モブ「パープル色のライダーが逃がしてくれたんです!!」   作:オラオラドララ

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第五十五話 vsシトリー眷属 抗戦 後編

 

ギャスパーside

 

祐斗先輩が変身するチェイサーに変身した僕……このフォームに名前をつけるなら、『仮面ライダーマッドローグ チェイサーフォーム』ってところかな。そのフォームを用い、僕は桃先輩と匙先輩の相手をしていた。

 

「フッ!」

 

「!」

 

何度か振るってみて分かったけど、このシンゴウアックスって武器……僕には合わないな。振る時に無駄な動きがあるせいか、彼らに避けられてしまう。それに……。

 

「重いな……やめるか、これ」

 

やっばり、慣れない形状の武器は使うもんじゃないな。よくあの人は使いこなしていたもんだ……。

 

僕は、シンゴウアックスをぽいっと捨てて消滅させる。

 

「代わりに、こっちを……あっ、海賊は小猫ちゃんに返したんだ。参ったな」

 

海賊フルボトルは小猫ちゃんに返した。今の僕に武器を召喚出来るボトルはない。望む武器を用意できないなら、やっぱりチェイサーの力でなんとかするか。

 

ビュン!

 

僕は、風を切る音と共に高速移動でこの地下駐車場を駆け回り、彼らを翻弄する。

 

「くそっ!」

 

「ちょこまかと……!」

 

このスピードに、二人は目で捉えることは出来ていないようだ。

 

悪いね。早く攻撃したい気持ちは山々だけど、こっちは慣れないライダーの力を使いこなせていないんだ。少しは慣らさせておくれよ。

 

「そらそらっ!でやぁっ!」

 

「ぐぁっ!!」

 

高速移動からの高速連打。普段よりも段違いな移動速度と攻撃速度による打撃攻撃を匙先輩に叩き込む。

 

(よし、いい流れだ。……しっかし、どうもおかしい)

 

優勢に見えるけど、会長はこの二人を僕にぶつけさせたままで退却させないのか。スピードもパワーも、現状僕の方が上だというのに、他の人達の加勢に行かせない……絶対に何かあるはず。

 

そもそも、僕達とシトリー眷属では一人一人の力に差がある。それを分かっていて、まともに力でぶつかり合って勝とうとするわけがない。だからこそ、部長は会長の狙いが何となく読めたのだろう。

 

「だけど……」

 

気になるのはこのゲームのルールついてだ。

 

僕はこのゲームのルールにより、『神器使用禁止』という制限がかけられている。それはそうだ。時間系の能力って、対処がしづらいだろうし。部長のクロックアップだって、他勢力から見ても驚異的な能力の筈だ。

 

だというのに何故、部長のクロックアップは使用禁止にならない?僕だけが特別なのか?下手すれば、力のバランスが崩れてしまうだろうに。……まぁ、そんなことを考えている場合じゃないか。

 

にしても、『作戦D』かぁ。あんま気乗りしないけど、上手くいけば僕としては実験出来て勝てるんだから一石二鳥か。仕方ない、一丁仕事してやりますか。

 

「この前は消しゴムを使ったけど、今度はこれを使おう」

 

『蜘蛛!ライダーシステム!クリエーション!!』

 

スマッシュになったカテレアから成分を抜き取り、それを浄化して成したボトル……スパイダーフルボトルをベルトに装填し、ライダーエボルボトルと組み合わせてからレバーを回し、必殺技を発動する。

 

『Ready Go!』

 

「フッ!」

 

チェイサー持ち前のスピード。騎士の駒の恩恵すらも凌駕するこの速さ……ついてこれるかな?

 

「速い……!」

 

「桃!後ろだ!」

 

「えっ?」

 

桃先輩の背後に瞬時に回り込んだ僕。匙先輩が気づいているが、彼女自身の反応が遅れた。

 

『蜘蛛!フィニッシュ!チャオ!』

 

「ハァァッ!!」

 

僕は自身の背中辺りから二本の大きな蜘蛛の足を、身体から伸ばすよう出現させると、減り込む勢いで彼女の足元に突き刺す。

 

ドガァァァァァン!!

