書きたいことは頭にあるのに…力不足です
「ねーカイくん。
あたし達に話してくれない?何があったのか。あたし達カイくんの事なーにも知らないよ?なのに大丈夫って言われても説得力ないし〜。だから教えて?」
──────
After glowと衝突した次の日。昨日の公園に来ていた。あの後、モカと巴(呼び捨てでいいと言われたから)と連絡先を交換して謝罪と諸星との関係性を話す場を設けることにしたからだ。
「一発は覚悟しとくかないとな…」
主に蘭から。…一発で済むかな。
「おぉ〜カイくん、来るのはやーい」
「そりゃあ、呼んだ本人が遅れる訳にはいかないからね」
モカを筆頭にこちらにやってくる。気まずそうなひまりちゃんと申し訳なさそうにしているつぐみちゃん。何かを案じている巴。そして──
「何の用。あたし達あんたの為に時間さくほど暇じゃないだけど」
お怒りMAXの蘭…蘭様。あれ、蘭の後ろに般若がいるだけど。気のせいだよね?
「昨日悪かった。言い過ぎた」
「それだけの為に呼んだの?…呆れた、あたし帰る」
謝罪も受け取らずに帰ろうとする蘭。それをまぁ待て、と止める巴。ありがとう、巴。
「何があったのか話すよ。何で高校に通ってないのかも含めて。それと──」
つぐみちゃんの前まで移動する。そして深々と頭を下げた。
「昨日はごめん、それとありがとう。つぐみちゃんに言われてやっと気づけた。だからありがとう。泣かせるようなこと言ってごめん、大人げなかった」
「え!?いや、私も昨日は急にその、ごめんなさい!海斗さんが色々とあるのはよくお店で話しててくれたから…力になりたかっただけなので…」
「ありがとうつぐみちゃん。(俺はそんな君に救われたんだから)」
「…!えへへっ」
自然と頭を撫でてしまっていた。それをつぐみちゃんは少し照れながら、嬉しそうにいてくれた。あとは──
「蘭」
「…なに」
「心配してくれてありがとう」
「…別に。昨日のアンタに腹がたった、それだけ。でもムカついたから一発は殴らせて」
「それくらいは覚悟してたさ」
素直に右頬を差し出せばいい笑顔でじゃあいくよ、と一言。
みんなが見守る中、公園にパチーン!といい音が響いた。
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「にしても痛い…」
右頬にあるもみじを擦りながらボソッと呟く。まさかあそこまで痛いとは思わなかった。先輩の拳骨の方がもっと痛いはずなのに。
あれ、蘭って女の子だよね?
「今失礼なこと考えてたでしょ」
「ギクッ!…なんの事か分からないんだが…」
「あからさまじゃん。何かムカついたから今度左頬にしてい?」
意地悪な笑顔を浮かべながら言う蘭に少し引きながら距離を取っておく。
もうあれはされたくない、と思うほどに痛かった。あのさ、巴も俺を差し出さないで頼むから。
「それでこれってどこに向かってるんですか?」
「あぁ、モカと巴には言っておいたけど一応俺ん家に向かってるよひまりちゃん」
家という単語に蘭の警戒心がMAXに。
「…変なことしないでよね」
「いや、しないから。俺そんな信用ない?」
「ほぼほぼないな」
「あんまり無いかな〜?」
「うぅ…無いです」
「わ、私は信用してます!」
四人(つぐみちゃんは天使)からの信用の無さ!まぁ昨日やらかしてるからしょうがないけどさ!
やっぱりつぐみちゃん天使、異論は認めん!
「わざわざ家に言って話す事なの?さっきの公園でもよかったんじゃないの?」
「……話すよりも直接見た方が早いこともあるんだよ蘭。…っと着いたここだよ」
玄関を開けながら、どうぞとみんなを入れてリビングまで通す。
今日は未来は買い物、理斗は部活だから誰もいない。
とりあえず飲み物出すから適当に寛いどいて、一言だけ残してキッチンへと向かう。
確か水出しの紅茶があるはず。
ふと目を向ければモカ以外が借りてきた猫のように固まっている。
「そんな緊張しなくてもいいよ。っとみんな紅茶でよかった?」
「え、あぁ大丈夫だ」
「わ、私も」
「それにしても大きいですね…」
「まぁ父さんが社長だったからね」
「だった?」
蘭は気づいたみたいだ。いやモカもかな?
