入手する事でその人への対抗札や動きの封じ方を見いだせる。

だから、早苗はあそこまで真剣な眼差しをあの2人に向けているんだ。

 

霊夢「それも気になるところだけど、重要な事はもう1つあるわよ」

 

そんな熱心に2人のバトルにのめり込もうとしている早苗に霊夢がツッコミを入れる。

 

早苗「そ、そうですね……私とした事がつい」

 

レイ「美弥ちゃん……」

 

心配な眼差しでレイはバトルフィールド上空で対戦の準備をしている美弥の後ろ姿を見つめている。

バトルには1つ1つ、それを行う動機や目的がある。このバトルは何も、相手のデッキやプレイングを知ること、成績の為とかそういう事の為にバトルをしていない。あくまで本命は彼女のメンタルケア。魔理沙なら、いい結果で終わる、そう信じて俺は戦いの瞼が切って落とされるその瞬間を黙って見ることにした。

 

 

 

side change

 

 

 

私は一瞬にして現れたプレイボードに置かれた自分のデッキから初期手札としてカードを4枚引く。

……手札の内容は先攻、後攻どちらをとってもいいスタートが切れそうな手札だったので少し安心かな。

そして肝心の先攻、後攻を決めるジャンケンは私がパーを出したのに対して、魔理沙ちゃんはチョキ。選択権は魔理沙ちゃんとなった。

先攻を取るか、後攻を取るか、手札を見ながらじっくりと考えている様子の彼女を見て、私は少し不安に感じた。

先攻後攻の選択で迷うということは、恐らく先攻でも後攻でもどちらでも有効に動ける手段があの手札にあると見えるね。

 

魔理沙「ん〜〜なら、今回は先攻を貰うことにする!」

 

と宣言した魔理沙ちゃん。

先攻を選択した……?一体何を仕掛けるつもりなんだろう…

 

美弥 ライフ5 デッキ36 手札4

リザーブ3 Sコア

トラッシュカード0

トラッシュコア0

 

魔理沙 ライフ5 デッキ36 手札4

リザーブ3 Sコア

トラッシュカード0

トラッシュコア0

 

魔理沙「私のターン!スタートステップ、ドローステップ、メインステップ」

 

魔理沙 デッキ36→35 手札4→5

リザーブ3 Sコア

 

魔理沙「フフフ……いいカードだ。こいつで初っ端からペースを握ってやるぜ!私は手札から4コストでネクサス、百識の谷REVIVALをレベル1で配置するぜ!」

 

魔理沙ちゃんの後ろのステージから岩石の山々が盛り上がり広がって行き、フィールドに深い谷が生成された。

上を見上げればクラクラする程の標高の山は大迫力の自然の産物であり、見る者を圧倒するかのような力強さを感じさせた。

 

美弥「え……百識の谷!?」

 

私はこのネクサスの配置に驚いた。というのも、ほとんど後攻しか取らない彼女が、先攻を選び尚且つ自分の動きを優先したカードを使用したから。そう、この試合の彼女の動きはいつもとは全く異なるデッキの回し方をしているのである。

そして、魔理沙ちゃんのフィールドに配置された百識の谷REVIVAL……その効果は毎ターン自分のドローステップにドローする枚数を+‪1した後、自分の手札を1枚破棄するカード。さらに、レベル2では手札破棄の効果は無くなりドローする枚数を1枚増やす効果のみとなる。

しかし、REVIVALの場合、さらに自分のライフが2以下の時、さらにドロー枚数を+‪1枚してくれる……つまり、ライフ2の状態であればドローステップで最大3枚のカードをノーリスクで引くことが出来る手札増強ネクサス。

後者の効果の発動は難しい所だけど、デッキをガンガン掘り進める事が出来る優秀な効果は今後の展開にかなり響いてくると思う。

そんな厄介なネクサスを先攻の1ターン目に配置されてしまった。

 

魔理沙「ん……?なんだ、そんなにこのネクサスの配置が意外だったか?対戦開始の先攻1ターン目だぞ?驚くのはまだまだ早いぜ、美弥。

……とは言っても私に出来ることは今はこれくらいだけなんだけどな。これでメインステップ終了、エンドステップで私のターンは終了だ」

 

魔理沙 デッキ36→35 手札5→4

ライフ5 リザーブ0

トラッシュカード0

トラッシュコア3 Sコア

百識の谷REVIVAL

LV1 (0)

 

バースト

無し

 

手元

無し

 

魔理沙ちゃんの先攻第1ターンが終わり、巡ってきたのは私の後攻、第1ターン。

普段とは違う魔理沙ちゃんの動き、あのデッキで初めて見る百識の谷……何を狙っているのかは分からないけど、何か欲しいカードを山札から引き当てようとしているのは確かだと思う。あのドロー加速を早い段階で止めたい気持ちは山々だけど、今の手札的に今回の動きをどうするかを考えると、こちらも自分の動きを優先する動きしか出来なさそう……

とりあえず、今は相手の出方を見ながら最初に出すカードを選択して行く形で戦っていこうと思うよ。

 

 

 

side change

 

 

 

早苗「……意外なスタートですね」

 

腕を組んで魔理沙のフィールドの百識の谷を見る早苗。

 