 

「キャアァァァッ!!」

 

大きな爆発を起こさせ、爆破に巻き込まれた彼女はその一撃でリタイアとなる。

 

『ソーナ様の僧侶一名、リタイアです』

 

ふむ……流石は、祐斗先輩のチェイサーだ。マッドローグよりも素早い動きが出せるだけでなく、パワーも文句無し。使い勝手が良い。

 

「さぁ、あとは貴方だけだ。匙先輩」

 

「あぁ、俺一人になってしまった……それでも、お前を倒す!!」

 

ッ!?一気に懐へ入られた!?

 

「ぐっ!!」

 

僕の目でも追いきれない速さで向かってきた彼の渾身の拳を、両腕を前方にクロスしてガードする僕。しかし、その拳により、受け止める腕はメシメシと音を立てる。

 

「な、なんだこの力……!?ぐぁっ!!」

 

その力に押し出され、ふっとばされる僕は壁へと激突する。立ち上がるものの、その衝撃は大きく若干フラフラとなる始末……一体、どうしてこんな力が……。

 

「まだだ!」

 

「ッ!グェェアッ!?」

 

今度は、立ち上がった僕にストレートの蹴りを叩き込んできた。既に壁際に追いやられているため、背中と腹部に大ダメージを負う。

 

「ごはっ……!!」

 

再び壁から剥がれて倒れこむ。なんなんだホント……さっきとは段違いに力が上がってるぞ……!

 

だけど、どうして追撃しない?

 

攻撃直後、更に追撃をすればいいものの、匙先輩は現在、距離をとって息を整えていた。

 

「うぐっ……!」

 

攻撃をした本人が、何故か苦しんでいる。今の異常なパワーアップには、何か相応のリスクでも伴っているということか?しかし、一体どうやって……?

 

「いや……まさか……」

 

確か、匙先輩の神器は伸ばしたラインで力を吸い取ることが出来るんだったな。

 

だとすれば、彼はそのラインで自分の魔力やオーラ……更には生命エネルギーを吸って、その全てを身体能力に変換しているんじゃないか?そうでもしないと、ここまでのパワーアップは見込めないだろう。

 

チェイサーにも劣らない速さと筋力。この異常な身体能力の上昇は非常に厄介だ。だけど、こんな無茶なパワーアップに、並みの力の下級悪魔が易々と耐えられるわけがない。

 

「そんなことして……身体が持つと思ってるんですか……!!」

 

「悪魔の身体は丈夫だ……少しくらいなら持つ……ガホッ」

 

身体の負担が大きいのか、吐血をする匙先輩。僕が思う以上に、消耗が激しいはずだ。下手すれば、死ぬ可能性だってあるはずだ。

 

「どうしてそこまで?……まさか、貴方達の夢の為ですか?」

 

「あぁ、たとえ身を焦がしても成し遂げたいことがあるんだ……!!」

 

彼らの上へと成り上がりたいその気持ち……その根本なところは、恐らく彼等が持つ『夢』にある。確か、部長からも聞いている。

 

若手悪魔の会合……若手悪魔がそれぞれの目標や夢を語る場。そこでソーナ会長は、自身の夢を語る際にこう言ったようだ。

 

『レーティングゲームを学ぶことのできる学び舎を作りたい』と。

 

現在、この冥界ではレーティングゲームを学ぶところはいくつかある。しかし、学ぶことができるのは部長達のような貴族出身の者、またはその眷属に限られている。

 

会長は、その垣根を超え……普通に暮らす一般悪魔達にもそのレーティングゲームを学ぶ機会を与えたいと言う。正直、僕はその夢に対して反対はない。面白そうじゃないか。新しい実験は楽しいと思う僕にとって、新しいことを考え取り組むことに意欲的なのは嫌いじゃない。

 

それに、その夢が叶ったとしよう。もしかしたら、一般悪魔の中に埋もれている才能の塊……いわば、磨かれていない原石が見つかるかもしれない。貴族の元がどうだとか関係なく、意欲のある者達が力をつけ、ゲームで活躍し、あるいは運営に回るとか……まぁ、それ以外でも道はある。どう進むかは生徒次第だ。

 

高校生だというのに大きな夢を持つものだ。だが、そんな夢すらも、古い貴族悪魔から嘲笑されたと聞いた。『儚き夢』だとか『夢見る少女』などと。その夢を否定するようなことを言われたそうだ。過去の伝統を汚すなとか、何だかそれっぽいことも言っていたようだけど、そんなのは建前だ。