「それじゃまずは俺は高校に通っていないことについてから話そうか。みんなこっちに来て」
みんなをリビングの隣の部屋に催促する。隣の部屋は和室で和が好きだった父さんの仕事部屋。
今は家族でも使わないようにしてある。その理由は──
「父さん、母さんただいま」
そこには父さんと母さんの遺影があるから。
五人を見れば息を飲んでいるのがわかった。それが普通の反応だよな。
「今日は知り合いを連れてきたんだ。みんな女の子だけどいい子で未来みたいに可愛らしくて頑張り屋なんだ」
父さんと母さんに五人のことを軽く紹介する。勿論、反応なんてあるわけない。でもそれが俺の日課だから。
今日あったことを話すのが家にあるただ一つのルール。未来や理斗にも話すし、父さんと母さんに話す。
別に異常でもいい、頭がおかしいって言われてもいい。だってそれが家族だから。
「…これが理由だよ。俺には二人の妹と弟がいる。二人を養う為に働いてるんだ」
「でもそれって親戚とかに援助してもらえば良かったんじゃないですか?」
場所は変わりリビング。ひまりちゃんの言う通り。だけどね、そんなこと無かったんだ。みんな、みんな──
「親戚共は父さんの遺産目当ての奴らだけ。助けてくれたのはじいちゃんとばぁちゃんだけだった。でも二人とも歳で住んでるのも遠いから迷惑になると思ったから俺が負担してるんだ。二人には幸せになってほしいからね」
「海斗さん…アンタってバカなのか?」
「…どういうこと?巴」
巴の言葉にイラつきを覚える。バカ呼ばわりじゃなくてその真意に。
「アンタが苦しんでる間に他の人が苦しんでないのかって意味だ。アンタがそうやって何もかも抱え込んでる時に妹と弟は心配しないとでも思ってるのかって」
「それは…」
もちろん考えたさ。それでもそれが一番だったから。だってあとに産まれてくる妹や弟を護るのが兄貴の役目だろ?
「私ももし、お兄ちゃんがいてそういうことになったら…心配します。もしかしたら私のせいなんじゃって思っちゃいます」
「…もし自分がその状況に陥った時、人は本当に真価を問われるんだ。俺は妹と弟を護るために、兄貴として護るためにやってる。それ自体に後悔も何も無いさ。もちろん二人とも、今のつぐみちゃんみたいに考えてると思う。だけどね、兄貴には、男には引き下がれない時ってのがあるんだ。俺にとってそれが今だって話なんだ」
「…後悔が無いなんて嘘だよ」
「蘭?」
「だってあんたこの前、『俺にもこんな時間があれば』って言ったよね?そういう時点で後悔してるじゃん。もう自分に嘘つくのやめなよ」
「カイくんは色々と溜め込みすぎなのでーす。何かあればモカちゃん達に話してくださーい。力になれなくても話すだけで変わるんだよー?」
「まだ会ったばかりだけど、海斗さんは頑張ってます!頑張りすぎてるほどに!だから今くらいはゆっくり休んでもいんじゃないですか?」
「海斗さんは立派だよ。兄として男としても。同じ兄、姉の立場の人からすればすげぇカッコイイよ。でも無理するのがカッコイイ訳じゃないんだよ。それも妹が心配するなら尚更な?」
「みんな海斗さんのことが心配なんです。だから無理しないでください。私も頑張りすぎちゃって倒れた事があるから…。一人で頑張ることには限界があるんですよ?だから人を頼るんです。もし辛くなったなら私が話を聞きます。私でダメならみんなで聞きます。だから頑張りすぎないでくださいね?」
優しく俺の手を握ってくれるつぐみちゃん。その笑顔に照らされて。あぁ、一年前と同じだ。俺はそんな君の笑顔に照らされたんだ。
自分で気づくべきことに、年下の女の子に言われて気づかされて。そんな当たり前のことを見ないようにして。
頑張ってる自分に酔って、ホントに馬鹿馬鹿しい。未来と理斗にしっかりと謝らないとな。
ごめんって
意地張ってたって
ホントは情けない兄貴だけど許してくれるかって
「そっか…。俺は頑張りすぎてたのか」
「そうだよ、だから決めた」
「そうだね〜」
「うん!そうしよう!」
「それしかないな!」
「よーし!私も頑張るぞ!」
「え、えっと…どういうこと?」
五人が何の話をしてるのか全くわからない。なに、またビンタ食らうの?
「あたし達、After glowがあんたのこと照らしてあげる。もしあんたが絶望しようともあたし達の音楽で救う。もう二度とそんな顔させない」
高らかに宣言する蘭、いやAfter glowの面々。
あぁ…眩しいな。眩しすぎて視界がぼやけるや。おかしいな、こんな気持ちになるなんて初めてだ。
とっても暖かくて、気持ちが良くて、安心する。まるで夕日のように優しい光。
だから今なら素直に言える。
偽りの笑みじゃなくて、心の底から思える最高の笑顔を浮かべてながら。
「ありがとう。救われたよ」
蘭ちゃん主人公をビンタしてスッキリする模様。
モカは主人公とAfter glowの取り持ち役。
ひまりはいつも通り。元気よく
巴は原作の二倍増しくらいの姉御肌。同じ兄、姉の立場だからわかる話もある。
つぐみは恋する乙女。無意識に手を握る当たり流石だよね。そんな笑顔が主人公を救う女神
こんな感じになるようにしてる…。ひまりの出し方何気にムズい