ダン「あぁ、先攻を選んでいたから、てっきりメタカードを最初に出して相手の出鼻をくじく戦術を取るのかと思ってた。

今回の1ターン目はかなり珍しいスタートだな……これも日々の研究の結果か?」

 

レイ「百識の谷は赤のネクサスカードだよね。って事は魔理沙ちゃんの使ってるのは赤デッキで……いいのかな?」

 

百識の谷の配置だけではまだ分からないからか、左頬に人差し指を当てながら若干自信なさげに考察するレイ。

あれの配置からのスタートなら殆どの確率で赤属性のデッキではあるが、まぁ俺もあの光導デッキにドローソースの灼熱の谷を入れているし、多分それを前に見た事があるからレイは迷っているのかもしれない。

 

霊夢「まだ百識の谷だけじゃあ魔理沙のデッキが何かを明確に判断する事は出来ないけど、殆どの確率で赤だと思うわ。

 

そ こ ま で 特 殊 な デ ッ キ で は 無 い 限 り ね 」

 

最後の一言をやけに強調しながら解説する霊夢。明らか今のは、灼熱の谷を入れてる俺の光導デッキを意識して言っているんだろう。

 

ダン「いや……俺のは赤ベースだから」

 

愛想笑いをしながら、俺は霊夢にそう答える。

元々、未来の世界で赤属性をベースに12宮Xレアを使っていたのでもう慣れてしまった。寧ろ、ここで得た光導サポートのカード属性が赤なので必然的にそうなっている。

そんな事はさて置き、さっき霊夢が言ったように第1ターンの動きだけで魔理沙のデッキタイプを判別する事は難しい。なので、次の美弥のターンでは慎重に自分のしたい事を相手に押し付けていくスタイルが求められると思う。次に相手がしてくるであろう事も踏まえるなら耐性を持つスピリットカードの召喚か、ネクサスがベストだと思われる。

 

 

 

side change

 

 

 

へへっ、このカードの登場に驚いてくれた事は正直、嬉しかったぜ。

今回のデッキは研究に研究を重ねた自信作だ。新しいカードも取り入れてみたから、いつもの魔理沙デッキとは一味違うって所を見せてやるぜ。

心の中でそう笑みを浮かべながら動揺している美弥を見る。

次は美弥のターンだ。早々にアレを出されると後々面倒な事になるので手札に握っていない事を祈る。

 

美弥「…私のターン。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

美弥 デッキ36→35 手札4→5

リザーブ3→4 Sコア

 

美弥「……ねぇ、魔理沙ちゃん。ちょっと考えていいかな?」

 

デッキからドローしたカードと手札4枚を確認した美弥がそう聞いてきた。どうやらプランが複数あるみたいでどうするのかを真剣に悩んでいるみたいだ。

 

魔理沙「お……??いいぜ。お前が納得できる方を選択してくれ」

 

美弥「ありがとう、魔理沙ちゃん」

 

しかし、即決でカードを使うことが多い美弥が珍しい事に考えている。しっかりと考えた上で戦術を立てようとするのは非常に良い事なのだが、ちょっと驚いた。よく考えてプレイする駆を意識してやっているのか?

 

美弥「……じゃあ、私は5コストでネクサス、熾天使の玉座をレベル1で配置!」

 

しばらくして、結論を出した美弥は1枚のネクサスカードをプレイボードに置く。

その瞬間、美弥の後ろに光が差し天から宝石が埋め込まれた4つの玉座が舞い降りる。そして、それぞれの熾天使に対応した玉座なのだろう。玉座の宝石は赤、黄、緑、青の輝きを美しく放っている。

 

魔理沙「ほぉ……スタートは熾天使の玉座からにしたのか!」

 

美弥の天霊デッキのスタートはだいたい、場を固めるネクサスの配置、もしくは特定のカードを持ってくるサーチ能力を持つカードの使用のどちらかである。

サーチを選択するカードを出した……という事は今、あいつには早々に手札に来て欲しい、もしくは万が一という時の為に持っておきたいカードがあるはずだ。それが一体どんなカードなのかは現段階では分からない。でも、オープンされたカードの情報によって今の美弥デッキの変わり具合が分かるはずだから、ここのオープンカードに注目だな。

 

美弥「うん、そして熾天使の玉座の配置時効果を発動!私のデッキから4枚オープン」

 

美弥のデッキから4枚のカードがオープンされる。そのカードリストがこちらのプレイボードのディスプレイに映し出される。

 

オープンカード

黄金の鐘楼

天使ルミエル

土の熾天使 ラムディエル

熾天使の玉座

 

うわあ〜〜マジかァ……()

いつもの天霊の動きを見て1つ安心したが、そのめくりを見て私は頭を抱えたくなった。

美弥のデッキは熾天使を中心としたデッキなんだが、なんせこの天霊達……敵にするとめちゃくちゃ面倒臭い。しかも寄りによって、その熾天使カードがめくれるのかよ。

 

美弥「その中の系統天霊を持つスピリットカードを手札に加えることが出来る!今回は土の熾天使ラムディエルを手札に加え、残ったカードは破棄するよ」

 