 

過去の伝統?違うのさ。古い貴族は恐れているんだ。何処の馬の骨かも分からない一般悪魔が成り上がり、自分達の地位を脅かされるのが。だから、ソーナ会長の夢は古い悪魔にとっては邪魔なものと判断し、敢えてバカにしているんだ。

 

「バカにされたけど、何も言い返さなかったんですか?意外と我慢強いですね」

 

「別に。この冥界では精神を鍛えようとしたわけじゃねぇさ。教えてやる……俺らが何でそこまでのメンタルの強さを得ることができたのか。それはな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前らのせいだよ!」

 

「…………えっ?」

 

えっ?マジ?いや、それはできれば『僕たちのおかげ』と言って欲しいような……。

 

「普段、生徒会がどんだけお前らの変態的行動に対して振り回されてると思ってる!?会長も日々増える変人グレモリー眷属に胃を痛める始末!そりゃ、俺たちだってメンタルも鍛えられるわ!!言っとくがリアス先輩達だけじゃないぞギャスパー!俺は知ってんだからな!お前が学園でこっそり隠れてエロ本持ってきてるってこと!」

 

「ギクゥッ!」

 

いや、まさか……誰にも見つかってないはず……隠し場所だって……。

 

「因みにタイトルは『イチャイチャパラダイス〜ロリッ娘大集合〜』」

 

「なぁぁっ!!?バレていたァァァァッ!!」

 

「あと、ちゃんと没収して預かってるから」

 

「はぁぁっ!?貴様ぁぁぁぁっ!!数少ない僕のお宝をぉぉぉぉっ!!」

 

「風紀ってもん考えろ!松田と元浜のように覗き見しない辺りはまだマシだが、他の生徒にバレたらお前の沽券にだって関わるだろうが!俺だって嫌だぞ!?『実は生徒会はエロ本を回収して自分達で独占してるんじゃないか』とか、『裏では変態同盟を結んでる』とでも噂されたら!!」

 

「別にいいじゃないですか。匙先輩、同じ幼女を愛する者として、仲良くやりましょうや。へへっ」

 

「なぁぁぁにが『へへっ』だぁっ!?全然良くねぇぇよ!?てか俺はロリコンじゃねーから!!」

 

畳み掛けるようなツッコミの嵐。凄いな。チッ、今度は生徒会にもバレないようにしなきゃ……。

 

「……なんというか、先生みたいですね。まぁ、そうやってちゃんと取り締まる事ができるなら、学校建てても上手くやっていけるんじゃないですか?ふっ、僕達のような反面教師がいたことで練習になったというわけだ」

 

「やかましいわ」

 

ツッコミをやめる匙先輩は、再び真剣な表情へと戻る。すると彼は、自分のこのゲームに対する想いを語り出した。

 

「確かに、あの時は反論なんてしなかった。けど、何も思わなかったわけじゃねぇ」

 

だろうね。軽くスルーは出来ても、きっと物申したいことはあったのだろう。

 

「夢って、持つと熱くなるけど、すごく切なくなる……らしい。会長だって、否定された夢を何とも思わなかったわけじゃない。否定される理由だって、間違ってると断言できるわけでもねぇ。だけど、やっぱり悔しいんだよ。それでも諦めずに進もうとしてるんだ!だから俺は、そんな会長を……好きな人の夢を応援してあげたい!守ってやりたい!……それが俺だ!俺の夢だ!」

 

匙先輩は、自分の中にある確固たる意志を持った眼差しを僕に向けてくる。その瞳には、会長に対する強い想いが感じられた。

 

身分の差を生まない学校を作るなど、そう簡単なことじゃないだろうね。意志だけでどうにでもなるわけじゃないし。

 

でも、それを承知の上で夢に向かって走ることをバカにはしない。僕も陰ながら応援しよう。だけど、勝負はまた別の話だ。匙先輩も神器を持っているし、何をされるか分からない内に、さっさと終わらそ……う……?