オープンカード手札に加える

黄金の鐘楼→破棄

天使ルミエル→破棄

土の熾天使 ラムディエル→ 手札に加える

熾天使の玉座→破棄

 

 

だよなぁ〜やっぱりそいつをハンドに入れるよなぁ。

即決でオープンされたラムディエルを手札に加える美弥。ラムディエルが手札に加えられたことに反応して後ろにある黄の宝玉が埋め込まれた玉座が強く美しく輝いている。

何も手札に来なければラッキーと思っていたのだが、土の熾天使ラムディエルか……こいつの厄介さは以前の美弥との対戦から経験し、知っている。

手札に加わった情報がある分まだマシだが、これからの攻めと防御はあのラムディエルのケアをしつつ、プランを立てていかなければならない。幸いにもサーチカードの熾天使の玉座と私が1番苦手とする黄金の鐘楼が落ちた。だが。まだ手札に握っている可能性もあるから油断はできない。

相手は手札を増やすカードが豊富だからマジック、グリードサンダーのバースト効果をぶち込んでやれば、楽に対処出来るのだが、それは無いものねだりに過ぎない。

……こりゃあ勝利には少々骨が折れそうだなぁ。

 

美弥「さらに、この効果で[熾天使]の名前を持つスピリットカードを手札に加えた時、相手のスピリットをデッキの下に戻すんだけど、魔理沙ちゃんのフィールドにスピリットはいないから不発に終わるよ」

 

美弥 デッキ35→31 手札4→5

 

美弥「これでメインステップ終了、アタックステップに入って何もせずエンドステップでターンエンドだよ」

 

美弥 デッキ35→31 手札4→5

ライフ5 リザーブ0

トラッシュカード3

トラッシュコア4 Sコア

熾天使の玉座

LV1 (0)

 

バースト

無し

 

手元

無し

 

ターンエンドの宣言と同時に玉座の輝きも収まった。

しかし、バーストをセットせずにターンエンドか……コアを使い切ったからか?それとも今はまだ様子見?そもそもバーストを持つカードを手札に持っていないか……?

いずれにせよ、次の私のターンは相手のバーストを気にすること無く自由に動ける。これはかなりデカイな。

 

魔理沙「ターンを貰うぜ。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ。ここで百識の谷の効果が発動。ドロー枚数を+1する。よって私はデッキからカードを2枚ドロー!その後、私は手札を1枚破棄する」

 

今回、百識の谷を初めて入れてみた。1人回しの時もそうだったが、実戦をしてみるとよりこのネクサスの優秀さを実感する。

その2枚ドローの中にこのターンで最も来て欲しかったカードの1枚があったからだ。やはり毎ターンのドロー枚数追加は強力だな。灼熱の谷のヤバさと制限1枚にぶち込まれた理由が分かるぜ。

そして、まさか百識で追加したドローで早速こいつを引き当てるとはな。

運命を感じたからか、はたまた理想のドローカードであったからか。無意識の内に私の口は釣り上がり、笑みを浮かべてしまっていた。

 

魔理沙「私は手札の煌星第一使徒アスガルディアを破棄する。そしてリフレッシュステップ、メインステップ」

 

魔理沙 デッキ35→33 手札4→5

リザーブ0→4 Sコア

 

 

 

side change

 

 

 

早苗「うわぁ〜魔理沙さんウッキウキじゃないですか。わかりやすいですねぇ……」

 

ドローしたカードが良かったのか、くっきりと満面の笑みを浮かべる魔理沙に苦笑いする早苗。

 

レイ「百識の谷の2枚ドローでとっておきを引いたのかな?」

 

霊夢「多分ね。あいつ理想札を引いた時、顔に出ちゃうから」

 

ダン「だとしたらこのターン、魔理沙の目的は……ネクサス、熾天使の玉座の破壊か?」

 

俺がもし、魔理沙の立場になったのなら、このターンに行いたいのはダブルシンボルのネクサスである熾天使の玉座の除去だ。コントロールデッキ同士の勝負では先に場面のシンボルを安定させた方がより勝利に近づける。そして、上記の動きは次の美弥のターンにとてつもない影響が出てくる。

バーストも無くターンを返してしまった美弥からの視点で見ると今頼りになのはあの玉座だけだ。あれが破壊されると次に繋げるカードの軽減シンボルが活用出来なくなり、その分自分の展開が遅くなる。

ましてや何も無い更地からの後攻2ターン目だ。バーストでのリカバリーを狙えない美弥にとって、それは受け入れたくない最悪の盤面であり、一方の魔理沙にとっては自分のカードを展開しつつ、苦し紛れで出てきたカードを処理していくという理想のゲームメイクが出来る。

お互いの展開の差が開けば開く程、一方的なワンサイドゲームになっていき、最終的に打つ手の無くなった美弥の敗北となってしまう。

バトルスピリッツは自分がやられて嫌だと思う事を相手にやる、又は唐突に理不尽を押し付ける。まるで現代社会の闇の様なゲームだと駆は言っていた。

最後の例えは個人的にあまり好ましくは無いと思ったが、駆の言っていた事は至極ごもっともだ。相手の動きを崩し、自分の動きを相手にぶつける事はバトルスピリッツにおいて当然、立派な戦術であり重要な項目に入る。