 

「おぉ……?」

 

な、なんだ……身体の力が抜ける……。

 

「へっ、やっと効果が出てきたか……」

 

身体がぐらつく僕を、匙先輩がしたり顔で見てくる。身体に違和感を感じ、僕は自身の右腕を見た。

 

「なんだこれ……透明のチューブ?いつの間に、僕の身体に付けられた?いや……もしや……」

 

彼の右腕の神器から伸びるチューブのようなライン。そこから何を吸い取っているのか……僕は瞬時に分かった。

 

血だ。匙先輩は、ラインで僕の血を吸っているんだ。

 

「ラインは一つじゃなかったのか……!」

 

僕が桃先輩をリタイアさせる直前、匙先輩は僕が彼女の背後に移動していたのをいち早く察知していた。動きを止めたのを見計らい、その時に、こっそりとこの透明のラインを取り付けたのだろう。

 

なるほど、彼女の犠牲を利用したわけか。計算通りかは分からないけど、真面目な話をしていた時点で、既に攻撃は受けていたということだ。完全に油断していた。バカ正直の熱血野郎かと思ってたけど、意外にも狡猾じゃないか……!

 

「このまま貧血にしてやるぜ!」

 

彼のいう通り、このままだと血を吸われすぎの結果、貧血により倒れて退場してしまう。だけど、させるか!

 

僕はチューブをガッと掴むと、引っ張って匙先輩を引き寄せる。

 

「うおっ!?」

 

吸血に集中する匙先輩は対応できずに引き込まれ、僕と彼は身体が密着する。僕は、それを待っていた。

 

「ガッ!?」

 

指を彼の首横に突き刺す。殺すのではなく、あくまで指の先端を少しだけねじ込んで同じように血を吸う。

 

吸血鬼は口からだけじゃなくて、指からだって吸えるんだよ!!

 

「他の人ならともかく、吸血において僕に勝てると思うなよ……!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!!」

 

指から匙先輩の血を吸っていくが、彼は一向にラインによる連結をやめない。それどころか、血を吸うのをやめなかった。僕を極限まで吸血し、リタイアまで追い込むつもりだ。

 

「負けられねぇんだよ……!会長の為にも!!」

 

「……」

 

その熱意は、中々真似できないものだ。尊敬するよ。だけど、正直相手が悪かった。

 

『Ready Go!エボルテックアタック!チャオ!』

 

「ハァッ!!」

 

「ッ!グァァァァァッ!!」

 

密着されているなら、彼は格好の的。必殺技を発動し、渾身の蹴りを匙先輩に炸裂させ、彼をふっとばす。彼は壁まで追いやられ、衝突の末にズルズルとコンクリートに倒れこむ。

 

流石に力尽きたのか、やっとチューブが僕の身体から離れ、匙先輩の神器も解かれた。恐らく、決着はついた。

 

これがデイウォーカーじゃない僕の吸血鬼としての力だ。生まれながらの力とオモチャでの吸血対決において、負けることはない。僕を倒すには、一歩及ばなかったですね。

 

寧ろ、相手が僕で助かった……というべきか。他の人だったら、失血状態でリタイアになる可能性は十分にあった。それが、僕らのチームにとっての幸運であり、会長達のチームの不幸ともいえる。

 

「会長……すみません……」

 

悔しそうに匙先輩は唇を噛みしめる。身体は動かずとも、意識だけは何とか持ちこたえようとする意地の強さ……こういうタイプは、たった一度の敗北で折れたりはしない。きっと、この先も敗北のたびに立ち上がろうとする。

 

そんな匙先輩を、僕は最後まで見つめていた。

 

『ソーナ様の兵士一名、リタイア』

 

アナウンスにより、匙先輩は医療ルームへと転送される。彼がリタイアしたものの、僕はその場に膝をつく。

 

「……大分、血を吸われたな……吸血鬼である僕が、こんなにも疲弊するなんて」

 

肩で息をするほどに、僕は消耗していた。それほどに、匙先輩は本気だったということか。

 

彼の神器……ただの下級神器かと思ったけど、アレはそんなチャチなもんじゃなさそうだな。ソーナ会長も、中々の逸材を眷属にしたものだ……。

 

「さて、あとは残りを探すか……それとも、ここで待ち伏せるか」

 

今から誰かの元に行くのは無理だ。疲弊しきってる僕が行ったところで足手纏いになるのは確実。ここは少しだけ休むとしよう。

 

変身を解除し、血を吸われて万全でない体を壁にもたれさせ、座り込む。

 

「少しでも、休まないと……!また、誰かが来る前に……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『CLOCK UP』

 

「……ガフッ……?」

 

変身を解除した僕に襲いかかったのは、予想だにしない高速の凶刃。目にも留まらぬ速さで、一瞬の如く全身に切り傷を負わされ、膝をついたのちに前のめりに倒れこむ。

 

『CLOCK OVER』

 

……なるほど、そういうことかぁ……。

 

なんで、自分の神器は使用禁止にされ、部長のクロックアップが使用禁止にならないのか。その理由は、今受けた攻撃ではっきりと理解出来た。

 

「そりゃ、対処出来ないって……」

 

『リアス様のチームの僧侶、リタイアです』

 

あとは頼みましたよ……。

 

「………匙、良く頑張りました。あとのことは、私達に任せなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場side

 

作戦Dが遂行されると決まった中、僕は巡 巴柄と戦っていた。しかし、決着がつかない。理由としては、彼女の戦闘の仕方にある。

 

攻めてこないのだ。倒すかがあるのかないのか、ヒットアンドアウェイで、長く僕の近くにあまり寄り付かない。彼女の戦闘データは一応見たつもりだが、こんな戦い方をする女ではなかった。

 

急な戦闘スタイルの変更。ここまでくると、時間稼ぎをされていると疑うのも当たり前だ。故に、僕は中々決めきれない。倒したいと思っても、完全に彼女の動きを捕まえられないのは、同じ騎士で高速のスピードを持つ者だから。

 

同じ騎士同士、スピードで戦いを掌握するのは正直難しい。大抵、両者の他の要素による技量次第で勝敗が決まるのがセオリーだ。

 

「魔剣創造」

 

僕は距離を取り、手を上げて空中に魔剣を複数創造。剣先を巡に向け、次々と彼女に向けて発射した。

 

キィン!キィン!

 

……流石だ。彼女は、複数向かってくる剣を全て剣でいなした。流石は生粋の剣の使い手……僕には真似できない芸当だ。

 

「あくまで剣術は使わないんだね」

 

「生憎、習得していなくてな」

 

斧を極めた僕に剣術は無い。あるのは、剣を手無しで操ることと、ライダーシステム……そして、この魔進チェイサー。どういうわけか、この装備はよく身体に馴染む。普段よりも力が湧いてくる。

 

僕は剣を複数飛ばしながら、ブレイクガンナーの銃口を彼女に向け、引き金を引いてエネルギー弾を撃つ。

 

「ぐっ……きゃっ!」

 

飛んでくる剣を捌く巡は、僕の放ったエネルギー弾までは対処出来ず、直撃して大きく後退する。

 

しかし、思いの外ダメージが大きかったようだ。誤射によって壁でも壊してしまったらリタイアとなってしまうかもしれん。ブレイクガンナーでの射撃攻撃は控えるべきか……ならば。

 

『チューン!チェイサー!スパイダー!』

 

僕はバイラルコアをブレイクガンナーに装填する。あの時のバルパーと同じように、超硬化金属を削りだして作られた蜘蛛を模したクロー型の武器、『ファングスパイディー』をテイルウィッパーに重ねるように装着した。

 

大きな爪を振るように、巡に攻撃する僕。騎士同士、持ち前のスピードで縦横無尽に駆け回りながら、僕のファングスパイディーと彼女の刀がぶつかり合う。

 

「くっ、やっぱり騎士のスピードはそのままだよね……!」

 

「あぁ」

 

勿論、仮面ライダーチェイサーの力があれば、今以上のスピードが出せるはず。巡のスピードを上回っていたと思われる。しかし、それを承知でこの場にいることに違和感が生じた。

 

彼女は本当に僕を倒すためにここに来たのか?やはり、時間稼ぎにしか思えない。

 

しかし、その策を打ち砕く。ここで巡を迅速に落とすことが、今の僕のやるべきことだ。

 

「フンッ!!」

 

「ッアアッ!!」

 

何度もぶつけ合う二つの武器。僕は、ファングスパイディーを押し込むように力を入れ、巡をふっとばす。力負けする彼女は後方へと飛ばされ、壁へとぶち当たるかと思えた。しかし

 

「巴柄!」

 

「むっ?」

 

見覚えのある人物が、巡を受け止め、ゆっくりと彼女を下ろす。

 

「巴柄、大丈夫か?」

 

「うん、なんとかね……でも、どうして」

 

「会長からの指示らしいです。木場先輩はここで落とす……って」

 

草下と仁村?何故、奴らがここに……?奴らは、アーシアを追っていたのではないのか?