となれば、次の魔理沙の動きは何らかの方法で確実に熾天使の玉座を破壊しに来る動きをするはず………

 

レイ「私もそう思う!だとしたら出すのはブレイヴのフェニックキャノンREVIVALかな?」

 

霊夢「赤属性のネクサス破壊カードは他にも大量にあるから断定はできないけど、現環境じゃあ盤面処理を行った後もダブルシンボルのアタッカーを2体用意できる可能性を秘めたフェニックキャノンREVIVALが濃厚そうね。それにもし、片方どちらかにダブルシンボルのスピリットを召喚し合体、もしくは煌臨させることが出来ればダブルシンボルとトリプルシンボルの2回攻撃でゲームエンドだわ」

 

早苗「それも、先攻から3ターン目の動き……流石に容赦ないですね」

 

ダン「いや、今の環境なら先攻2ターン目からキルも容易い。まだ2ターンも使える分、優しい方だよ……」

 

レイ「えぇ、何それぇ………そう考えると私達ってとんでもない環境で戦ってるんだね」

 

 

 

side change

 

 

 

アスガルディアを破棄……?相手のカードを一掃できる攻撃にも防御にも使えるカードを破棄したのはなんで…?しかも、百識の谷で引いた2枚のカードを確認した時の魔理沙ちゃんの笑み………

それを見た私は彼女に対する警戒心を強めた。

恐らく、このターンで何かを仕掛けてくるつもりだ。しかも、この場に決定的な打撃を与えてくるとんでもないカードで……

今の私には使えるコアもバーストも無い。このターンは相手の展開を許してしまうけど、ここは相手の出方を見るしかないと思う。

 

魔理沙「私は0コストでライトブレイドラをコアを1つ置き、レベル1で召喚」

 

突如現れた赤いシンボルを砕き、魔理沙ちゃんの隣に飛び出してきたのは白と青のカラーの小さな翼が生えたドラゴン。

バトスピのマスコットスピリットの中の1枚、ブレイドラのバリエーションカードだ。健気で可愛らしいその姿は私達バトラーに癒しをもたらす。

やっぱり生のブレイドラって可愛いなぁ〜!!

魔理沙ちゃんの場のライトブレイドラを見てついうっとりしてしまった。しかし、そんなライトブレイドラは可愛いという特徴だけではなく、[強化](チャージ)という特定の効果範囲を増やす能力を持っている光のスピリット。

ライトブレイドラ……赤き光のスピリットの[強化]内容は自分のBP破壊上限を+1000するというもの。

効果は重複するので赤の[強化]を持つスピリットが場に居ればいるほどBP破壊効果の上限は跳ね上がり、よりBPの高い大型のスピリットを破壊できるようになるという可能性に満ちた効果だね。

 

魔理沙「さらにいくぜ〜4コスト、赤2軽減2コストで古代怪獣ゴモラをソウルコアと通常コア2つを置き、レベル2で召喚だ!

レベル確保の為、ライトブレイドラを消滅させるぜ」

 

あ〜ブレイドラが……

不足コストの為、せっかく召喚されたライトブレイドラは光となって消滅。

不足コスト確保による消滅はブレイドラ達の宿命。でもその命の光は新しい力となって次に召喚されるスピリットに注がれる。

突如、魔理沙ちゃんのバトルフィールドに巨大なヒビが入り、爆発音に近い音ともに地面が砕かれる。そして、地中から地面を砕き現れたのは尻尾の切れた巨大な怪獣だった。

1歩1歩、歩く度にバトルフィールドを揺らすその力強い姿はまさに荒々しい暴君そのものに感じる。

 

美弥「あ…あえ?ご、ご、ご…………ゴモラ!?」

 

あまりにも意外で予想外のカードの登場だったので大声で且つ盛大に驚いてしまった。まさか、そんなカードを魔理沙ちゃんが持っていたなんて……何時どこでそれを手に入れたのかという疑問をすっ飛ばして思考が一瞬停止してしまった。

 

魔理沙「フッ!初のお披露目ってやつだな。ゴモラは私のとっておき……コイツをお前に見せたかったんだよ!!

ちなみにコイツは超強えぞ?今からその力を見せてやるぜ。メインステップからアタックステップに移行。先陣を切ってもらう、行け!ゴモラ!」

 

魔理沙ちゃんの言葉に応えるように咆哮した目ゴモラがゆっくりと私に迫ってくる。

 

魔理沙「ここで、ゴモラのレベル1、2、3のアタック時効果を発動!BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する。または相手のネクサス1つを破壊する。

よって私はお前の熾天使の玉座を破壊する!!」

 

美弥「ッ!!?」

 

すかさず、ゴモラが鼻先の角からビーム状の超振動波を私の後ろに配置された玉座に発射する。免れぬ直撃。超振動波の破壊力は凄まじく、神聖な玉座は一撃で粉々に打ち砕かれ、破損した玉座やその破片がバトルフィールドに落下し、消滅してしまった。

 

美弥「そんな、やられた…………」

 

ネクサス破壊を持ってはいないと思って熾天使の玉座を配置しちゃったけど、それが裏目に出ちゃったな……

ラムディエルを手札に加えられたことはこの先のバトルで影響を及ぼしてくると思うけど、結果として場のシンボルがなくなってしまった。

 