 

『リアス様の僧侶一名、リタイアです』

 

「何ッ!?」

 

草下と仁村が来た途端、グレイフィア様のアナウンスが流れた。

 

僧侶一名……?アーシアか?……いや、アーシアの魔力は感じる。ならば、ギャスパーか。

 

匙にやられたのだろうか。いや、兵士のリタイアのアナウンスもあった。ならば相討ちか?もしくは、第三者に一瞬でやられた……か。どちらにしろ、こちらも戦力を一つ削られたのは確か。

 

更には、僕もいつのまにかこの三人に囲まれている。小猫は副会長を倒せずにいる。もしかしたら、追い詰められているのは僕達の方か?

 

「アーシアは放っておき、僕を集中狙いか」

 

「ハァッ!」

 

斬りかかってきた巡の攻撃を躱す。しかし、どうも様子が変わっている。ギャスパーが落ちたことで、動きにキレが増していたのだ。

 

先程の巡の戦闘様子は、倒す気はあるが、一歩身を引いている感じ。まるで、時間かせぎでもされていたかのような立ち回りであった。

 

しかし、ここに来て攻撃の鋭さが上がり、温存していた体力を全開にして僕を仕留める気でいる。やはり、彼等の狙いは部長の想像通りか。

 

「たぁっ!」

 

今度は仁村の拳が向かってくる。ここで果敢に攻め続け、根こそぎ体力を奪おうと思っているのだろうが……無駄だ。

 

「フッ!」

 

「ガハッ!」

 

息を切らさず、冷静にその拳を受け止め、即座に肘鉄を鳩尾に叩き込んでふっとばす。僕に疲れはない。当然のことだ。その理由はただ一つ……。

 

「僕はロイミュードだ。体力の限界など存在しない」

 

三人相手は骨が折れるがちょうどいい。作戦Dの完遂までもう少し付き合ってもらうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

 

グレモリーチームの王であるリアス・グレモリー。彼女は自陣の建物から離れ、ソーナ達の陣営へと潜り込んでいた。潜入したルートは地下駐車場。ギャスパーがやられたことで、既に人がいなくなっており、簡単に侵入出来た彼女は、そこで意外な人物を発見する。

 

「ソー・ナンス……」

 

自分を真っ直ぐ見据えるソーナの姿がそこにあった。言葉を交わそうとしない彼女は、表情がひきしまっており、リアスはサソードヤイバーを構える。

 

このまま、二人による戦いが始まるかと思えた。……しかし、彼女は気づいていた。

 

「フッ!」

 

―――自身の背中を狙う魔力弾に。

 

「……やっぱりか」

 

彼女は、サソードヤイバーで背後から迫ってきた複数の魔力弾を全て切り裂く。一瞬の出来事であったが、リアスは一切息を乱さないまま剣を下ろす。

 

既に目の前のソーナに目をやらない。それは何故か。その()()()()()()()()()()は、まさに水に溶けるごとく身体が崩れ、床に大きな水たまりが出来上がる。

 

そう、目の前のソーナは偽物だった。リアスは、それを見抜いて背後からの攻撃を防いだのだ。

 

「我が盟友 ソー・ナンス。やっと出てきたわね」

 

彼女の背後には、本物のソーナがいた。水で分身を作った彼女は、今の攻撃を防がれたことで、驚くかと思われたが、その表情は、どこか和らげだった。

 

「流石ねリアス。やっぱり、騙されないか」

 

「わざわざ正面で来るなんて鼻っから思ってない。分かってるでしょ?」

 

ここに王同士が対峙したことで、観戦する者達は一気にここに目が奪われる。この二人の戦いが始まると直感したからだ。

 

「貴女こそ、この近くに私がいることは分かっていたんでしょう?……私は、どうしてこの位置がバレたのか知りたいわ」

 

「簡単なことよ。貴方の魔力で構築するデコイは、確かに私達を翻弄していた。でも、デコイに施された魔力は貴方本人とは違って動かない。貴女の魔力は、貴女が移動すれば動くから見分けがしやすい。下手に動き回ったのが仇となったわね」

 

もっとも、索敵出来たのはそのお陰だけではなく、朱乃がデコイを破壊し続けてくれていたことで、彼女を遠ざけていたソーナの位置が割り出せやすかったというのもある。

 

「……あまり暴れるのは避けたつもりだけど、まさか戦闘に参加しなかったのは、索敵に集中するためかしら?フフッ、王のやることとは思えない……ホント、奇想天外よ…貴女」

 

「いやいやいや、フィールドの状況把握は大事よ。そして貴女のこのゲームの作戦を当ててみましょう。それは、確実に私達ひとりひとりを『倒す』のではなく、『無力化』に近づけることで私を追い詰める。あわよくば、終盤残った眷属達で私を袋叩き……って感じかしら?」

 

ネガタロスの憑依が無効となったアーシアを放置。完全に戦力外とみなしたのか、彼女を狙っていた眷属達が、今度は木場を狙っている。相性を考えて小猫を椿姫をぶつけたのも、ギャスパーを弱ったところで落としたのも、グレモリー眷属を確実に追い詰めるため。

 

「人数にそれほど差はないとはいえ、私とて実力差は理解してるつもり。だから私達は堅実に、尚且つ素早い立ち回りでグレモリー眷属を翻弄し、勝利へと繋げる。結果、厄介と思っていたギャスパーくんは落とせた」

 

力で勝てないのなら、戦術で勝るしかない。ソーナ達は、勝利への活路をそこに見出したのだ。

 

「……」

 

落とされたギャスパー。放置されている朱乃とアーシア。三人に囲まれた木場。そして、椿姫に苦戦を強いられている小猫。確かに、今の流れはシトリー眷属に向いている。

 

だが、リアスはある一つのことに対して考えていた。大量のデコイの配置、鏡などの自分の姿が映るものの撤去、そして眷属への指示。短期決戦であるこのゲームで、これを短時間でやり遂げるのは相当の至難であるはずだ。

 

その方法を知ることはないと思っていたリアス……しかし。

 

「リアス……私だって、何もしなかったわけじゃない。成長しているのは、貴女達だけじゃないのよ」

 

目の前で何かを装着するソーナを見て、リアスは目を見開く。

 

「それは……!」

 

彼女の腰に巻かれた銀色のベルト。そこから連想される結論により、今までの迅速な行動の理由を理解するリアス。

 

「来い……ガタックゼクター!!」

 

彼女の甲高い呼び声に反応し、どこからともなく青いクワガタの機械が飛んでくる。ガタックゼクターと呼ばれるそれを、彼女は手に取ると、腰に装着されている銀色のベルトに横から装填する。

 

「変身!」

 

『HENSHIN』

 

リアスとは違い、若干音が高い変身音声。その音声と共に、リアスのサソードと同じようにソーナは自身の身体に装甲を纏う。虫をモチーフとした鎧……それも、昆虫類で有名なクワガタを模していた。

 

「ソー・ナンスが……仮面ライダーに……!!」

 

自分と同じライダーシステム。初めて目にするその姿に、リアスは恐らく生きていた中で五本の指に入るほどの大きな驚きを見せ、その姿を目に焼き付ける。

 

その名も……『仮面ライダーガタック』。

 

「仮面ライダーガタック……推して参る!!」




ジオウ終わってしまった……ラストは良い感じに締めていたので、個人的には満足。尺が足りないせいで伏線回収出来なかったとこもあったみたいですが、まぁそれは後々のvシネや小説で補えば自分は満足です。

それと、オーマジオウ最強ですな。スペック見てみたけどあれはムテキゲーマーどころかビリオンやエボルトを絶対に上回ってる。キック力324トンってなんだよ(笑)


次回『vsシトリー眷属 決着』

「祝えッ!!我こそは、邪王心眼を操りし闇の血統なり!!その名もアーシア・アルジェント!!今まさに、新たな究極奥義を披露した瞬間である!!」

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