魔理沙「まだゴモラの効果は終わってないぜ。ゴモラのレベル2、3効果でこのスピリットにソウルコアが置かれている間、自分の効果でネクサスを破壊した時、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

魔理沙 デッキ33→31 手札3→5

 

少し残念な気持ちに浸る私に追い討ちをかけるかの様に2枚ドローによるアドバンテージの差を見せつける魔理沙ちゃん。

あれって確かコラボパックにあったカードだよね。ウルトラ怪獣のカードにそんな強力な効果があったなんて……

私はプレイボードに表示された古代怪獣ゴモラの効果テキストを確認して驚いた。しかしこっちも破壊された熾天使の玉座のオープン効果が発揮される。でも今ここでその効果を使うかどうか……

 

 

 

 

 

美弥「こっちも熾天使の玉座の破壊時効果があるんだけど……今回は使わないよ」

 

魔理沙「へぇ〜使わないんだな」

 

美弥「うん……で、フラッシュなんだけど、私は無いよ」

 

魔理沙「私も無いぜ」

 

美弥「ゴモラのアタックは………ライフで受ける!」

 

魔理沙「ゴモラのシンボルは1つ。まずは1点、お前のライフをいただくぜ」

 

瞬時にバトルアーマーが光を放ち、私の周りに黄色のバリアを展開。対するゴモラは右腕に力を貯め、思い切っきりそのバリアに拳を1発叩き込んできた。

 

美弥「うぅ……!!」

 

バリィィィィン!!

 

黄色のバリアが一撃で粉砕されるとともに私のバトルアーマーに埋め込まれた青いライフも1つ砕け散り、ゴモラによる凄まじい衝撃とライフで受けた時の痛みが全身を走る。

 

美弥 ライフ5→4 リザーブ0 →1

 

魔理沙「これでアタックステップ終了。エンドステップで、私のターンは終了だ」

 

魔理沙 デッキ33→31 手札3→5

ライフ5 リザーブ0

トラッシュカード2

トラッシュコア2

古代怪獣ゴモラ

LV2 BP7000 (2) Sコア 疲労

 

百識の谷REVIVAL

LV1 (0)

 

バースト

無し

 

手元

無し

 

 

 

 

side change

 

 

 

霊夢「……やっぱり、ネクサスを破壊しに行ったわね。しかし、フェニックキャノンじゃなくて、ゴモラを出すなんて……」

 

ダン「手札補充を優先しての行動か。もしくはフェニックキャノンを握っていなかったか…だな」

 

霊夢「正直、驚いたわ。あんな隠し玉を魔理沙が持っていたなんて……何処で入手したのかしら?」

 

レイ「ゴモラ……聞いた事ないカードだね」

 

ダン「あぁ、俺もパックは購入するけど見た事無いな。一体どのパックで収録されているんだ?」

 

と、俺を含めた3人があのゴモラという正体不明のカードに疑問を抱く中、ただ1人喜び、興奮する者が俺の隣に居た。

 

早苗「あれは……!ウルトラ怪獣のカード!!魔理沙さん、貴女めちゃくちゃいいセンスしてますよ!!あの[コラボパック]で収録されたカードを採用しているとはッ!!」

 

アホ毛を左右にブンブン振りながら右手をぐっと握りながら熱く語る早苗。

そんな早苗に霊夢とレイが注目する。

 

レイ「うるとらかいじゅう………?こらぼぱっく…………?????」

 

早苗が何の話をしているのか、分かってないレイは目が点になって顔を傾けている。

 

早苗「はい!ではレイさんの為に簡単に説明しますと、ウルトラマンという特撮作品があるんです。そこに登場する世界を守る正義の巨人、ウルトラマンの敵があのゴモラと呼ばれる怪獣なんです。

ちょんぎられてますけど、得意技は尻尾攻撃でパワーが売りの怪獣なんですよ!

そしてそのウルトラマンやゴモラも含め、作品に登場する様々なキャラクターや技がカード化されパックに封入されているんです。バトルスピリッツとウルトラマンのコラボ……これが所謂、[コラボパック]というものなんです!

ちなみにあのカードが収録されてるパック名は[ウルトラヒーロー大集結]です。ちなみに私も持ってますよ!大好きなので!!」

 

目をキラキラさせながら俺達に語りかける早苗。分かりやすくて興味が唆られる説明で非常に助かる。

 

レイ「へぇ〜〜早苗ちゃん物知りだね!なら、今度そのパックを、見かけたら買おうかな。あの魅力的な効果、私も使ってみたいな!!」

 

早苗「いいですね!ちなみにコラボパックの入荷は少ないので早い者勝ちですよ?いざとなったら休みの日にお店に行くのもいいと思います!」

 

霊夢「……魔理沙みたいにコラボカードとバトスピのカードを組み合わせたデッキで戦うのも案外いけるかもね」

 

 

 

side change

 

 

 

場面は更地……帰ってきたこのターンで何とか巻き返さなきゃさらに危ないことになる。

 

美弥「私のターン、スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

美弥 デッキ31→30 手札5→6

リザーブ1→6 Sコア

 

焦りを感じながら私はドローしたカードと手札を見る。

 

美弥「!!……これならまだいけるかも」

 

私は微笑んで小さくそう呟いた。

 

 

 

side change

 

 

 

更地の盤面をリカバリーできるカードでも引いたのか、沈んだ美弥の顔つきが少し変わったように見えた。

まぁ、あのカード以外なら特に問題は無い。あれさえ来なければ、順調に盤面を除去し更地になった美弥に連続アタックを叩き込んで勝利だ。

コントロールタイプのデッキ同士のバトルは如何に早くこちらの盤面を整えるか、相手の盤面を除去出来るかがポイントになる。このまま相手のシンボルを枯らして蹂躙してやるぜ。

 

美弥「私は3コストでネクサス、華黄の城門を配置!レベルは1!!」

 

空から水が1滴、何も無い美弥のバトルフィールドに落ちる。その瞬間、そこを中心に一瞬にして美弥のフィールドが生命力溢れる美しい草花が広がり、満たされる。

そして 天守閣の巨大な向日葵が非常に特徴的な城門が構築される。

 

美弥「さらに3コスト、黄色の1軽減2コストで黄金の鐘楼をレベル1で配置!」

 

草花に満たされたフィールドにさらに黄金に輝く鐘を乗せた塔が天高く聳え立つ。

美しい鐘の音を鳴らす鐘楼に草花に満たされた城門……

見れば見るほど溜息が出そうなくらいの煌びやかさだと思った。それに対して私のフィールドは殺風景な断崖絶壁が連なる谷が広がっている。私と美弥のフィールド温度差対比が凄まじくて美弥の黄色のカードが羨ましく思える。私も黄色のデッキを作ってみようかな…?

 

魔理沙「ついに出ちまったか……1枚はトラッシュに落ちていたから引いてないと思ってたけどな。それだけは引いて欲しくなかったぜ……」

 

これだけは本当に配置されたくなかったネクサスカード、黄金の鐘楼……相手のターンで自分のフィールドのネクサスが黄色の間、自分のネクサス全ては破壊されない。このネクサス保護の効果によりゴモラはもう役に立たなくなってしまった。

玉座の効果で1枚破棄されたのでもう配置されることは無いだろうと思ってゴモラでドローしまくるプランを組んでいたんだけどな……

 

美弥「実は3枚積んでるんだ。黄色で耐久戦に持ち込むならネクサス保護は3枚必須だって駆君が言ってたから……」

 

そう呟いた美弥の表情はとても暗かった。

朝から見ていたがやはり、駆の事でかなり精神的に引きずっているようだ。

 

魔理沙「そうか…駆からアドバイスを貰ってたんだな」

 

美弥「うん……続けて4コスト、黄2軽減2コストで黄色のネクサス、天空都市ルミナ・エテルナをレベル1で配置」

 

魔理沙「む、またネクサスか……!」

 

草花が咲き乱れるフィールドの上空に浮遊大陸が雲を割いて現れる。

浮遊大陸には大きな神殿を中心に様々な建物が建設されており、人々が築き上げた文明と自然の調和が取れている、まさに天国のような都市。異世界にでも迷い込んでしまったのかと思わせる程のメルヘンチックな美弥のフィールドに私の感覚が少し麻痺してきたのかもしれない。

……というのはちょっとした冗談で、このネクサスの配置も次のターンで動く為の準備だな。

天空都市ルミナ・エテルナ……黄色のネクサスでLv1、2で自分のエンドステップ、このターンに自分が煌臨していたとき、自分のトラッシュにあるソウルコアを自分のリザーブに置くことができる。そうしたとき、オマケでBP3000以下の相手のスピリットすべてを好きな順番でデッキの下に戻すという効果がある。ソウルコアを戻すことが出来れば相手のターンで煌臨や白晶防壁のソウルコアで支払った時の効果を使用できるのでより防御が硬くなり攻めにくくなる。

そしてレベル2の効果は煌臨中の自分のスピリットがいる間、系統天霊を持つ自分のスピリットすべては、相手の効果でコアを2個以下にされないという紫属性特有のコアシュートを意識したもの。

レベル2の効果は驚異ではないが前者のレベル1、2効果が厄介だな。しかもこのネクサスも黄金の鐘楼で守られているから、このターンで除去できない黄色シンボルを3つも作られてしまった。鐘楼の効果は破壊に対する耐性付与なのでネガ・デュポーンとかのネクサスを手札に戻す、もしくはデッキの下に戻す効果なら対処は出来るが、今の私は破壊に特化した赤属性のデッキ。

ネクサスを破壊できない現状、あちらのペースに持ち込まれないように、こちらから攻撃をバンバンしていかなければならない。盤面コントロールからビートダウンプランに変更だ。

 

美弥「メインステップからアタックステップへ……何もせず、エンドステップに入ってターンエンドだよ」

 

美弥 デッキ31→30 手札6→3

ライフ4 リザーブ0

トラッシュカード4

トラッシュコア6 Sコア

華黄の城門

LV1 (0)

 

黄金の鐘楼

LV1 (0)

 

天空都市ルミナ・エテルナ

LV1 (0)

 

 

 

バースト

無し

 

手元

無し

 

 

 

 

 

side change

 

 

 

 

 

 

窓から風が吹き抜ける保健室の中、1つ小さな箱を開けるとそこには懐かしさを感じさせる物が入っていた。永琳先生に頼んで部屋から持ってきてもらった物だ。

徐にそれらを箱から取り出し、丁寧に透明スリーブと紫色のスリーブに収まったデッキのカード達に目を通していく。汚れ、至る所に傷の入った40枚のカードの束。それらを見る度に胸が締め付けられるような感覚に襲われると同時に脳内であの時の事が再生される。

……もう二度と使わないと心に誓った忌まわしい記憶の塊。忘れようと努力している筈なのに過去がフラッシュバックしてくるのはその時の出来事で着いた傷が深く、深く自分に刻み込まれているから……?

なんでこんなものをあの時に持ってきてしまったんだろうとデッキを見ながら心の中で自問自答をしてみたが、納得のいく返しの答えは見つかる事は無かった。

 

永琳「それはさっき私が運んできた箱……そのデッキはどうしたの?」

 

俺がデッキを見ていて気になったのだろうか、八意先生が横から覗き込むように俺のデッキを見てきた。

 

駆「これは俺の…………第4のデッキです。ブラム・ザンドを主軸としたあのアルティメットデッキが使えなくなってしまったので、本来の予定よりも早いのですが、仕方無くコイツの出番を引っ張り出してきたという訳ですよ」

 

正直な所、これを自分の第4のデッキだなんて言いたくは無かったし、誰かに見せたくも無かった。

 

永琳「へぇ〜天童君って色んな色のデッキを持ってるんだね」

 

先生のその声は俺の事を知ろうとする探究心を感じさせる様な声色だった。

保健室の先生たる彼女もバトルスピリッツをやっているのか…?だとしたら、あまり自分のデッキの内容は見せたくは無いんだけどな。

 

駆「1つのデッキに拘り続けるのも良いかも知れません。ですが、それだけを握っていれば勝てる、生きていけるような環境では無いです。アグロやミッドレンジ、コントロールデッキ。そこから各系統、各6色はもちろん、さらに混色も握ることでそれらのデッキの特性が分かります。それが分かれば対面した時の相手の理想の動きや最速のリーサルとその組み方が何個あるか……他には相手の手札の予想や展開の崩し方が的確に出来るようになります。

これは自分が今以上に強くなる為の絶対条件だと思っています」

 

永琳「確かに貴方の言う通り色んなデッキを使えば色んな事が分かるから、持っている情報の量で相手に勝てるのは凄くいい事だと思うわ。

……ということは、天童君って他にも沢山のデッキを持っているの?」

 

俺の話を興味津々に聴く彼女。保健室の先生でもここはバトルスピリッツが中心となる世界なので当然と言うべきか。

 

駆「……いえ、情けない話なんですが実は俺の持ってるデッキはたったの4つだけなんです。これからそういったことを行う予定だったんですよ。

ちなみに、これはまだ誰にも公開していないデッキなので絶対に誰にも言わないでくださいね」

 

永琳「分かってるわ。それよりも………どう?気分は落ち着いた?」

 

少し遠慮がちに質問してきた八意先生。気を使ってそう言ってくれたのだろう。今回の件でいつの間にか俺は色んな人に助けて貰ってしまった。

もちろん皆には感謝しているが、それよりも助けてもらったことに対する罪悪感と自分への情けなさが勝ってしまっている。1人で生きるとあの場で言ってしまったのに……

 

駆「え、えぇまぁ……気を使わせてしまって、すみません」

 

気持ちの整理は充分に出来た。気分も大丈夫である事を俺は彼女に伝える。

 

永琳「…………」

 

しかし、何故か彼女は真剣な硬い表情のまま、俺を見つめている。

 

駆「どうしたんです?そんなに俺を見つめて」

 

永琳「なんだか、腑に落ちない顔をしてるからちょっと気になってね……もしかしてなんだけど、誰かとトラブルでもあったのかな?って思って」

 

駆「な!?………そこまでお見通しだったとは正直、驚きです。トラブル……まぁそんなところですね」

 

まさか、そこまで見抜かれていたとは思わなかったので少し驚きの声を上げてしまった。

 

永琳「……天童君はどうしたいって思ってるの?」

 

少し間を開けた八意先生は俺にそう質問してきた。

俺がどうしたい……か。俺がするべき事はもう既に決まっている。だからその答えも口から出るのは早かった。

 

駆「俺は…今の彼女がどう思っているのかが知りたい。1度、俺を拒絶した彼女の真意を確かめる必要があるんです。

 

俺は……彼女と話し合いがしたい。しなくてはいけないんです」

 

俺は今、どうしたいかをありのままに先生に答えた。俺の言葉を受け止めるように頷く彼女は次に笑みを浮かべてこう言った。

 

永琳「うん、それはいい事だと思うわ。相手の気持ちを知ろうとする事はお互いが分かり合う為の第1歩だから……」

 

それを聞いた俺は少し前に言われた明夢の言葉を思い出した。

 

駆「分かり合う為の1歩……で、ありますか。彼も、明夢君も似たような事を言っていました」

 

永琳「へぇ〜柊木君も相談に乗っていたのね。だったら心配は無いとは思うけど、これだけは忘れないで。

話し合いの中でその子は必ず自分の気持ちを伝えてくる。その気持ちをしっかりと受け止めてあげて」

 

駆「相手の気持ちを受け止める………」

 

それを聞いた時、俺は自分自身の心の未熟さを痛感した。

あの時の話し合いで俺に不足していたモノだ。美弥の言葉に耳を貸さず、気持ちも言葉の意味も分かろうとしなかった俺。一方的に自分の事だけを話してしまっていた俺。彼女との間に溝が出来てしまったのは全て俺が原因となっていたのだ。

 

永琳「そう、自分の気持ちを一方的に伝えるだけでは人は分かり合えないわ。人は、生き物はお互いの気持ちを伝え合い、受け止め合って分かり合えるのよ」

 

自分の胸に両手を当てて話す先生。その優しさのこもった言葉一つ一つが今の俺に刺さる。

心が痛く、締め付けられるように感じてしまうのは俺に足りないものがある事を思い知らされているからなのかもしれない。

 

駆「……はい、八意先生。ありがとうございます」

 

相談に乗ってくれた先生に深く礼をする。抱いていた不安が少しだけ取り除かれたようで気持ちがスッキリした気がする。

思いを伝えるだけで無く、相手の思いを受け止めるか……今までの人生でこんなにも真剣に他人の気持ちについて考えた事は、無かったな。

 

 

 

side change

 

 

 

魔理沙「私のターンだな。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ。ここで百識の谷の効果と合わせて2枚ドロー」

 

再び、デッキから2枚カードを引く魔理沙ちゃん。

 

魔理沙「その後、手札を1枚破棄するのでマジックカードのアドベントドローを破棄し、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

魔理沙 デッキ31→29 手札5→6

リザーブ0→3

 

デッキから2枚ドローと煌臨をサーチできるマジックのアドベンドローを破棄……ドローは百識の谷で事足りているということなのかな?

私としてはアドベンドローよりも大切なカードが手札にあると見るけど、狙いはなんだろう……?

でも、少なくともこのターンも魔理沙ちゃんはアタック仕掛けてくると思う。無理やりネクサスを展開した結果、使えるコアは0でスピリットもバーストも無い丸腰の状態。魔理沙ちゃんにとっては絶好のアタックチャンスだ。

 

魔理沙「………なぁ、美弥。やっぱり駆の事が気になるんだよな」

 

バトル中、魔理沙ちゃんは視線を手札から私に変えて静かにそう言ってきた。

 

美弥「……う、うん。とても心配だよ……いつ目覚めるのか、分からないんだもん」

 

私はその答えとして頷きながらそう言った。

正直、今日は駆君の事が気になり過ぎて何にも集中して取り組めなかった。

いつになったら目覚めるんだろうって、いつになったら、ちゃんと話し合いが出来るんだろうってずっと思っている。

 

魔理沙「……分かるぜ、その気持ち。私もアイツが心配さ。居ても経ってもいられないくらいにな。

ちなみに、駆が目覚めたらお前はどうするんだ?」

 

美弥「わ、私は…………今の私の気持ちを彼に伝えたい。仲直りしたいって伝えたい…

今度は駆君の気持ちも受け止めて、その上で仲直りしたいの」

 

いきなりの質問に私は戸惑ってしまった。でも、やりたいことはもう決まっている。レイちゃんも私の背中を押してくれた。だから私は、しっかりと自分の気持ちを伝えなきゃならない。

 

魔理沙「そうか、だったらもう私の役目は無いな。でも、これだけは言っておく。

その想いを絶対に忘れるなよ。想いは人を大切にしたいって心の底から出たモノなんだから!」

 

魔理沙ちゃんは自分の胸を指さしてそう言う。

私の役目って所は気になったけど、その言葉は私の心にとても響く様に聴こえた。

 

美弥「っ!!自分の心……から」

 

魔理沙「そうとも!そして、想いは自分を他人を動かす大きな力になるんだぜ。

だから、美弥は自分の想いを仲直りしたいって気持ちを信じて、真っ直ぐに駆に伝えてあげるんだぜ」

 

想いは心から生まれるモノ…想いは人を動かす力になるモノ。

そんな風に想いとか気持ちとかを深く考えた事は無かった。でも魔理沙ちゃんの言葉は正しくて、私は実際に彼と仲直りがしたくて、その抱いている想いが次の行動に移ろうとしている。

その事実と真っ直ぐで力強い魔理沙ちゃんの言葉に私は少し勇気と自信を貰えたと感じた。

 

美弥「うん…!!ありがとう、魔理沙ちゃん!!」

 

私は少し遠くにいる彼女に大きな声でありがとうの言葉を送った。

 

魔理沙「…へへ、いいねぇ!いつものお前らしい笑顔じゃないか!じゃあバトルの続き………行くぜ?」

 

 

 

To be continued……




次回予告
想いがあるからこそ力が生まれる。
大切なのはその想いがすれ違わない様に、ぶつかり合わないように受け止め、理解しなければならない。

次回、バトルスピリッツ 欠落

Turn-37 Realize

分かり合う術ほど、手探りで………

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